FC2ブログ

プロフィール

梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


最新記事


最新コメント


月別アーカイブ


カテゴリ


メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


訪問していただいた方々


よろしくお願いします。


リンク


DATE: CATEGORY:第3章 佳奈の決意
次の日曜日は、あいにくの雨で、春彦は佳奈の部屋で話をしていた。
「今日は、雨で残念賞だね。」
「本当。
 昨日、テルテル坊主を作って飾っておいたのに。」
佳奈は、残念そうに言った。
「佳奈、テルテル坊主、ひっくり返ってたんじゃないか?」
「えー、そんなことないよ。
 だって、ひっくり返すと雨になるんでしょ。
 ちゃんと、まっすぐに気を付け!って。」
「おっ、知ってたんだ。」
「もう、すぐにバカにして。」
佳奈は、笑いながら言った。
最近は、良く笑うようになったなと春彦は心の中で思い、嬉しくなっていた。
「今度は、どこに行こうか?」
「うーん、どこにしようかな…。
 でも、どこでもいい。
 春が連れて行ってくれるところなら。」
「おっ、こっちに振ったな?」
「えへへへ。」
佳奈は、楽しそうに笑った。
「途中にちゃんとした施設があれば遠出も出来るかな?」
佳奈は、少し考え込んでから、小さな声で言った。
「車椅子用の施設があるところなら、安心なんだけど……。」
「佳奈、電車で駅3つくらい行ったところに大きな川があるの、知っているよな?
 その川に沿って調整池があって、その湖畔に広い公園とかいろいろあるところ。」
「あー、知っている。
 小学校の時に遠足に行った、桂川レイクサイドパークでしょう?!
 広場や、遊具施設や、芝生にいろいろ。
 すごく広くて、自然がいっぱいあるところ。
 いいなぁ、行ってみたいなぁ。」
「あそこさ、駐車場のところに休憩やレストランや自然観が入っている大きい施設が出来たんだ。
 あそこなら、施設もきちんと整っているし、きれいだよ。」
「本当?」
佳奈は、目を輝かしていった。
春彦は、インターネットで調べ、実際に、下見に行っていた。
「ああ、この前、そこの近くに用事があって、ついでに、見てきたから間違いないよ。」
「用事…。」
「ん?なに?」
「ううん、何でもないの。」
佳奈は、春彦の話し方から、用事ではなく自分のために、いろいろなところを見て回ってくれていること察し、目頭が熱くなるのを感じた。
「でも、そこまでは電車で行かなきゃだめなんでしょ?」
佳奈は、少し困った顔をした。
「ああ、だから、俺の車で行こう。
 佳奈の車椅子、畳めるやつでしょ?
 まあ、畳まなくても、詰め込めると思いから。」
「え?
 春の車って、あのワンボックスタイプの大きい車でしょ?
 私を乗せてくれるの?」
佳奈は、ぱっと顔を輝かせた。
「もちろん。
 社会人になって、買ったやつだから、まだきれいだよ。
 それに、母さん以外は、まだ、そんなに人を乗せてないんだよ。」
春彦の車は、佳奈を助け出した時に、意識のない佳奈や茂子、一樹を乗せ、病院に担ぎ込むのに使ったり、いろいろと活躍していたが、春彦は、そんなことはおくびにも出さなかった。
「いいの?
 お菓子こぼして汚したとかで、怒らない?」
「当たり前だろう。」
佳奈の小さな子が半信半疑で聞いてくるような言い方に、春彦は笑いながら答えた。
その時、ドアをノックする音がし、茂子が、お茶とお茶菓子を持って入ってきた。
「お邪魔しますね。
 何にもないけど、紅茶とクッキーを持ってきたの。
 食べてね。」
「すみません。」
春彦は、お礼を言った。
「ねえ、お母さん。
 桂川のレイクサイドパーク、覚えている?」
「え?
 ええ、昔、小学校の遠足とか、良く佳奈を連れて行ったから覚えているわよ。」
「あそこ、駐車場のところに、レストランとかいろいろなものが入った施設が出来たんですって。
 車椅子でも利用できるんですって。
 それでね、今度、春が車で連れて行ってくれるって。
 ねえ、お母さん、行っていいでしょ?」
茂子は、春彦がきちんと佳奈のことを考えてくれていることを知っているので、二つ返事で許可した。
「いいわよ。
 春彦君が一緒なら、安心だから。
 今の季節、池の周りの木々も青々して、気持いいでしょうね。」
「わーい、やったー。
 お母さん、ありがとう。」
「まあまあ、まるで小さい子みたい。
とても、二十歳を過ぎた社会人とは考えられないわ。」
茂子は、苦笑したが、内心は、明るい佳奈を見て嬉しかった。
「春彦君、いいの?
 佳奈をお願いしちゃって?」
「ええ、全然問題ないです。
 来週の日曜日に、天気が良ければ行こうかと思います。」
「わーい、楽しみだな。
 テルテル坊主、たくさん作って置かなきゃ。」
佳奈は、屈託のない笑顔で言った。
春彦と茂子も釣られて笑い出した。

