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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
詩音は、一世代前に流行ったロックが好きで、同じ好みのメンバーを集めていた。
また、両親がそういった音楽関係だったのか、男子にしては高音域で、伸びのある声の持ち主、ルックスもスリムな体系と、日本人離れしたなかなかの美形で、さも、音楽やっていると言わんばかりの風貌だった。
当然、女子に人気で、クラスの女子もほとんどが憧れの眼で見ていた。
ただ外見とは異なり、心底、音楽、特にロックミュージックが好きで、自分と同じ嗜好のメンバーを高校1年の時、地道に探していた。
そして、その努力の甲斐があってか、ドラムやギター、キーボードは集まったが、ベースは地味だという印象なのか、なかなか気の合うメンバーが見つからなかった。

春彦は、詩音のバンドのエレキギターを担当している小久保隆という男子生徒と高校1年の時同じクラスだった。
そして、ある時、春彦は些細な会話から小久保と馬が合い、小久保の勧めで昔のハードロックのCDを借り、のめり込んでいた。
詩音は、小久保から春彦もロックをよく聴くと聞いていたので、声をかけてきたのだった。
「なあ、立花。
 お前、パープルやツェッペリンとか好きなんだって?」
「ああ、小久保のおかげで聞いてるよ。」
「じゃあさ、俺達のバンドで、ベースやらないか?」
いきなりベースをと言われ春彦は戸惑った。
「ちょっ、ちょっと待て。
 聴くのは好きだけど、楽器は小学校で笛吹いたくらいだよ。」
「大丈夫、大丈夫。
最初っから演奏出来て生まれてくる奴はいないって。
 練習すればいいんだよ。
 なあ、今年の文化祭で軽音部、ステージやるんだよ。
 いまさ、ベースがいなくてこ、困ってるんだ。
 なあ、やろうぜ。」
「ちょっと、待ってくれよ。
 本当に、ベースなんて弾いたことないし、それに、高価なんだろう?
 ベースって?」
「ああ、それなら、部室に誰か卒業生が置いていったベースがあるから大丈夫だよ。」
「でも、おれ、音楽は……。」
そう言いながら、春彦は父がベースを弾いていたいう話を思い出し、心が揺れていた。
「じゃあさ、ともかく一度部室に来ないか。
 ちょっと、触ってみるだけでもさ。」
「うーん、ちょっと考えさせてくれ。
 聴くのはいいんだが…。」
「わかった、じゃあ、いい返事を待ってるから。」

それから、毎日のように詩音は春彦にベースをやる気になったかと聞いてきた。
そして、そんな調子で1週間たっても、相変らず、詩音は春彦を勧誘し続けた。
「なあ、立花。
 気い変わった?」
「でもさ、俺、今部活入ってるんだよ。」
「知ってる、社会部だろ?
 そんなの辞めて、こっちやろうぜ。」
そんな詩音の会話を聞いて、慶子が飛んできた。
慶子としても、軽音部に春彦を取られるんじゃないかと、二人の会話をはらはらしながら聞き耳を立てていたのだった。

「ちょっと、矢田部君!
 そんなのって何?
 失礼な言い方しないでよ。」
「あっ、倉田。
ごめんごめん。
社会部を馬鹿にしたわけじゃないから。
ただ、春彦がベースをやらないかなって、さ。」
詩音は、おとなしい慶子がまさか食って掛かって来るとは思わなかったので、這う這うの体(ほうほうのてい)で逃げて行った。
ただ、逃げて行く際に、一言、春彦に声をかけていった。
「今日とかさ、時間あったら、顔だけ出しにこいよ。
 ベース、触らせてやるから。
 それでも、興味がわかなかったら、あきらめるからさ。」
「もう、あんなこと言って。」
慶子はそう言ってしかめっ面をした。
ただ、周りの詩音に憧れている女子の冷たい視線が気になっていた。
「慶子、あんまり言いすぎると、後が怖いよ~!」
手を前に下げ、お化けのふりをして、久美が笑って傍に来た。
「だって、立花君、取られたら大変だもん。」
「慶子、本人、目の前。」
久美は、たまらず笑い出した。
慶子も目の前に春彦がいるのを忘れていて、我に返って顔を真っ赤にしてうつむいた。
「まあまあ。
 大丈夫だよ、おれ、社会部、結構気に入っているから、やめるつもりはないよ。」
春彦がそういうと、慶子は顔を輝かせ、顔を上げた。
「本当?」
春彦が頷くと、ほっとした顔をした。
「よかったねぇ~。」
久美がからかいながら横から口を挟んだ。
慶子は、そんな久美の言葉が聞えないのか、鼻歌を歌いだしそうになる位、上機嫌になっていた。
「だめだ、こりゃ。」
そういうと、久美は、両手を横に広げ、呆れた仕草をして自分の席に戻っていった。

