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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第3章 佳奈の決意
それからは、平日はリハビリ、週末に春彦と過ごすほかに、仲良し4人組との日々のメールのやり取り、たまに、ばらばらで佳奈の顔を見に家に遊びに来るオプションがついて、佳奈の毎日も随分とにぎやかになってきた。
春彦が、そんな佳奈に、たまには自分と会わずに、のんびりする日も必要なのではと、聞いたが、佳奈は、そんなことないと首を横に振るだけだった。
春彦も、佳奈の傍にいるだけで、気持が休まるので、週一回は会いに来ていた。
その日は、特に外に出ることなく、佳奈の部屋で、二人でのんびりしていた。
「春?
 今日は、何か疲れてるみたい。」
佳奈がベッドの上から、床に座り佳奈のベッドに寄りかかっている春彦に話しかけた。
「ああ、今週は、なんだか仕事が忙しかったからなあ。」
「春彦は、子供向けの教育出版の仕事でしょ。」
「うん、もっぱら、車で幼稚園を回り、本を配ったり、新しい本が出ると、その売込みだよ。
 これでも、幼稚園の園児と仲良くなったりしてるんだぜ。」
「先生ともじゃないの?
 この前のコロンが好評だったって?」
佳奈が笑いながら聞いた。
「まあね。
 コロンはさておき。
 顔見知りも増えてきたよ。
 でも、幼稚園の先生さんって、重労働みたいだよ。
 何せ、元気の塊で太陽みたいな子供たち相手だからね。
 結構、定着率、低いみたいだよ。」
「ふーん、たいへんなんだね。
 私も、病院で入院中の子供たちとお話ししたりするけど、重い病気じゃなければ、けっこう元気を持て余しちゃっている子もいて、看護婦さんたちも、面倒を見るのがたいへんそうだもんね。」
「そうだね、看護婦さんたちもたいへんだよな。
 佳奈なんていう、おっきい子供もいるもんな。」
「なによ、それ。」
佳奈は、ちょっと怒った口調で言った。
「そう、それで、昨日は、教材を届けた幼稚園で、園児たちにつかまって、幼稚園終わった後、園庭で1時間近く相手をさせられたんだぜ。
 お母さんたちは、先生と話が弾んじゃって、子供はこっちに押し付けてるって感じ。」
「まあ。
 でも、春だったら、子供に人気あるだろうし、人畜無害そうだから、幼稚園の先生やお母さんたちも安心して、任せているんじゃない?」
「人畜無害?
 言ったなぁ。
 まあ、でも、当たってるか。」
とぼけた春彦の返事に、佳奈はクスクスと笑った。
(そうか、春彦も頑張っているんだよね。
 私も、何かしなくちゃ。
 何が、出来るだろうかな…。
 前の会社も辞めちゃったし、この足じゃOLも無理だろうし。
 何か、資格を取っておけば良かったな。)
佳奈は、一人で考えこんでいた。
「?」
佳奈は、春彦が静かなのに気が付き、考え事を中断し、春彦の様子をうかがった。
春彦は、佳奈のベッドに寄りかかったまま、うたた寝をしていた。
(あらら、余程、疲れているのかな。
 春ったら、結構、私の部屋で転寝するんだよね。)
佳奈は、うたた寝をしている春彦を優しい顔で眺めていた。
(そうだ、風邪ひくといけないから、ガウンでもかけてあげるか。)
普段は、そんなに冷房を掛けないのだが、今日は春彦のために冷房をすこし強めにしていた。
佳奈は、春彦が起きないように、そっと、自分のガウンを、器用に身体を捻じって、そっと春彦の肩からお腹にかけて掛けた。
(そうだ、今から何か資格を取ろう。
 何があるかな…。)
佳奈は、春彦の寝息を聞きながら、再び、考え事をしていた。
しばらくして、茂子が、お茶を持って部屋に来た。
「佳奈?」
茂子は佳奈の部屋が静かなのに気が付き、ノックの音も小さく、どうしたのかと、そーっと様子をうかがいながら入ってきた
佳奈は、慌てて、春彦を指さし、(しー)と、もう一方の手の指を口に当て、静かにするようにとジャスチヤ―した。
茂子は、春彦がうたた寝しているのに気が付き、佳奈に頷き返し、お茶が乗っているお盆を、そーっと佳奈の机の上に置いた。
「春、昨日、幼稚園で園児の世話をして疲れちゃったんだって。」
佳奈は、小声で茂子に説明した。
「まあ、春彦君だったら、子供に人気がでそうよね。
 我が家でも、大きな子供の人気の的だもんね。」
「もー、春と同じこと言わないで。」
「でも、この前の木乃美ちゃんといい、春君といい、よく佳奈の部屋でお昼寝するわね。
 余程、居心地がいいのかしら?」
「居心地がいい?」
佳奈は、内心『居心地がいい』というセリフが何となく嬉しく、はにかみながら聞き返した。
「うーん、そうね。
 ぼんやりした佳奈が傍にいるから、気が緩むとか。」
茂子はそう言うと、笑いながら部屋を出ていった。
「もう、お母さんたら変なこと言って。」
佳奈は、小さな声で文句を言った。

春彦は、そんな気配に気が付き、目を開けて大きく伸びをした。
「悪い悪い、つい、
