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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第5章 悠美の楽しみ
それから、数か月後のある日。
いつもの様に、悠美が泊りがけで遊びに来ていた。
「今日は、繁おじちゃん、何時ごろ帰ってくるの?」
「うーん、いつもと、同じ頃だと思うわよ。
 今日、悠美が来るのを知っているから、てけてけっと帰って来ると思うわ。」
「え?
 てけてけ?」
悠美が怪訝そうに聞き直した。
「ああ、『てけてけ』って、繁さんがたまに言うのよ。
 てけてけ歩いて帰るからって。
 寄り道しないで真っ直ぐ帰って来るっていう意味らしいわよ。
 本当かしら。」
「変なの。」
二人は、面白そうに笑った。
そうするうちに、悠美がじっと舞を見つめ、不思議そうな顔をしていた。
「ん?
 なあに?」
「うーん
 何か今日の舞ちゃん、いつもと違うなって。
 どこがって言われても困るけど…。」
「どこが?」
舞が笑いながら聞いた。
「だから、どこがって聞かれても困るって言ったじゃないの。」
悠美は、困った顔をした。
話し方や、立ち振る舞いは、いつもの舞なのだが、悠美には、どこかがいつもと違うように思えて仕方なかった。
どこが違うか、一生懸命考えている悠美を、舞は笑いながら眺めていた。
そして、ふと、思いっ立ったように悠美に話し始めた。
「ねえ、悠美。
 内緒話していい?」
「え?
 なに?」
「誰にも内緒。
 繁さんにも、絶対内緒よ。
 私が、喋ってもいいわよっていうまで、絶対に内緒よ。」
悠美は、真剣な顔をして、頷いた。
「絶対に、言わないわ。」
「実はね、ひょっとしたら、私のお腹に赤ちゃんがいるかもしれないの。」
「え?」
悠美はびっくりして、舞のお腹の辺りをまじまじ見つめた。
だが、舞のお腹はいつものように細くて、赤ちゃんがいるようには見えなかった。
「馬鹿ね、最初から大きな赤ちゃんが入っているわけじゃないのよ。
 お腹の中で、ゆっくり育っていくのよ。」
「えー、すごい。
 舞ちゃん、おめでとう。」
悠美が、感激しながら言うと、舞は、手を横に振った。
「ううん。
 まだ、本当かどうか、わからないの。
 お医者さんに行かないとね。
 でも、何だか怖くて、お医者さんにいけないのよ。」
「ええ?
 舞ちゃん、お医者さん嫌いだっけ?」
「うーん、あんまり。
 だって、『違いますよ』なんて言われたら、がっかりじゃない。
 だから、どうしようかって。」
「舞ちゃん、お医者さんに行きなさい!
 絶対、赤ちゃんいるから。
 だから、安心して、ちゃんと診てもらって。」
悠美が真剣な顔をして言った。
「そうね、じゃあ、休み明けに行ってみるわね。」
「うん。」
悠美は嬉しそうに頷いた。
「でも、結果がわかるまでは、絶対内緒よ。
 特に、繁さんには、ちゃんとわかってから伝えるんだからね。」
「わかってるわ。」
「じゃあ、指切りできる?」
「うん。
 指切りげんまんね。」
舞は悠美の小さな指と指切りをした。
「わかったら、すぐに教えてね。」
「うふふふ。
 繁さんの次にね。」
「えー、でも仕方ないか…。」
こういうところは、幼くても分別がわかる悠美だった。

舞は、医者に行こうと思ってはいたが、ためらっていて、無意識に悠美に背中を押してもらいたかった自分に笑った。
「さあ、じゃあ、この話はここでおしまい。
 今晩、何が食べたい?」
「うーん、何がいいかな?」
「オムライスなんか、どう?」
悠美は顔を輝かして頷いた。
「うん、舞ちゃんのオムライス、大好き!
 やった、やった、おっ、むっ、ライスー。」
小躍りして喜んでいる悠美を見ながら、舞もうれしそうに笑っていた。

