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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第5章 悠美の楽しみ
「ねえ、ねえ、舞ちゃん。
 舞ちゃんてば!」
悠美の声に、舞は、はっとした。
「どうしたの?
 さっきから呼んでも、ぼーっとしていて。」
悠美が心配そうに舞の顔を覗き込んでいた。
「ごめんごめん。
 つい、考え事しちゃって。」
(今晩、悠美が泊まりに来るからって、昨晩、繁さん張り切っちゃったから、つい、昔のことを思いだしたのかしら…)
舞は、少し恥ずかしそうにしていた。
「なんか変な舞ちゃん。」
二人がゼリーを食べていると、玄関から春繁の声が聞えた。
「ただいま。
 おっ、お客様だな。」
「お帰りー!!」
舞と悠美が声を合わせて言った。
「おー、ただいまー!」
春繁は、負けじと大きな声で言い直した。
「今日は、早かったわね。」
舞は時計を見た。
時計は3時を指していた。
「ああ、今日は仕事の切りが良かったので、さっさとずらかって来たんだ。
 お!
 ゼリーか、美味しそうだな。
 僕の分、あるかな。」
背広を脱ぎながら、春繁はテーブルの上のゼリーを目ざとく見つけた。
「大丈夫よ。
 ちゃんと繁さんの分、ちゃんとあるから。」
「いらないなら、私が食べるからね。
 舞ちゃん、お手製のゼリー、すごく美味しいんだから。」
舞と悠美は笑いながら言った。
「じゃあ、汗かいているから、シャワーを浴びて、さっぱりしてからいただこうかな。」
「そうね、まだ、お酒には早い時間よね。」
舞にそういわれ、苦笑いしながら、春繁は浴室に入っていった。

「なあ、舞ちゃん。」
春繫が浴室に消えて言った後、悠美は真面目な顔をして舞を見あげた。
「ん?
 なあに?」
「あのね。
 繁おじちゃんて、ギター上手なんでしょ?」
「それはそうよ。
 ベースやギターは上手よ。」
「え?ベース?」
舞には悠美の頭に「?」マークが浮かんだように見えた。
「あはははは。
 悠美、頭の上に「?」マークが3つくらい点灯しているわ。
 ベースってね、ギターの一種。
 細かいことは、うーん……。
 その内、音楽の授業でやるでしょう。」
「うっ。
 何か、舞ちゃんにごまかされたような……。」
舞は、笑いながら、悠美を抱きしめた。
「ごめんごめん。
 話を戻すけど、繁さん、上手よ。
 特に、あの鳥さんのギターはね。」
「ほんと?
 じゃあ、後で頼んだら弾いてくれるかな。
 私、聞いてみたいの。」
「大丈夫でしょ。
 悠美の頼みなら、繁さん、喜んで弾いてくれるわよ。」
「ほんと?」
悠美は、舞の腕の中で寄りかかりながら、嬉しそうな顔をした。
「ほんとよ。」
そういって、舞は悠美の頭をそっと撫でていた。
少しすると、春繁は浴室から出てきた。
「繁さん、暑いでしょ。
扇風機、持って行っていいからね。」
春繁は、舞にそう言われ、扇風機を持って、窓際に座った。
季節は、夏に入り昼間は暑かったが、春繁たちのアパートは少し高台にあり、また部屋が2階だったので、扇風機が無くても風が入り結構涼しかった。
「繁おじちゃん、麦茶を持ってきたよ。」
悠美はそう言いながら、お盆の上の麦茶のコップとゼリーを落とさないようにそーっと持ってきた。
「おっ!
 気が利くじゃない。
 嬉しいな。
 ありがとう、悠美。」
そう言って、春繁は悠美の持つお盆の上から麦茶のコップとゼリー、それを食べるスプーンを受け取り、テーブルの上に置いた。
そして、コップから麦茶を半分くらい飲んで、ふーっと声を上げた。
「うん、喉が渇いていたから、麦茶がおいしい。
 それに、どれどれ、手づくりのゼリーも頂こうかな。」
春繁はゼリーに手を伸ばそうとしたが、ふと、気配を感じ顔を上げたところ、悠美と目が合った。
「あれ?
 悠美、まだ、ゼリー食べてなかったんだっけ?
