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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第5章 悠美の楽しみ
春繁は、そっと、悠美が寝たのかを確かめ、抱きかかえて、悠美の布団に寝かせた。
「悠美、寝たの?」
そーっと、障子を開いて舞が春繁に声をかけた。
「ああ、ぐっすりだね。」
「悠美は、寝つきが良いし、一度寝ると朝までぐっすりだから、手が掛からないわね。」
「ああ、舞も片付け終わったんだろ?
 お風呂に入って、一杯飲むか?」
「さんせーい。
 じゃあ、さっさと入ってくるわね。」
舞は、楽しそうに言って風呂場に入って行った。
しばらくして、舞がお風呂から出てくると、春繁は新聞の夕刊を読んでいた。
「繁さん、テレビつけても大丈夫よ。
 悠美、大概の音では目を覚まさないから。」
「うん。
 でも、良いテレビやっていないし、悠美の寝顔を見てる方が楽しいよ。」
「まあ。
 まるで、親ばかじゃない。」
舞は、思わず吹き出した。
「そっかな。」
少し照れくさそうに春繁は答えた。
「じゃあ、お酒の支度でもするか。」
「あっ、いいわよ。
 座っていて。
 私が用意するから。」
「そうかぁ。
 すまないな。」
そんな会話をしながら、舞は日本酒の支度をしてきた。
2つの湯飲み茶わんに日本酒を注ぎ、その一つを春繁の前に置いた。
「じゃあ、お疲れ様。」
「お疲れ様。」
二人は乾杯して、お酒を一口飲んだ。
「あー、美味しい。」
舞がそう言うと、春繁は笑いながら言った。
「酔っぱらって、悠美の上に倒れるなよ。」
「もちろん、倒れるとしたら、繁さんの上に決まっているでしょ。」
「おお、どんとこい。」
そう言って、二人は楽しそうに笑った。
「でも、今日のコロッケ、美味しかったよ。」
「食堂のと、どっちがおいしかった?」
「決まっているだろう、我家の方だよ。」
「ならば、よし!」
また二人は笑いあった。
「でも、懐いてくれていることもあるけど、悠美は可愛いわね。」
舞は、悠美の寝顔を見ながらしみじみ言った。
「さっき、二人で、洗面所で歯磨きしていたでしょ。
 まるで、親子みたいだったわよ。」
「そっちも、夕飯の片づけしているところ、仲のいい親子みたいだったぞ。」
「私たちに子供が出来たら、こんな感じかしら。」
「そうだろうな、お互い、子供が好きだからな。」
「そうね。
 そろそろ、ほしくなっちゃった。」
「僕もだよ。」
二人は目くばせして、微笑みあった。

翌朝、春繁が目を覚ますと、目の前に悠美の笑顔があった。
「繁おじちゃん、おはよう。」
「ああ、おはよう。」
春繁は、そう答えて悠美を見ると、悠美は既に洋服に着替えていた。
そして、台所の方から、舞が朝食の支度をしている音が聞えていた。
「繁おじちゃんが、一番のお寝坊さんでした。」
「あら、繁さん、起きたの?
 悠美ぃ―、まさか、繁さんを起こしちゃったの?」
「ううん、違うわよ。
 繁おじちゃん、自然に目が覚めたんだから。
 でも、起きてって思いながら、顔を見ていたんだけど…。」
そういって、悠美は小さく舌を出した。
「まったく、繁さん、仕事で疲れているんだから…。」
舞は、それ以上、悠美を怒れずに、苦笑いをした。
「ああ、大丈夫だよ。
 ぱっちり、目が覚めて、気分も爽快だから。」
春繁は、悠美の期待に添うべく、返事をした。
悠美は、にこにこしながら春繁の顔を見ていた。
「さあ、じゃあ、僕も着替えなくっちゃ。」
春繁は、そう言って起き上がり、笑っている悠美の頭を軽く撫で、着替えを始めた。
「ちょうど、朝ごはんも出来たところなの。
 繁さん、悠美、手と顔を洗ってきてね。」
「はーい。」
また、春繁と悠美は声を揃えて返事をした。
舞は、半分あきれて、肩を竦め、台所に戻って行った。
春繁と舞は洗面所で、交互に手と顔を洗って、朝食の並んでいるテーブルに座った。
「今朝は、悠美のリクエストでパンなの。」
テーブルの上には、目玉焼きやソーセージ、牛乳、それに菓子パン、惣菜パンが並んでいた。
「わーい、やったー。」
悠美はそういって、早速、中にクリームが入っていて、上にチョコレートが掛かっている菓子パンを手にとった。
「いただきまーす。」
悠美はニコニコしながら、『いただきます』をした。
「はい、召し上がれ。
 たくさん、食べてね。」
舞も、笑顔でこたえた。
春繁は、そんな二人をまじまじと見つめていた。
舞は、その視線に気が付き、尋ねた。
「ん?
