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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
佳奈は、家で着替えを済ませ、木乃美の家に向かっていた。
そして、途中、約束していたケーキ屋に立ち寄ったが、二人と別れてから、すでに1時間近く経っていた。
「きゃー、結局、すごく遅くなっちゃった。
 でも、まあ、はるがいるから大丈夫ね。
 木乃美は、ケーキ、好きだもんね。
 美味しいもの食べて、気分転換、気分転換。
 あと、春彦はケーキだったらチョコレートかダークチェリーだったわね。
 あとで、鯛焼きで倍返ししてもらおうっと。」
佳奈は、木乃美の一大事にギリギリで間に合ったことで、ほっとしていた。
「でも、あいつら、絶対に許せない。」
そう呟くと、ケーキ屋の店員が、恐る恐る声をかけてきた。
佳奈の顔は怒りで険しくなっていた。
普段は、おっとりして柔和な顔の佳奈だが、木乃美や春彦に何かあると、特に木乃美に何かあると昔から豹変した様に顔に出ていた。
「お客さま……、おつりです。」
その声に、佳奈ははっと我に返った。
「あっ、ごめんなさい。」
そういうと、いつもの柔和な顔に戻ったのか、声をかけた店員もほっとした様に笑顔になった。
佳奈は、自分の顔が怖かったんだろうと、何度も店員にお辞儀をして、店から飛び出した。
「ああ、恥かしい。
 でも、私の大事な木乃美がされたことを思いだすと、むかむかするわ。
 まあ、はるがしっかり天誅を下してくれたから、良しとするしかないわね。
 早くケーキを持って行って、元気づけなきゃ。」
そう思いながら佳奈は木乃美の家に急いだ。
木乃美の家に着くと、佳奈はインターフォンを押した。
「あっ、ちょっと待ってね。
 すぐに開けるから。」
木乃美の家のインターフォンは、来客の顔がインターフォン越しで確認できるタイプだったので、佳奈が名乗る前に、木乃美が返事をしていた。
少し待つと、木乃美がドアを開けて、佳奈を向かい入れた。
「佳奈、入って、入って。」
いつものように明るい木乃美の態度を見て佳奈は、ほっとした。
「ごめん、遅くなっちゃって。」
「いいのよ。
 きっとこの位かかるだろうと思っていたから。
 それに、今日は暇つぶしも居るから。」
「ふふふ。
 ほら、お土産買ってきたわよ。」
「わーい、ケーキね。
 嬉しい。」
佳奈は、ケーキの箱を木乃美の前に差し出した。
木乃美は、嬉しそうに受け取り、家の中に招き入れた。
木乃美は、スエットの上下を着ていて、髪からはシャンプーのいい香りがしていた。
(そうよね、早くシャワーを浴びて着替えたかったわよね。)
佳奈は、木乃美の気持ちを察した。
「ごめんね、今日は部屋が散らかってひどい状態なので、居間の方でね。
 それに、春彦がいるからね。」
木乃美は、そう言って佳奈をリビングに通した。
いつもは、多少散らかっていても木乃美の部屋に通されるのだが、春彦がいるということで、佳奈は何となく納得した。
リビングのソファには、春彦が座っていた。
「春彦、佳奈がケーキ買ってきてくれたよ。
あんたの分、あるかわからないけど。」
木乃美はふざけた口調で言った。
「大丈夫よ、ちゃんと買ってきたから。
 その代り、倍返しね。」
「はいはい…。」
春彦は、苦笑いしながら言った。
「佳奈、お腹空いてない?
