プロフィール

梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


最新記事


最新コメント


月別アーカイブ


カテゴリ


メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


訪問していただいた方々


よろしくお願いします。


DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
その頃、事件のあった翌日、学校では、PTAの会長の榎元満子が学校に乗り込んできていた。
満子の亭主の金三は、この付近では知られた娯楽施設を運営している会社の社長で、金回りも良く、裕福な家庭だった。
満子は、その資産に物を言わせ、学校に通っている一人娘のために、学校のPTA、更には一部の教師までも懐柔していた、俗に言う『サル山のボス』的存在だった
「ちょっと、校長先生、あの立花って生徒の処分は、どうするんですか?
 まさか、このままじゃないですよね。
 警察にも事情聴取されているっていうじゃないですか。
 少年院送りも確定みたいですよ。
 前代未聞の不祥事じゃないですか。
責任問題ですよ。」
木乃美を襲った5人の親は、俗に言う満子の取り巻きで、今回の件で被害届を出させたのも満子の差し金だった。
事件は、その日のうちに満子に取り入っていた教師から情報が入っていた。
当初は、木乃美を襲ったということで5人の親は、どう対処していいか考えあぐねていた。
しかし、満子は自分の取り巻きが婦女暴行未遂で病院に入院していると周りに知れると、自分の権威に傷がつくので、証拠もないんだし、単なる悪ふざけをしようとしたところ、春彦から無抵抗で暴行を受け、大怪我して入院したということで通すように言われ、かつ、被害届を出すように命令され、皆、言われた通りにしていた。
「まあまあ、榎元会長。
警察の方から、話があってから処分を考えるということでもいいんじゃないですか。」
校長は、大ごとにしたくないので、及び腰だった。
「何言っているんですか。
 善良な生徒が5人も大怪我させられたんですよ。
 これから大学受験も控えていて、下手したら人生を棒に振るかもしれないんですよ。
 さっさと、臨時集会を開いて、処分の発表と相手の両親の謝罪、
あっ、あの子の家庭は片親でしたっけ。」
満子は、どこで調べたのか春彦の父親が亡くなっているのを知っていた。
「まあ、そんなのどうでもいいわ。
学校として今後こういうことのないようにと、対応の説明をしてくださいな。
 早く動いてくれないと、今後に響きますよ。」
校長も榎元金三から多額の寄付金を受取っていたのと、陰でいろいろと便宜を図った貰っていることがあり、無下には出来ない立場だった。
「そうですが、しかし……。」
「ああ、どんくさいわね。
 うちの人に言って、緊急のPTA総会を招集しますから、準備しておいてくださいな。」
「……。」
満子はそう言うと、さっさと校長室から出て行った。
その日のうちに、学校から舞のところに事件が片付くまで春彦に出席停止を告げる電話があった。

その頃、生徒たちの方では、満子の娘で高校3年生の華子が、春彦が何もしていない5人に暴力を振るい、病院送りし、警察の取り調べを受けていることを誇張しながら、言いふらしていた。
その話は、尾ひれがつき、高校1年の時の『五商』との一件も実は春彦が糸を引いていたとか、怪我をした5人からお金をせびろうとして断られたので、その腹いせに暴力を振るったとか、あげくの果ては、実は春彦が木乃美を強姦しようとして、それを5人に止められ腹いせに暴力を振るったとか、さまざまな憶測が、あちらこちらで話されていた。

