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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第3章 佳奈の決意
次の週、春彦は、また、佳奈を外に連れ出した。
今度は、少し遠くて、むかし通っていた中学校まで足を延ばした。
佳奈の家から、中学校までのちょうど中間に『中屋』があるので、前回の倍の距離だった。
佳奈は、疲れも見せず、久し振りに通いなれた中学校の往復を楽しんでいた。
「佳奈。」
「なに?」
「そういえばさ、中学校からずっと仲良かったグループいたじゃん。
 連絡、取っていないの。」
「うん、大学まではしょっちゅう、わいわいのやってたんだけど。
 皆勤め始めたのと、私が、こんなになっちゃたでしょ。
 だから、それっきり。」
「携帯とか、メールアドレス教えていないんだよなぁ。」
「うん、何かこの姿を見せるのは、躊躇しちゃうの。
 ねえ、覚えてる?
 グループの名前。」
「名前なんて付けてた…。
 あっ、思い出した。
 あのふざけた名前。
 確か、『チームかきくけこ』だっけ。」
「ふざけたのは余計よ。」
佳奈は、少し膨れた顔をして抗議した。
「私が、佳奈。あと、京子、久美、慶子、木乃美。
 名前の一文字をとって並べると『かきくけこ』の出来上がり。」
「すごいよなー。
 集まっただけどでも奇跡的なのに、皆、仲良かったもんな。」
「そうよ、大の仲良し。
 私の大事なお友達よ。
 会いたいなぁ…。」
佳奈は、少し寂しそうだった。
「さあ、今日も『中屋』で鯛焼きでも買って食べよう。」
春彦は佳奈を元気づけるように明るい声で言った。
「うん。」
佳奈は、明るく答えた。
だけど、春彦は(やっぱり、本音は会いたいんだろうなぁ)と思った。
それから、二人は鯛焼きを買って、いつもの公園でお喋りをしながら食べていた。
「そうだ、春。
今日、帰りに家に寄ってくれない?」
「ん?
いいけど、どうしたの?」
「春に渡したいものがあるの。」
「え?なに?」
「えっとねー。」
佳奈は少し焦らす様な仕草でいった。
「家に着いてからのお楽しみ!」
「えー、今、教えてくれないの。」
「うん。
 タネをばらすと楽しみが半減しちゃうでしょ。
 だから、内緒。」
「ふーん。」
春彦はそれ以上追及するのを止めた。
それから二人はしばらくの間、公園で屈託のないお喋りをした後、佳奈の家に戻った。
「ただいまー。」
佳奈は、いつものように明るい声で言った。
「はーい、おかえりなさい。」
茂子は、奥から玄関に迎えに出てきた。
そして、春彦は当然のごとく佳奈を抱き上げ、室内用の車椅子に運んだ。
「まあまあ、春彦君。
 重たくない?」
茂子はそんな二人を見ながら、声を掛けた。
「……。」
佳奈は、黙って少し顔を赤らめ、春彦の首に齧りつくように腕を回していた。
「大丈夫ですよ。
まだまだ、軽いから。
高校時代は、もっと重たかったから。」
「え?」
茂子は思わず聞き返した。
「ばか……。」
佳奈は小さな声で呟いた。

「ねえ、春。
木乃美のこと、覚えてるでしょ。」
二人は佳奈の部屋でくつろいでいた。
相沢木乃美は、佳奈にとって小学校の入学式から意気投合しそれ以来の幼馴染だった。
春彦も小学校時代、何度も佳奈と一緒にいた木乃美とも遊んでいたので、良く知っていた。
「ああ、覚えてるよ。
 相沢が、どうしたの?」
「木乃美って、昔からいい匂いのするお花を集めるの好きだったのよ。
 ドライフラワーにしたり、匂い袋を作ったりして遊んでいたの。」
「あっ、覚えてる。
 相沢が傍に来ると、いつも花の匂いがほんのりしてたな。」
「そうなのよ。
 それで、中学に上がると、アロマオイルを買って、自分で調合したりしていたの。」
「アロマオイルって、香水?」
「ううん。
 香水じゃなくて、アロマテラピーって知ってる?」
佳奈は楽しそうに話を続けた。
「ああ、何か香りでリラックスさせるやつだっけ?」
「うん。
 部屋に置いたり、お風呂に入れたりするの。
 よくプレゼントってもらっていたのよ。
 この部屋も、木乃美が調合したアロマオイルを置いてあるの。」
「そうなんだ。
 だからいい匂いがするんだな。」
「うん。
 それでね、木乃美ッたら、調香師になって香りで人を幸せにするんだっていって、大学卒業したら、一人で海外に勉強にいってるのよ。」
「え?
