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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第9章 クロスロード
和彦がアパートに向かって歩き始めると、草むらから二人組の男が飛び出して来た。
二人組の一人は、刃渡り10センチくらいのナイフを持っていた。
「ちっ、ジャージ姿じゃん。
 金持ってないんじゃない。」
ナイフを持っている一人が舌打ちした。
「仕方ねえな。
 なあ、金持っていないなら、裸に引ん剝くってどうか?」
「ああ、よく言うよな。
 俺見たことないから、面白いかもな。」
「ということで、悪けどさ、金持ってる?」
春彦は静かに首を横に振りながらうな垂れた。
「じゃあさ、悪いけど、裸になってくんない?
 そのジャージ売れるかわかんないけどさ。」
手にナイフを持っている男は、春彦が完全に怖がっていると思い込み、その手に持ったナイフをちらつかせながら春彦に詰め寄った。
「それが嫌なら、家に帰って金を持って来てくんないかな、
 バックレようとしても、顔、よーく覚えたから、逃げられないぜ。」
普通なら震え上がるほど、一人が凄みをきかせて言った。

二人組の男たちが1,2歩春彦に近づいた時、がばっと春彦は勢いよく顔を上げて男たちを見た。
春彦と目を合わせた二人組の男たちは、猛獣に出くわした子羊のように、瞬時に自分たちの死を迎い入れた。
男たちを見ている春彦は、その目の黒目と思われるところにぽっかりと穴が開いていて、光というものが感じられなかった。
そして、まるで新月のように口の両端が吊り上がっりまるで笑っているようだった。
何よりも春彦から発せられている猛獣よりももっと恐ろしい、悪鬼、悪魔の様な波動が二人の心臓をがっちりと掴み、今にも握りつぶそうとしているようだった。
二人は、まるで悪魔の呪文にかかったように、呼吸もするのを忘れ、その場に凍り付いた立ち尽くすしかなかった。
その二人に、春彦は音もなく1歩1歩と近づいて行った。
「…に……。」
春彦の口から何かことばが漏れたが、二人組は動くことが許されていなかった。
そして、春彦が何か行動を起こそうとした、その時、懐中電灯の光とともに声が聞えた。

「そこ、何しているんだ!!」
声を発したのは、自転車を押していた巡回中の二人の警官だった。
警官の声が聞こえ、春彦は二人の眼から目を離さず、不気味な口元を見せながら、音もなく後づさりするように、暗闇に溶け込んでいった。
「おい、そこで何やっているんだ!」
二人の警官は自転車のスタンドを立て、2人組の男たちに走り寄って来た。
「おい!」
変事のない二人組に声をかけ、肩を叩くと、ナイフを持っていない方の男が、まるで糸の切れた人形のように、ドサッという音とともに、その場に倒れ込んだ。
もう一人のナイフを持っている男も、ナイフを握ったまま、へなへなと腰を抜かしたようにその場に座り込んだ。

警官の一人は、その手のナイフを見つけた。
「おい、お前、そのナイフは何だ。
 そーっとそこに置け。
 バカなこと考えるんじゃないぞ。」
そう言ってもナイフを持った男は、そのまま、動かなかった。
何か異様な雰囲気を感じた警官は、そっと男の手を掴み、ナイフを取り上げた。
しかし、男は放心状態で一切抵抗せず、また、その場で失禁し、座っているところを中心に水たまりが出来ていった。
「お…い…。」
警官は、あまりの事態にその男を見つめるだけだった。

「おい、たいへんだ。
 こっちの男は、呼吸が止まっている。」
「なに?」
慌てて警官は倒れ込んだ男を上むきにし、呼吸と脈の確認をあわただしく始めた。
「おい、脈もないぞ。」
「心臓マッサージをしよう。」
「俺は、応援と救急車を呼ぶ。」
それから、公園にパトカーと救急車が駆け付け、一時騒然となった。
結局、心臓が止まっていた男は、警官の迅速な心臓マッサージの甲斐があって蘇生し、そのまま。救急車に乗せられた。
もう一人の男も、失禁したまま心神喪失状態で、とても事情が聞けそうまなく、仕方なく、一緒に救急車で搬送された。

「おい、一体何が当たんだ?」
パトロールをしていた警官の上司の警官が二人に尋ねた。
「いえ、何か声が聞えて、近づいたらすでにこんな状態で。」
「でも、確か、もう一人いたような気がします。
 あの二人組が、その者を恐喝しているように見えたんですが…。
でも、どこにも痕跡が無くて、気のせいなのかなぁ。」
警官の一人はキツネに摘ままれたような顔をしていた。
「しかし、外傷もなく、争った形跡も、ましては変な薬剤の匂いもしないしなぁ。」
「それに無臭の毒ガスでしたら、近づいた私たちも無事ではないはずですし…。」
現場にいた警官が不思議そうな顔をして言った。
「一応、この辺りを細かく見てみよう。」
「はい。」
それからしばらく、公園のあちらこちらで警察官の懐中電灯の明かりが乱舞していたが、結局何も見つからなかった。

後日談になるが、二人組の強盗は回復した後、警察の取り調べに素直に応じ、今までも余罪含め、全て自白したが、あの夜のことは一切記憶になかった。
二人を診た医師の話でも、考えられないがあまりの恐怖に記憶の一部が欠落したのだろうということで、結局、その場で何があったのか誰も知ることが出来なかった。
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