 それとも、おかわりかな?」
春繁は笑いながら悠美に声をかけた。
悠美は首を振って言った。
「ううん。
 でも、おかわりも魅力的だけど……。」
「はい、あーん。
 まだ、スプーンに口をつけていないから大丈夫だよ。」
そういって春繁はゼリーをスプーンによそって、悠美の顔の前に差し出した。
悠美は、ちょっと考えてから、嬉しそうにスプーンの上のゼリーを頬張った。
「もっと、食べるかな?」
そういって春繁は、また、ゼリーをすくおうとした。
「あっ、繁おじちゃん違うの。
 おいしかったけど…。」
最後の『おいしかったの』は小声になっていた。
「ん?」
「あのね、お願いがあるの。」
「なに?」
「あのね。
 あのギター弾いてほしいの。」
そういって悠美はギターケースの方を指さした。
「え?
 いきなりどうしたの?」
春繁が不思議そうに言った。
「ううん。
 さっきね、悠美にそのギターを見せたのよ。」
舞が、二人の会話に割って入ってきた。
「それでね、悠美ったらギターに興味を持ってね。
 だから、繁さんが帰ってきたら弾いてもらったらって話をしていたのよ。
 それに、ギターのこと、いろいろと教えてほしいって。
 ね。」
そう言って、舞は悠美にウィンクして見せた。
「うん、そうなの。
 だから、繁おじちゃん、ギター弾いてみて。」
「そうなんだ。
 わかったけど、まずは、ゼリーを食べさせてね。」
春繁がそう言うと、悠美はにっこり笑って頷いて見せた。

「さて、じゃあ、始めますか。」
ゼリーを食べ終わり、人心地着いた後、春繁は悠美の羨望の眼差しを一身に受け、ギターケースからハミングバードを取り出した。
そして、ケースの中の音叉を取り出し、テーブルの角に音叉を軽くぶつけて、音叉の下の丸くなっているところをピックガードに当てた。
するとビーンと音叉の振動が音になっていった。
そして、春繁はその音叉の音と合わせるように弦を鳴らし、ネックの先のペグというつまみを回し、弦の音を調整していた。
「?」
悠美は、春繁が何をやっているのかわからず、ぼ-っと見ていた。
「あははは。
 悠美、また、頭の上にはてなマークが見えるわよ。」
舞が笑いながら悠美の横に座った。
「うん
 ねえ、繁おじちゃん、いったい何をしてるの?」
「あれはね、チューニングっていうのよ。
 ドレミが正しい音でなる様にってね。
 ギターの弦て、ゴムみたいでね、伸びたり縮んだりして、音がドレミにならなくなるときがあるのよ。
 だから、弾く前にああやって、音を正しくするの。
 それをチューニングっていうのよ。」
「え?
 だって、さっき舞ちゃん、何にもしないで音ならしたじゃない。」
「ああ、あれ?
 悠美にギターの音を聞かせた上げたかったから。
 それに、チューニングって、難しいんだから。」
「ふーん、難しいんだ。」
悠美が感心していると、春繁は笑った。
「違うよ。
 舞は、単に面倒がってやらないだけ。
 誰にでもできるよ。」
「えー?!
 舞ちゃん!」
悠美は、そういうと舞を睨みつけた。
舞は、ペロっと舌を出して惚けたふりをした。
「さてと、じゃあ、悠美。
 少し教えてあげる。
 弦をこうやって押さえて、つま弾くとドレミが出来るよ。」
そう言って、春繫はドレミファソラシドと弦を鳴らして見せた。
「わー、本当だ。
 ドレミファソラシドだ!」
そう言って、悠美は目を輝かせた。
それからしばらく春繁は悠美に簡単なギターの弾き方や、実際に曲を弾いて見せた。
「うーん。
 折角、ギターを出したから、たまには、舞の歌も聞きたいな。」
「えっ?
 いやよ、恥かしい。」
「え?
 舞ちゃんの歌?
 私も聞いてみたい。」
「い、や、よ。
 繁さんも変なこと言わないでよ。」
「えー、聞いてみたい。」
しばらく悠美のおねだりされ、舞は根負けした。
「じゃあ、仕方ないわね。
 ちょっとだけよ。」
「わーい。」
「おっ、待ってました!!」
春繁も悠美に合わせて楽しそうに言った。
「もう、繁さんまで…。」
舞は、苦笑いしながら、立ち上がり、息を吸い込み、発声練習を始めた。
「あー、あー、あー、ああー。」
舞のその声量に悠美は目を丸くした。
「何、驚いているの?
