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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第1章 佳奈の災難
その頃、猿島は、誰かの気配を感じ、携帯電話を急いで切って、服に隠した。
「あれ?猿ちゃん、携帯電話は禁止だよ。」
声の主は猪俣だった。
猿島は、ほっと安堵のため息を漏らした。
「別に、いいじゃん。
 あんたには、関係ないよ。」
とつっけんどんに猪俣に言った。
猪俣は、そんな猿島のセリフを聞き流すように言った。
「そうだね、関係ないもんな。
 こっちまで、とばっちり食ったら、くわばらくわばら。」
「だから、なんだっていうの?」
「いや、独り言だけど、明日、夕方の17時ごろが怖いお兄さんたちが手薄になるそうだよ。
 なんだか、お坊ちゃまが、どこかに行くとかで、その警護で半数のお兄さんたちが屋敷をでるそうだよ。
まあ、5人くらい残るし、いつ戻ってくるかわからないからね。
でも、チャンスはその時くらいだろうね。」
猿島は、じっと、猪俣を見つめていた。
「おいおい、信じるも信じないも勝手だがね。
ここのお兄さんたちは、プロだから、いくらうちら二人でも厳しいことは確かだよ。
 当然、素人さんには、もっとだけどね。」
猿島は、ため息をつき、小さな笑顔を猪俣に向けた。
「ああ、あんたのことは信じてるから。
 ありがとね。」
「おっ、嬉しいね。
 初めて、猿ちゃんに感謝された。
 じゃあ、うまく行ったら、猿ちゃん、1回、お願いね。」
「考えておくわ。」
猪俣は、猿島の返事ににやりと笑みを浮べたが、すぐに真顔になった。
「ところで、あの娘、もうやばいって、どうしてわかったの?
まあ見ればわかるけど。」
「小山って看護婦がいるだろ?」
「ああ、あのきつい顔して、キツネみたいに目が吊りあがってる姉ちゃんだろ。」
そう言って猪俣は指で目の端の持ち上げて見せた。
「その小山がさ、あたしに教えてくれたんだ。
 衰弱がひどいので、あと2~3日がいいところだろうって。」
「えっ?
 あの小山が?
 あいつら、あの娘を始末したがってたじゃん。」
「うーん、でも、小山って見かけほど悪い奴じゃなさそうなんだ。
あの部屋の匂いも、半分作り物で、臭いにおい液体をあの娘の身体に掛けたり仕手いるみたいなんだ。」
「ええ?
 何でそんなことを。」
「いや、あの黒服の連中、女なら死体とだってもやっちゃうらしいんだよ。
 だから、用なしになったから、真っ先に身体を狙われちゃうんだってさ。
 それで、その気を起こさせないような成分を混ぜた液体を撒いているみたいなんだ。」
「えっ、そうなんだ。」
猪俣は意外そうな顔をして言った。
「確かに、私が世話している時、2、3回男たちがのぞきに来て、鼻を押さえて帰っていったんだ。」
「ふーん、意外だな。」
「まあ、それだけじゃないけどね。
 ただ、あれは、あちら側の人間だから、ここまでらしいけど。」
「複雑だな。」
「そうかぁ。」
猿島は何となく小山の気持ちがわかったような気がしていた。
「じゃあ、もう少し細かな段取りと行きましょうか。」
猪俣は、いくら考えてもわからないことより、現実的なことに話を変えた。
猿島もそれ以上は言わず、佳奈を助け出す段取りに集中していった。

春彦は、足早に帰宅した。
リビングでは、舞がくつろぎながらお酒を飲んでいた。
舞は、春彦がいつもと違い、どこか焦りながら帰ってきたのを見て軽口を言った。
「あれ、春?