 繁さん、どうかしたの?」
「いや、二人がニコニコしていると、なんだか、家の中が明るく、暖かく感じていいなぁって思ってさ。」
「あら、まるでいつもは、私が怖い顔しているようないいかたじゃない?」
舞は冗談で、少し怒った口調でいった。
「いや、そうじゃなくて、なんて言うんだろう…。」
「うん、私にもわかるから、大丈夫。
 さあ、繁さんも好きなパンを取ってね。
 繁さん、甘いのよりも、カツサンドとか卵パンとかあるからね。」
「おお、じゃあ、メロンパン。」
「何でよ!」
春繁と舞は楽しそうに笑った。
悠美もそんな二人を見て、楽しそうに笑った。
舞と春繁も思いおもいにパンを取って食べ始めると、玄関のチャイムが鳴った。
「誰だろう、こんな朝早く。」
春繁が怪訝そうに言った。
舞は、時計を見てから、悠美に話しかけた。
「ということは、誰が来たんでしょう。」
「あっ、お兄ちゃんだ。」
「たぶんね、二人で見に行こうか。」
「うん。」
舞と悠美が玄関に出て、チャイムの主を確認した。
「どちらさまでしょうか?」
悠美が大人ぶった言い方をすると
「悠美?
 僕だよ、光一。」
「光一?
 どこの光一様ですか?」
「悠美!」
玄関先で、光一の焦れた声が聞こえた。
「ほら、悠美。
 あんまり意地悪しないで、開けてあげなさい。」
「はーい。」
ドアを開けると、光一が玄関先に立っていた。
「さあ、光ちゃん、入ってね。」
舞が、そう促すと、光一は頷いて入ってきた。
「舞さん、おはようございます。」
「はい、おはよう。」
「光一か、早いな。
 さあ、上がった上がった。」
奥から春繁が顔を出し、光一を手招いた。
「あ、繁おじさん、おはようございます。」
「うん、おはよう。
 さあ、こっちに来て。」
春繁がそういうと、悠美が光一の手を引いて朝食の並んでいるテーブルに連れていき、自分の横に座らせた。
舞は、予想していたかのように、光一の分の目玉焼きや牛乳を光一の前に置いた。
「光ちゃん、朝ごはん、食べていないでしょう。
 一緒に食べましょう。」
「食べずに来たのか?
 じゃあ、お腹ペコペコだろう。
 好きなの取って食べなさい。」
光一は、一瞬、どうしようかとためらったが、すぐに、空いているお腹を感じて卵パンを手にとった。
「でも、何で僕が朝ごはん食べていないって、わかったんですか?」
光一が怪訝そうに尋ねると、舞は、悠美を指さした。
「私がね、お兄ちゃん、絶対に朝ごはん食べないで来るよって、舞ちゃんに言ったの。」
悠美が、そう言うと、光一は納得した様に頷いた。
(だって、昨日、ここに来る前に、朝ごはん食べないで行くからねって、悠美に言ったんだったよな。)
「じゃあ、いただきます。」
にこにこと元気な声でいう光一を見て、春繁と舞は、また、笑った。
「あれ?お兄ちゃん、入ってきてから、手を洗った?」
悠美が、鋭く注意した。
「あっ!」
光一は、そそくさと洗面所に行き手を洗って戻ってきた。
悠美も光一も、もう何度もこの家に来ているので、まるで、自分の家の様に振る舞っていた。
「じゃあ、もう一度。
 いただきます。」
「召し上がれ。
 ちゃんと噛んで食べるのよ。」
悠美がおせっかい焼の様に言った。
「光一も、悠美にはたじたじだな。」
春繁が愉快そうにいうと、光一は、どうしたもんかと言わんばかりに複雑な顔をした。
光一は悠美と6歳年上で、すこし、間が空いているので、悠美のことを可愛がっていた。
なので、悠美に何を言われても、別に悪い気はしないのだが、春繁にからかわれ、悠美に何か言う訳にも、また、春繁に何を言っていいのかわからず困っていた。
舞も、そんな光一の顔を見て、笑いをこらえていた。
その日は、朝食後午前中、春繁は光一と悠美を近所の公園に連れていき、キャッチボールをしたり、公園の遊具で二人を遊ばせたりしていた。