 久し振りだから、準備運動しなくちゃね。」
その舞の低い音域から高い音域まで自在に声を操る舞の姿を悠美は目を皿のようにして見つめていた。
「舞ちゃん、すごい……。」
その悠美の声が聞えたのか、舞は悠美の方にウィンクして見せた。
「さて、じゃあ、いいかな。
 最初は何にしようか?」
「そうね、カーペンタータワーズのトップオブワールドは?」
「いいね。」
そう言って春繁はギターで伴奏を始め、それに合わせ、きれいな澄んだ声で楽しそうに舞が歌い始めた。
その二人のギターと歌もそうだが、楽しそうな二人を見て、悠美は訳もなく感激していた。
曲が終わると、今度は悠美がせっついてきた・
「ねえねえ、次は?」
「うーん、悠美はシングって曲知ってる?」
「あっ、学校で一度聞かせてもらった。」
「じゃあ、それにしよう。」
そして、また二人は楽しそうにセッションを始めた。
舞は悠美を抱き寄せ、二人で体を揺らせて歌っていた。
「わー、歌って楽しいー!」
曲が終わると、悠美は、ますます目を輝かせていた。
「繁おじちゃんのギターもすごくいい音だし、舞ちゃんの歌もとっても素敵!」
悠美は小躍りしながら舞にまとわりついた。
「じゃあ、次は、久し振りにあの曲を!」
「え?」
春繁がそう言うと、舞は一瞬びっくりした顔をしたが、すぐにうなずいた。


「ねえ、繁さん。
 私ね、昔、一度だけテレビで聞いて忘れられない歌があるの。」
「え?
 なんていう歌?」
春彦と舞はいつもの公園でセッションしていた。
「それがね、歌の題名、憶えていないの。
もう、随分前で、何とかっていうシャンソン歌手の歌で、前半と後半の二部構成みたいになっていて、前半は、なんか怖くて悲しい歌なの。
でも、後半は、すごく優しい歌なの。
もう、フレーズもところどころしか思い出せないんだけど、なぜかずっと心に残っているのよ。」
「あっ、もしかして、昔やっていた夕日放送の歌番組でステージ101匹わんちゃん大集合とかいう番組じゃない?」
「あ!
 そうそう、繁さんも知ってるの?」
「うん、確か一度だけどゲストで出演して、僕もとぎれとぎれだけど、すごく心に残っているんだ。
 たしか、反戦歌で前半は、戦場でひたすら家に帰りたいって祈って、後半は『風になって見守っていてあげる』とかじゃなかったっけ?」
「そう、それよ!
 繁さんも知っていたんだ。
 あの曲がもう一度聞きたいな。」
「うーん、曲名も歌手もわからないからな……。
 じゃあさ、僕たちで思い出しながら作るってどう?」
「え?
 それって、すごく素敵。
 素敵よ、繁さん。」
それから、二人は1カ月以上かけ自分達の記憶を頼りに組み立てていった二人だけの曲だった。

舞が歌い終わると、悠美は複雑な顔をしていた。
「今の歌、私、前半は怖くて嫌だな。
 でも、後半は、すごく優しくて大好き!」
「そうだね、この歌は、反戦の歌だからね。
 悠美には難しかったかな。」
春繁は優しい顔で悠美の頭を撫でた。
「ハンセン?」
「そう、戦争って知ってる?」
今度は、舞が悠美の顔を覗き込みながら言った。
「うん。
 授業で習った。
 国同士が喧嘩して、人が死んじゃうんでしょ?」
「そうね。
 でも、一人ひとりは本当は戦いたくないのよ。
 痛い思いするより、悲しい思いをするより、相手のことを思いやって、仲良く楽しくしたいはずでしょ?」
舞がそう言うと、悠美は強く頷いた。
「だからね、戦争や争いをしてはいけませんよ、って訴えている歌なの。」
「ふーん。
 そうなんだ。
だから、後半は、優しいのね。」
「うん。」
舞は、そういって頷きながら笑顔を見せた。
「悠美も、ずーっと、優しい子でいてね。」
「うん!」
悠美は、力いっぱい頷いた。

ドンドンドン!
いきなりドアを叩く音と年配の女性の大きな声が聞えた。
「立花さん!
