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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
(私、どうなっちゃうのかな)
木乃美は、無駄だとわかっていても抵抗しながらも、心の片隅でそう思った。
木乃美の抵抗も、男子学生の前では無意味だった。
だが、その時、ドーンと間近に雷が落ちたような音とともに、新鮮な空気が用具室のかび臭い空気を拭き流していった。
木乃美は急に自分に覆いかぶさっていた重さと生臭い息が無くなったのを感じた。
はっと、目を開けると、自分に覆いかぶさっていた男子学生が数メートルくらい右の壁に下半身むき出しの姿で身体をくの字に曲げたまま激突していた。
その男子は、いきり立っていた陰嚢を誰かにつかまれ、木乃美から引き離すように、下半身ごと持ち上げられ、不完全な逆立ちの状態になり無防備の脇腹付近を横から蹴り飛ばされ、その勢いで壁に激突していたのだった。
そして、身体の上に一陣の風を感じると、今度は、押さえつけられていた脚が自由になった。
その途端、「ぎゃん。」と、悲鳴に似た声とともに、逆の方の壁に木乃美の脚を押さえていた学生が頭から突っ込んでいった。
そして、壁に顔を打ち付け、崩れ落ち、無防備の尻を見せている学生の臀部の間に、誰かのつま先が吸い込まれていくのが見えた。
「はる…ひこ…。」
木乃美は、その学生を踏みつぶしている後ろ姿で、春彦が助けに来てくれたことを確信した。
見ると、用具室のドアは外から物凄い力が加わったよう、まるで、何かが爆発したのではと思えるくらいで、外れかけていた。
ドアの外では、見張り役の学生が鼻や口から血を流し、悶絶していた。
その学生は、中の様子が気になり春彦から一瞬目線そらし、すぐまた、春彦に目線を戻したが、瞬間、悪寒とともに目の前が真っ暗になり、鼻の辺りを中心に激痛が走り、そして、声も出せずにしゃがみ込んだその顔に、さらに膝がめり込んでくるのが見えたのが最後だった。

「ひっ」
息を呑むような、悲鳴のような声が聞えた。
声の主は、木乃美の両手を押さえている学生からで、春彦はゆっくりとその学生の方に振り向いた。
学生は、木乃美の両手から押さえつけていた手を離し、自分の顔を守るかのように手で壁を作ろうとしていた。
木乃美の顔の上を再び風が駆け抜けていった。
春彦は、振り向きざま、木乃美の両手を押さえつけていた学生の顎のあたりを腕ごと下から思いっきり蹴り上げたのだった。
蹴られた学生は、まるで首から上が無くなったかのような姿で、えびぞって後方に倒れ、壊れたゼンマイ人形のように身体をばたつかせていた。
「ひぃ!」
ビデオを回していた学生は、悲鳴に似つかない声を上げ、ビデオを春彦に投げつけた。
春彦は、それを紙一重で避け、木乃美からはビデオを避けた春彦がよろけて、その投げつけた学生と絡まる様に倒れたように見えた。
ゴキゴキと嫌な音とともに「ギャー!」という悲鳴が聞こえた。
その悲鳴の主は、春彦の下敷きになっている学生からだった。
春彦が立ち上がると、その学生の右の肘から下が、人間では絶対に曲がらな方向に90度以上曲がっていて、白いものが皮膚を突き破っていた。
春彦は、立ち上がったが、よろけたように、股間を押さえて苦悶の表情浮かべている最初に木乃美に覆いかぶさっていた学生の、その胸のあたりに、右足を置いた。
ボキボキと何かが折れる音がして、学生の口から赤い泡が吹き出し、声にならない声で悲鳴を上げた。
木乃美には、あっという間のことで何が起きたのか理解が出来ず、春彦の顔を見あげた。
そこに立っている春彦は木乃美の見たことのない春彦だった。
眼は真っ赤に充血し、まるで血の涙を流しているようで、瞳には光がなく、更に木乃美を総毛だたせたのは春彦の口が歪んでいて、まるで笑っているようだった。
「――!」
そして、春彦の方から冷たい日本刀の刃先のような狂気に満ちた突風がその場にいた全員の身体を貫通し、苦しがっている学生たちの動きが一瞬止まった。
木乃美は、今まで感じたことのなかった悪寒と恐怖心が電気の様に全身を走り、意識が遠のいていくのを感じていた。

「アコ!」
佳奈が大声で木乃美の名前を叫びながら用具室に飛び込んできた。
その声で、気を失いそうだった木乃美は、意識を繋ぎ止めることができた。
「か…な…。」
佳奈は、息も絶え絶えに自分の名前を呼ぶ木乃美の傍に走り寄った。
そして、木乃美のブラウスがはだけ、下着が右足首に引っかかっている姿を見て、目を吊り上げ、思いっきり木乃美を抱きしめた。
「アコ、大丈夫?
