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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
事件から5日目の土曜日に、再び、臨時PTA総会が体育館で開かれた。
満子としては、徹底的に春彦を悪者にして、怪我をした加害者たちを正当化するのと、校長の責任を糾弾し、正義のヒロインを演じようとしていた。
そのため、ワザとマスコミに情報を流したので、学校の前にはマスコミ関係者が集まっていた。
佳奈たち学生たちも、後ろの方で立ち聞きしていた。
総会では、春彦の取り調べの状況について、まだ春彦の自供が取れていないと警察を非難し始めた。
佳奈は、真っ赤な顔をして歯を食いしばっていた。
隣の京子と慶子が佳奈の手を握り締めていなければ、きっと大声で騒ぎ始めたところだった。
「佳奈、全部噓だから、私達もそう思っているから我慢して。」
「絶対に、立花君の無実が証明されるから。」
「朝比奈先生も、そう言っていたじゃない。」
実は、朝日奈から佳奈たちに総会を後ろの方で静かに聞くように、決して大声や騒ぎを起こさないようにと念を押されていた。
「だけど……。」
満子の話は、当然、全てが作り話で、徹底的に春彦を悪人に仕立て上げ、それを野放しにしたと校長の責任に話を向けた。
「ちょっと、待ってください。
 先程、立花の退学が正式に決まりました。」
校長は額の汗を拭きながら説明すると、講堂内の父兄からざわざわと話し声がはじまった。
「え?
 退学?」
佳奈は、驚き、怒りを忘れていた。
「退学?
 ふざけんな!!」
後ろで、我慢していた俊介や、詩音たちが、我慢できずに騒ぎ始めた。
「何だね、君たち、静かにしなさい。」
「なんだあ、こらー!
 静かにしろだと、静かにすんのはてめーらのほうだろー!」
今度は、俊介が大声で怒鳴った。
「今、大声で騒いだ学生は、この場から出て行きなさい!」
「何でよ。
 何も悪いことしていない立花を、なんで退学にさせるの!」
「いい加減にしなさい。
 これ以上騒ぐと、生徒は、ここから全員出て行ってもらいます。」
「……。」
退出されられると、話が全部聞けなくなるので、皆、渋々、静かになった。

満子は、そのやりとりを見ながら、さらに、煽るように得意万遍な顔で話し始めた。
「退学なんて、当たり前です。
 むしろ、遅いくらいですよ。」
そして、饒舌に拍車がかかり、詩音たちが詰め寄ろうとした矢先、満子の関係者と思われる人間が、壇上に上がり、怪訝そうな顔の満子に近寄り、なにやら深刻そうな顔で耳打ちをした。
満子は、その話を聞くや否や、捻じ曲がるような顔をして、慌てて壇上を降り、その耳打ちした人物とともに講堂を後にした。

