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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第2章 悠美の伝言
佳奈は、茂子から悠美が会いたがっているっていると聞いて、日曜日になるのを今か今かと首を長くして待っていた。
学校帰りだと、埃っぽかったり、汗臭かったりで、悠美に嫌われる気がして、学校のない日曜日にお見舞いに行くことにしていたのだ。
悠美は、病気の具合が芳しくなく、ここ1か月ほど入院していた。
(きっと退屈しているんだろうなぁ。
お見舞いの品物を何にしようかなぁ。)
と、授業中に考えたりしていた。
(悠美姉は、いつ退院できるのかな。
こんないい季節に病室の中じゃあ可哀想。
そうだ、春もいくのかなぁ?)
悠美は春彦の従姉で、二人より10才程年上だった。
春彦と佳奈は、幼稚園に上がる前から親友同士の茂子と舞に連れられて良く公園で遊んでいた。
そんなある日、春彦に付き添って遊びに来た悠美に見初められ、それからまるで姉妹のよう二人は意気投合していった。
外の風景は5月に入り、緑がいよいよ色濃くなり、風が心地よい季節になっていた。

見舞に行く約束をした日曜日も五月晴れの暑すぎず、寒くもないとっても気持ちの良い日だった。
佳奈は、陽気だけではなく久し振りに悠美に会えるので、うれしく、つい歩みも早くなっていた。
しかし、病院に入ると、逆に足が遅くなり、悠美の病室の前で、緊張し、とうとう立ち尽くしてしまった。
(もし、具合が悪そうだったらどうしよう。
 お見舞いに来たけど、いいのかな……。)
佳奈は、躊躇し、いろいろと考えあぐねたが、勇気を奮って、一歩病室に踏み込んだ。
「あっ!佳奈ちゃん、こっち、こっち。」
懐かしい悠美の声が聞こえ、佳奈は声の方へ顔を向けた。
そこには、ベッドで半身を起こして笑顔で佳奈を手招いている悠美の姿があった。
(少し、やせたみたいだけど、元気そうでよかった。)
佳奈は、ほっとしながら悠美の方に小走で近づいた。
「悠美姉、具合はどうなの?
 入院したって聞いて、びっくりしたのよ。
 具合は、どうなの?」
「あはは、びっくりした?
 ごめん、ごめん。
 ほら、入院って暇でしょ。
 つまらなくて、佳奈ちゃんの顔がみたいなって。」
「えー、私、暇つぶしなの?」
「そうよ、私の可愛い暇つぶし。」
二人は、顔を見合わせて笑いあった。
「具合はねぇ、そんなに悪くないのよ。
 検査で少し引っかかって、入院して治しちゃいましょって、先生が言ったのよ」
「そうなんだ。
いつ頃までかかるの?」
佳奈は、聞いて「しまった」と思った。
病気の治療を受けているのは悠美なのに、軽々しく、「いつまでかかるの」何て聞いて、悠美が、傷ついたらと思うと、自責の念にかられていた。
それを察してか、悠美は明るい声で言った。
「薬が効くまで、少し時間が掛かるんだって。
 でも、あと1~2か月で退院できるんじゃないかって。
 でもね、午前中に診察と投薬治療だけで、あとはベッドの上。
 もう、暇で暇で仕方ないのよ。」
悠美から聞いた状況は、あまり深刻な状況でなさそうなので、佳奈は、心底ほっとした。
そして、持ってきたお見舞い品を持ち出し、悠美に手渡した。
「はい、暇だろうと思って、パズルの本買ってきたの」
「わー、ありがとう。
 クロスワードパズルじゃない。
 私、これ大好きなの。
 さすが、佳奈ちゃん。
 ありがとー。」
悠美は、佳奈から本を受け取り、大事そうに抱きしめた。
「えへへ、喜んでもらえて、良かった。」
「春ちゃんには、私の好きそうな漫画を持ってきてって頼んだのよ。」
「あははは、悠美姉は漫画も好きだもんね。」
「でも、パズルはもっと好きよ。
 ありがとうね、佳奈ちゃん。」
「えへへへ、どういたしまして。」
悠美に喜ばれて、佳奈は照れ臭そうに笑った。
「そうだ、そこの冷蔵庫の中に、ジュースとアイスがあるから、どちらか好きなのを取ってね。」
「えっ?いいの?」
佳奈は、遠慮がちに聞いたが、悠美は笑顔でうなずいた。
「じゃあ、遠慮なく。
 どれどれ。」
と、佳奈は冷蔵庫を開けて中を見た。
冷蔵庫の中には、バニラのカップアイスとサイダーが入っていた。
「本当に、いいの?」
佳奈はもう一度確認した。
いつもは、悠美が手に持って、「どっちがいい?」と、半ば強制的に聞いてくるので、遠慮はいらなかったが、さすがに悠美の分だろうと佳奈は気が引けていた。
「いいのよ。
 お見舞いに来てくれた人用でもあるんだから。
 ちょっと、脚を捻じっちゃって歩けないから、冷蔵庫から出してあげられないけど、遠慮いしないでね。」
「えっ?
