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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
その日から春彦は人が変わったように生き生きとして見えた。
最初は、ベースの基本からで、弦の押さえ方、弾き方を詩音や小久保から教わり、黙々と練習をしていた。
他のメンバーはベースなしで、キーボードの低音を頼りにセッションしていた。
春彦は、軽音の部活の日は、授業が終わるといそいそと部室に出向き、部室の隅で黙々と練習し、そうでない日は、自宅にベースを持ち帰り、家で夜遅くまで練習をしていた。
舞は、春彦がベースを担いで帰ってきた時はびっくりした顔をした。
「なに、それ?」
「え?
 ああ、軽音部で借りているベースだよ。
 矢田部って子に誘われて、軽音部に入ったんだよ。」
「それで、ベースをやるの?
 あんた、弾けるの?」
「弾けるわけないじゃん。
 だから、練習して弾けるようにならないと、バンドのメンバーに悪くって。」
「そうなんだ。
 じゃあ、頑張りなさいよ。」
それから、舞は家で一生懸命練習している春彦を目を細めて見守っていた。

しかし、軽音部は、思っているほどアットホームな雰囲気ではなかった。
詩音の率いるバンドは、どちらかというと昔からの王道のロック系で、もう一つのバンドはJ-POP系で馬が合わずに対立していた。
そんなある日、春彦がいつものように部室の隅で詩音にベースの手ほどきを受けている時に、ピックが飛んできて春彦の頬に当たった。
詩音はすぐに気が付き、ピックを飛ばした方、対立するバンドのメンバーを睨みつけた。
「誰が、ピックを投げたんだよ。
 眼にでも入ったらどうするんだ。」
すると対立するバンドのギターを弾いていた恩田という生徒が謝ろうとした時、ボーカルの青田が割り込みいきり立った。
「なんだよ、ワザとやったと言うのかよ。」
「違うのか?
 違うんだったら、すぐに謝るだろう?
 何をニヤニヤしてるんだよ。」
恩田は、悪気はなく、ただ、弾みでピックが飛んでしまい、春彦の頬に当たったので、ついおかしく笑いそうになっただけだった。
「すげー、そんなに離れたところから飛んできたんだ。
 ピックって、よく飛ぶんだな?」
詩音と青田の一発触発の雰囲気の中、春彦は意に返さないように言った。
「どうだ、昔見たビデオでピックを良く飛ばしているグループいたよな。
 マイクスタンドにくっ付けて、何かにつけて、ピンピンて飛ばしていたの。
 あれなんてグループだっけ?」
そういうと成美が興味ありそうな顔をした。
「そんなバンド、あったんだ。」
「ああ、この前、MUSIC ON CDって番組で昔のバンド特集やってたんだよ。
 で、そのグループが出て、曲もいいんだけれど、パフォーマンスが面白くてさ。」
「それって、チープじゃない?」
そう言って、恩田が春彦に近づきながら言った。
「そうそう、それ!」
「おれ、サレンダーが好きだったんだ。」
そう言うと、ニコニコ笑いながら春彦と成美の傍に腰を下ろした。

「おい、恩田!
 なにやってんだよ。
 そんな奴らのところで、話し込んでんじゃねえよ。」
青田が吠えた。
「オタちゃん、いいじゃん。
 同じ部活なんだから、趣味の話とかしたって。」
「何言ってるんだよ。」
「俺も、恩田に賛成だ。」
そう言いながら対立しているバンドのベーシストの岸田が口を開いた。
「岸やんまで…。」
「だって、立花、すごく楽しそうに練習しているじゃん。
 俺らだって、楽しく音楽をやりてーよ。
 詩音も同じだぜ。」
岸田に言われ、詩音はすまなそうに頭をかいた。