 今日は、女のところじゃなかったの?」
春彦は、軽口に何の反応もせず、手短に先程掛かってきた謎の電話のことを舞に言った。
舞も、話を聞きながら徐々に険しい顔になっていた。
そして話しが終わるや否や、春彦の携帯電話が鳴り始めた。
春彦が携帯を見ると、先程と同じ番号からの電話だった。
「もしもし」
春彦が電話に出ると、先程の女性の声がした。
「まず、手短に状況を話すと、あんたが佳奈っていった娘だけど、この屋敷に監禁されていて、身体がとても弱ってる。
医者の話しじゃ、このままじゃ、2、3日持つかどうかの状態だよ。」
「怪我、してるのか?」
「経緯は、わからないけど、怪我もしてるし、ともかく、監禁されている状況が最悪で弱り切ってる。
動けないようにされて、何か、やばい薬を打たれているし、毎日、薬と点滴だけ。
早くしないと、本当にやばいよ。」
「あんたは?」
「私かい?
 私はこの屋敷の使用人の猿島っていうんだ。
 ところで、あんたは?」
「立花だ。
佳奈から聞いていないのか?」
「さっきも言ったように、あの娘、薬を打たれていて、一日中朦朧としてるのさ。
 私は、あの娘の世話を命じられて、世話していながら、こっそり、この電話番号を聞き出したからかけたんだ。
 まあ、信じるも、信じないも、あんた次第だけどね。」
「……。」
春彦は鵜呑みにしていいのか考えこんでいた。
「そうそう、お姉ちゃんがいるんだって?
 『ユミ』とか言う。
 あの娘、うなされながら名前を呼んでいたよ。」
「え?」
その一言を聞いて、春彦は総毛だった。
「すまない、信じる。
 信じるから、どこに監禁されているのかを教えてくれ。
 すぐに、迎えに行くから。」
舞は、電話の話を聞きながら、熱心に、その会話をメモっていた。
猿島が、監禁されている場所のこと、住所を言うたびに春彦は復唱し、それを舞が必死に書き写していた。
「で、やばいのは、この屋敷の持ち主で、どうも、普通じゃないんだよ。
 なんか日本の警察でも迂闊には入れないみたいなんだ。
 後で、確認しておくれ。
 で、傭兵みたいな腕っぷしのたつ、プロの軍団を警護に雇っているから。
 明日の17時に、唯一、手薄になるから、その時を狙わないとだめだよ。
 ところで、あんたは、腕は?」
「普通の会社員だ。」
「まあ、そうだよね。
 腕の立つ手数を揃えられたらいいんだけど。
 手薄になると言っても5,6人は残るみたいだから。
 私ともう一人いるけど、それで太刀打ちできるか厳しいところさ。」
「わかった、それは、何とかする。」
「じゃあ、長電話すると、やつらに感づかれるから、切るよ。
段取りは、わかったね。」
「ああ。」
「じゃあ、覚悟しておいでね。」
と猿島はいい残し、電話を切った。
佳奈を助け出す段取りは、次の通り。
17時に猿島たちが屋敷の裏口を開け、それを待って、猿島たちと一緒に屋敷に入る。
佳奈の監禁されている部屋に案内するから、佳奈を連れて逃げ出す。
相手は、傭兵の様に訓練されている集団だから、極力、争いはせずに逃げること。
また、佳奈は動かないので、担げる担架のようなものを用意するとのことだった。
春彦が、顔を上げると、真剣な顔をした舞が立ち上がっていた。
「春、これから茂子のところに行くよ。
 一樹さん、警察関係に知り合いがいるって言っていたから、何かわかるかもしれないよ。」
「わかった。
 じゃあ、車を回してくるから、母さんも早く用意して。」
「用意なんてないさ。
行くよ。」
2人は、あわただしく、車に乗り込んだ。
舞は、茂子の家に着くまでの間に、車から電話をかけ、状況を簡単に説明し、これから行くと伝えた。
電話口で興奮した茂子の騒ぐ声が電話から漏れ聞こえていた。
茂子の家に着くと、茂子と一樹が興奮した面持ちで舞と春彦を迎えた。
「佳奈が、見つかったの?
 どこにいるの?