 今、ピザの出前、頼んだの。
 佳奈、トマトやカレー好きだったでしょ。
 欲張りパックで、4種類の味が選べるのよ。」
「あ、それ知っている。
 ドミンゴピザでしょ。
 あそこのトマトピザ、好きなんだ。」
「だと思って、それも入れてあるわよ。」
「さすが、木乃美!」
佳奈と木乃美は、いつものように楽しそうにキャッキャッとはしゃいでいた。
春彦は、そんな二人を見て、何とか守ることが出来たと胸を撫でおろしていた。
「ねえ、はる。」
「うん?」
佳奈は、コートを脱ぎながら春彦の元に近づいてきた。
コートを脱ぐと、ほわんと甘い香りがしてきて、見ると佳奈は淡い明るい色のワンピースを着ていた。
佳奈は、少しでも明るい色で木乃美から嫌な思いを忘れさせようと考えていた。
「私が来るまで、木乃美と何してたの?」
春彦は、一瞬、狼狽えそうになったが、そんな態度は一切見せず切り出した。
「もっぱら、番犬替わりかな。
 ほら、木乃美がシャワーを浴びるっていうから、ここで、見張りをしていたんだよ。」
「えー、はるの方が、危ないんじゃない?」
「大丈夫よ。
 春彦は、私に何て興味ないって。
 それに、もし、近づいてきたら、パンチを食らわせるから。」
木乃美が、コーヒーをカップに入れ持ってきた。
「あっ、ありがとう。
 手伝うね。」
佳奈は、そういうと、木乃美が盛ってきたお盆の上のコーヒーカップをひとつずつテーブルに置いた。
「そうよね、はるは大丈夫。」
「そう、人畜無害で、とっても信用できるし、私達のこと、ちゃんと守ってくれるんだから。
 ね!」
そういう木乃美を見て佳奈は今日のことで、春彦が駆け付け、窮地から救い出したことを木乃美は言っているんだろうと思った。
「あとは、佳奈が来るまで、新作のテレビゲームしてたのよ。」
木乃美がそう言って指をさす方に、大きなテレビの前に置かれているゲーム機が見えた。
「ほら、今流行ってるボールの色を揃えて落としてくやつ。
 単純なんだけど、結構、はまるのよ。
 ね、春彦。」
木乃美は、床に転がっているゲームのコントローラを取ろうとして、春彦にお尻を向けて四つん這いになった。
木乃美は、スェットの上下だったので、丸みを帯びた可愛いお尻の線がしっかり出ていた。
「こら!」
佳奈は、見惚れそうになった春彦の頭を小突き、笑った。
「せっかく、褒めたんだからね。」
「え?
 なに?」
木乃美は、何のことかわからずに、コントローラを手に持って振り返った。
「ううん、何でもないわよ。」
佳奈は、笑いながら答えた。
木乃美は何のことかわからなかったが、そのコントローラを佳奈に渡した。
「佳奈、佳奈もやろうよ。」
「オーケー!」
佳奈は、腕まくりしながらコントローラーを受け取った。
それから、3人はゲームに熱中し、途中、配達されたピザを食べながら、ひとしきり遊んでいた。
そんなことをしながら、夜の9時ごろ、木乃美の両親が帰ってきた。
「木乃美ちゃん、ただいま。」
「あ、ママ、パパ、お帰りなさい。」
「大変なことがあったんだって。
 学校から電話貰って、急いで帰ってきたのよ。」
木乃美の母親の涼子は心配そうに木乃美を見た。
「あとで、詳しく話すけど、二人に助けてもらったの。
 それにママたちが帰って来るまで、心細いだろうからって、一緒に居てくれたのよ。」
「まあ、そうなの。
 佳奈ちゃん、立花君、ありがとうね。」
「そうなんだ。
 本当にありがとう。
 連絡受けて、一瞬、心臓が張り裂けそうになっていたんだよ。」
木乃美の父親の宗太郎も横から口を挟んだ。
木乃美の両親の様子を見て佳奈と春彦は頷きあった。
「じゃあ、俺達は引き上げよう。」
春彦はそう言って、佳奈を促した。
「そうね。
 じゃあ、今日はこれで帰ります。」
「二人とも、今日は本当にありがとうね。」
木乃美の両親は、早く木乃美から状況を聞き出したく、春彦や佳奈を引き留めることはしなかった。
また、佳奈や春彦もわかっていたので、そそくさと玄関に移動していった。
「ねえ、春彦。
 佳奈をちゃんと送って行ってね。
 お願いよ。」
「わかってるって。」
「なによ、私一人でも大丈夫だから。」
佳奈がそういうと、木乃美は真顔になって「絶対にダメ!」ときつい口調で言った。
「わかったって。
 ちゃんと、はるに送ってもらうから、大丈夫よ。」
佳奈の木乃美の気持ちが痛いほどわかった。
木乃美の両親も、時間が遅いので、あえて引き留めずに、くれぐれも気を付けて帰る様にと二人に感謝しながら言った。
「木乃美、何かあればいつでも言ってね。」
「うん。」
「じゃあね。」
「うん、春彦、佳奈、今日はありがとう。」
そう言って、木乃美は手を振って二人を見送った。
しかし、いつもは二人の名前を呼ぶときは必ず、佳奈が先だったのだが、その時は春彦の名前を先に呼んでいたことに、佳奈は気が付かなかった。

