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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
小山が佳奈と木乃美から話を聞きいたあとも、事態はどんどんと悪い方向に進んでいった。
そのひとつとして、春彦の大学推薦も白紙になっていた。
それもPTAの榎元が手を回し、知り合いの大学関係者に事件のことを密告し、全て春彦が悪く、推薦を取り消すように強く申し入れたためだった。
もうひとつは、臨時PTA総会が開催され、やはり榎元が徹底的に春彦を悪者として、学校側に退学処分とするように詰め寄っていた。
当然、舞や、佳奈と木乃美の両親も出席し、反論したが、すでに春彦が暴力を好むとんでもない不良で今までに数限りなく暴力事件を犯しているといったデマが大手振って出回っていたのと、満子が被害者気取りで、涙まで流す演出の入ったうまい演説で多勢に無勢となっていた。
そして、事件の話は、徐々に学校の外に漏れ始めていた。

満子の娘の麗子は、相変らず学校のあちらこちらで、噂話を面白そうに話していた。
「お母さんが言ってたけど、立花ってお父さん、いないんだって。
なんだか、事業に失敗して、事件を起こして自殺したんだって。
親が親だから、あんな子供になったんだって。」
偶然、その場に通りがかった佳奈は、烈火のごとく、華子に食って掛かった。
「なんですって!!
 はるのこと、何も知らないで。
 はるのお父さんのことも、何も知らないで。
 はるのお父さん、優しくてすごくいい人だったのよ。
 それに、はるが小学生の時に、病気で亡くなったのよ。
 どうして、そんなひどいことが言えるの?
 それに、はるは、お父さんがいなくても、他の人よりずっと、ずっとしっかりしてるわよ。」
佳奈は、春彦の父親の優しい笑顔を憶えていた。
春彦の家に遊びに行くと、いつも元気で笑顔で佳奈を迎えてくれたこと。
面白い話を聞けせてくれて、春繁を真ん中に舞と春彦と笑いが絶えなかったことを。
涙を流しながらいまにも麗子に掴みかかろうとする佳奈を京子と慶子が必死になって抑えていた。
「佳奈、だめ。
 おちついて。」
そう言いながら、慶子は華子を睨みつけていた。
「ちょっと、華子。
 何の根拠があって、そんなこと言うの?
 あんた、立花のお父さんのこと知らないんでしょ!」
京子が、佳奈に変わって華子に怒鳴りつけた。
「そんなの、知らないわよ。
 私は、ママに聞いただけなんだから。」
華子は、精一杯強がって言ったが、3人の剣幕に恐れをなしたように、取り巻きを連れて、その場を逃げるように立ち去った。

「でも、私、立花君のお父さんが亡くなっていたなんて知らなかったわ。」
慶子は華子たちがいなくなってからぼそっと言った。
その一言に、佳奈はキッとした目つきで慶子を睨みつけた。
「慶子まで、そんなこと言うの!
 お父さんがいなくたって」
慌てて慶子は、佳奈の言葉を遮った。
「違うわよ。
 変な意味じゃなくて、ただ、中学から今まで知らなかったなって。
 確か、海外に仕事の関係でいるって言ってたんじゃなかったけ。
 佳奈は、立花君から聞いていたの?」
「う……。」
佳奈は、言葉に詰まってしまった。
「まあ、いいじゃない。
 本人、言いたくなかったんでしょうから。」
京子が助け船を出すように割って入った。
佳奈は、本人から聞いたわけではなく、母の茂子から聞いて知っていた。
それに、春彦の気持ちを誰よりも良く理解していた。
あんなに仲の良かったのに、春繁が亡くなって、どれだけ春彦が悲しかったのか。
きっと、自分の口から春繁が亡くなっていることを言いたくなかったんだろうと。
その父子の関係が、土足で踏みにじられていく気がして、佳奈はやり切れなかった。


「まあ、佳奈ちゃんが、そんなことを…。」
その晩、舞は茂子からの電話で昼間の佳奈と華子のやり取りについて聞いていた。
電話が終わったのを見計らうように、春彦が居間に水を飲みに入ってきた。
「あ、春彦?
 今ね、茂子から電話あったの。」
そういって、佳奈が春彦の父親の春繁の名誉を守るため、噂を流している人間と戦ってくれたと説明をした。

「そっか、佳奈は知っていたんだ。
 俺の親父が海外じゃなくて、もう死んでいるって。」
春彦はぼそっと小声で、そう言うと部屋に戻っていった。
「え?
あんた、まさか、佳奈ちゃんにも言ってなかったの?」
舞は、あ然とした。
春彦は、春繫が亡くなってから、周りに気を遣わせないようにと、父親のことを聞かれると、『春繁は会社の関係で一人海外にいる』と答えていた。
舞は、そのことを耳にし、本当のことを言った方が良いのではと思ったが、大好きだった父親を亡くした春彦の精神的なショックと、特に自分から率先して言うのではなく、友達に聞かれたら、仕方なく答えるくらいで、当然、教師たちは本当のことを知っていたので、そのままにしていた。
それが、今になって、パンドラの箱を開けてしまったようで、驚きよりも恐怖心を感じていた。

