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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
春彦が病院に担ぎ込まれた頃、道場のあるビルも騒ぎが納まりつつあった。
道着を着ている者、刑事たちに歯向かってくる者たちは、根こそぎ逮捕されていた。
ただ、全てが逮捕されたわけではなく、どさくさに紛れて逃げおおせた者も多数いいた。
また、違う階では、改造拳銃、日本刀、ダイナマイト、怪しい化学薬品の研究物などが次々と押収され、刑事たちも何か出て来るとは思っていたが、あまりの種類や量に度肝を抜かされていた。
「たんなるカルト集団ではなく、ここまで用意していたとは。」
「これだけ用意できるということは、どこからか資金提供があったのかな。」
「そうだな、信者たちが集めたぐらいじゃな。」
館長の伊地知や師範の金光を春彦とやり合った20名ほどのけが人は次々と救急車で搬送されていった。
「しかし、こいつらのやられ方は半端じゃないよな。」
田中が救急車で運ばれていく怪我人を見送りながら言った。
「まあ、伊地知の怪我は日本刀によるものだけど、他は、キングコングでも来たのかな。
 それとも、本当に悪霊の類でも来たのかな。
 怪我人は、皆、金属バットのような何か鉄棒の様なものに殴られたみたいだし、それ以上に、意識がある者は、何かに怯えたように震えて何も言おうともしないで……。
こんなの見たことある?
小山ちゃん。」
「ええ。」
小山が、どっちつかずの返事をした。
「他に誰かいたはずなんだけど。
それに、襲われていた女性もいないし…。
まあ、女の方は、わかっているから明日、事情聴取をするとして。」
「わかってる?」
「ああ、小山ちゃんも知っているだろ?
 半年前位に河川敷で男の全裸の死体が見つかったって事件。
 全身痣だらけで、集団でリンチを受けた後、河川敷に放置されてたって事件。
 その被害者の娘が、犯人を見つけるって言って、この道場に通っていたんだよ。
 どうも、その件で、何かを掴んだかで、暴行を受けそうになったって、110番があったんだよ。
 こっちは、以前から、この道場をテロを起こそうとして準備しているって通報があって、ずっと内々に調べていたんだよ。
 そしてやっと、拳銃だとか、薬品、麻薬だとかいろいろな証拠が集まってきたので、一斉に検挙しようと準備していた矢先だったんだよ。」
「へえ、そうだったんですか。
 それで、リンチで死んだっていう男も、テロの仲間だったんですか?」
「いや、白戸恭介は普通の一般人で、健康のためって勧誘されて道場に何も知らずにかよっていたんだよ。
 それで、何か見てしまったのか、殺されたってことらしい。
 その犯人たちもいるので、取り調べで吐かせてやるけどな。
 そうなんだけど、これだけ大立ち回りをした奴がわからないんだよな。
 それも明日、白戸美由紀から聞きださないと。」
「そうですね。」
(でも、この怪我の負わせ方は、この前の高校の事件と、一緒だな。
 やはり、あの女に連れられていた男はあいつか。
後で、母ちゃんの方に連絡を入れてみるか。)
小山は、春彦のことを口には出さず、心の中で呟いていた。

翌朝、世間はこの事件で大さわぎになっていた。
何せ、街中でテロを起こそうと着々と準備を進めていた集団が、一晩で一斉検挙されたこと。
武器や薬品が大量に押収されたことで、新聞をはじめテレビの報道番組も一斉に取り上げていた。
但し、表向きは警察が事前に情報を掴み、密偵の上、証拠をつかんで一斉に検挙したということで、美由紀や春彦たちのことは、伏せられていた。
美由紀や春彦のことを知っている道場のものは、皆、病院送りで、比較的意識のある人間も、何かに恐れおののき、春彦達のことは取り調べでも一切口に出さなかった。
警察の中でも、110番のあったことを知っているのは数名で、道場に踏み込んだ時は、修羅場で美由紀や春彦を見かけた者はなぜか皆無だった。
館長の伊地知は、意識は戻ったが精神が破たんし、廃人状態だった。
金光他数名は、生死の境をさまよっていたが危機を脱し、まだ意識は戻らない状態だった。しかし、後日、意識は戻ったが、金光や数名は館長と同じように精神に障害を起こし、話しにならなかった。
ただ、他の階で検挙されたものからは、伊地知たちがテロを起こそうとして準備を指示されていたことを自供し、容疑は固まっていた。
また、道場で比較的話が出来るものの中から、白戸恭介にかんするリンチ殺人の供述も取ることが出来、事件は一気に解決に向かっていた。
美由紀や陽介は、警察から父の殺害の件について説明を受けていた。
但し、その日、道場にいた春彦のことについては、面識のない人物が助けてくれた、ビルを出たらどこかに消えてたとしか答えなかった。
その春彦の件については、美穂も含め、何度か警察で聞かれたが、3人とも知らず存ぜぬを通していた。
「じゃあ、何度も聞くけど、本当に道場で君たちを助けてくれた人物について、知らないんだな。」
「はい、いきなり助けていただいて。
 それに、常に私はその人の背中に隠れていたので、顔も見ていないんです。」
「私も、遠くからで、全く顔はわかりませんでした。」
「僕は、姉たちに合流した時は、すでに、姉と美穂さんだけだったので、わかりません。」
「本当は、お会いして、お礼を言いたいのですが……。」
「まあ、そうかも知れないけど。
 犯人たちが大怪我していて、まあ、死人が出なかったのが奇跡かな。
 ともかく、過剰防衛や傷害の疑いもあるので、取り調べをしなくてはならないんだよ。
 それに、そいつ、テロの仲間かもしれないし……。」
田中が最後のセリフを言うや否や、3人は口をそろえて言った。
「テロの仲間じゃありません!!」
「え?