 元気なの?」
茂子は、矢継ぎ早に舞に質問を浴びせた。
「茂子、少し落ち着いて。
 立花さん、詳しく教えてくれませんか。」
一樹は、落ち着いて舞からすべてを聞き出そうとした。
舞は、茂子と一樹に、春彦と猿島との電話やり取りの内容を、一言も漏らさないよう、慎重に、取ったメモを見ながら伝えた。
「わかりました。
 まず、警察にその旨を伝えるのと、別に、警察にいる友人に、その屋敷の持ち主のことを聞いてみます。」
一樹は、舞にお辞儀して、足早にリビングの電話のところに行き、電話をかけ始めた。
茂子は、佳奈の命が危ないと聞いて、真っ青になって今にも倒れそうになっていた。
舞が、そんな茂子を支えて、ソファに一緒に坐り、茂子の手を握った。
「大丈夫よ。
 絶対に佳奈ちゃんは、無事に帰ってくるから。」
茂子は、黙って頷き、舞の手を握り返した。
茂子は、佳奈がいなくなってから、食も細くなり、不眠症にもなっていたので、今にも倒れそうになっていた。
「茂子、しっかりしなさいよ。
 佳奈ちゃんが戻ってきたら、茂子がしっかり抱きしめてあげなきゃいけないんだからね。」
「そうよね、そう。
 しっかりしなくちゃ。」
状況は良くないとわかっていたが、手がかりもなく、悶々としているより、居場所が分かり、茂子の顔に少し生気が戻ってきていた。
少しして、一樹が戻ってきた。
「警察は、なんて言ってました?」
「うん、住所を言ったら、ちょっと待ってくれということで、折り返し、電話をくれることになった。」
「えっ?
なんで、すぐに助けに行かないの?」
「どうも、治外法権の場所らしい…。」
一樹は、暗い顔をして言った。
しばらくして、警察から電話が一樹に逢った。
電話を置いた後、一樹は茂子たちに話の内容を伝えた。
佳奈が監禁されている屋敷は、国交が結ばれていない国の要人の屋敷で、一種の治外法権となっており、警察も踏み込めないところということだった。
その屋敷を捜索するには、まず、両国間で話し合いを行い、相手の了承を得ないと行動に起こせないということで、これからその交渉に入ったとしても、結果が出るまで1カ月はかかるということだった。
「でも、そんなに待ったら、弱ってる佳奈が危ないんでしょ?
 その電話の人が言うには、持ってあと少しなんでしょ。」
「そうなんだが、非常にきな臭い国の要人で、日本で何をしているか掴めていないそうだ。
 また、両国に非常に影響力がある人物の屋敷で、迂闊なことはできないらしい。
 本当に佳奈が監禁されている証拠があれば別らしいんだが。」
「そんなことしてたら、佳奈はどうなってしまうの?」
茂子は、また、取り乱しながら、一樹に食って掛かった。
「そんなことは、わかってる…。」
「佳奈…。」
茂子はやっと手がかりが出来たのに何もできず、弱っていく佳奈のことを思い描きながら涙を流し崩れ落ちた。
舞が茂子の肩を抱きしめて、「だいじょうぶだから」と何度も言って落ち着かせようとしていた。
一樹は、そんな茂子を見ながら、じっと考え事をしていた。
そして、決心したかのように、春彦に向かって話しはじめた。
「春彦君、その電話の人の提案の通り、一緒に行ってくれないか。」
春彦は、力強く頷いた。
「立花さん、大事な春彦君を危ない目に合わせるかもしれないが、お願いです。
 せめて、私を屋敷に入れさせてください。
 春彦君には、そこまでで構いません。
 そのあとは、私が何とか佳奈を助け出し、警察に言いますので。」
舞は、顔を横に振った。
「一樹さん、その電話の人の話だと、危ない人が大勢いるらしいわ。
 それに、屋敷の持ち主の情報からも、それは嘘じゃないと思います。
 ですので、春彦を一緒に連れて行ってください。
 春彦は、これでも力もあるし、一樹さんよりは使えると思いますよ。
 それに、何よりも、佳奈ちゃんを早く助けなくちゃ。」
「立花さん…。
 すまない。」
一樹は、自分の非力さがわかっていて、舞に深くお辞儀をした。
「春、わかってるね。」
舞が春彦に向かって言った。
「最初から、そのつもりだよ。」
春彦は気負うことなく、さらりと言い放った。
「春彦君…。」
一樹は、声を詰まらせながら、春彦の手を握っていった。
春彦は頷き、一樹に話しかけた。
「ちょっと、これから、明日の段取りをしますから、ちょっと、失礼します。」
そっと、一樹の手をほどいて、携帯を出しながらリビングを出ていった。
「茂子、一樹さん、大丈夫よ。
 ああ見えても、私とあいつの子供だから。」
茂子と一樹は、その言葉を聞いて頷くだけだった。
ドアを出て、春彦は電話をかけていた。
「もしもし、立花だけど。」
「おお、春か。
 何かあったのか?こんな時間に。」
電話の相手の男の声が答えた。
「ああ、実は頼みがあるんだけど。」
「えっ?