眠っちゃったみたいだ。」
そういいながら、身体にかかっている佳奈のガウンに気が付き、手に取った。
ガウンからは、佳奈の甘い匂いがしていた。
(最近、佳奈から甘い、いい匂いがするんだよな。
 そう、昔から変わらないなぁ。)
「こら、はる。
 なに匂い嗅いでるのよ。」
ぼーっとガウンの匂いを嗅いでいた春彦に佳奈が、恥ずかしそうに言った。
「あ、ごめん。
 ちょっと、良い匂いだったんで。」
つい、春彦は口を滑らせた。
「……。」
佳奈は顔を赤らめ、ガウンを渡すようにと、手を出した。
春彦は、その手にガウンをそっと渡した。
佳奈は、もう、事件のトラウマから回復していた。
特に、春彦には絶大な信頼を置いているので、「いい匂い」という言葉を、ストレートに信じていた。
それに、香りの魔術師の木乃美がいることも大きな支えになっていた。
春彦は、佳奈の机の上に置いてあるお茶を見つけた。
「ひょっとして、おばさん、入ってきたの?」
「うん、春の寝顔をじっくり見ていたわよ。
 かわいいって。」
佳奈は、笑いながら言った。
「えー、起こしてくれればいいのに。
 おばさん、呆れていただろう。」
「ううん、そんなことないよ。」
「そっかぁ?」
「そうよ。」
「まあ、いいや。
 折角だから、お茶、いただきます。
 佳奈、取ってやるよ。」
「ありがとう。」
2人は、運ばれてきたお茶を飲みながら、話を続けた。
「春、私ね、何か資格を取ろうと思うの。
 そして、その資格で何か仕事が出来ればいいかなって、考えてるんだ。」
「おー、いいじゃん。
 何を取るの?」
「うーん、今、考え中。
 体力のいる仕事は無理だし、経理とか…。
 幼稚園の先生や保母さんは、やっぱり無理だよね。」
「そうだね、子供って、みんな、ボルトみたいなやつばっかりだからなぁ。」
「えー、100m、10秒切っちゃうの?」
「笑い事じゃなく、ほんとに素早いよ。」
「そっか、面白そうだな。」
「まあ、いろいろ探してみるといいよ。
 インターネットでもあるだろう。
 『ウイキャン』みたいな資格専門の会社が。
 あとは、何かパンフレットがあれば、持ってきてやるよ。」
「あー、知ってる。
 イエス、ウイキャン! でしょ?
 ありがとう。」
「あっそうだ。
 佳奈、来週は来れないから。」
春彦は、思い出したように言った。
「え?」
佳奈は、驚いて聞き返した。
「今度の土日、泊りがけで会社の慰安旅行なんだ。」
「えー、そうなの。
 どこ行くの?」
「うん、確か鶴亀温泉て、ほら、テレビもCMでもやってるでしょ。
 半島の先っぽの温泉ホテル。」
「知ってる、知ってる。
 なんだっけ、古代風呂で、みんな原始人みたいな格好して温泉に入るCMでしょ。
 見るたびに、“なぜ?”て、思うCM。」
「そうそう、そこ。
 今年は、そこに行くんだって。」
「ふーん、じゃあ、今度の週末は遊びに来てくれないんだ。
 つまんないなぁ。」
「まあ、まあ。
 寂しかったら、4人組、いや、今は3人か。
 大木とか声を掛ければ。」
「そうだね。」
佳奈は、少し残念そうに言った。
「お土産は、何がいい?
 温泉まんじゅうとか?」
「マグロ…。」
佳奈は、拗ねたように、ぼそっと言った。
「え?」
「だから、マグロがいい。」
「……」
「大きいマグロを釣ってきて。」
「えー、釣りはしないし…。
って、あんなところでマグロなんか釣れないよ。」
「だめ!
 おいしいマグロをお腹いっぱい食べたいの。」
佳奈は、駄々っ子のように言った。
「はいはい、泳いでいたらね。」
春彦は、小さい子をあやすように言った。
「また、子ども扱いして。
 ぶー、ぶー。」
佳奈が口をとがらせて言った。
春彦は、そんな佳奈を見て思わず吹き出し、つられて、佳奈も噴出した。
「まあまあ、にぎやかなこと。」
茂子が、お菓子を持って、部屋にやってきた。
「あ、お母さん。
 さっき、春彦の寝顔見たよね。」
「はいはい、しっかりと。
 春彦君、可愛かったわよ。」
「ほらね。」
「おばさん!」
春彦が照れながら言った。
茂子と佳奈は、そんな春彦を見て大笑いしていた。
そして、しばらくしてから、春彦が帰るため立ち上がった。
「じゃあ、お土産、買ってくるからな。」
「うん。
 気を付けて、いってらっしゃい。
 お土産、大きいマグロ1匹、忘れないでよ。」
「はいよ。」
春彦は、軽く答えて、佳奈の家を出て、家路についた。

次の週末、春彦は会社の慰安旅行に出かけていた。
ただ、前日、舞から佳奈の調子が良くないと聞いていた。
なんでも、週の後半から口数が減り、食欲も落ちてきて、ため息をつくことが多くなったとのこと。
「春彦が、今週、会いにいけないからじゃない?」のと舞は、春彦をからかっていた。
「まさかね…。」
春彦は、そんなことはないと思いながら、何かあったのかと気になっていた。

その土曜日の夜、茂子は佳奈の様子を見に佳奈の部屋にいた。
「佳奈、この2,3日、変よ。
 どうかしたの?」
「ううん、どうもしないわ。」
「そう?
