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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
それから2日間ほど春彦は学校を休み、週末の土日と祭日を合わせ1週間近く自宅で治療に専念していた。
その甲斐があってか、また、若さという回復力で、医者も驚くほど傷も順調に癒え、多少、歩くのにぎこちなさはあるが、頭の傷は目立たなく、腕の傷も包帯を外し、大きな絆創膏に代わり、ブラウスを着れば隠れて目立たなくなっていた。
また、休んでいる日は毎日のように佳奈が学校のノートやお菓子を持って見舞いに来ていた。
佳奈が見舞に来ると舞は喜んでお茶にお菓子を出し、3人で仲良く、もっとも佳奈と舞が中心にいろいろな話に花を咲かせていた。

「まったく、母さんは俺の見舞だっていうことを忘れて、佳奈のこと茶飲み友達と間違えているんじゃないか?
 佳奈も相手してると疲れるだろう?」
春彦は春彦の部屋で佳奈と二人きりの時に、呆れたように言った。
「そんなことないよ。
 舞さんとのお喋り、とっても面白いわよ。
 たまに、はるの小さな頃の話もしてくれるし。
 そうそう、ザリガニに指挟まれて、大泣きしたんだって?」
佳奈は、舞から聞いたことを思いだし、楽しそうに言った。
「大泣きは、大げさだよ。
 でも、ザリガニの奴、本気で挟みやがって、指がちぎれるかと思うみたいに痛かったのは確かだよ。
 だって、小学2年生の時だっけな。
 親父も焦って、引きはがしてくれたっけ。」
春彦は昔を思い出すように言った。
佳奈は、昔を思い出し懐かしがっている春彦の顔を眺めていた。
「そうだ。
 はるのお父さん、春繁さん、まだ、海外から帰ってこないの?」
「え?」
春彦は意気なり父の話になり、一瞬、たじろいだ。

春彦の父は、転校してからしばらくして、突然、他界してしまった。
春彦は、そのことを友達には、父親は海外に転勤になって日本にいないと言っていた。
舞は、春彦に何でそんな嘘をつくのかとある時、尋ねてみた。
春彦は、同じように父を亡くした同級生がいて、クラスの友達から同情され会話ひとつでも遠慮している態度を見ていた。
で、自分もそう周りから遠慮や同情されるのは嫌なので、仕事で日本にいないということにしていると舞に説明した。
舞は、しばらくどうしたものかと考えていたが、精神的に安定し、本人から本当のことを言いだすまで、春彦の話に付き合うことし、学校にも、進んで父親がいないことを説明しないで欲しい、また、春彦が何か言っても聞き流してくれるように頼んでいた。
それは、高校生になってもそのままだった。
当然、佳奈は、春彦の父親は海外に住んでいて、年に2,3回くらいしかあっていないという話をまともに受けていた。

「そうだね。
 なんか向うで偉くなっちゃって、まだしばらく帰って来れないみたいだよ。」
「そうなんだ…。
 でも、寂しくない?
 舞さんも寂しいんじゃないかしら。」
「まあね。
 でも、自由な人だから、母さんも諦めてるんじゃないかな。」
「そうなの……。」
佳奈は腑に落ちない顔をしていた。

「それより、もうすぐ学年末のテストか。
 今年は、年明け早々、たいへんな年だな。」
「そうね、いきなり怪我して。
 もう、馬鹿はしないようにしてね。」
「はいはい。
 では、テストに出る範囲を教えてください。
 これで赤点なんか取った日には、母さんに殺されてしまいまするー。」
春彦は、佳奈に向かって手を合わせ、拝みながら言った。
「もう。」
佳奈は、そんな春彦の態度を見て笑い転げていた。
「ん?」
不意に佳奈は春彦の視線を感じた。
「いや、今日は何か感じが違うなと思って。」
春彦は、佳奈の髪を見ながら言った。
佳奈は、いつも髪を後ろに束ねるポニーテールにしているのだが、今日は束ねていなかった。
「え?
 ああ、髪型でしょ。
 たまには普通に下ろしてもいいかなって。
 変?」
佳奈は頭を左右振って見せた。
佳奈の髪はしなやかに風に舞、ほのかにシャンプーの香りが春彦の鼻をくすぐった。
「でも、触らせないからね。」
春彦が言う前に佳奈がそう言って制した。
むかしから春彦はよく佳奈の髪を触りたがり、佳奈に笑って拒否されていた。
「いや、もうそんな子供のときじゃないんだし……。」
春彦はそう言いながらも本心は、佳奈のしなやかな黒髪に触れてみたかった。

五商との件は、不思議なくらい話にもならなかった。
本来なら、怪我したほうが何かしら学校にアクションをしてくるのだが、五商の方からは一切何もなかった。
春彦の方は、春彦が怪我の理由を言わなく、また、ナイフで刺されたなど口のも出さなかったし、佳奈たちも一切口をつぐんでいたので、学校には事件のことは知られていなかった。
ただ、あの日を境に、あんなにうるさく西高の周りにいた五商の不良グループの姿が一切見えなくなった。
西高の教師は首を傾げ、どこか人気のないところに潜ったのかと噂をしていたが、結局、そういうこともなく、その内、いつもの平和な風景に戻っていた。

五商の方は、佳奈が五商にいる友人の田中に状況を聞いていた。
田中は、細かくはわからないようだが、やはりあの日を境に不良グループは解散し、皆、何か怖いものを見たのか、おとなしくなったそうだった。
リーダー格の陣は、肩の脱臼、肘の骨折、腕の靭帯破損など右腕に全治数カ月の大怪我を追い、腕をギプスで固定し、登校し始めたそうだった。
そして、他のメンバーと同じように、心を入れ替えたように服装、髪型も普通になり、まじめな学生になったとのことだった。
最初は、陣の両親があまりの怪我で、学校に乗り込もうとしたが、陣の方が相手を金属バットで殴ったとか、ナイフで刺したと正直に告白したため、どう考えても自分たちに分が悪いので、だんまりを決め込んだようだった。
田中は、春彦のことを心配していたが、佳奈が笑いながら、「春彦は丈夫だから大丈夫」といった言葉を聞いて、胸をなでおろしていた。

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