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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
そして、軽音部のコンサートを開始するアナウンスが流れ、観客が一気に拍手と歓声を送り始めた。
「ねえ、木乃美。」
佳奈は、周りの声でかき消されないよう、大きな声で木乃美に話しかけた。
「なに、佳奈?」
木乃美も負けじと大声を出した。
「慶子や京子、久美も来ているかしら?」
「ああ、京子たち?
 少し離れているけど、あそこにいるわよ。」
佳奈たちから2列ほど離れたところに京子たち3人が座って歓声を上げていた。
京子が、佳奈たちに気が付いたのか、佳奈の方に向かって手を振った。
佳奈たちも手を振り返すと、京子が慶子たちを小突いて、佳奈たちに合図した。
そして、ステージの幕が開き、軽音部の1年生のバンドが1番手に上がって演奏を開始した。
あまりの観客の多さと熱気とで、明らかに緊張していたが、1曲終わると少し落ち着いたのか、また、ステージの袖で、詩音たちがいろいろと声援を送っていたせいか、後の曲はいい出来だった。
それから、次の1年生のバンド、新入部員の2年生、1年生の混成バンドなど、1つのバンドにつき15分の持ち分とバンドの入れ替わりの休憩時間の5分を足して、1時間があっという間に過ぎ、次に『ヘビー・チョコレート』の出番となった。
『ヘビー・チョコレート』は流行りのJ-ROCKを、完成度の高い演奏で観客を魅了していた。
舞台の横では、『ヘビー・チョコレート』の演奏を聞きながら、詩音たちが出番の準備をしていた。

「ひゅー、夏美。
 化粧、かっこいいね。」
詩音が夏美の化粧を見て言った。
夏美は、服装こそ学生服だが、赤いルージュにアイシャドウとで化粧をばっちりと決めていた。
その化粧は、派手ではなく、でも、誰もが振り向きたくなるような、おしゃれなものだった。
「まあ、ありがとう。
 次は、詩音の番よ。」
そういうと、詩音の顔に自分の化粧道具で化粧を施していた。
「まったく、詩音は、ただでさえ見栄えのする顔なのに、化粧するとそこいらのどんな女の子よりもきれいなのよね。
 腹が立つ!」
そうぼやきながら、詩音の化粧を終わらせた。
「確かに……。」
「な、なんだよ。」
化粧をした詩音は周りの誰もが息をのむくらいにきれいだった。
「ま、私の化粧の仕方がいいのが半分か。
 他に化粧してほしい人いる?」
夏美は他のメンバーの顔を見て言った。
詩音以外のメンバーは皆、首を横に振った。
「春彦は?
 春彦なら、意外といいかも。」
夏美がそう言うと、春彦は慌ててかぶりを振った。
「ちぇっ、残念。」
夏美は口調からわかる様に、徐々に気分が高揚していた。
春彦は、アンプにつながっていないベースを弾いていた。
「しかし、春彦の左手は、神様の手だよな。」
春彦を見ながら、詩音は呟いた。
「本当。
 魔法の指よね。
 皆、春彦のベースにのせられて、凄く上達したもんね。」
「そうだよな、俺、春彦とバンド組めて嬉しくってさ。」
「私もよ。」
「俺もそうだよ。」
夏美の他、小久保や町田、近田も皆、春彦を見ながら口々に呟いた。

ステージでは『ヘビー・チョコレート』が最後の演奏を終え、アンコールに応えていた。
皆、それに触発されたのか、おのおの気持ちが昂っていった。
そして、幕が下がり、いよいよ『ピンク・シオン・トルネード・バンド』の出番となった。
「詩音、ごめん。
 アンコールで1曲やったから、詩音たちの時間が短くなった。」
青田達は興奮冷めやらぬ顔でステージから降りてきて、詩音たちに声をかけた。
結局、アンコール含め30分はやっていたので、メンバーの入れ替え等で、詩音たちの持ち時間は20分位となっていた。
「いいって、いいって。
 いいパフォーマンスだったじゃん。」
「うん、すごく良かったよ。」
詩音も夏美も明るく青田達に声をかけた。
「ありがとう。
 夏美たちも頑張ってね。」
秀美が夏美に声をかけた。
「さあ、行こうぜ。」
「あっ、ちょっと待った。
 円陣組んで、儀式儀式!」
そう言って詩音はメンバーを集め円陣を作り、真ん中に立った。
円陣にはいつの間にか、青田達や他の1,2年のバンドメンバーなどが集まり、大きな円になっていた。
「さあ、今年の軽音部コンサートの締めだよ。
 気合い入れていくよー。
 皆も応援してねー。
 じゃあ、行くぞー!
 軽音、ファイト!!」
「ファイトー!!」
大勢で声を合わせ大声で気合を入れた。