その夜、春彦は舞に今度の日曜日に佳奈と車で出かけることを話した。
「ふーん、桂川レイクサイドパークかぁ。
 あそこなら、施設もいろいろと整っていて、しかも、建物は出来たばかりだからきれいよね。
 春彦にしちゃあ、なかなかいい線ね。」
舞は、コップのお酒を飲みながら、言った。
「ああ、この前、母さんに佳奈のこと聞いたから、それであそこならってね。
 小さい頃、よく連れて行ってもらったから。」
「そうよ、覚えている?
 あんたったら、いらないっていうのに、バッタやカマキリをいっぱい捕まえてきて、同じ虫かごに入れたでしょう。
 そしたら、少しして、バッタが減ってきて、私に逃がしたでしょうって言ってきたのよ。
 可哀想に、カマキリが丸々と太ってたわよ。
 ああ、気持ち悪い。」
舞は、腕を組んで身震いした。
「あはは、そんなことあったね。
 後で、よく見たら、みんな食われてたって。」
「もう、その話は気持ち悪いからおしまい。」
「何言ってるんだよ。
 自分から言い出しておいて。」
春彦は、苦笑いした。
「まあ、本当に、あんたとあいつってきたら、良くカブトムシやクワガタも捕まえてきたわね。
 あいつの方が夢中になっていたようだけど。」
「ああ、父さんね。
 父さん、虫取りの名人だったよ。
 あと、ザリガニ、カニ、魚釣りと、いろいろ楽しかったな。」
「何言ってるの、その都度、後始末は私だったのよ。
 魚だって、食べられもしないようなやつばっかり。
 少しは、マグロとか喜ばれるものを持ってくればいいのに。」
舞は、少し怒った顔をして見せた。
「マグロは無理だろう。」
春彦は笑って言った。
「いいのよ、別に魚屋さんの袋に入っていても、切り身になっていても。」
「はいはい、今度、刺身にしようね。」
「ところで、車で行くって?
 運転、気をつけなさいよ。
 佳奈ちゃん、バランスが取れないかもしれないから、急ハンドルや急ブレーキを掛けたら転がっちゃうからね。」
「ああ、よくわかっているよ。」
「まあ、あんたのことだから、大丈夫とは思うけど、慎重にね。」
「了解です。」
春彦は、真顔で答えた。
そのあと、しばらくして電話が鳴った。
「こんな時間に珍しいわね。
 誰かしら?」
舞は、呟きながら受話器を取った。
「もしもし?
はい、立花ですが。
……。
あら、久し振りね。
元気にしていた?」
春彦は、そんな会話を聞きながら、電話が舞の知り合いからと思った。
「春?
 いるわよ。
 ちょっと待ってね。」
舞は、電話を保留にして、春彦の方に振り向いた。
「春、あんたに電話よ。」
舞は、ニヤニヤしながら顎で受話器の方を差し、春彦に早く出るように促した。
「え?誰?」
春彦は、そう言いながら、立ち上がり受話器の方に手を伸ばした。
「お楽しみよ。
 早く出なさい。」
「ああ。」
佳奈だったら携帯にかけてくるし、舞の顔では会社関係という顔でもなさそうだしと考えながら受話器を取った。
春彦が受話器を取ると、舞はニヤニヤしながら保留を解除して自分の座っていたところに戻っていった。
「もしもし?」
春彦は、誰だろうかと身構えながら声をだした。
「もしもし、春彦?」
電話の主の声に聞き覚えがあった。
「木乃美か?」
春彦は、耳を疑った。
電話の主は、海外にいるはずの木乃美だった。