残された父兄や教師は、何事かとざわつき始めた。
詩音たちも、何が起こったのかわからず、拍子抜けに立ちすくんでいた。
「皆さん、お静かに。」
いつしか壇上に朝比奈が上がり、マイクに向かって話し始めていた。
「たった今、そこにいる刑事さんから、この件について話がありました。
 校長先生、急なことで済みません。
 少し、マイクをお借りします。」
朝日奈が目線で刑事の小山の方を指示した。
皆が、小山の方に注目したが、すぐに朝比奈が話し始め、皆、改めて壇上にいる朝比奈に注目した。
校長や教頭も、何事かと、ただただ、黙って話を聞き始めた。
話の内容は、春彦への被害届が取り消されたこと。
そして、その理由は、恐ろしいものだった。
前日、自分が襲われた時のビデオテープを木乃美が小山に持ち込んだことから事態は急変していた。
当初、木乃美が襲われた時のビデオテープは見つからなかったのだが、実は、ビデオ係の学生がビデオ本体を春彦に投げつけ、壊れた拍子に中からテープが飛び出し、偶然、木乃美のスカートのポケットに入り込み、気が付かなかった木乃美の母親がそのまま、クリーニングに出していた。
そして、前日にスカートと一緒にテープがクリーニング店から戻ってきたのだった。
木乃美は、そのテープが自分を襲った時のテープであることを確信し、小山のところに持ち込み、警察で、中を再生すると、木乃美や佳奈の言った通りのことが画像と音声で確認できた。
しかも、撮影者は几帳面な学生で、ビデオの背表紙に大きく番号が書かれていた。
これで、余罪があるものと、警察は一気に撮影者の学生の自宅を家宅捜索に踏み切った。
その頃、学校では俊介が春彦の件で怒りが抑えられず、つい、撮影者の学生のロッカーを思いっきり叩き、その拍子でロッカーが半開きとなり、中から背表紙に丸数字の書かれたビデオテープが3本、零れ落ちた。ロッカーの壊れる音を聞いて通りがかった教師の熊野が俊介を叱っていたが、落ちているビデオテープを見つけ、職員室に持ち帰り再生したところ、1本ごとに、問題の男子学生5人が今年に入り転校していった5人のうち3人の女子学生を暴行しているところが録画されていた。
そこには、木乃美の時と同じように、怯える女子学生を用具室に連れ込み、泣き叫ぶ口をふさいで、男子学生5人が次々と女子学生を弄びながら、残忍な笑顔を向けている姿がハッキリと録画されていて、怒りを覚えるものばかりだった。
そして、最も驚かされたのは、暴行を記録したビデオを見ながら、万遍の笑みを受かべている華子の姿が隠し撮りされていた。
撮影した学生は、裏切られた時の保険として、こっそり取っていたものだった。
ビデオの中の華子は、泣きさけぶ同級生のビデオを見ながら高笑いしていた。
「あははは、ざまあないわね。
 ちょっと頭が良くて、可愛くたって、所詮はこんなもんよ。」
「でもさ、華子さん、こんなことしてやばくない?」
「何言ってんのよ、あんたたちだって、楽しんでるでしょ?」
「だけどさ、ばれたらどうすんだよ。」
「大丈夫よ。
 ビデオ撮ってるって脅せば、何にも言ってこないわよ。
 現にみんな、学校止めてだまってるじゃない。
 何かあっても、うちのジジイとババアに言えば大丈夫よ。
 いろんなコネがあるし、お金もあるし、ね。
 ほら、市議会のxxとか、警察署のxxも、うちのジジィのいいなりだもんね。
 あはははは。」
慌てた熊野は、朝日奈に相談し、朝日奈もテープの中身を確認し、急いで刑事の小山に連絡しテープを渡した。
小山達、刑事はそれを確認し、入院中の5人の中で話の出来る生徒にテープの一部を写真で見せ、尋問したところ、男子学生5人で相次いで女子生徒たちを暴行したことを認めた。
また、その5人に指示を出していたのも、ビデオに写っている通り、満子の娘の麗子だと供述したため、麗子を任意同行したところ、麗子があっさりと認めたというものだった。
麗子も、まさか自分のことがビデオに撮られているとは思ってもいなかったので、警察でビデオを見せられた時、力なく頷くだけだった。
榎元夫妻が弁護士を引き連れて警察に駆け付けた時は、すでに、麗子が自白した後で、春彦への被害届から、麗子を含めた6人に対して連続婦女暴行事件の加害者と捜査方針が変わっていた。
後日、警察から関係者に説明された話では、首謀者の麗子は受験勉強でイライラし、5人をそそのかして、自分より容姿端麗で頭の良い女子学生を暴行させ、その泣き叫ぶ姿をビデオで見て、発散させていたそうだった。
加害者の5人も親がPTA会長で大きな顔をして命令してくる麗子に、初めは難色を示していたが、進学に便宜を図る様に親に行っておくとか、この話を聞いたからには断ったら退学にしするとか、飴と鞭で逆らえずに手を貸したのだが、すぐに楽しくなり率先して引き受けるようになった。
そして、ビデオでその場面を撮影し、それで脅すことで被害者たちは泣き寝入りし、学校をやめていたので尚更、増長していったとのことだった。
その襲われた女学生の中の一人が、気丈にも被害届を提出したが、他の女学生は一日の早く事件を忘れたいということで、被害届は出さなかった。
しかし、事件が事件なので被害届なしでも立件に向け検察が動いていた。