その夜、木乃美は学校であったことを全て両親に説明した。
気丈に語る木乃美の姿と、未遂で終わったことから宗太郎は安堵した。
木乃美は、疲れたからと部屋に戻って横になると言って、リビングを後にした。
「ああ、でも、手遅れにならなくてよかったな。」
宗太郎は、木乃美を見送った後、ほっとしたような声を出した。
「何言ってるの。
 未遂だろうが、木乃美の心は深く傷ついているわよ。
 男って、すぐ短絡的に考えるんだから。」
涼子は怒った声で言った。
「あんなに気丈に振る舞っているのは、その裏返しなんだからね。」
「そうか……。」
「ちょっと、木乃美の部屋に行ってきます。」
「ああ。」
そういうと涼子は宗太郎を睨みつけて木乃美を追いかけ、部屋に向かって行った。
リビングに残った宗太郎は、自分の浅はかさにがっくりとううなだれていた。

トントン。
涼子は木乃美の部家のドアをノックした。
「なあに?」
中から木乃美の声がした。
「お母さんよ。
 入っていい?」
「うん。」
木乃美の返事を聞いて、涼子はドアを開けた。
木乃美は、ベッドの上で枕を抱きしめて、上半身を起こしていた。
涼子は、ベッドの横に行き「横に座ってもいい?」と木乃美に問いかけた。
木乃美が黙って頷くと、涼子はそっとベッドに腰掛け、木乃美の首に手を回し、自分の方に抱き寄せた。
木乃美は、抵抗なく涼子の胸に顔を埋めた。
そして、しばらくすると涼子の胸の中で木乃美が嗚咽し始めた。
涼子は、そんな木乃美の髪を撫で、頭にキスをした。
「怖かったよね。
 嫌だったよね。」
木乃美は、黙って頷いた。
「力でねじ伏せられ、どんな思いをしたか……。」
涼子も涙声になっていた。
「私…。
 力いっぱい、抵抗したの…。
 でもね、かなわなかった。
 怖かった。
 もうだめかと思った。」
「木乃美……。」
「助けられて、すごく悲しかった。
 なんで、私は女なんだろうって。」
「木乃美。
 そう、だけどあなたは女の子なのに変わりはないわ。
 大丈夫。
 お父さん、お母さんがしっかり守ってあげる。
 明日、学校に行って、二度とこんなことがきっちり話をしてきてあげる。」
しばらく、涼子が慰め、やっと、木乃美の気持ちが落ち着いて来た。
「でも、どうして私が襲われたんだろう。
 襲ってきた男子、顔の知らなかったのよ。」
「そうなんだ、それもしっかり調べてもらうように言っておくわ。
 学校の対応がしっかりするまでは休みなさいね。」
「ええ?
 授業が遅れちゃうよ。」
「何言ってるの、あなたはもう進んでいるでしょ?」
「え?
 ばれてた?」
「当たり前です。
 それに推薦も決まったようなもんだし、出席日数だけだから、ゆっくりしちゃいなさい。」
「はーい。」
そして、少し間が開いてから木乃美は吹っ切ったような声で言った。
「悔しいけど、男の子にはかなわない。
 けど、強い男の子に守ってもらえるのもいいかな。」
「え?
 もしかして、立花君?」
「ん?
 ああ、残念だけど、春彦には佳奈がいるから……。」
「そうなの。
 ま、そのうちもっといい王子様が現れるわよ。」
「ママ、ディズニーワールド!」
「うふふ。
 じゃあ、ゆっくリお休みなさい。
 何かあったら、すぐに声をかけるのよ。
 それとも、お母さん、今晩一緒に寝てあげようか?」
真顔で言う涼子に、木乃美は首を横に振った。
「ううん、大丈夫。
 それに、ママがここで寝たら、パパが寂しがるでしょ。」
「パパ?
 いいのよ、あの人は。」
少し怒った声で言った涼子を、木乃美は怪訝そうな顔で見た。
(あんな、女性の気持ちもわからないデリカシーのない人なんか)
涼子は、先程のリビングでの宗太郎との会話を思い出し、腹を立てていた。
「じゃあ、本当に大丈夫?」
「うん。」
「夜中でも、いつでも、ママが必要になったら呼びなさいね。」
涼子は優しく木乃美の頭を撫でながら、立ち上がった。
「あら?」
「え?
 ママ、どうしたの?」
立ち上がり何かを気にしている素振りの涼子を見て、木乃美は心配そうな顔をした。
「いえ、何かいつもと違った匂いがするみたい。」
「え?
 気のせいよ、気のせい。」
「そう……。
 まあ、悪い匂いじゃないからい、いいわ。
 また、木乃美の新作?」
木乃美は、黙って頷いた。
涼子は、まだ何か言いたそうだったが、止めて、ドアノブに手を掛けた。
「じゃあね。」
「おやすみなさい。」
そう言って涼子は部屋から出てドアを閉めて行った。
「そう、悪い匂いなんかじゃないわ。
 春彦の匂い……。」
そう呟き、木乃美は少し前に春彦と一緒に添い寝し春彦の匂いがしみ込んだタオルケットを抱きしめていあ。
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