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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
校庭では、後夜祭のキャンプファイヤーの灯りで明るく照らされていた。
佳奈は、まだ、夏服の白のブラウス姿で、キャンプファイヤーの灯りに照らされていた。
「佳奈、ちょっとだけ時間いいかな?」
「え?
 うん。」
佳奈は、再び怪訝そうな顔をして頷いた。
「教室に戻らない?
 聴かせたいテープがあるんだ?」
「え?
 うん、いいよ。」
佳奈は、最初は春彦がなにを言っているのかわからなかったが、春彦と二人だけになれるのと、テープに好奇心が沸き、機嫌よく返事した。
二人は、薄暗い校舎に戻り、春彦の教室に向かった。
校舎では、打ち上げをしているグループが占領している教室は電気がこうこうと点いていたが、春彦の教室の一角は、誰もいないのか廊下の非常灯の灯りしかなかった。
「暗いね。
 転びそう。」
「気を付けてな。」
そういって、佳奈と春彦は手探りで教室に入り、教壇の上の灯りを付けた。
「全部つけよう。」
「もったいないよ、これでいいわ。」
薄暗いせいか、春彦には佳奈が少し大人びたように見えた。
「何見てるの?」
佳奈の一言で、春彦は少し動揺した。
「え?
 いや、何でも。
 そうそう、これ、このテープ聞いてみて。」
春彦はそういうと、自分のウォークマンのイヤホンを、佳奈に手渡し、佳奈は、渡されたイヤホンを耳に当ててみた。
「いい?」
春彦が尋ねると佳奈は頷いて見せた。
春彦が再生ボタンを押し、少しすると、佳奈の顔がいきなり驚きに変わった。
「これって、悠美姉の子供のころの?」
佳奈は、言葉が最後まで出なかったが、春彦は頷いて見せた。
そして、驚きから懐かしさ、また、驚きに変わり、いつしか佳奈はうつむいて聞き入っていた。
テープが終わると佳奈はイヤホンを外しながら、涙目で顔を上げた。
「あの歌って、もともと、舞さんたちが歌っていたんだ!」
「そうだよ。」
「すごい、すごい。
 舞さんも、歌が上手なんだ。」
「そうなんだよ、ビックリもんだろう。」
「それに、小さな悠美姉の声も可愛らしくて。
 みんな、とっても楽しそう……。」
そういうと、佳奈は何か感情がこみ上げてきたのか、最後の方は涙声になっていた。
「こらこら。
 泣かないで。
 このテープ、うちらの生まれる前の時代だよ。」
「すごいね……。」
佳奈は、それしか言葉が出てこなかった。

「きゃっ!!」
そう言って、木乃美、京子、慶子が教室のドアから倒れ込むようになだれ込んできた。
「!?」
「なっ、なに?」
佳奈がおどろいた声を出した。
「ちょっと、矢田部、押さないでよ。」
木乃美が廊下の方に向いて文句を言った。
廊下から教室のドアをくぐって、詩音が入ってきた。
「いや、俺じゃないよ、夏美だよ。」
「失礼ね、町田と近田が押したんだよ。」
その後ろから、夏美、町田、近田が教室に入ってきた。
「ちゃうよ、小久保が…。」
「ここ、俺の教室。」
しんがりに小久保がぶっきらぼうに返事をしながら教室に入ってきた。

「それより、二人でなにしてたのかなぁ~?」
「しかも、薄暗い教室で!」
木乃美と京子が、佳奈と春彦をからかった。
「え?
 いや、なんでもないよね。
 はる。」
佳奈は、顔を真っ赤にしながら春彦に助けを求めた。
「あ?
 ああ、昔の懐かしい曲の入ったカセットテープが出てきたんで、佳奈に聞かせようと思って。」
「思って?
 薄暗いところに、誘いだして?
 春彦君も隅に置けないわね~。」
夏美が、ねっとりといたぶる様に言った。
「夏美、なんかどろどろの恋愛劇のテレビみたいな言い方だよ。」
詩音が眉間に皺を寄せていった。
「いいじゃない、若い二人が、うっふん!ってね。」
一転、夏美が可愛らしい声で言った。
「で、みんな、どうしたの?
 後夜祭に行かないの?」
春彦が、話を変えるように言った。
「後夜祭に行こうと思ったら、二人が仲良く教室に向かったのを目撃して。」
「そう、それで、京子と慶子と後を追ったのよ。」
木乃美が、ニヤニヤして言った。
「そうしたら、夏美さんに見つかって、何してんの?って。」
「そうよ、詩音たちと後夜祭じゃなくて、だらだら打ち上げコンサートしようかって言ってたの。」
「そう、それで、春彦捜していたんだ。」
「そうしたら、仲良しグループを発見して、聞き出したら。」
「ねー!!」
春彦と佳奈を除く全員が声を揃えていった。
「……。」
佳奈は、赤い顔のまま恥ずかしそうに伏目がちになっていた。
「だけどさ、コンサートって言っても、アンプや、ドラムは?
 それより、大きな音出したら、後夜祭の委員に怒られるって。」
「そりゃそうだよ。
 それに、俺達、さっきの演奏でくたくたなんだよな。」
小久保が、疲れた声で言った。
「それでさ、一番元気な春彦君。
 超かっこいいアコギ(アコースティックギター)持っているじゃない?」
「え?
 まさか?」
「そのまさか!」
夏美が頷いた。
「春彦、そのギターでいろいろ弾けるんでしょ?」
「コードわかんなくても、ギター版カラオケ本持ってきたよ。」
詩音が、ニコニコしながら『ギターで弾く最新のカラオケ曲』と書いてある本をちらつかせた。
「あー、はなからそのつもりだったか。」
詩音の用意周到さに春彦は苦笑いした。
すると、佳奈が春彦のブラウスの裾を引っ張った。
「ん?」
「はるも疲れているんじゃない?
 大丈夫なの?」
「ああ、大丈夫だよ。」
春彦が、微笑んで答えると、佳奈は、ぱっと顔を輝かせた。
「すてき、みんなで打ち上げね。」
「おーい、ゲンキン過ぎ。」
春彦は、佳奈の嬉しそうな顔を見て、思わず笑いだした。
「じゃあ、決まりってことで。
 相沢さんたちも入るだろ?」
「当然!!」
詩音が声をかけると、木乃美、京子、慶子が声を揃えて返事した。
「あれ?
 久美は?」
佳奈が、一人足りないのに気が付いた。
木乃美、京子、慶子が顔を見合わせ、木乃美が口を開いた。
「久美は、正真正銘、あいびきよ。」
「あいびきって、木乃美はいくつよ。」
「久美は、彼氏と後夜祭で『マイムマイム』よ。」
京子が笑いながら言った。
「えー、誰となの?」
「佳奈も知ってる人。
 あとで教えてあげるね。」
「う、うん。」
佳奈は、深堀したかったが春彦がギターの用意をし始めたので、一旦、その話題は置いておいた。
「春彦、疲れたら代わるから。」
小久保が春彦に声をかけた。
「ああ、頼む。
 これ、すごく弾きやすいよ。」
そう言って春彦が顔を上げると、小久保は違うフォークギターを出していた。
「春彦の『それ』、すごく大事なんだろ?
 それに、春彦以外は弾けないよ。」
「そっか?」
そう言って、春彦はなぜかうれしくなって、ニヤニヤした。
その後、後夜祭が終わり、教師に教室から追い出されるまで、延々と春彦達は打ち上げコンサートを楽しんでいた。
当然、春彦の隣には佳奈が座り、春彦の演奏で、楽しそうに歌っていた。
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