 大丈夫じゃないわよね。
 どうしよう……。
 はるひこ、どうして!」
佳奈は、春彦が間に合わず、木乃美が凌辱された思い、怒りの矛先を春彦に向けた。
「佳奈、大丈夫……。」
「え?」
「ギリギリで、春彦が助けてくれたの。
 だから、犯られていないから。」
木乃美は気丈にも佳奈にそう打ち明けた。
「よかった。
 木乃美、よかったー。」
大丈夫ということを聞いて佳奈は今度は木乃美を抱きしめながら泣きじゃくった。
佳奈の声で、その場の凍り付いた時間、空間が一気に弛んだようだった。
「うううう…。」
倒れている男子学生のあちらこちらから、苦痛に満ちたうめき声が聞えた。
春彦は、男子学生を踏みつけていた脚をそっと床に降ろし、佳奈たちに背を向けていた。

「うわ、何だこりゃ。
 こいつ、白目向いてるぞ。
 確か3年の……。」
「相沢、大丈夫か。」
佳奈が職員室に駆け込み連れてきた教師が数名、用具室の外で倒れている学生を見て、中に入ってきた。
外に倒れている男子学生は、鼻血と、前歯のほとんどが折れ口が開いてられず、息苦しそうに悶えていた。
「あっ、熊野先生、こっち見ないで。」
佳奈は、男性教師に木乃美の姿を見られないように木乃美を抱きしめ、庇いながら制した。
「熊野先生、私に任せて。」
そういうと、女性教師の朝比奈が熊野を制して、中に入ってきた。
そして、木乃美の近くにしゃがみ込んで、木乃美と佳奈と言葉を交わした。
「ともかく、まずは、こんなところじゃなくて保健室に行きましょう。」
「はい。」
そういうと、佳奈は自分の着ていたブレザーを木乃美に羽織らせ、はだけた素肌を見せないよう庇いながら立ち上がった。
「あとは、熊野先生、ともかく救急車を。
 この5名、見ただけでも重症よ。」
「わかった。」
「あ、熊野先生。
 僕が教頭に伝えて、救急車を呼んできます。」
そう言うともう一人の教師が飛び出していった。
「さあ、行きましょう。」
朝比奈はそう言って、佳奈と木乃美を促した。
二人の通り道のところには、口から赤い泡を吹きながら、下半身むき出しでどす黒く腫れ上がった陰嚢を見せ、涙と苦痛で顔を歪めながら、憐れみを請うような顔をしている男子学生がいた。
佳奈と木乃美は目を吊り上げ、その男子学生を睨みつけた。
「菅井さん!」
朝比奈が声を掛けなければ、佳奈は、その男子学生の下半身を踏みつけているところだった。
朝比奈に先導されて佳奈と木乃美が用具室を出た後、熊野ともう一人男性教師と春彦が用具室に残った。
教師たちは悶絶している学生一人ひとりの怪我を見ていた。
「これはひどいな。
 たぶん、顎が割れているし、舌も噛んで切ってる。
 やばいな、出血もひどいし、窒息しそうだな。」
「こっちは、ズボンの尻の辺りから血が滲み出ているし、鼻血もひどいな。
 鼻骨が折れているんだろう。」
「こっちは、腕が折れて骨が皮ふを突き破ってるし。」
そして、一番怪我の状態がひどい学生を見た。
「これは、男の一物が折れてるし、それに肋骨が折れて、肺に刺さっているな。
 うわ、眼球も飛び出しかかってるじゃないか。
 立花、お前、金属バットか何かでやったのか?」
そう言いながら熊野は春彦の腕を見た。