それから、次の日、家に帰るまで、悠美は一生懸命、舞との約束を守るため、格闘していた。
いつもの様に、春繁に甘えたり、遊んだり、また、舞の美味しい料理に幸せいっぱいだったが、つい、舞の赤ちゃんのことを言いそうになって、慌てて口を押えたりしていた。
舞は、そんな悠美を、笑いをこらえながら見ていた。
「なあ、なんか今日の悠美、変じゃなかったか?」
悠美が家に帰った後、春繁が舞に尋ねた程だった。
「え?
 そうかしら?
 いつもと、変わらないんじゃないの?」
舞は、内心、笑いをこらえながら、普通の顔で答えた。
「おかしいな、なんか、隠してるみたいな…。」
「さあさあ、ご飯食べて、寝ましょう。」
「う、うん」
釈然としない顔の春繁を後目に、舞は小さく舌を出し、笑っていた。

次の日、春繁が帰って来ると、いつもの様に、舞は笑顔で迎えた。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
そして、いきなり舞が切り出した。
「あのね、今日、お医者さんに行ってきたの。」
「ん?
 どうした、どこか具合が悪いのか?」
春繁は、心配そうに尋ねた。
「ううん。」
舞は、顔を横に振った。
「え?
 じゃあ、どうして?」
困った顔の春繁を見て、舞は苦笑しながら言った。
「このにぶちん。
 健康なのに、お医者さんに行くって、健康診断以外になにがありますか?」
「え?」
春繁は、少し考えた後、思い当たったように、顔が見る見ると驚きの顔に変っていった。
「もしかして、子供か?」
興奮気味にたずねると
「ピンポーン、罰ゲーム寸前に当たったわよ。」
舞は、笑いながら答えた。
「やったー、舞!」
「きゃっ、ちょっと…。」
春繁は、舞を抱き上げ、嬉しさを爆発させた。
舞は、照れ臭そうに、だが、なすがままにされていた。
「男の子か?女の子か?」
「そんなの、まだ、わかるわけないじゃない。
 2カ月目だって。
 だから、あんまり、振り回さないで。」
「おお、ごめん、ごめん。
 具合、大丈夫か?」
「こんなに振り回して、遅いっていうの。」
春繁は、しまったという顔をして頭をかいた。
そんな春繁を見ながら、舞は大笑いした。
「いつから、わかったの?」
「うーん、ここ1、2週間かな?
 体調の波が、ここのところおかしかったから。」
「教えてくれれば、一緒に病院にいったのに。」
残念そうに言う春繁を見ながら笑いながら言葉をつなげた。
「だって、病院で、こんなに振り回されたら、恥かしいでしょ。
 それに、ちゃんとわかってから、報告したかったの。
 でもね、病院に行くのが、なんかこう、怖くてどうしようかと思っていて、悠美に相談したのよ。
 そうしたら、悠美がね、赤ちゃんがちゃんといるから、お医者さんに行きなさいって。
 私の背中を押してくれたのよ。」
「そうだったんだ…。
 あっ、それって、もしかして?」
「うん、一昨日、遊びに来た時に。
 繁さんには絶対に内緒よって、約束して。
 そうしたら、悠美ってば、一生懸命、しゃべりそうになると口を押えていたのよ~!」
舞は、楽しそうにケラケラと笑った。
「それで、悠美の様子がおかしかったのか。」
春繁は納得した様に言った。
「悠美には、可愛そうだったかしら。」
「そうだね。
 でも、悠美が背中を押ししてくれたから、舞もお医者さんに行けたんだろう。
 今度、遊びに来た時に美味しいもの食べさせて、おもちゃもたくさん買ってやろう。」
「そうね、そうしてあげましょう。
 そうそう、明日、悠美に電話して教えてあげなくっちゃ。」
「それもそうだけど、舞のご両親には?」
「うん、まだよ。
 だって、繁さんが一番って決めてたから。
 明日、ゆっくり、繁さんのご両親と、私の両親にも電話で伝えておくわ。」
「わかった。」
「さあさあ、遅くなっちゃったけど、夕飯にしましょう。 
 私はお酒を控えるけど、繁さんは気にしないでね。」
「あ、僕も、いろいろ運んだり、手伝うからね。」
「はーい、よろしくお願いします。」
「あっ」
春繁は何か重大なことを思いだしたように、声を上げた。
「なに?」
舞が怪訝そうに聞くと、春繁は舞の耳元でこっそりつぶやいた。
「夜は?」
「もう。」
舞は、呆れたように答えたが、お預けを食った子供のような顔をしている春繁を見て、笑いころげた。