次の日曜日、佳奈の作ったテルテル坊主のご利益か、朝からいい天気だった。
春彦は車を佳奈の家の前に着け、迎えに行った。
佳奈は、薄ピンクのワンピースに、この前と同じ可愛らしい花柄の飾りのついた麦わら帽子をかぶって、玄関先で待ってた。
「お待ちどうさま。」
「今日は、よろしくお願いします。」
佳奈は、にこやかに答えた。
「じゃあ、春彦君、お願いしますね。」
茂子も出てきて、春彦にお辞儀をした。
「はい、じゃあ行ってきます。」
というと、この前と同じように、佳奈を車椅子から抱き上げた。
「きゃっ!
 え?
 なんで?」
「何言ってるの、車椅子ごと助手席に入れないでしょ。」
「そうね……。」
恥かしそうに、佳奈はうつむき加減に言った。
春彦は、佳奈を抱きながら車まで歩いて行った。
佳奈は、最初は恥ずかしそうだったが、春彦の首に手を回し、だんだんと、笑顔になっていた。
そして、春彦からほのかに木乃美と二人で春彦をイメージして調合したオーデコロンの匂いがするのに気が付いた。
「春、この前のコロン試してくれているんだ。」
「ああ、匂いを嗅いでみたら結構好きかなって香りだったんで、会社にも、つけて行ってるんだよ。
 この前、お客さんの幼稚園の園児からも良い匂いがするって。
 幼稚園の先生もいい匂いってさ。」
「その先生って、若いの?」
佳奈は訝しがるように言った。
「ああ、みんな二十歳くらいかな。」
「外にはつけて行っちゃあかん!」
佳奈は、すこし睨みながら言ったが、でもすぐに笑い飛ばした。
二人は車のところにたどり着くと、助手席の前で立ち止まった。
そして、春彦は器用に片手で助手席のドアを開け、そっと、佳奈を助手席のシートへ座らせた。
それから、佳奈を助手席に残し、今度は佳奈の車椅子を持ってきて、後ろのドアから車内に車椅子を畳んで入れ込み、最後に、運転席にまわり、車に乗り込んだ。
「佳奈、シートベルト出来るか?」
「うん、大丈夫。」
「じゃあ、行こうか。」
「うん。」
子供のような大きな声で佳奈は頷いた。
佳奈は、最初は車内をきょろきょろ見渡し、あれはなんだ、これはなんだと興味津々と春彦に尋ねてきた。
春彦は、佳奈にわかりやすく説明していた。
次に、佳奈は車外の流れる景色を楽しんでいた。
「ねえ、ねえ、見てあの看板、面白い絵が書いてあるわよ。」
「どれどれって、こっちは運転してるんだから、よそ見させないようにね。」
春彦は、苦笑いしながら言った。
「はーい。ごめんなさい。」
佳奈は、舌を出していった。
(佳奈は、余程、嬉しいんだろうな。
 興奮しまくりじゃない。)
春彦は、無理もないと思っていた。
車で、20分ほど行ったところで、目的地の桂川レイクサイドパークに到着した。
春彦は、広めのところに駐車し、まず、佳奈の車椅子を下ろした。
そして、助手席に回り、ドアを開け、佳奈を抱き上げようとした。
「えへへへ。」
佳奈は、目いっぱいの笑顔を見せ、春彦の首に手を回し、抱きついてきた。
「おや?」
春彦は、いきなり佳奈に抱きつかれ、少しびっくりした。
「だって、車椅子まで、連れてってくれるんでしょ?」
佳奈は、笑顔で言った
「当然。」
春彦も笑いながら、軽々と佳奈を抱き上げ車椅子まで運んでいった。
そして、そっと佳奈を車椅子に座らせた。
「車の鍵かけてくるから、ちょっと待っててな。」
「はーい。」
春彦は、茂子の言った“まるで小さい子みたい”というセリフを思い出し、ちょっと吹き出した。
「なあに?」
「何でもないよ。」
春彦は手早く、車から荷物をだし、車のドアをロックし、佳奈のところに戻ってきた。
「春、バックありがとう。」
「だいじょうぶ?
 俺が持とうか?」
「大丈夫よ、いつも肩に引っかけて車椅子を動かしているから。」
「そうか。」
春彦は、佳奈のバッグを手渡し、自分の荷物は、ナップザックで背中に担いでいた。
「じゃあ、大丈夫だったら、まずは、池の方に行ってみようか?」
「うん。」
「佳奈、池まで道が狭いから、ゆっくり押してやるよ。」
「えー、大丈夫だよ。」
「まあまあ。」
春彦は、佳奈の後ろに回り、ゆっくり車椅子を押して歩き始めた。
「春、ありがとう。
 でも、春が疲れたら、自分で動かすからね。
 無理しないでね。」
「はいはい。
 でも、今日はいい天気で気持ちいね。」
「本当。
 何か、何年振りって感じ。
 うーん、気持ちいい!」
佳奈は、思いっきり深呼吸と伸びをした。
周りは木々が青々と茂り、澄んだ空気と気持ちの良いお日様の暖か、たまに吹き抜けていくそよ風、すべてに満喫していた。