 なんだ?」
相手の男は訝しがるように答えた。
「悪いんだけど、力を返してくれないか。」
「…。」
一瞬電話先の男は黙ったが、すぐに返事を返した。
「それは構わない。
が、何かやばそうだな。
菅井絡みか。
何があったのか話してくれ。」
春彦は、要点を電話の相手に伝えた。
電話の相手は福山俊介といって、春彦の中学時代からの友人だった。
「話しは、わかった。
 手を貸す。
 あと、おやじに言って、使えそうなやつを連れていく。
 だけど、俺と同じくらいの奴は、2人くらいしかいない。
 まあ、お前と俺なら、大抵何とかなると思うが。」
「すまんな、危ないことに顔を突っ込ませて。」
「何言ってんだが。
 じゃあ、明日、お前に家に行って、段取りを確認させてくれ。」
「頼むな。」
「おお。」
そのやり取りの後、春彦は電話を切って、茂子たちのいるリビングに戻った。
「いま、明日の段取りをつけてきました。
 私の友人の中で、一番、信頼がおけて、腕が立つ友人に協力してもらいます。」
一樹は、心配そうに言った。
「でも、その友人まで、危ない目に合わせて、大丈夫なのか?」
「それは、ご心配なく。
 そういうことは、こちらに任せてください。
 それよりも、明日の段取りを決めないとですね。
 電話の主の話しだと、明日の17時ということで、明日、午前中に、相談して決めましょう。
 なので、残念ですが今日はやることがないので、明日に備えて休みましょう。」
春彦は、冷静に言った。
その冷静さが、そこにいる全員に伝染したのか、皆、落ち着きを取り戻し、頷いた。
そのあと、春彦と舞は、家に戻るべく、茂子たちの家を後にした。

次の日の夕方、春彦の運転する車には、一樹と茂子が乗っていた。
舞は、自宅で連絡係で待機だった。
最初は一緒に行くと言い張ったが、春彦に説得させられていた。
「何でよ、何で私も行くって。」
「だめだ。
 もし、俺達から連絡が途切れたら、すぐに、警察に通報してもらわなくちゃいけないんだし。
 助け出した佳奈を連れていく病院の手配とか、母さんじゃなければ出来ないことばかりだから。」
春彦は、おどおどしている茂子は眼中になかった。
また、一樹は一緒に屋敷に入るので連絡が取れ、冷静に物事を判断できる舞を頼りにしていた

「じゃあ、ちょっと行ってくる。」
これから佳奈の救出に困難が待ち受けているのに、春彦はいつものように家を出ようとしていた。
「……」
「えっ?
ああ、そうね。」
春彦を送り出そうとした舞は、急に何かを思い出したように言った。
「ちょっと、お待ちなさい。」
舞は、そういって春彦に近づき、春彦の頭を両腕で挟み込むようにして、自分の胸に春彦を抱きしめた。
春彦は、母親に抱かれるのは幼稚園児依頼で懐かしく思え、抵抗しなかった。
舞は、そんな春彦の耳元にささやいた。
「春彦、今一度、お前を解放します。
気を付けていってきなさい。」
春彦は、にこりと笑って小さく「了解」と言って、舞から離れ、玄関の外に出ていった。
「これでいいのかしら?
 悠美、これは何の呪文なの?」
空を見ながら舞は呟いた。
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