木乃美が襲われ、春彦の無実が立証され、犯人たちが検挙されるまで、わずか1週間だったが、佳奈たちには激動の1週間だった。
なぜ木乃美を襲ったかは、別のクラスの会沢という女学生と間違えたということだった。
実行犯の学生は皆全治2~3か月の重傷で、それよりも、心に大きなダメージを受け、意識がハッキリしてからも、反省以上に常に何かに怯えて、まともな精神状態に戻らないのではと医師から告げられていた。
榎元夫妻は、満子が呼んだマスコミは、事件の被害者加害者が未成年であることから、取材を控えたが、一方、金三の贈賄、脱税、受け取った権力者の収賄などが明るみに出て、そちらの方を、徹底的に電波に乗せた。
そのため、金三の事業も傾き、立ち上がれないくらいのダメージを被っていた。

「はるの無実が証明されたから、はるの退学は取り消しですよね。」
佳奈は、嬉しそうに朝比奈に話しかけた。
「そうね…。」
朝日奈は、こまった顔をして、口籠った。
「先生?」
「うん、実はね、ここに来る前に、立花さんのお宅に刑事さんと寄ったの。
そうしたら、立花君のお母さんが、痣だらけで出てこられたの。」
「え?」
佳奈は、何のことかわからなかった。
「昨晩ね、立花君、発作を起こして家で暴れたんだって…。」
朝日奈は、舞から聞いた話を茂子、佳奈、木乃美に手短に話した。
話の内容は、こうだった。
春彦は、事件当日から実は一睡もできておらず、そんな極限状態からか、ついに昨晩、急に声にならない声を発し、自虐行為に及んだそうで、舞は、何をするかわからない春彦を、ともかく、身体を張って、春彦と揉み合い、押さえつけたそうだった。
普通なら、学生と言えども舞よりも背丈が大きく、舞の力では押さえつけることなど出来るはずがないのだが、それ以上に、春彦は憔悴していて、何とか押さえつけることが「できた」そうだった。
それから、救急車でかかりつけの病院に搬送し、今なお、意識不明の状態とのことだった。
「はる…。」
佳奈は、手で口を押えながら、涙をこぼしていた。
「そんな、なんではるが、そんなに苦しんでいたなんて。」
「…。」
木乃美もうつむいて唇を嚙みしめていた。
「それで、何でも、最近ずっと学校を辞めるっていってたそうよ。
 だから、ひょっとしたら、学校を辞めてしまうかも…。」
朝日奈の横で話を聞いていた小山は何にも言わなかった。
「そんな…。」
佳奈と木乃美は、絶句していた。

春彦は、その日のうちに病院のベッドの上で目を覚ましたが、あからさまに精神状態が不安定で、それからは舞以外は面会できない状態が続き、佳奈や木乃美も会うことが出来なかった。
そして1週間がたったころ、佳奈と木乃美は朝比奈に呼ばれた。
「立花君、学校を辞めるそうよ……。」
「え?
 なんで、どうして?」
佳奈は、驚いて朝比奈に食って掛かった。
「私も、辞める必要はないっていったの。
 でも、……。」
朝日奈は、佳奈の顔を見て続けた。
「立花君の心が、どうも、壊れてしまったみたいなの。
 立花君のお母さんが、お医者さんとも相談し、一旦、立花君を違う場所で心の傷を治させたいっていったの。」
「でも、辞めることないじゃないですか。
 治ったら、また、学校に出てくれば。」
木乃美がそう言うと、朝日奈は首を左右に振った。
「お医者さんの話では、良くなったとしても、いろいろなことがあった学校に登校し、また、何が引き金になるかわからないそうよ。」
「え?」
「それに、事件の結末を立花君に説明しても、学校を辞めたいって。」
朝日奈はどこまで佳奈と木乃美に話していいのか考え、ここで話を切った。
「そ、そんな……。」
(みんなで、悪者扱いにするから。
 私が、はるの秘密にしていたことを知っていたから……)
いろいろな思いがこみ上げてきて、佳奈の眼から涙があふれ出てきた。
「佳奈、しっかりして。
まだ、本人と話していないじゃない。」
木乃美の一言に、佳奈は顔を上げ頷いた。
「そうよね。
 私、はるにあって、ともかく謝って、学校を辞めないでって頼んでくる。」
「そうよ、私も行くわ。」
そう言って、佳奈たちは立ち上がっろうとしたが、次の朝比奈の一言で、また、座り込んだ。
「立花君、面会謝絶よ…。」
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