 あのもっさい娘がね。」
「あー、そんなこと言って。
 木乃美って可愛いのよ。」
「だって、あの黒ぶちメガネだろ。
 それに結構どんくさいところあるじゃん。」
「そんなことないよ。
 メガネ取るとびっくりするくらい可愛いし、芯もしっかりしてるわよ。
 春がケガした時、手当てしてくれたじゃないの。」
「そうだったね。
 あの黒縁メガネを外すと、結構、いけてるよな。
 たしかにそうだ。」
「こら、また、そんな言い方して。」
佳奈に叱られ、春彦は、頭をかきながら謝った。
「でね、今はパフュームというか、オーデコロンね。
 そういう香水を作っているの。
 木乃美、きつい人工的な匂いは嫌いだからほんのりしたのがいいって。
 それで、その人をイメージできる匂いを作っているのよ。
 私も、作ってもらっちゃった。
 結構、気に入っていたのよ。」
「そうなんだ。」
「でも、もうなくなっちゃったし、連絡も取っていないから……。」
佳奈は残念そうな顔をした。
「ならば、連絡とればいいじゃん。
 木乃美なら佳奈の幼馴染で、何でも話せる一番の友達じゃない?」
「うん、そうだけど……。」
佳奈は、歯切れ悪く言った。
まだまだ、こんな自分の姿を見せられないという気持ちがそうさせていた。
春彦は、そんな佳奈の気持ちを察して、やさしく声を掛けた。
「まあ、その内、気が向いたら連絡を取るといいよ。」
「うん。
 そうだね。」
佳奈は顔を明るくして応えた。
「そうそう、それでね。
 去年、木乃美が一時帰国して遊びに来てたの。
 それでね、二人で春に合う香りってどんな香だろうって。
 たまたま、木乃美が少し材料を持っていたので、二人で作ってみたのよ。
 じゃーん。」
佳奈は、枕元から小さなスプレーのついた可愛いガラスの小瓶を春彦の方に差し出した。
「え?
 俺をイメージしたオーデコロン?」
「うん。」
佳奈は楽しそうにうなずいた。
「渡そうと思っていたんだけど、いろいろあって渡せなかったから。」
「でも、俺、そういうのつける趣味はないんだけど。」
春彦は困った顔で言った。
「なに言ってるのよ。
 もう7月になってあつくなってきてるじゃない。
汗臭いと幼稚園の園児に嫌われちゃうわよ。
 それに、そんなにきつくないし、どちらかというとほんのり香る位だから。
 試しにつけて見て。」
「俺って、そんなに汗臭いかな。」
春彦は自分の脇の下の匂いを嗅ぐふりをした。
「ううん。
 春は、不思議と汗をかいても臭わないの。
 不思議よね。」
「小さい頃からプールでよく泳いでいたから、プールの塩素が染みついたかな。」
「もう、そんな変なこと言って。
 でも、男のたしなみよ。
 試してみて。」
佳奈は一生懸命勧めていた。
春彦はそんな期待感を万遍の顔に表している佳奈を見て苦笑いした。
「うーん、気が向いたらでいいか?」
「いいわよ。
 一度、匂いを嗅いでみてね。」
「わかった。
 ところで、俺のイメージの匂いって何?」
佳奈は一瞬戸惑った顔をし、うつむき加減に小声で応えた。
「白檀。」
「え?」
今度は、春彦が面食らった声を出した。
「ビャクダンって、あの年寄りっぽい匂いだろ。」
「えー、違うよ。
 確かに和風の道具や着物の匂い袋に使われているけど、清々しいいい匂いなのよ。
 それに、白檀をベースにしているけど、そんなに白檀って匂いはさせてないから大丈夫よ。」
「そうか?
