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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第10章 パラレルロード
春彦は山田に投げられる時、自分からその方向に飛び、投げの勢いと自分の飛んだ勢いの相乗効果で山田を巻き込み一回転させると逆に山田を地面に叩きつけ、最期にその勢いが付いた回転力を肘に乗せ、山田の肋骨に叩きつけていた。
そのあまりの速さで、小山以外は何が起こっていたのかわからなかった。
それでもひ弱に見える春彦に圧倒的に有利と自負する慢心さが命取りとなり、一人ひとりとなすすべもなく春彦に打ち負かされていくうちに、皆、顔が真剣になっていた。

「おい、立花。
 こいつ、剣道の有段者だが、木刀を持たせていいか?」
7人目の男の時に、小山が春彦に声をかけた。
春彦は、小山の方を見て、無言で頷いた。
剣道の有段者の男も驚いた顔で小山を見た。
「こ、小山さん。
あのこ、素手ですよ。」
「あのこ?」
(まだ、心の中で相手を甘く見ているな。
 それだと勝つことなんてできはしないのに。)
「心配いらないさ。
あいつ、素手で日本刀を振り舞わす奴を相手にしていたのだから。
新垣も、馬鹿にすると足元すくわれるぞ。」
小山の真剣な顔を見て、剣道の有段者の新垣は、ごくりと唾を飲み込むと、木刀を手にした。
新垣は、春彦の前に立つと剣道に試合ではないので、奇声も発せず、いきなり木刀を斜め上から春彦に振り下ろした。
春彦は、バックステップして木刀の刃先をやり過ごしたが、新垣は振り下ろした木刀を途中で留め、いきなり春彦の喉を狙って突きに転じた。
「あっ。」
声を出したのは小山だった。
新垣の目にもとまらぬコンビネーションからの突きで、木刀が春彦の喉を突き刺したかのような錯覚を感じ、春彦の身体を心配していた。
が、春彦は、紙一重で左手で剣先の真横を叩き、軌道を変えていた。
新垣もさすがにそのまま突き進むと春彦に何かされると、自分の前の6人のやられ方を見ていたので途中で留め、後に飛びずさった。

「すごい。」
小山が感心したのは、新垣の動きだった。
全体重を乗せた突きだったが、その勢いを途中で打ち消し、それどころが後ろにはねた体幹の凄さだった。
新垣は後ろに下がり、木刀を構えなおした時、周りの雰囲気が春彦を中心に重くなっていくように感じられた。
「きたか…。」
小山は、手に汗をかくほど握り締めていた。
「おい、お前ら、奴が来るぞ。
 しっかり、気を確かに持って良く見ておけ。」
その小山も声に一同緊張が走った。
新垣の前の6人は身体のどこかしらにダメージを負っていたが、道場の壁際に持たれて春彦を見ていた。
また、新垣の次に控えていた3人も、春彦の方を凝視していた。
その視線の先の春彦はうな垂れるように下を向いたが、すぐに顔を上げ、新垣を見つめた。

春彦の顔は、例の光のないぽっかりと開いた黒目、Ⅴ字のような鋭角な笑みをした不気味な、人とは言えない顔になっていた。
「ひ…。」
「いや…。」
あちらこちらから恐怖に満ちた声が漏れていた。
新垣も、さすがに顔を歪めながらもなんとか立っていたが、持っている木刀の剣先は小刻みに揺れていた。
「新垣、のまれるな!
 気を確かにもて。
 そうじゃないと、殺られるぞ!」
小山が新垣の背中に向けて怒鳴り散らした。
新垣は、滴る汗で顔がびっしょりと濡れていた。
また、剣先の揺れは、ワザとではなく恐怖から身体の微妙な揺れが剣先を揺らしていた。
新垣は小山の声に気丈にも頷いたが、その場から動けなかった。
(これが、小山さんの言っていた具象化された“殺気”だというのか…。
 面白い…。)
そう思っても完全に強がりでしかなく、勝負は既に決していた。
それでも新垣は意地で一太刀をと、捨て身の策にでた。