それから数カ月たち、舞は安定期に入っていた。
そして、久し振りに悠美が遊びに来ていた。
「悠美、最近、全然、遊びに来なかったじゃないの。
 どうしたの?
 繁さんも寂しがってたわよ。」
「うん。
 お母さんから、遊びにいっちゃダメっていわれていたの。
 特に、初めのうちは舞ちゃん大変だから、落ち着くまでダメって。
 やっと、この前、舞ちゃんから電話で落ち着いて来たって言われたからって、やっと、いいわよって。」
悠美は、不満げに言った。
「そうだったの、ごめんね。
 でも、もう大丈夫だから、今日は久しぶりに美味しいもの食べようね。」
「うん。」
ぱっと、悠美は顔を輝かせた。
「えっとねー、久し振りに、舞ちゃんの卵焼きと、カレーがいいな。」
「オッケー、じゃあ、腕によりをかけて、美味しいもの作っちゃおー。」
「わーい。」
悠美は、そう言いながら、舞の大きくなってきているお腹をじっと見た。
「ほんとうだ、もう、どこから見ても赤ちゃんいるね。」
「そうよ。
 でも、まだまだ、大きくなるから。」
「へー、そうなんだ。」
「あら?」
「?」
急に黙って、お腹に手をやる舞を悠美は心配そうに見つめていた。
「ちょっと、お腹の中の赤ちゃんが動いたみたい。」
「えー、動くの?
 じっとして、寝てるんじゃないの?」
「うふふ、赤ちゃんもお腹の中で起きて動いたり、眠ったりするのよ。
 そうそう、お腹の外の声も聞こえるんですって。
 だから、お腹の中にいる時にたくさん話しかけると、生まれてから、すぐに仲良しになれるんですって。」
「えっ?
 ほんとう?
 じゃあ、私、話しかけていい?」
「いいわよ、どうぞ。」
悠美は、少し緊張の面持ちで話し始めた。
「赤ちゃん、はじめまして。
 私は、悠美っていうんだよ。
 早く大きくなって、元気に生まれてきてね。
 そうしたら、たくさん遊ぼうね。
 待ってるからねー。」
悠美が、そうお腹に話しかけると「あら?」と、また舞がお腹をさすった。
「また、動いたわ。
 この子、悠美の声に反応しているみたい。」
そういうと、悠美は、大喜びで、また話しかけた。
「あのね、あのね。
 私ね、舞ちゃんと繁おじちゃんと大の仲良しなの。
 だから、あなととも、絶対、仲良しになるからね。」
「ふふふ、じゃあ、これからは、ちょくちょくと遊びに来て、声を掛けてあげてちょうだいね。」
「うん。」
悠美は、万遍の笑顔で答えた。
「さあ、じゃあ、夕飯の準備をしましょう。
 悠美、いろいろ手伝ってね。」
「うん。
 私、ニンジンやジャガイモの皮も剥けるのよ。
 それに、玉ねぎの皮も。」
「まあ、それじゃ、たくさん、手伝ってもらっちゃお。」
「うん。」