 うーん。」
春彦はすこし考えこんだ。
「まあ、折角だから、もらって帰るな。」
「うん。
 気に入ってくれるといいけど。」
佳奈はにこやかな顔をしていった。

春彦は。佳奈からオーデコロンの小瓶を受け取り、佳奈の家を後にした。
「うーん。
 これどうしようかな。
 まあ、一度家に帰ったらつけてみるか。
 でも、昔、母さんが買ってきた香水、めちゃくちゃ臭かったからな。
 いくら有名な香水と言っても、きついのは苦手だから。」
そんなことを独り言のようにブツブツ言いながら、しばらく歩いたところで女性から声を掛けられた。
「ひょっとして、立花君?」
「え?」
振り向くと、どこか見覚えのある、同じ年位の女性が立っていた。
「はい、立花ですが、えーと。」
「ほら。」
と言いながらその娘は、両手で髪の毛をツインテのように束ねて見せた。
「あー、思いだした。
 大木じゃないか。
 大木久美。」
「そうよ、久し振り。
 高校卒業していらいだもんね。」
「そうだな。
 でも、全然変わらないじゃん」
「ちょっとー、素敵なレディに向かって、高校時代と変わらないとは、何事じゃ。」
確かに、久美は少し大人びていたが、GパンにTシャツ姿で、しかも、化粧っ気もなかったので、十分、高校生でも通ると春彦は思った。
「あははは。
 そうそう、『チームかきくけこ』だったよなぁ。」
「えー、覚えていたんだ。
 でも、今じゃ、『か』が欠けちゃっているんだけどね。」
「え?
 『か』が欠けている?」
「そうなの、佳奈と一切、連絡が取れないの。
 電話やメールしても、もう使われてないって。
 心配で、佳奈の家まで、たまに見に行っているんだけど。
 外から見る分には、変わってないし。
 でも、何か家に押しかけるのは気が引けて……。
 そうだ、立花君、佳奈と仲良かったよね。
 何か知らない?」
久美は、本気で心配していた。
そして、すがるような目で、春彦を見つめ、口を開くのを待っていた。
春彦は、どうしようかとためらったが、久美の本気で心配している姿と、佳奈の寂しそうな姿を思い出し、口を開いた。
「ああ、今、佳奈に会って来たんだよ。」
「え?」
久美は、声も出ないほど驚いた様子だった。
が、すぐに、春彦の両腕をつかんで、矢継ぎ早に質問攻めを浴びせた。
「佳奈に会ってたの?
 佳奈は元気なの?
 どうしちゃった?
 何かあったの?」
春彦は、「ちょっと、お茶でも飲みながら」と考えたが、久美の必死な顔を見て、その場で答えることにした。
ただ、事件のことには触れず、交通事故に逢い、しばらく入院し、やっと退院できたのだが、車椅子生活を送っていること、こんな自分の姿を皆に見せたくないと、連絡を断ったこと、でも、4人に逢いたがっていることをかいつまんで伝えた。
久美は、最初は驚いた顔をし、最期は、涙を浮かべていた。
「そんな…。
 バカな佳奈。
 そんなことで、一人で悩んで…。
 交通事故って、足以外は大丈夫なの?」
「ああ、他は大丈夫だよ。
 大分痩せたけど、だんだんと元に戻って来てるみたいだよ」
「もう。
 たとえ顔が変わっても、私たち友達なんだから、気にしなくていいのに。」
「でもね、それは、俺らは何ともないからいえることじゃない?」
ずっと佳奈を見てきた春彦だから言えるセリフだった。
「……。」
春彦の一言で、久美は、「はっ」となり、涙で顔をくちゃくちゃにした。
「そうだね、そうだね。
 でも、やっぱり、私たちは、佳奈の友人よ。
 何があっても。」
ハンカチで、涙を拭きながら久美は震える声で言った。
少し、考えてから、春彦は口を開いた。
「あのさ、ちょっと、相談。」
「えっ?
 なに?」
久美は、目を真っ赤にしながら、怪訝そうな顔をした。
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