「立花、さぁ。
 そのベースじゃ、上達しないよ。」
「え?」
岸田のセリフに詩音と春彦は顔を見合わせた。
「そのベース、俺も触ったことあるんだけど、ネックが反り曲がっているのと、元の持ち主の癖がすごくて、とてもじゃないけど、上達できない。
というか、それで上達しても、他のベース、弾けないんじゃないか?」
「そんなにひどいのか?」
詩音がびっくりして聞いた。
「詩音は、ベースのことあんまり知らないだろう。
 ベースって、バンドの演奏の良しあしを左右するんだぜ。
 それだけに、自慢じゃないけど、プライドがあってさ、個性が弾き方に出てくるんだよ。」
「そうなんだ。」
春彦も感心した様に呟いた。
「俺も、そのベースのこと聞いたことがある。」
いつの間にか、青田も近づいてきて口を開いた。
「なんかスゲー上手いんだか下手何だかわからない奴ので、テクニックはすごかったらしいけど、誰とも音を合わせることが出来なかったって。」
「オタ?」
詩音が、不思議そうな顔をして青田を見つめた。
青田は、頭をかきながら、恥かしそうな顔をした。
「詩音、悪い。
 俺もさ、本当は、楽しく音楽をやりたくてさ。
 それが、お前の人気や腕にいつしか嫉妬してた。
 悪い。」
そういうと、詩音は青田の首に腕を回した。
「いいんだよ。
 俺もつっけんどんにしていたしさ。
 ごめんな。」
「詩音」
「これから、楽しく、競い合おうぜ。」
詩音の笑顔に青田も自然と頷いた。
「よかった、これで夏美と部活で話せるし。」
そう言って、もう一つのバンドのキーボード担当の秀美が割り込んできた。
「夏美とは気が合うし、部活以外じゃ仲いいんだけど、部活の時に気軽に離しかけられずに嫌だったんだ。」
「そうよ、私も。」
女性二人に文句を言われ、詩音と青田は、頭をかきながら、二人に頭を下げていた。

「立花、だから悪いこと言わないから、違うベースにしなよ。」
岸田が心配そうに春彦に言った。
「でもさ、ベースって結構高いんだろ?」
春彦は心配げな顔で聞いた。
「そうだな、ピンキリだけど、あんまり安いんじゃな。」
「じゃあ、いくらくらいのがいいの?」
「俺のはこの位。」
そう言って岸田は、両手を開いて見せた。
「げっ、十万……。
 岸田って、本当に高校生?」
金額を聞いて春彦はあ然としていた。
「何言ってんだよ。
 うち、親父の方も、お袋の方も親戚が多くてさ。
 正月に、じいちゃんばあちゃんのところに集まったりしてさ、お年玉で十分買えるんだぜ。」
「そうなんだ。
 うちは、じいちゃんばあちゃんだけだからな。
 良くてこの位だよ。」
そういって春彦は指を1本立てて見せた。
「少な!」
岸田や傍にいた恩田たちもおどけて見せた。
「でも、音を考えると、この位のが欲しいよな。
それにチューニングやいろいろと小物もいるし。」
そう言って岸田は片手を開いて見せた。
「そうか……。」
春彦は、思わず考えこんでいた。
(母さんに頼むわけいかないしな。
 困ったなぁ。)
春彦の家は、春繁の遺産と舞の翻訳の仕事で得ている収入で切り盛りしていた。
舞は、お金のことに関しては一切春彦に言わなかったが、学費や何かでかなりきつきつな状況であることは、うすうす感じていた。
(父さんがいればな…。
 え?
 あっ、父さんの……。)
春彦は、春繁がエレキベースを持っていたことを思いだした。

家に帰ると、春彦は舞に尋ねた。
「ねえ、母さん。
 父さんのエレキベース、おばあちゃんが出しておいてくれるって言ってたんだ。
 それ、俺が使っていい?」
「え?」
「だからさ、バンドで使っていたベースじゃダメなんだってさ。
 ちゃんとしたベースじゃなくちゃ、上達しないんだって。」
珍しく春彦は興奮していた。
「……。」
舞はすこし考え込んでから、口を開いた。
「それは、いいけど。
 じゃあさ、フォークギターもあるはずよ。
 それも弾けるようになればいいよ。
 両方ともお前にあげるよ。」
「え?
フォークギター?
なんで?」
「なんでも、良いでしょ。
 やるの?
 やらないの?」
舞の問いかけに春彦は二つ返事で相槌を打った。
「わかった、やります、やります。
 じゃさ、早速、おばあちゃんのところに電話していいかな?」
目を輝かせて話す春彦をみて、舞は呆れたように笑って頷いた。
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