「だめだ、新垣、やめろー。」
小山の声もむなしく、新垣は体重を乗せた高速の突きを春彦の胸に向けて踏み込んだ。
そして春彦の左手がその木刀を横から払おうとした瞬間、剣先を突きから下段からの突き上げに変化させ、春彦の顔を襲った。
「やったか。」
小山を含め、誰もが新垣しかできない剣の動きに勝機を見たが、それすらも春彦の罠だった。
春彦はワザと新垣にそういう変化をさせるため、左手で木刀を少し下から払おうとした。
その手の動きを見て新垣は剣先を下から上の春彦の顔に変化させたのだった。
そして、春彦は自分の顔に向かってくる剣先にむかって勢いよく頭を下げ、顔を少し横に倒し、剣先が頬をかすめるようにやり過ごすと、そのまま両手で新垣の木刀を持つ手を掴み、そこを支点にまるで側転する様に身体を回し、新垣の手首を破壊しようとした。

小山は、とっさに回転途中の春彦に体当たりするべく突進したが、それを見ていた春彦は、新垣から手を離し、空中で姿勢を入れ替えると、突進してくる小山の顔に目がけて踵で蹴りを繰りだした。
小山は、それを察したが、身体を止めることが出来ず、顔を下げ、頭で春彦の蹴りを受け止めた。
「がっ」
小山は眼から火花が散り、鼻からきな臭いを感じ、意識が薄くなっていった。
しかし、春彦がすぐに次の手を新垣に向けて放つ気配を瞬時に感じ、倒れずそのまま踏みとどまり、逆に新垣を突き飛ばすべく、新垣に向けて飛び込んだ。
小山と新垣がごろごろを畳の上を壁の近くまで転がり、春彦から間合いを取ることが出来た。
「おい、新垣、大丈夫か。」
小山は自分が鼻血を出していることに気が付いたが、それよりも新垣の方を見た。
新垣は、両手を握るようにして苦悶の声を上げていた。
新垣の両腕、特に両手首にダメージを負っていた。
「大丈夫…とは…言えませんが…
 小山さんが飛び込んできてくれたので…なんとか…。」

小山は、苦痛に顔を歪めて話す新垣の肩を抱いて、春彦の方を見た。
春彦は、“笑い野郎”の顔をして、小山に近づいて来た。
(チクショウ、一方的かよ。)
小山は絶望を感じながら春彦の顔を見ていた。
その時、いきなり糸の切れた人形の様に春彦がしゃがみ込んだ。
「?」
それと同時に、春彦からにじみ出ていた禍々しい何かが消え失せたように思えた。
「どうしたんだ?」
小山がああ溜めてしゃがんでいる春彦の方を見た。
「大丈夫ですか?」
そう言って顔を上げた春彦は、“笑い野郎”の顔ではなく、普通の春彦の顔に戻っていた。
ただ、その顔は真っ青でひどく具合が悪そうだった。
「立花、大丈夫か?」
「ええ、ちょっと頭が痛いですけど。
それより、小山さんと新垣さんは、大丈夫ですか?」
「ああ、なんとか…。
 すこし手首の腱が伸びたみたいだけど、切れていないから…。」
新垣が冷静に状況を話した。
「おれは、ヘッドギアのおかげで、頭に穴が開かなかってけど、すげえ、衝撃だったよ。
首が縮んだみたいだ。」
「すみません…。」
「いや、謝らなくていい。
 これが狙いだし、いい経験になったよ。」
小山は新垣を離すと自分の首を左右に振りながら笑って言った。
(しかし、7人、俺入れて8人、相手にならないとは)
そう言って振り向くと待機していたメンバーと春彦に打ちのめされ待機していたメンバーの3分の2が気を失って倒れているのが見えた。
(おいおい、大丈夫か、このメンバー)
小山は倒れているメンバーを見て頭を掻いていた。
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