佳奈の家では、電話の終わった茂子がテーブルでお茶を飲んでいた。
「お母さん、電話だったの?」
そこに、佳奈が何気なく入ってきた。
「うん、今ね、舞と話していたのよ。」
「え?」
佳奈は、一瞬、胸騒ぎを感じた。
「今日、佳奈が一生懸命、春繁さんのことを庇ったって舞に言ったら、舞、喜んでいたのよ…。」
茂子が、なおも電話の話をしていたが、佳奈は、凍り付いていた。
(私が、はるのお父さんのことを知っていたことを、はるに知られた。
 お父さんが亡くなっていることを知っていたことを、はるに知られた。
 どうしよう…。)
佳奈は、頭の中が真っ白になった。
(いつも、はるに話を合わせ、お父さん、早く帰って来るといいね、なんて言ってたのに)
そして、事態が最悪の方向に向かっている気がしていた。

「春彦?」
その夜、舞は、春彦の部屋のドアを叩いた。
「起きてる?
 入っていい?」
「ああ」
春彦の返事がかすかに聞こえ、舞はドアを開けた。
その途端、冷たい風が舞を肌を刺した。
秋深い季節だが、夜はめっきりと冷えてきていた。
見ると、春彦の部屋も窓が全開になっていた。
春彦は、机の椅子に気だるそうに寄りかかり、覇気のない顔で座っていた。
「ちょっと、風邪ひいちゃうわよ。
 窓、閉めるね。」
そう言って、舞は春彦に背中を向け窓を閉めていた。
その後ろから、いきなり、春彦が言葉を投げかけた。
「ねえ、母さん。
 学校、辞めていいかな。」
「え?
 あんた、何言ってるの?」
舞は、キッとした顔を向けた。
「あんたは悪いことしていないじゃない。
 それが学校をやめるってことは、負けたってこと?」
「そんなこと、どうでもいいよ。
なんか、かったるくなっちゃってさ。
 どっか違う、誰もいないところに行きたくなっちゃった。」
酷くだるそうに言う春彦の顔は蝋人形のようだった。
舞は、春繁の話をしようと来たのだが、春彦の顔を見て辞めることにした。
「あんた、いろいろあって、疲れてるのよ。
早く寝て、すっきりした頭で、考え直しなさい。」
「そっかなぁ。
 じゃあ、そうするよ…。」
春彦は、椅子から降り、振らり振らりしながらベットに突っ伏した。
「ちょっと、ちゃんと布団に入って。」
舞はそう言いながら、春彦に布団をかけたやった。
「何か話したいことがあったら、私を起こしなさいね。
 お母さんは、あんたの味方だからね。」
春彦から返事がなかった。
(寝ちゃったのかな)
そう思い、舞は、部屋の電気を消し、そーっと部屋を出て行った。
春彦は、瞬きせずに、じっと壁を見つめていた。


それから、春彦は日増しに無気力でだるそうにしていて、舞をやきもきさせていた。
「舞さん、はるに会えますか?」
あれから、何度か、佳奈は春彦に会いに来たが、春彦に頑なに拒否されていた。
「ごめんね、佳奈ちゃん。
 春彦、ちょっとおかしいのよ。
 それに、誰とも会いたくないんだって。
 ごめんね。」
佳奈も、春彦の心中を察してしたので、無理に会おうとはしなかった。
「わかりました。
 また来ます。」
「ごめんね。」
ううんと佳奈は、かぶりを振った。
「はる、また来るからね!」
佳奈は、春彦の部屋に向かって聞こえるような声で言った。
(顔を見て話せれば、怒っていたら謝ることが出来るのに…。
 会えないと何もできない…。)
佳奈は、肩を落として春彦の家を後にした。

佳奈が帰った後、春彦は部屋から無言で出てきた。
「ねえ、佳奈ちゃん、すごく心配していたよ。
 何か、やつれたみたいだったわ。」
佳奈は春彦に知られてから、思い悩み、食欲もなく、ろくに睡眠もとれておらず、やつれていた。
しかし、春彦もほとんど寝ていないのを舞は知らなかった。
そして、頬がげっそりとして、顔色も土器色になっていた。
春彦は、無表情で、力のない声を出した。
「母さん、もう、いいだろ。
 学校辞める話。」
「また、それかい。
 せめて、高校くらい出ておかないと、どうするの?」
「世の中、中卒で働いて立派になっている奴いるよ。」
「でもさ、なんで学校辞めたいの?
 やっぱり、ここで辞めたら負けじゃない?」
「勝ち負けの問題じゃなくて、だるいし、誰の顔も見たくないんだよ。」
吐き捨てるように言って、春彦はゆっくり立ち上がり部屋に戻っていった。
「……。」
ここのところ、こういうやり取りがずっと続いていて、舞も困り果てていた。
「あの人がいたら、何ていうだろう……。」
舞は、ため息をついてうつむいた。
「仕方ないか……。」
そう言うと、舞はあちらこちらに電話をし始めた。
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