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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
帰りの電車の中で春彦は、また昔のように舞も春吉もキクもみんなで楽しく過ごせないかなと考えていた。
「まっ、そのうち、何とかなるだろう。」
そう自分に言い聞かせていた。

家に帰ると、舞は何事もなかったような顔をして春彦を迎え入れた。
しかし、少しすると我慢が出来なくなったように、春彦を手招きした。
「ねえ、どうだった?
 二人とも、元気だった?
 病気していなかった?
 やつれていなかった?
 ご飯、食べてた?」
矢継ぎ早に質問を浴びせられ、春彦は、一つ一つ、きちんと答えた。
一通りの質問の答えを聞き、春吉やキクが元気なことがわかった舞は、安心したような顔をした。
「そんなに心配なら、自分で様子を見てくればいいだろう。
 それに電話だってあるんだから。」
春彦は、舞の答えがわかっていたが、意地悪そうに言った。
「だれが。
 だれがあんなくそ爺の顔なんか見るもんか。
 声だって聴きたくないんだから。」
「はいはい。」
舞は、春彦が思った通りの態度だった。

「そういえば、母さん、歌、上手なんだって?」
「え?」
いきなりのことで、舞は目を白黒させた。
「おばあちゃんが教えてくれたよ。
 父さんのギターで、母さん良く歌ってたって。
 すごく上手で、父さんも楽しそうに伴奏していたって。」
「まあ、お義母さんたら、余計なことを春彦に吹き込んで。
 そんなの、昔よ。
 昔のこと。
 今じゃ、歌なんて、声も出ないわよ。」
そう言いながら、昔の楽しかったことを思いだしたのか、舞は明らかにご機嫌になっていた。
「さ、明日は学校でしょ。
 早くお風呂に入って、寝なさいね。」
「はいはい。
 そうそう、おばあちゃんが今度の夏休みまでに、ベースとフォークギターを捜して、出しておくから遊びに来てねっていってたよ。」
「へえ、まだ、あったんだ。
 あんた、弾けるの?」
「弾けるわけ訳ないだろう。」
「そうよね。
 でも、弾き始めるときっと面白いわよ。
 今度、入門書でも買ってあげようか。」
「そうだね。」
そう言いながら、春彦は着替えを取りに部屋に戻った。
その後ろで、キッチンで片付けしながら鼻歌歌って舞の声が聞こえていた。
「思い出した。
 昔、母さんていつも、台所で料理しながら歌っていたっけ。
 悠美ちゃんも良く一緒に歌っていたな。」
懐かしい思い出の1ページを思い出し、春彦もご機嫌になっていた。

春休みも終わり、春彦や佳奈は2年生に進級した。
春彦と佳奈は別々のクラスで、佳奈はひどくがっかりしていたが、相変らず、木乃美と同じクラスだったので半分喜んで半分がっかりな様子だった。

「佳奈、私と同じクラスじゃ不満?」
「え?
 そんなことないよ、すごく嬉しい。」
「でも、顔は春彦と一緒じゃないからつまらないって顔に描いてあるわよ。」
「もう、木乃美ッたら。」
木乃美にからかわれて、佳奈は苦笑いしていた。
「今回は、結構、ばらばらになっちゃったね。」
「なに?
 私がいるといけない?」
そういって、京子が近づいてきた。
「そっ、そんなことないよ。」
 きゃー、助けてー。」
京子は、木乃美の頭を抱え込んで絞り上げるふりをした。
「もう、木乃美と京子ったら。」
佳奈は、じゃれ合ってる二人を見て笑い出した。

「今回は、木乃美と京子と同じクラス。
 慶子と久美が同じで隣のクラスか。
 ちょっと残念ね。」
「え?
 隣のクラス?
 じゃあ、はると一緒なんだ!」
佳奈は初めて知った。
「あらま、春彦の名前だけ捜して、大事な友人の名前を探してなかったの?」
木乃美は、ここぞとばかりに佳奈をからかった。
「そっ、そんなことないって。
 ただ、クラス分けが張り出してある所ってすごく混んでたじゃない。
 だから、自分のクラスと、一緒に居たはるのクラスしかわからなかったのよ。」
佳奈は、慌てて弁解した。
「おお、おお、薄情なこと。」
木乃美は、追い打ちをかけるようにからかった。
「でも、久美と慶子と別れるのは寂しいな。」
佳奈は、一生懸命話を逸らそうとした。
木乃美も京子もそんな狼狽えた佳奈の仕草に笑い、それ以上はからかうのを止め、佳奈の話に乗ってあげることにした。

「まあ、お隣さんだし、慶子とは部活であえるじゃん。」
「久美は、何かにつけていつも寄って来るし。」
「なに、その言い方。
 なんか近づいちゃいけないの。」
その声に京子は背筋を伸ばし、恐る恐る振り返ると、そこには、指をバキバキと鳴らすふりをしている久美が立っていた。
久美は、おかっぱのような短い髪で、前髪をゴムで結んでおでこを出し、元気そうな女の子だった。
背丈は、5人の中では木乃美と同じくらい小柄(一番高いのは京子で、慶子と佳奈が真ん中位だった)だが、快活で、明るく、笑顔の絶えないタイプだった。
また、5人の中では一番早い4月生まれで、リーダーシップもあり皆から久美姐さんと慕われていた。

「いやいや、滅相もない。
お姉さま、いつもお綺麗で。」
「まったく、京子ったら、調子がいいんだから。」
そう言って、久美は笑いながら京子の脇腹をつかんだ。
「きゃ、くすぐったい。」
そういいながら京子は身をよじっていた。
「まったく、もう。」
佳奈はそんなじゃれ合っている姿を楽しそうに見ていた。

一方、春彦は俊介と同じクラスだった。
俊介とは、五商の件のあと、春彦は小さな頃、危ない道場に通っていて、たまに自分を見失って危ない技を無意識に出すことあることを、隠さずに説明した。
俊介は、それで納得し、しかも、無視していたのに自分を庇って怪我までした春彦に、感激し、より親近感を覚えていた。
但し、道場通いは、いつまた我を忘れてしまうかわからなかったので、佳奈が傍にいる時に限定し、1月に2,3回にすることにしていた。

「えー、なんで私が、はるたちの稽古に付き合わなくちゃいけないのよ。」
佳奈は、最初は口を曲げて文句を言っていたが、春彦がおかしくなるのを一番良く感じるのは佳奈だからと説明すると、しぶしぶと了承した。
内心では、逆に自分しか春彦のことがわからないのだという優越感に酔いしれていた。
「来週の火曜か木曜日、どうかな。
 菅井に聞いておいてくれよな。」
俊介は、そういって春彦の肩をポンと叩いた。
「わかった、あとで聞いてみる。」
春彦は、また俊介と以前のように付き合えるのが嬉しくて笑顔で応えた。

そして、瞬く間に1月が立ったある日、春彦は同じクラスの男子学生からバンドに入らないかと声を掛けられた。
声をかけてきたのは、矢田部詩音という同級生で、軽音部の部員だった。
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