「いったい何のこと?」
その話は、当然、佳奈の耳にも入り、佳奈はそれで始めて春彦がたいへんな窮地に追い込まれていることを知った。
それまで、春彦が学校を休んでいるのは風邪をひいているからで、見舞に行こうと考えていた矢先のことだった。
木乃美も、あの事件以来、学校を休んでいて、木乃美については本人から1週間ばかり気晴らしするからと聞いていたので心配していなかったが。
「ちょっと、佳奈。
 大変よ!」
やはり噂を聞いた京子が佳奈のところに飛んできた。
「立花の話、知ってる?」
「ええ、今、噂で聞いたんだけど。」
「それが、噂じゃないんだって。
 半分、デマかもしれないけど、この前、男子学生が5人、大怪我して救急車で運ばれたって。
 その怪我を負わせた犯人が立花で、警察で連日取り調べを受けているんだって!」
京子は、興奮しながら加奈に話した。
「え?
 だって、あれは木乃美にいたずらしようとした奴らを春彦がやっつけただけよ。
 悪いのは、あいつらだって!」
「え?
 じゃあ、木乃美が悪戯されそうになったのは、デマじゃないのね。
立花が怪我を負わせたっていうのは、本当なんだ。」
「何言ってるの。
 はるが、やってくれなかったら、たいへんなことになっていたんだから。」
「なんかね、その連中、ちょっと悪ふざけで木乃美を脅かそうとしただけなのに、春彦が入って来て暴力を振るわれたって。
 悪ふざけだって説明しようとして、無抵抗で春彦に襲われたから、あんなに大怪我になったんだって。」
「悪ふざけ?」
佳奈の眼が一気に吊り上がった。
「どこが、悪ふざけなもんですか。
 あいつら、佳奈を本気でひどい目にあわせようとしたのよ。
 ちょっと、先生のところに行ってくる。」
そう言って、佳奈は足早に職員室に向かった。
しばらくして、職員室から戻った佳奈は泣きそうな顔をしていた。
「佳奈?」
教室では、心配した京子と慶子が佳奈の戻ってくるのを待っていた。
「京子の言った通りのことを言われたわ。
 熊野先生や朝比奈先生はいなくて、学年主任の先生に聞いたら、はるがいけないって。
いったい、なんで、はるなの。
 春彦は、何も悪いことしていないのに。
 木乃美を助けただけなのに。
 はるがいなかったら、今頃、木乃美は…。」
佳奈は、悔し涙を流しながら、握っている拳に力を込めた。
「佳奈、落ち着いて。
 私達は、皆、春彦の味方だよ。
 あいつが、佳奈がいるのに、そんなことするわけないじゃない。」
京子は、そう言いながら佳奈の肩を抱いて慰めていた。
「そうよ、絶対に間違いなんだから。」
慶子も、心配そうな顔で佳奈の顔を覗き込んでいた。
「間違いも何も。
 その場に、私もいたんだから。
 木乃美が、いたずらされそうになっていたところを、はるが助けたんだから。」
それを聴いて慶子は、ビックリした顔をした。
「佳奈、その場にいたんだ。
 じゃあ、100パーセント間違いないわね。」
「当たり前よ!
 それなのに、何で警察なの。
 なんで、あんな言われ方されなきゃいけないの?
 五商との時も、あんなに怪我して、皆を守ったのに。」
そう言って佳奈はその場に泣き崩れた。

佳奈は、その日の帰りに春彦の家に寄ったが、玄関のチャイムを押しても誰も出てこなかった。
家に帰り、茂子にそのことを話すと、茂子にもPTAからと連絡があったことを知った。
話の内容は、佳奈が学校で聞いたのと、ほぼ一致していた。
少し違うのは、春彦が木乃美に片思いしていて、それで、悪ふざけだと哀願している無抵抗の学生を次々、襲ったということと、木乃美は幼馴染の春彦を庇っていると、見事に作られた内容だった。
当然、茂子もそんな話は真に受けていなかった。
特に、佳奈からその日のうちに話を聞いて、かつ、木乃美の母親とも連絡を取っていたからだった。
そのPTAの関係者と名乗る女性は、電話途中で、茂子が反論すると、明らかに相手は不機嫌になり、途中で電話を切ったそうだった。
「いったい何の?
 何が起こっているの?」
「わからないわね。
 ただ一つ言えることは、舞と春彦君が大変なことに巻き込まれているって言うことだけ。」
舞と幼馴染の茂子は、渋い顔をしながら言った。
「はる…。」
佳奈も、春彦のことが心配で仕方なかった。

事件があって、数日後。
「佳奈、一体何が起きてるの!」
佳奈が春彦の窮地を知った翌日、血相を変えた顔をして木乃美が教室に飛び込んできた。
木乃美は、あれから、親の勧めもあって、気分転換にと学校をしばらく休んでいたが、春彦の噂を母親から聞いて、血相変えて学校に出てきたのだった。
「こ、木乃美~。」
木乃美の名前を呼びながら、佳奈は、今にも泣きそうな顔で木乃美に抱きついた。
佳奈は、春彦のことで思い詰めていて、木乃美の顔を見て少し気が緩んだ。
木乃美は、先に佳奈に抱きつかれ、まず佳奈をなだめることにした。
「佳奈、落ち着いて。
 一体何があったの。
 私が春彦を振ったって?
手籠めにされそうになったって?
 何なの一体。
訳の分かんない電話がママのところかかって来て、今度、臨時総会を開催するって言ってきたのよ。」
「そうなのよ。
 話が捻じ曲げられ、いつの間にか、悪の張本人になってるのよ。」
京子が厳しい顔をしながら言った。
「ちょっと、私、職員室に行ってくる。
 ちゃんと説明しなくっちゃ。」
「木乃美、大丈夫なの?」
気丈に振る舞う木乃美を見て、京子は心配そうな顔をして言った。
ただでさえ、木乃美が裸にされ、舐られ、犯されたという全くの作り話が、噂になっていたので、木乃美が出て行ったら、かえって好奇の視線で見られ、木乃美が傷付くのを案じていた。
現に木乃美の姿を見て、教室の中は少しざわつき始めていた。
佳奈も、興奮していたが、木乃美のことが心配だったので、首を横に振った。
「だけど、そうでもしないと春彦が…。」
そう言いかけ、木乃美の目にもいっぱい涙がたまってきていた。
「相沢さん、ちょっと。
 菅井さんたちも、ちょっと来なさい。」
気が付くと保健医の朝比奈が教室にはいって来て、佳奈たちに声をかけた。