舞は、朝食の片づけや、掃除洗濯など家事を終わらせてから、公園で3人に合流した。
昼食は、昨日のカレーを食べ、午後は皆部屋で、カードゲーム等ゲーム三昧で、あっという間に夕方になっていた。
外でも、家の中でも、常に中心には悠美がいて、屈託のない笑顔で楽しんでいた。
「さあ、光ちゃんに悠美は、そろそろお家に帰らなくっちゃ。」
「はーい。」
舞がそういうと、二人はしぶしぶ、返事をした。
「まだ、居たいな。」
「何を言ってるの。
 もう遅いし、明日、学校があるでしょ。
 早く帰って、宿題のまとめをしなくっちゃ、ね。」
悠美が正直な感想を漏らしたが、舞に促されしぶしぶ帰り支度をしていた。
そんな悠美を見て春繁は笑いながら言った。
「そんなに、暗い顔しないの。
 また、今度、遊びにおいで。
 二人なら、いつでも大歓迎だから。」
「そうよ、また来ればいいんだから。」
舞も、合いの手を入れるように言った。
「うん、また来るね。」
悠美は、ぱっと笑顔になった。
「はい、また来ます。」
光一も笑顔で言った。
「繁さん、二人を駅まで送って来ます。
 ついでに、帰りに買い物して帰ってくるから、家でのんびりしていてね。」
舞がそういうと、春繁は一瞬考えこんでから笑顔で言った。
「僕も、駅まで送っていくよ。
 買い物も一緒に行きたいし。」
「繁おじちゃんも駅まで来るの?
 やったー。」
悠美は小躍りして喜んで見せた。
「大丈夫なの?
 疲れていない?」
舞は、心配そうに春繁の顔を覗き込んだ。
「だいじょうぶだって。」
そう言って、4人は家を出た。
悠美は当然の様に春繁の手を握って、にこにこしながら歩いていた。
そして、悠美の反対に手は光一の手を握っていた。
「えー、私は?」
一人取り残された舞が、抗議の声を上げた。
「舞は、こっち。」
そういうと、春繁が空いている方の手を差し出した。
「やったー。」
舞は、嬉しそうに言うと、その春繁の手を握った。
道が空いていたので4人は手をつないで歩いて駅まで向かった。
「何か、童謡にでも出てきそうな世界だな。」
春繁は、不思議そうに言うと、舞は、春繁にもたれかかれようして言った。
「まあ、いいじゃない。
 何か幸せって感じ。」
「そうだな。」
駅に着き、舞が光一と悠美に家までの切符を買って渡した。
別れ際に悠美が、春繁と舞の前ではちきれんばかりの笑顔で言った。
「とっても楽しかった。
 私、幸せ。
 繁おじちゃん、舞ちゃん、ありがとう。
 また、くるね。」
「うん、また、いらっしゃい。」
「待ってるよ。」
「うん、じゃあね。
 今度は、お兄ちゃんもお泊りするって。」
「悠美、そんなこと言っていないよ。」
光一と悠美は、ふざけながら電車に乗り込んでいった。

二人の乗った電車を見送って、春繁と舞は駅を後にした。
「台風一過とは、このことだな。」
「そうね、急に静かになっちゃったね。」
「ああ、じゃあ、家に帰ってから大人の時間ということで、一杯飲みますか。」
「賛成!」
舞は、春繁の腕に抱きついて笑顔でこたえた。
「じゃあ、夕飯のおかず兼お酒のつまみということで、何にする?」
「うーん、たまには、アサリバターや、エイヒレ、当たり目かな。」
「それって、全部、お酒のつまみじゃないの。」
舞が、呆れた顔をして言った。
二人は、なんだかんだ言いながら、スーパーで夕飯のおかずというか、お酒のつまみを買って家に帰った。
「ねえ、悠美みたいな子どもだったらいいね。」
舞は、小さい頃から面倒を見ている悠美が可愛くて仕方なかった。
「でも、光一みたいな男の子でもいいな。」
「そうね、光ちゃん、悠美には、すごく優しくて、面倒見がいいのよ。
 そういう子でもいいな。
 ね、最初は、どっちがいい?