 何でわかるの?
 しかも、陽介君まで。
 陽介君は、そいつ、見ていないんだろ。」
「ええ、でも、姉を助けてくれたので、仲間じゃないと思って。」
田中は、怪しいと言わんばかりの眼で3人を見つめたが、3人とも、絶対に喋らないという意志が見え見えだったのと、あくまでも3人は被害者の参考人なので、取り調べということはできなかった。
「わかりました。
 じゃあ、なにかわかったら、連絡をください。」
「はい。」
「それと、何人かはどさくさみなぎれて逃げ出し、行方が分かっていないんだ。
 それに、他にどのくらいの規模で残っているのか、取り調べをしないとわからないので、もし、何か変なことがあったら、すぐに連絡を入れてください。」
「へんなこと?」
「ああ、逆恨みとかで変なこと考える奴もいるかと思うから、念のため、用心に越したことはないから。」
「そうですか…、わかりました。」
美由紀は、逆恨みという言葉を聞いて、自分達が被害者なのにと憤りを感じていた。
「美由紀、大丈夫よ。
 なにかったら、すぐに警察に言えば、駆け付けてくれるから。」
美穂の言葉に、田中は黙って頷いた。
ただ、美穂も内心怖かったが、美由紀のを励ますのと、自分を奮い立たせようとしていた。
「そうだよ、姉さん。
 俺も居るから。」
陽介も同調する様に美由紀に話しかけた。
「そうおね、陽ちゃんがいるから。
 でも、美穂も気を付けないと駄目よ。」
「はいはい。
 じゃあ、陽介君、私のこともお願いね。」
美穂は、陽介にウィンクしながら言った。
「はい。
 大丈夫ですよ。」
「じゃあ、気を付けて。
 脅かすわけじゃないけど、何かあったらすぐに連絡をください。」
「はい、お願いします。」
そう言って、3人が警察を出たあと、田中が小山に話しかけた。
「3人とも、もう一人のことを知っているな。
 それなのに、何で庇うんだろう。
 テロの仲間でもないのだろうに、何かあるのかなぁ。」
「…田中さん、その件ですが、自分に心当たりがあります。
 私の方で、預からせていただいていいですか?」
「ああ、いいよ。
 特段、こっちも犯人側でなければ表だって騒いだりしないし。
 ほら、今回はあくまでも警察が踏み込んで検挙した、館長や首謀者たちは、その際に怪我をした、一部は毒ガスを吸って廃人状態になっているということになっているから。」
小山は、黙って頷いた。
「ただ、真相だけ、知りたいからね。」
「わかりました。」
そう言って、小山は、田中と別れ、警察署を出て行った。
小山は、もともと違う警察署の管轄で、今回はたまたま知り合いである田中を訪ねたところ、巻き込まれただけだったので、本来自分の席のある警察署に戻っていった。

春彦は、医師の予想に反して、次の日も、また次の日も目を覚まさなかった。
「先生、春彦ですが……。」
舞は、憔悴した顔で担当の医師に聞いた。
「うーん。
 頭を打った形跡もないし、手の指以外は、これといったものはないんですよね。
 脳波もちゃんとしてるし、ただ寝ているだけなんです。」
「起きないことは?」
「今のところは、なんとも言えません。
 何分、原因がわからないので。」
「……。」
舞は、入院費を考え春彦を3人部屋に移そうとしたが、駆け付けたキクが入院費は負担するから個室のままにしましょうという言葉と、相部屋で目が覚め、周りに迷惑をかけた時のことを考え、そのまま、個室に置くことにした。
「でも、お義母さん、費用、ばかにならないので負担何ていいですよ。」
「いいえ、舞さんだって、女手一つで、たいへんでしょ?
 私達、もう、そんなにお金を残しても仕方ないから、気にしないで。
 それより、あの人ったら、腹を切って春繁と舞さんにお詫びするって大騒ぎして。」
「腹を切る?
 だって、お二人は何も悪くないじゃないですか。」
「いいえ、大事な孫を預かって、怪我をさせてしまって。
 気が付けば、絶対に止めていたのに。
 絶対に、外に出さなかったのに…。」
「お義母さん…。」
「舞さん、ごめんなさいね。
 本当にとんでもないことをしてしまって…。」
キクは涙をにじませ、舞に深々と頭を下げた。
「お義母さん、そんなことしないで。」
舞は慌ててキクの手を取った。
「お義母さん、本当に気にしないでください。
 聞いた話じゃ、春彦は正しいことをしたんですよ。
 名誉の負傷なんですって。
 だから、気にしないでくださいね。」
「舞さん…。」
「お義父さんにも、早まらないでって、よくよくお義母さんから言ってくださいね。」
舞は、春吉やキクの性格が良く判っていた。
春吉やキクは、心底、春彦のことを愛していて、腹を切るというのもまんざら冗談とは取れないことを。
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