「いつからだろう、こういうのを忘れてしまって。」
「あっ、佳奈、バッタがいる。」
春彦は目ざとく見つけて佳奈に言った。
「おー、本当だ。」
佳奈は興味津々、バッタを見ていた。
春彦は、そんな佳奈を見てくすりと笑った。
「佳奈は、虫も平気だよな。」
「うーん、たいていの虫は平気だけど、グロテスクなのはさすがに…。
 悠美姉も虫が平気だったでしょ。
 よく見せられているうちに、慣れちゃったのかな。」
佳奈も笑いながら答えた。
そうこうしているうちに、二人は調整池を周回する広い道に出た。
そこは、ジョギングやサイクリングを楽しんでいる人、犬を散歩に連れてきている人、いろいろな人が楽しんでいるところだった。
「春、ちょっと、自分で動かすね。」
「ああ。」
春彦は、佳奈の車椅子から手を離した。
道の片側には調整池の護岸、逆の方は草木が茂っていて、ところどころに芝生の広場や、遊具が置いてある広場があり、子供たちのはしゃぐ声が風に乗って聞こえてきていた。
「わー、風が気持ちいい。」
佳奈は、思わず車椅子から手を離した。
春彦は、そっと、佳奈に気が付かれないように車椅子の後ろの取っ手をつかんだ。
しばらく二人は、風景を楽しんだり、他愛のない会話をしながら楽しんでいた。
「佳奈、疲れたろう。
 そこのベンチのところで、少し休もう。」
「うん。」
春彦と佳奈は護岸のベンチに近づき、春彦はベンチに座り、佳奈は、その正面に車椅子を寄せた。
「はい。」
佳奈は、バッグの中からチョコレート菓子を出して、春彦に渡した。
「おおー、サンキュー。」
2人は、お菓子をつまみながら、ペットボトルのお茶でのどを潤した。
「佳奈?」
「?」
2人が一息ついた後、佳奈は名前を呼ばれ、後ろを振り向いた。
振り向くと、見覚えがある3人の女性が立っていた。
「久美?
 京子?
 慶子?」
「そうよ、そうよ、久美よ。
 佳奈。」
「佳奈。」
「かな~。」
3人は、涙声で佳奈の車椅子の周りを取り囲み、佳奈の顔の高さと同じ高さにしゃがみ込んで佳奈の手を取った。
「どうしたのよ。
 連絡も取れなくなって、皆心配したのよ。」
久美が、心配顔で言った。
「そうよ、交通事故で、怪我したんだって?
 だから、車椅子なんだって。
 なんで、言ってくれなかったの?」
京子も、涙声で言った。
「それに、何で電話やメールを切っちゃったのよ。
 すごく心配したのよ。
 何かあったんじゃないかって。
そうしたら、交通事故に逢っていたなんて。」
慶子も、泣きながら佳奈の手をつかんでいた。
「みんな…。」
佳奈は、いきなりでびっくりしたが、すぐに、皆が心の底から心配していてくれていたことを感じ、急に目頭が熱くなってきた。
「ごめん…。
 ごめんね、皆。
 私、こんな体になっちゃって、気が動転して…。
 みんなにこんな姿見せられないって…。」
佳奈は、べそをかきながら3人に謝った。
「ばか、ばか」
「そうよ、私たちが、それで佳奈のこと笑ったり、そっぽ向くと思ってるの。」
「まったく、もう。
 心配ばっかりさせて。」
4人は泣き笑いしながら、お互いを確認していた。
春彦は、微笑みながら一歩離れたところで、そんな4人を見ていた。
少しして、皆が落ち着いて来た時に佳奈が尋ねた。
「ところで、何で、ここに?」
久美は、春彦を指さした。
「立花君が、教えてくれたの。」
佳奈は、それで納得し、春彦をにらみつけた。
「ふーん、立花君がねぇ。」
佳奈は、久美のマネをしていった。
「立花君、後でお話ししましょうね。」
春彦は、佳奈が怒っていると思い、首をすくめて見せた。
そして、心の中で、(まあ、良くてもしばらく絶交かな)と覚悟していた。
「そうだ、木乃美は?」
慶子が、誰にともなく聞いた。
「佳奈と木乃美は、昔からすごく仲良かったもんね。」
京子が続けた。
「でも、木乃美は、仕事の関係で、海外に住んでいるのよ。」
久美が答えた。
「そっかぁ、じゃあ、折角、久し振りに全員集合かと思ったけど、しょうがないね。」
慶子が残念そうに言った。
そんな会話を少し離れたところで聞いていた春彦は、不意に後ろに人の気配を感じ、背中に何か尖ったものが当たった気がした。
スポンサーサイト
コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2018 混線次元(はるかな物語) all rights reserved.Powered by FC2ブログ