放課後、春彦は詩音に言われたように軽音部を尋ねた。
部室のドアをノックし、おそるおそる中を窺うと、詩音が手招きしていた。
「立花!
 こっち、こっち。」
春彦は、他の部員に挨拶し、部室の中に入っていった。
詩音の周りには、小久保や他のメンバーが屯していた。

「立花、まずは、紹介するよ。
 隆は知ってるからいいだろう。
 これ、夏美。
 ボーカルとコーラス担当。
 こっちは助清。
 ドラム担当。
 あと、こいつ、成美。
 キーボード担当。」
そう言って詩音は一人ずつメンバーを春彦に紹介した。
メンバーの一人一人は、紹介されるたびに、春彦にお辞儀したり、手を振ったりで個性がばらばらだが、楽しそうに春彦には見えた。
「で、こっちが、ベース担当の候補。
 立花春彦。
 可愛い彼女に『はる~』って呼ばれてるんだよ。」
詩音はそう言って春彦をメンバーに紹介した。
「お、おい。」
「あっ、知ってる。
 あの感じのいい娘でしょ。
 よく一緒に帰ってるじゃない。
 いいわね~。」
夏美は、何とも言えない顔をして言った。
「いや、佳奈は幼馴染だから。」
「でも、幼馴染でも、はたから見てて、あんなに自然でうらやましいわ。」
「そうかな。」
春彦は頭をかきながら照れるようにいった。
佳奈とのことは、いろいろと言われることがあり聞き流してきたが、面と向かって、自然体でうらやましいと言われたのは初めてだった。

「さ、そんなことより、さっそく、ベースに触ってみ。」
そう言いながら、詩音は先程まで触っていたベースを春彦に差し出した。
詩音は、春彦のためにベースをきれいに掃除し、かつ、弦を張り替え、チューニングまでしていた。
「うん。」
そう言って春彦は詩音からベースを受け取った。
初めて持ったベースは、ずっしりとした重さを感じた。
そして、その重さを感じた瞬間に春彦は昔の光景を思い出していた。
それは、春彦がまだ、幼稚園児だったころ、春繁の部屋で、籐の椅子でベースを弾いている春繁に呼ばれ、ちょこんとその膝に座ったところ、目の前にベースが現れた。
春繁はベースと自分の身体の間に春彦を座らせ、春彦越しにベースを弾き始めた。
暫くしてベースの演奏を止め、春繁は春彦を覗き込んだ。
「つまんなかったか?」
春彦は、ベースの低く重い音に興味を抱いていた。
「ううん。
 かっこいい。」
そう言うと、春繁は笑い出した。
「かっこいいか。
 よかった。」
「僕も、それ弾いてみたい。」
「うーん、もっと大きくなったらな。
 ベースって結構重いんだよ。」
そういって、春繁はベースをそっと春彦の脚の上に下ろした。
「うわっ、重いよ~。」
春彦は、そのベースの重さにびっくりして、声を上げていた。
その他愛のない記憶が、いきなりフラッシュバックした。

「ん?
 立花、どうした?」
詩音はベースを持ったまま身動きしない春彦を見て、不思議そうにに言った。
春彦は一呼吸おいてから、顔を上げ、詩音に尋ねた。
「なあ、これって、どう弾くの?」
その春彦の顔は、興味で輝いていた。
詩音はニヤリと笑い、簡単な操作と、ドレミくらいを春彦に教えた。
春彦は、教えられたように弦をつま弾いてみた。
弦は、ビィ~ンビィ~ンと音を上げた。
詩音は、そっとベースのソケットをアンプに差し込んだ。
ぶつっという音がし、詩音が春彦に声をかけた。
「立花、もう一度、鳴らしてみ。」
そう言われ春彦は、さっきと同じように弦をつま弾いてみた。
すると先程の弦だけの音ではなく、『ブゥン、ブゥン』と重低音の痺れるような音がアンプから流れた。
(この音…。
 親父の奏でた音と似ている。)
春彦は、そう心の中で思うと同時に、楽しさがこみ上げてきた。

「なあ、矢田部。
 俺も弾けるようになるかな?」
「みんなと同じように詩音でいいよ。
 な、春彦。
 いいだろう。
 練習すれば弾けるようになるよ。」
「本当か?
 詩音。」
春彦は、もうベースに夢中になっていた。
詩音は、そんな春彦を見てクスッと笑い、他のメンバーに目配せした。
他のメンバーも皆、笑顔でうなずいていた。
「でも、俺、社会部も続けたいんだよな。」
「社会部の活動って、何曜日?」
「月水金。」
以前は火木と俊介の道場に通っていたが、佳奈の都合で毎週ではないが日曜日に顔を出すことしなっていた。
「じゃあ、火木土でいいよ。
 来れなくても、家で練習できるだろう。」
「いいのか?」
「ああ、これで決まり。
 やっとベースも決まったぞっと。」
詩音は万遍の笑顔を浮かべた。
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