「わっ、何、今の?」
「ステージの横からじゃない。」
「詩音たち、気合入ってる。」
観客席ではステージの方から聞こえた詩音たちの声で、ざわざわとざわついていた。
「さあ、詩音たちの番よ。」
「早く夏美が見たいな。」
観客席の生徒や教師も、待ちに待った大トリの登場を今か今かと待ちわび、ボルテージも最大級に昇っていた。
そして、再度、観客席の電気が消えると、歓声と絶叫が入り混じった。
「さあ、軽音部のコンサートも残り1組です。
 皆さん、待ってたよねー?」
進行役が声をかけると観客たちがすぐに反応した。
「うん、待ってたー!!」
「よーし、準備できたかな?
 皆もノリノリの準備できてるか―?」
「ウォー!!」
最期は、声にならない咆哮がこだました。

「なあ、あいつ、下手!」
詩音が、そんな進行役と観客のやり取りを聞いて、笑って言った。
「でも、結構、乗ってるじゃん。」
「まあな、じゃあ、こっちも負けないようにやんべ。」
小久保が、楽しそうに言った。

「では、お待ちかね!
『ピンク・シオン・トルネード・バンド』!!」
そう絶叫すると、ステージの幕が上がった。
ステージでは、真ん中に詩音がエレキギターを持ち、その左横にタンバリンを持った夏美が立ち、詩音の後ろにはドラムの町田、夏美のさらに左にリードギターの小久保、詩音の左にベースの春彦、また、その左にキーボードの近田が深々とお辞儀をしていた。
そして、全員顔を上げると、観客から歓声が上がった。
また、詩音と夏美の化粧を見て、男子、女子関係なく、大歓声となった。
「夏美―、超―カッケ―!!」
「詩音―、素敵―!!」
「お前ら、校則違反だぞー!」
教師の一人がそう大声で言うと、皆、大爆笑が巻き起こった。
「さて、皆さん、こんにちはー!!」
詩音がマイクでどなった。
それにこたえるように観客席から再び大歓声が沸き上がった。
「時間がないから、今日はノーMCで、最初っから全開で行くよー!!」
「ウワ―!!」
そんなやり取りを聞いて、春彦はあまりの観客の多さに目を奪われた。
春彦を除くメンバーは多少なりとコンサートをやっていたので、人前に立つの慣れていたが、春彦は全く初めてだった。
「おーい、春彦―!
 帰ってこーい!!」
詩音が、そう春彦に向けると、観客は大爆笑した。

「ねえ、春彦、大丈夫かしら?」
木乃美が心配そうに佳奈の方を見た。
佳奈も心配げな顔をしていたが、いつの間にか佳奈の横に来ていた舞が笑って言った。
「大丈夫よ。
 あれ、意外と楽しそうな顔をしてるから。」
舞は、そういうと春彦の方に顎をしゃくって見せた。
佳奈や木乃美は、うなずいてステージの春彦の方を見た。
「1、2、3…。」
町田がスティックを交差させリズムを取った。
それを合図に、『ピンク・シオン・トルネード・バンド』の演奏は始まった。
最初は、『タイムマシンに願い』をワンコーラス、夏美のボーカルで始まり、そのまま、流れるように『六本木心中』に流れていった。
夏美のボーカルと歌いながらの仕草、2曲目では、詩音も声を合わせてきて、いきなり観客は興奮の絶頂に達した。
(すごい、すごい、この演奏。
 歌いやすいし、ノリノリだわ)
夏美は歌いながら思った。
(スゲー、これなら何でも出来そうだぜ。
 もう、鳥肌もんだよ。)
(リズムが正確で、それ以上に迫力があるぜ。
 別世界に行っちまいそうだ。)
(もう、どんどん叩きまくれるぜ。
 なんでも、来やがれー。)
(どうしよう、自分の手じゃないみたい。
手が止まらないよー。)
夏美、詩音、小久保、町田、近田たちは思い思いに心の中で叫び、皆、春彦の方を見た。
その視線の先の春彦は、楽しそうにベースを操っていた。
(最高だよ、お前は!)
詩音は、そう思っていた。
3曲目は、少女Sを詩音がメインのボーカルを取り、やんやの喝さいを浴びていた。
そして、あっという間に3曲演奏が終わり、休憩のような一瞬の間が生じた。
その3曲だけでも、春彦を除くメンバーは肩で息をしているほどだった。
観客も興奮冷めやらず、次の曲を待ちわびて、ざわついている中、春彦がベースをギタースタンドに立てかけ、代わりに、その横のギタースタンドに立てかけてあるフォークギターを手に取った。
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