 男の子?女の子?」
「うーん、どっちもほしいな。」
「えっ、それって双子?」
「あはは、それも面白いかも。」
「えー、たいへんだって、誰かが行ってたわよ。」
「ああ、別に双子じゃなくてもいいし、どっちでもいいよ。
 舞の子供なら、きっと、どっちもいい子だろうし。」
そう言いながら、春繁は、そっと、舞を抱き寄せた。
「あ、ちょっと。
 まだ、明るいって…。」
「いいじゃん、昨夜は悠美がいたんだから。」
「もう、夜まで待てないの?」
「待てないの。」
「もう…」
そう言いながら、二人は重なり合ってひとつになった。

二人は幸せな時間を過ごした後、舞は身支度を整えた。
「さきに、お風呂に入ってて。
 その間に、お酒の用意と夕飯の支度をしているから。」
舞は、機嫌よく春繁に言った。
「わかった、そうするよ。
 夕飯は、お酒のつまみがあればいいから、僕が出たら、舞もお風呂入っちゃえば。」
「うん、そうするね。」
舞は、鼻歌を歌いながら、台所で支度を始めていた。
(舞は、やっぱり、いい女だな。)
春繁は、そんな舞を見て充実感のようなものを感じていた。

「なあ、立花。
 お前、南雲と付き合ってるんだって?」
新歓コンパのあと、1カ月くらいたったある日、春繁の友人がうらやましそうに声をかけてきた。
「ああ、見ての通り。」
春繁も別に隠すことなく素直に答えた。
「やっぱり、あの新歓コンパの後か。」
「ああ、お前たちがしこたま飲ませたおかげだよ。
 まったく、たいへんだったんだぜ。」
「何言ってるんだよ、嬉しそうな顔をして。
 南雲って、スタイルいいし、顔も可愛いじゃん。
 しかも性格が明るくていいって先輩が言ってたし。
 俺が送って行けばよかったな。」
「馬鹿か。
 人に押し付けて、自分たちは結局、朝まで飲んでいたんだろう。」
「違いない。
 あっ、噂をすれば。」
春繁は友人の差す方を見ると、少し離れた廊下の角から、舞が出てくるのが見えた。
舞もすぐに春繁に気が付き、万遍の笑顔を見せ、大きく手を振って速足で向かってきていた。
「いいなぁ。
 俺もあんな彼女がほしいわ。」
「確かに……。」
春繁も、輝くような笑顔を見せている舞を見つめ、つくづく思った。
「何、ジロジロ見ているの?」
いつの間にか、春繁の傍に立っている舞が怪訝そうな顔をして聞いた。
「い、いや、べつに。」
「ふーん、なんか変なの。
 あっ、田中さん、こんにちは!」
舞は、目ざとく春繁の友人を見つけ挨拶した。
「よっ!
 南雲ちゃん。
 今日も元気だね。」
「はい。
 まあ、元気だけが取り柄ですから。」
舞は笑顔で応えた。
「ねえ、繁さん。
 お昼まだでしょ?
 一緒に学食で食べない?
 田中さんも一緒に。」
「いや、僕は、学食の味はいまいちで。
 外で食べてくるから、二人で行ってきて。」
「えー、学食って安くて美味しいのに。」
「まあまあ、こいつ、意外とグルメだから。」
「意外とは、余計だって。」
田中はそう言うと、手を振りながら、二人から離れていった。
「だけど、学食のコロッケ、美味しいのになぁ。」
「まだ言ってる。」
春繁はゲラゲラと笑った。
「そんなに笑わなくてもいいじゃない。」
「わっ!」
舞の笑いながら、しっかり春繁の背中を叩いた。

付き合い始めてすぐ、二人はお互いをどう呼び合うか相談していた。
「南雲さんは、舞ちゃんかな。」
「あっ、それ皆に言われているの。」
「え?
 じゃあ、嫌?」
「ううん。
 男の人にそう呼ばれるのは初めてで、なんかこそばゆいけど、それで、お願いします。」
「了解、舞ちゃん。」
舞は、少し恥ずかしそうにしていた。
「立花さんは、どうしよう。
 立花さん?
 たち?
 春繁だから、そのまま?
 でも、なんかピンとこないなぁ。
 春さん?