春彦は、首を横に振った。
「じゃあ、これだけ、素手でやったっていうのか……。
 しかも、全員、失神してない…。」
失神したほうが苦痛を感じずに済むのにと、男子学生の苦痛のうめき声の中、熊野は、信じられないという顔をした。
「なにがどうなったか、説明しなさい。」
そう言われ、春彦は佳奈と二人で帰り支度をしている時、木乃美が襲われそうになるのを見て、手分けをし、佳奈が職員室に教師を呼びに行き、自分は一足早く、木乃美を助けに向かったこと。
用具室のドアのところで見張っていた学生ともみあいになってからは、無我夢中で何をしたか記憶にないことを説明した。
その後、学校に救急車がきたりして、一時、残っている生徒を含め騒然としたが、救急車が病院に向かい、生徒も下校し、落ち着きを取り戻していた。
木乃美は、保健室で校医に診てもらい、身支度を整え、担任が木乃美の両親に連絡を取っている間、しばらくベッドで休んでいた。
身体の方は擦り傷くらいだったが、やはり精神的に疲れ切っていたようで、傍に寄りそっている佳奈の手を離そうとはしなかった。
佳奈も、そんな木乃美の傍にずっと寄り添い、何かと話しかけていた。
木乃美の両親は、あいにく、用事で外泊し明日までの帰ってこない予定だったが、連絡を受けて予定を切り上げ、今夜遅くに帰宅することになった。
「ねえ、木乃美。
 お父さんとお母さんが帰って来るまで、そばに居てあげようか。」
佳奈は心配そうに言った。
木乃美は、少し、考えてから言った。
「大丈夫。
 家で、じぃっとテレビでも見ているから。
 それに、遅くなったら佳奈が心配になるから。」
「そう……。」
「それより、先生、春彦、いや、立花君はどうしました?」
木乃美は保健室に入ってきた朝比奈に尋ねた。
「ああ、立花君?
 先生方に事情を説明していたわ。
 怪我もないし、今日のところはひとまず帰宅ね。」
「よかった。」
木乃美は、安どのため息をついた。
佳奈は、そんな木乃美を見て微笑んだ。
「でも、相手の怪我が怪我だから、あとが大変になるかしらね。」
「え?
 だって、悪いのは、あいつらの方ですよ。
 なんで、はるが?」
今度は佳奈が朝比奈に食って掛る様に尋ねた。
「もしかしたら、の話よ。」
朝比奈は、ごまかすように返事した。
「じゃあ、佳奈。
 春彦見つけて一緒に帰ろう。
 家の近くまで、3人なら心強いし。」
木乃美にしては、弱気なセリフだった。
しかし、無理はないと佳奈は思った。
「じゃあ、はるを捜してくるね。
 朝比奈先生は、それまで。」
「わかっているわよ。
 相沢さんと、お手玉でもして待っているわ。」
「え?
 お手玉?」
佳奈と木乃美は、ほぼ同時に声を上げた。
朝比奈はそんな二人の反応にびくっとした。
「なっ、なに?
 お手玉って、なんか変?」
「いえ、昔のことを思いだしたので。」
「そうなんです。
 昔、よく遊んだなって。」
「へえ、今どきのあなたたちが、お手玉でねぇ。」
朝比奈は感心していた。
「じゃあ、はるを呼んできますので。」
そういうと、佳奈は保健室から出ていった。
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