 でも、ここの所、食欲もないし、ため息ついたり、ふさぎ込んでいるじゃないの。」
「…。」
「熱でもあるの?」
「ううん。
 大丈夫よ。」
「お友達は、今週、来ないの?」
「うん、連絡してないから。」
佳奈は小さく頷いて言った。
茂子は、そっと佳奈の手を取って、優しく言った。
「何か心配事?
 何でも、お母さんに言ってみて。
 一緒に考えてあげるから。」
「……」
佳奈は、しばらく考えこみ、そして、重い口を開くように言った。
「春が、今週は会いに来れないの。」
(やっぱり)茂子は、内心思った。
「確か、社員旅行で、泊りがけで出かけているんでしょ?」
「うん。
 鶴亀温泉に行っているの。」
茂子は、黙って頷き、佳奈の手をさすっていた。
「おかあさん。」
「なに?」
「何か、変なの。
 今週だけなのに、春に会えないと思うと、何かつまらないと言おうか…。
 何もしたくなくなっちゃって。」
確かに、春彦は、佳奈が退院し、見舞に来始めてから、1回も欠かすことなく週末の土日のどちらかは、必ず、佳奈に逢いに来ていた。
「そうよね、春彦君、ずっと、毎週来てくれてたわよね。」
「うん。
 何か、私、それが普通になっちゃって。
 でも、考えたら、春だって、春の世界があって、やりたいことがあるはずなのに、それなのに、いつも会いに来てくれて、優しくしてくれて…。」
徐々に佳奈の声が、涙混じりになってきていた。
「私と居るより、もっと、楽しいことや、やりたいことがあるはずなのに。
 でも、でも、私には春が傍にいてくれることが当たり前で……。
 私、春と一緒に公園を歩いたり、一緒にバスケや運動することができないし……。
 春の好きなことを一緒にできないし。
 なのに、私は、春にいてほしい……。」
「佳奈……。」
「お母さん。
 このまま、春に甘えていていいのかな。
 春は、ああいう性格だから、きっと顔には出さないわ。
 春、仕方なく来てくれているのかな。
 私、わからなくなってきた……。」
茂子は、そっと、佳奈の頭を撫でた。
「佳奈は、春彦君のこと信頼しているんでしょ?」
「うん。」
「じゃあ、いやだと思っている人が、こんなにいつも来てくれないでしょ。
 それに遠慮はしない間柄で、特に、あの春彦君でしょ。」
「そうだと思うけど。
 でも……。」
佳奈は、とうとう泣きべそをかき始めた。
「佳奈は、春彦君のことが好き?」
「え?
 うん、好きよ。」
「兄妹としてではなくてよ。」
「え?」
佳奈は、しばらく黙り込んでから口を開いた。
「うん、小さい時からずっと好きだったの。」
「好きだった?」
過去形で言う佳奈の言葉に、茂子は思わず聞き返した。
「うん。
 春は、その気がないみたいで、一方的な片思い。
 それでも、いつかは…、なんて思っていたけど、この身体になっちゃたし。」
佳奈は自分の両脚を見て、寂しそうにつぶやいた。
「佳奈……。」
「こんな私を好きになって、なんて言えないし。
 もし、万が一、春がその気になってくれたとしても、それって、きっと同情半分。
 だから、きっと長続きしないと思うの。
 春には、健康的で一緒に歩いたりしてくれる女性が似合うわ。
 私じゃない…。」
佳奈は、首を左右に振って、うつむいた。
「佳奈、そんなに思い詰めないで…。
 身体って言っても脚だけじゃない。
 後は、健康になってきたんだし、脚も、その内、きっと良くなるから。」
茂子は、佳奈の手を摩りながら、何とか励まそうとして言った。
「ありがとう、お母さん。
 でも、この身体になって、ひとつ良いことがあったの。
「いいこと?」
何を言い出すのかと茂子は訝しんだ。
「あのね、この身体になって、春が毎週、私に会いに来てくれるようになったこと。
 それまでは、大学、社会人と春と別々の道に進んだら、会う機会もぐっと減って、寂しかったの。
 変でしょ。
 うれしいなんて……。
 だから、もし、付き合って、別れちゃったら二度と会えなくなるじゃない。
 このままでいいの。」
「佳奈…。」
「だからね、だからね、ずっとこのまま会いに来てほしいなって。
 春が、素敵な女性と結婚したら、その人にお願いして、毎週じゃなくていいから、たまに会いに来てって。」
佳奈は、涙声で話し、茂子はそんあ佳奈の話しに何も返せず、ただ聞くだけだった。
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