 うーん。」
「あっ、ちなみに、僕の親父、『春吉』っていうんだ。」
「えー、じゃあ、紛らわしくなるから、却下ね。」
舞はそう言いながら眉間に皺を寄せて真剣に考えていた。
そんな、舞を春繁は楽しそうに見つめていた。
「あっ!」
舞は、電球にぱっと灯ったように、明るい顔になった。
「『繁さん』って、どうですか?
 『繁ちゃん』だと、なんか安っぽいし。」
「安っぽい?」
春繁は、不思議そうな顔をした。
「繁さん、繁さん、しーげさん。
 決定!
 今日から、あなたは『繁さん』です。」
舞が嬉しそうに言うのを見て、春繁は二言もなく頷いた。

春繁はゆっくりとお風呂で時間を過ごし、出てきたころには、テーブルにアサリバターや燻った当たり目、そして、アジの開きなどが並んでいた。
舞は、春繁を見ると、どうだと言わん顔でテーブルを指さした。
「おお、りっぱな食卓だ。
 さあ、お風呂に入っちゃいな。
 お酒飲むの、待っているから。」
「いいわよ、私時間が掛かるから、先に飲んでいて。」
舞は、そう言ってお風呂場に消えていった。
春繁は、夕やけから夜のとばりが降りようとしている外の風景をぼーっと見つめていた。
(いい感じだな。
 舞と居ると、心地いいし。
 後は、悠美や光一みたいな家族が増えると、楽しいだろうな。)
そんなことを考えながら、ぼーっと涼んでいると、ぱたぱたと舞が御風呂から出てきた。
「あら、繁さん、待っていなくていいって言ったのに…。」
「いいじゃないか、湯上がりの色っぽい奥さんと晩酌なんて、おつじゃないか。」
「えー、何か繁さん、エロ爺さんみたいなこと言って。」
舞はけらけらと笑って言った。
確かに、お風呂上がりで上気した顔の舞は、年相応の色気があり、春繁は食い入る様に舞の顔を眺めていた。
「もう、そんなに見ないで。」
舞は、恥かしそうな顔をして、台所にいった。
「ねえ、ビールと日本酒、どっち、飲む?」
「そうだね、お風呂上がりだから、まずは、ビールと行こうか。」
「賛成!」
舞は、台所から冷えたビールとコップを2つもってきて、一つを春繁に手渡し、ビールを注いだ。
春繁も、ビールの瓶を舞から受け取り、舞のコップにビールを注いだ。
「かんぱーい。」
二人は、各々、ビールを飲んだ。
「おいしー、喉、カラカラだったの。」
「やっぱり、最初の一口は、たまらないよな。」
「うん。
 あと、冷酒も買って、冷やしてあるからね。」
「おお、よく気が付く奥さんだ。
 最高だね。」
「うふふ、ありがと。」
二人は、ゆっくりお酒を飲んだり、つまみを食べて、休日を満喫していた。
「そうそう、悠美たちは無事に着いたのかな?」
「あ、ごめんなさい。
 繁さんが御風呂に入っている時、悠美から『着いたよ』コールがあったの。
 すごく、楽しかったって。」
「そうか、それならいいや。」
「繁さん、お疲れ様でした。」
舞が春繁を労うと、春繁も舞を労った。
「舞の方こそ、いろいろとご苦労様でした。
でも、今回は、夜中に悠美に蹴られなかったなぁ。」
「あら、私は、しっかりパンチをもらったわよ。」
二人は、悠美が来てから帰るまでのことを思い出すように、笑いながら話し合っていた。
夕飯の片付けも終わり、春繁と舞は布団に横になった。
舞は、ふざけて布団の上を転がって、春繁に体当たりをした。
「いたっ!
 もう、悠美と違って、大きい子供なんだから。」
春繁は笑いながらいった。
そして、舞が自分の布団の方に戻ろうとした時、その腕を掴んで、自分の方に抱き寄せた。
「えっ?」
舞は、びっくりしたように、春繁を見つめた。
「うーん、色っぽい奥さんが尋ねてきたら、お構いしないわけにはいかないでしょ。」
春繁は笑顔で、舞を抱きしめた。
「だって、さっき…。」
「さっきは、さっき。
 今は、今。」
「けだものぉ。」
「がお。」
「繁さんて、ひょっとして、私の身体が目当てで結婚したの?」
「身体も心も、全部だよ。」
「もう。」
舞は抗うことなく、逆に、春繁に抱きついていった。
そうして、また、二人の幸せな時間がめぐってきた。
いつまでも、いつまでも、と言わんばかりに。
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