「先生…。」
保健室で朝比奈は佳奈たちの顔を見て話し始めた。
「相沢さん、気持はわかるけど、前面に出ちゃダメよ。
 この状況で、皆の前で何か言うと逆効果になるから。」
朝比奈は、偶然、保健室の窓から血相を変えた顔をした木乃美が校舎に入っていくのを見かけ、慌てて教室に駆け付け、佳奈たちの話を聞いていた。
保健室は消毒薬の匂いが立ち込め、佳奈たちも頭に昇った血が少しおさまってきていた。
「だけど…。」
「いい、こんなにいろいろな噂が立っていたら、逆に、余計、立花君に不利になるような噂が立ちかねないから。」
「そんな…。」
佳奈も、二人の話を聞きながら唇を噛んでうつむいていた。
木乃美については、皆の前に立たないのが一番と思っていたが、では、どうしたら春彦の無実を説明できるのか答えのない問いで頭を悩ましていた。

「先生?」
急に男性の声が聞こえ、皆、一瞬びくっとした。
「あ、ごめんなさい。」
朝比奈は、カーテンの向こうから声がした方に向かって答えながら、カーテンを広げた。
カーテンの向こうには、大柄の男性がばつが悪そうに座っていた。
「急に、走って行って、如何したんですか?
それに、その生徒たちは?」
大柄の男性は朝比奈に問いかけた。
「すみません。
 この子たちが、先ほど話した当事者の子なんです。
 早まったことをしそうだったんで、連れてきちゃいました。」
そういうと、朝比奈は、佳奈たちに振り返った。
「この人、刑事さんで、今回の立花君の件で見えたのよ。」
「え?
 刑事さん。」
木乃美がそう言うと、横から佳奈が興奮した声で口を挟んだ。
「刑事さん、なんではるを連れて行ったんですか?
 はるは、犯人なんですか?
 何か悪いことしたんですか?
 何も、何も、していないじゃないですか……。」
いつしか佳奈の頬に涙が流れていたが、佳奈はお構いなしに、刑事と紹介された大柄の男性に食って掛かろうとした。
「ちょっと、菅井さん、落ち着いて。
 この刑事さん、ちゃんと調べてくれようとしているから。」
「小山です。
 この件を担当しています。
 私も彼から話を聞いて、何か辻褄が合っていない気がしています。
 ですので、話しづらいかもしれませんが、皆さんからお話を聞いてみたく、そこの先生にお願いしていたところです。」
佳奈と木乃美は、誠実そうな小山の人柄に警戒心緩め、うなずいた。
「相沢さん、大丈夫?」
朝日奈は心配顔で木乃美を見た。
木乃美は、力強く頷いた。
「じゃあ、刑事さんにあの時のことを話してあげられるかしら。
 私から、一応、あらましは説明していたんだけど……。」
「はい、大丈夫です。」
そう言って、木乃美と佳奈はお互いの手を握り合って、あの日のことを事細かに小山に話をした。
小山は、手帳に書き留めながら、途中、2、3質問をした。
そして、全部聞き終わると、手帳をしまい、佳奈と木乃美にお辞儀をした。
「状況は、良く判りました。
 彼の話と全く同じですね。」
佳奈と木乃美は黙って頷いた。
「よく、話しにくいことを話してくれました。
 私の方で、他にもいろいろ当たっています。」
「あの、刑事さん。」
「はい?」
「はるは、いったい……。」
『一体どうなるのか』と佳奈は聴きたかった。
「罪に問われるのかということかな?」
「でも、でも、はるは何も悪くないんですよ。」
また、佳奈の目に熱いものがこみ上げてきた。
「刑事さん。
 私、全部言いましたよ!」
木乃美も訴えるような目で小山を見た。
小山は、頭を掻きながら困った顔をして言った。
「相沢さんの話が本当だとしても、相沢さんは当事者で、しかも立花君とは幼馴染。
 話は、参考までで、確証がないのです。」
「そ、そんな…。」
「何か、その話の裏付けになるような物的証拠でもあれば、話は変わるのですが。」
「あっ、そう言えば、一人、ビデオを回していた。
 そのテープがあれば…。」
木乃美は、思い出して言ったが、小山は顔を横に振った。
「その話を聞いて、探したんですが、壊れたビデオはあったのですが、中は空っぽで。
 どこかに落ちていないかと捜したのですが、見つからないんです。」
「だって、あいつ、確か、『ちゃんと撮っているか』って言ってたわ。」
木乃美は、絶望的な顔をし、佳奈は、小山睨みつけた。
小山は、佳奈の視線に気づき、咳ばらいを一つした。
「わかっています。
 きちんと調べて、公正な判断をしますので、あなたたちは自分たちを信じて待っていてください。」
小山は、佳奈と木乃美の刺すような視線を受け、答えに窮していた。
スポンサーサイト
コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2018 混線次元(はるかな物語) all rights reserved.Powered by FC2ブログ