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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第10章 パラレルロード
警察署内の医務室のベッドの上で、小山は胡坐をかき驚いた声を上げた。
「おいおい、それじゃ、今まで良く大事件にならなかったな。」
「はい…。」
実は小山と道場で手合わせした時、失神し気を失っていた小山にとどめを刺そうと、春彦はうつ伏せになっている小山の頭の左右に手を置き、そのまま、倒立する様に自分の身体を持ち上げ、小山の後頭部に全体重をかけ膝を落とそうとした。
それが実行されていたら、小山はここで話をしていられなかったはずだった。
その膝を落とそうとした瞬間、「春、だめぇー!」と女性の声が聞こえ我に返ることができたのだった。
その声の主が誰だか、春彦にはうすうすわかっていたが、その場にいないのに、なぜ聞えたのかが不思議だった。
それよりも、大事件にならなかったことを感謝していた。

「なので、他の刑事さんのお相手をするのはいいのですが、その“恐怖の笑い野郎”になるかはわかりませんし、なったあと、止められるか自信が…。」
「そうか…。」
小山は、眉間に皺を寄せて少しの間考えていたが、何かを決めたような顔をした。
「まあ、いい。
 組手の前半に見せた体さばきだけでも十分に訓練になるし、もし“笑い野郎”になれば、それはそれで見つけもんだ。
 一度手合わせしているから、“笑い野郎”からの逃げ方を考えておくわ。」
「あと、母が心配しますので…。」
「ああ、あの美人のお母ちゃんね。
 わかっているよ、内緒にしておく。」
「それと、他の人にも内緒でお願いします。」
「ああ、わかった。
 で、取りあえずは、月に1度くらいでいいかな。」
「え?
 はい。」
春彦は、てっきり、週に何回と言われると思っていたので意外だった。

「一応、防具もしっかり着けるが、怪我をしないとは限らないからな。」
「すみません。」
春彦はてっきり自分の身体を心配してくれているのだと思った。
「ちげーよ。
 こっちだよ。
 こっちのメンバー。
 毎週のようにやったら、身体が壊れちまうよ。
 身体を休めるのと、鍛え上げるのとで、月一がいいところだろう。
 その内、回数を増やせるかとは思うが。
 それに、俺も、そのメンバーの一人だからな。」
「小山さんもですか?」
春彦は小山も手合わせの一人だと聞いて意外だった。
「当たり前だ。
 気絶させられて、黙っていられるか!」
小山はだんだんと恐怖から気絶させられたのが悔しさに変わったのか気色ばんで言った。

「さっきの話だけど、そのもやもやが溜まってくるのが月一位なのか?」
「はい、以前はそんなことなくて、2、3ヶ月にいっぺん位で、道場でガス抜きしていたんですが、最近ガス抜きするところがなく、また間隔も縮まって。」
「何か、女の生理みたいだな。
 でも、月一くらいだったら、お前のガス抜きにもちょうどいいだろう。
 他の連中が物足りなくても俺が居るから。」
春彦は黙って頷いた。

翌月から、春彦は小山に頼まれ、警察道場で小山が編成している特別部隊に実践指導をすることになった。
道場は畳張り30畳ほどの広さで、壁は激突しても怪我をしないようにコンクリートの壁にラバーが張られていた。
時刻は夕方で外は薄暗くなってきていたが、道場の中は蛍光灯で昼間のように明るかった。
春彦は上下のジャージ姿と身軽な服装の上に、上半身、下半身、頭を防護するヘッドギアなど、しっかりとプロテクターをジャージの上から着せられていた。
道場に入ると、道場特有の畳みの匂いと汗の臭いがして、何となく心地よかった。
道場には既に小山の指揮する部隊のメンバーが皆、突入服に着替え、春彦と同様に上にプロテクターで身を包みてウォームアップをしていた。
部隊のメンバーは女性一人を加え、小山を頭数に入れて11人だった。
そのメンバーは全員、剣道、柔道、空手のいずれかの有段者ぞろいだと春彦は事前に小山から聞いていた。
小山が春彦をメンバーに照会すると、皆、ひょろっとした春彦を見て、せせら笑うか、小山の様に馬鹿にされたと怒りをむき出しかのどちらかだった。
小山は、あえて何も言わなかったが、ただ一言
「怪我をしたくなかったら、手を抜くな」
とだけ注意を促しただけだった。
それでもメンバーは皆、疑心暗鬼だったが、一人目の組手が始まると信じられないという顔に変わっていった。

一人目は柔道の有段者でがっちりとした体格の山田と言う男だった。
山田は、身長も1メートル90センチと高く、分厚い胸板で全身よく鍛えられているのが見て取れた。
「小山さん、本当に本気を出していいんですか?
 怪我をさせて後で大さわぎになったら。」
「山田、そんな心配は一切無用だ。
 それよりも自分の心配をしろ。」
山田は小山のセリフにムッとしてあからさまに不機嫌そうな顔をした。
(小山さんは何を考えているんだろうか。
 こんな柔な男に俺が後れを取ることは万が一でもあり得ないのだが。
 まあ、それでもいいって言うから、まあいいか。
 少しは楽しませてくれるかな)
山田はそう思いながら春彦をじろりと睨みつける。
「じゃあ、いいかな?」
小山は、春彦と山田に話しかける。
二人が黙って頷くと、「始め!」と鋭い声で合図した。

春彦と山田は、武道の試合ではないので、お互い礼をするわけでもなく、すぐに戦闘態勢に入った。
そして、最初に仕掛けたのは山田だった。
山田は巨体からは考えられないような素早い身のこなしで、あっという間に春彦との間合いを詰めると、右手で春彦の首の後ろの襟をつかむと、素早く身体を反転させ、腰に春彦を乗せるようにして春彦を頭から地面に打ち付けるような投げを打った。
暴漢相手の場合、一撃で相手の反撃を断ち切るために相手の背中から落とすのではなく、頭から落とし、頭と首を強打させることで相手の動きを封じるという競技と実践の差だった。
スピード、タイミングとも申し分なく、誰もが哀れな春彦が良くても頸椎捻挫は免れまいと思い大の字で倒れている姿を想像したが、次の瞬間、信じられない光景を目の当たりにすることとなった。
バーンと言う音とともに畳みの上で大の字になっているのは春彦ではなく、山田の方だった。
春彦は山田の胸の辺りに上半身を乗せるように横になっており、山田は口からは泡を吹いて白目を剥いていた。
「や、山田。」
他のメンバーが山田に駆け寄ると、春彦は上体を起こし立ち上がり、山田から少し離れたところで無表情は顔で口から泡を吹いている山田を見下ろしていた。

「だめだ。
 おい、山田を医務室に。」
そう言うと数人がかりで山田を医務室に運んでいった。
「すげえな、あんなの初めて見たわ。」
小山が唸るように口を開いた。
「すみません。
 手加減をしたつもりですが、肋骨にひびが入ったかもしれません。」
春彦が小山に向かって謝ると、小山はさらに驚いた顔をした。
「プロテクターの上からか?!」
「はい、感触がそんな感じで…。」
「驚いたやつだな。」
小山はあ然とした顔で春彦を眺めていた。
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