 下の階の河合だけど!」
その声を聞いて春繁と舞は顔を見合わせた。
「うるさいって言う文句かしら。」
「そうだな。
 じゃあ、僕が謝って来るよ。」
「あっ、繁さん、いいわよ。
 女性同士、私が謝って来るから。」
そう言って、舞は春繁を制して立ち上がった。
悠美は何事かとびっくりした様だった。
「大丈夫よ、悠美。
 あなたも繁さんとここに居てね。」
そういうと『はーい』と返事をしながら舞は玄関のドアのところに行き、そっと、ドアを開けた。
「河合さん、ごめんなさい、歌、喧しかったですか?」
舞は、済まなそうな声で答えた。
「喧しいって、違うわよ。
まったく、歌う時には声をかけてって、前、言ったじゃないの。」
河合と名乗った女性は50代くらいで恰幅のいい女性だった。
「え?」
「私、あなたの歌のファンなのよ。
 ちゃんと教えてくれなきゃ。
 ほら。」
そう言うと、手に持っていた日本酒を差し出した。
「これ、差し入れね。
 だから、私にもあなたの歌を聞かせて頂戴。」
河合は、そう言うとニコッと笑った。
「ええー!!」
舞は、思いもよらぬ展開に驚いて呆然としてしまった。
「ねえ、舞ちゃん、どうしたの?」
心配になって悠美は、舞の傍に来て手を引いた。
「あら?
 この子は、あんたらの子供かい?」
「いやだ、おばさん。
 悠美は、私の姪っこよ。」
「そうかい。
 たまに見かけるから、誰かと思ってたわ。
 ほんと、めんこい娘だね。」
河合は笑顔で悠美の頭を撫でながら言った。
「ねえ、舞ちゃん。
 “めんこい”って、なあに?」
悠美は不思議そうな顔をした。
「めんこいってね、可愛いってことよ。」
舞は、悠美の鼻のあたまを軽く指で触りながら言った。
「……。」
悠美は、照れ笑いを浮かべて、河合と舞を見た。
「で、いいでしょ。
 あんたの歌を聞かせて頂戴よ。」
「ええー、そんな、人に聞かせるなんて……。」
舞がためらっていると、河合の後ろに若い夫婦がやってきた。
「立花さん、私達にも聞かせて。
 急だったので、家にあったお菓子で申し訳ないんだけど。」
「あら、平井さんまで。」
見ると、隣に住んでいる舞と春繁と同じ年齢位の平井夫妻だった。
「ほら、平日の昼間、立花さん、たまに歌っているじゃないですか。
 すごく上手で、きれいな声なので、是非、聴かせていただこうと思って機会をうかがっていたんですよ。」
「僕は、妻に言われていたのですが、先程の歌声を聞いて、是非と思って。」
夫婦は交代交代に舞に話しかけてきた。
「わっ、またお客さんだ。」
悠美がおどろいて声を上げた。
「あら、可愛いお子さんですね。」
「いえ、違うって。
 この子は姪っ子よ。」
舞は、悠美の説明をしながらこの場をどうしたものかと思いあぐねていた。
そうすると、今度は初老の男性が、夫婦の後ろから声をかけてきた。
「わしも、是非聞かせてくれ。」
「あら、玉井のおじさん!」
玉井は、やはり舞たちの斜め下の部屋に住んでいる男性だった。
「ちょうど、いいものが届いたんで、持ってきたよ。」
玉井は、手に思っている干物と書かれた紙袋を差し出した。
「わわわ、また出た。」
「まあ。」
「私は、何もないですけれど、いいですか?
 私、旦那様のギターも聞いてみたくって。」
その横から、平井夫妻とは逆隣の若い独身の女性が声をかけてきた。
「あら、薫ちゃんまで。」
いつの間にか、舞たちの部屋の玄関口がにぎやかになっていた。
悠美は、いきなり大勢の大人が集まってきたので、目を白黒させていた。

「舞、皆さんに上がってもらえばいいじゃない。」
奥から春繁が出てきて舞に声をかけた。
「えー、繁さん。
 みんな、私の歌が聞きたいって。」
「たまにはいいんじゃない。
 ぼくも、もっと聞いていたいから。」
「繁さん!」
舞は、春繁を睨みつけたが、すぐに観念した様に、ため息をついた。
「いいわ。
 その代り、繁さんは伴奏ね。
それと、今日は宴会!!。
 どうぞ、入ってください。
 狭いけど我慢してね。」
そう言って舞は笑いだし、皆を部屋の中に招き入れた。
「え?
 じゃあ、僕、ビール買ってきますね。」
最後に、やはり斜め下の階の独身の男性が声をかけてきた。
「あら、隆くんまで。」
「結局、アパートの住人全員じゃない。」
河合はそう言って、目を丸くした。
それから、夜まで、立花家では、飲めや歌えの大騒ぎになっていた。
悠美は、最初は驚いたが、楽しそうに歌う舞や演奏する春繁、またそれを聴いていたり、楽しそうにいっしょに口ずさんでいるアパートの住人を見ているうちに、自分まで楽しくなったようで、大はしゃぎだった。
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