二人が仲良く夕飯の支度をしているところに、春繁が帰ってきた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
小さなエプロン姿の悠美が、玄関に出迎えた。
「おっ?
 悠美、来たね。
 最近、全然来なくて、寂しかったんだよ。
 今まで、どうかしたのかな?」
春繁がそう悠美に尋ねると、玄関から出てきた悠美が理由を話した。
「悠美ね、お母さんに、私が安定期に入るまで、遊びに行っちゃダメって言われていたんだって、ねー。」
そう悠美に投げかけると、悠美は、神妙な面持ちで頷いた。
「そうなんだ、じゃあ、悠美も寂しかったろう。」
「うん。」
少し悲しそうな顔をして頷く悠美の頭を、春繁は優しく撫でた。
「じゃあ、もう大丈夫だから、たくさん、遊ぼうね。」
「うん!」
悠美ははちきれんばかりの笑顔をみせてうなずいた。
「さあ、悠美。
 繁さん帰ってきたから、早く準備しちゃいましょう。」
「はーい。」
舞と悠美が仲良く台所に入っていく姿を春繁はほのぼのした気分で見送った。

その夜は、久し振りに3人の食卓で、にぎやかだった。
「そうそう、二人の楽しそうな声が台所から外に聞こえていたよ。」
「そうなのよ、悠美ったら、上手にニンジンやジャガイモの皮をむいてくれたのよ。
 小学1年生で、すごいわよ。」
「えー、本当か?」
悠美は得意げな顔をして、頷いた。
「あのね、お母さんがやってるのを見て、やらせてって。
 そうしたら、結構、上手にできたのよ。」
「すごいなー。」
「それより、今日、もっとすごいことがあったのよ。
 ねー、舞ちゃん。」
「そうそう。
 なんと、お腹の子が動いたの」
「えー、本当か?」
春繁は、驚いた顔をして見せた。
「うん、本当だって。
 それでね、私が話しかけたら、また、動いたんだって。」
悠美が嬉しそうに話に割って入ってきた。
「そうなのよ。
 悠美が話しかけると、それに答えるように動くのよ、この子。」
そういって、舞はまたお腹を摩ってみた。
「でも、もう、お休みタイムみたい。
 静かになってるわ。」
「早寝、早起きのいい子ね。」
悠美が、真顔で言うのを、春繁と舞は、思わず吹き出して聞いていた。
「でも、これで、また楽しみが増えたわ。
 舞ちゃんの美味しいご飯でしょ、繁おじちゃんと遊ぶことでしょ。
 それと、赤ちゃんとお話すること。
 早く生まれてこないかな。
 そうしたら、たくさんたくさん遊べるのに。」
「まあ、生まれてくるのは来年よ。
 そんなに早く生まれてきたら、たいへんなんだから。」
「はーい。
 でも、楽しみ、楽しみ。」
「うふふ、じゃあ、それまで、何をして遊ぶか、考えておいてね。」
「うん。」

夕飯も終わり、先に寝ている春繁と悠美の様子を見て自分も寝ようとした時、舞は、いつもと布団の配置が違うことに気が付いた。
いつもは、舞と、春繁の間に悠美の布団があるのだが、今日は、春繁の布団が真ん中で、舞と悠美が左右に分かれていた。
「あら?」
「これは、悠美に言われたんだよ。」
「あら、繁さん、起きてたの?」
「ああ、悠美がね、夜中、間違えて赤ちゃん蹴ったりしたら大変だから、僕に壁になってくれって。」
「まあ、この娘ったら。」
舞は、微笑んで、そっと、悠美の布団に近づき、寝ている悠美のおでこにキスをした。
悠美は、ぐっすり寝込んでいたが、キスされて嬉しそうな顔をしていた。
「この娘、ほんとうに可愛いわ。」
「そうだね、お腹の子供が生まれたら、きっと、仲良くしてくれるな。」
「そうね、今日も、何かの度に、私のお腹に話しかけていたのよ。」
そう舞が言うと、春繁は、急に思い出したように起き上がり、舞のお腹に話しかけた。
「おーい、お父さんだよ。
 お父さんも、忘れないでな。」
「あー、話しかけるの、忘れてたんだ。」
「面目ない。」
舞が、けらけらと笑うと、春繁は頭をかきながら同じように笑った。
この時、二人は悠美の『仲良く』の度合いを甘く見ていた。
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