 脚を捻じったって?
 動けないほど、ひどいの?」
佳奈は、驚いて尋ねた。
「そんなに、大げさなもんじゃないのよ。
 ちょっとベッドから降りる時に、よろよろ、ぐきって。
 もう、ほとんど痛くないけど、また、捻じって、それで入院が長引いたら、たまらないでしょ。」
「うん、わかった。
 痛くないのね?」
「少しだけ。」
悠美は笑って答えた。
佳奈は、安心し、カップアイスを手に取った。
「じゃあ、カップアイスを頂きます。」
「あはは、やっぱり。
 佳奈ちゃんは、アイスが好きだから、兄さん、買っておいてもらったのよ。
 大正解でした。」
「そういうことなら、遠慮なく。
 頂きまーす。」
「どうぞ、召し上がれ。」
陽気が暖かくなってきたのと、悠美が心配だったので喉が渇いていた佳奈には、普通のカップアイスが、極上のアイスに思えるほど、美味しく感じた。
アイスを食べていながら、ふと、悠美の視線を感じた。
そこには、佳奈を優しく見つめる悠美がいた。
(そうそう、いつも、悠美姉は私を優しく見ていてくれる。
 それが、すごく暖かくて居心地がよく、私は大好きなんだ。)
小さい時から、振り返ると必ず悠美は優しく微笑んでいたことを思い出していた。
「佳奈ちゃん。
 今日の洋服、すごく可愛いわよ。」
「え?」
急に言われ、佳奈はドキッとした。
「そのオレンジ色のワンピース。
 佳奈ちゃんは、明るい色が良く似合うもんね。」
「うん。
 私、オレンジ色って好きなんだ。」
「そうだよね。
 昔から、お絵かきするときオレンジ色ばっかりだったもんね。」
「そんなことないよ~。
 他の色も使っていたよ。」
佳奈は、小さく口をとがらせて抗議した。
「あはははは、ごめんごめん。
 でも、本当に素敵よ。
 佳奈ちゃんがいるだけで、病室がすごく明るくなって。」
「そう?」
佳奈は、嬉しそうにアイスを一口頬張った。
「そうだ、今日は、春は呼んでいないの?」
「うん。
 ほら、病室、狭いでしょ。
 それに、ほかの人もいるから、大勢だと迷惑になるでしょ。
 それと春ちゃんも最近は随分身長が伸びて体つきも大きくなってきたでしょう。」
(そうだ、春は最近身長が伸び、私よりも大きくなったもんなぁ)
そんなことを思いながら、佳奈はアイスをまた頬張った。
アイスを食べ終わった佳奈に、悠美は声をかけた。
「ねえ、佳奈ちゃん。
ちょっとここに来て。」
「うん。
なに?」
悠美は自分が座っている横に来るように手招きした。
「髪が少し乱れているわ。
 ブラシしてあげるから、後ろ向きに座って。」
「わぁい」
佳奈は、喜び勇んで、言われるとおりに悠美のベッドに後ろ向きに腰掛けた。
悠美は、小物入れからブラシをだし、佳奈の髪をとかしはじめた。
佳奈は、小さいころから悠美にブラシをかけてもらうのが好きだった。
「悠美姉のブラシ、久し振りで、うれしいなぁ。」
「ほんと?」
「でも、大丈夫なの?
 疲れたりしない?
 でも、気持良くて、止めてとはいえないんだけど、えっへっへ。」
「大丈夫よ。」
ブラシをしながら悠美は佳奈に話しかけた。
「ねえ、佳奈ちゃん、外はどう?
 気持ちいい?」
「うん、今日は天気がいいし、清々しくて気持ちいいよ。」
「いいなあ、私も外に出たいなぁ。」
「ねえ、悠美姉。
 退院したら、また、一緒に公園とか、買い物にいこうよ。
 ここのところ、半年ぐらい、悠美姉具合が悪くて、一緒に出掛けられなかったでしょ。
 寂しかったのよ。」
「そうね。
 そんなになるんだっけ。」
佳奈にブラシをかけながら、他愛のない話をしていると、通路から声を掛けられた、
「あら、妹さん?」
見ると、同室の小柄な老婆がニコニコ笑いながら二人を見ていた。
老婆は、ちょっと用を足し、戻ってきたところだった。
「そうなの、おばあちゃん。
 可愛いでしょ。」
「そうかいそうかい、めんこいねぇ。
 ゆっくり、お姉ちゃんに甘えていきなさいね。」
と、声をかけカーテン向こうの自分のベッドに戻っていった。
「佳奈ちゃんのこと、妹だって。
 うれしいな、似てるのかなぁ。」
加奈の耳元で、こっそりと悠美がささやいた。
(悠美姉と姉妹だって。
 こんな素敵な悠美姉と姉妹に見えたんだ)
佳奈は嬉しさで半分舞い上がってしまい、悠美のブラシの手が止まっているのを気が付かなかった。
不意に悠美が、優しく佳奈を後ろから抱きしめた。
「悠美姉?」
佳奈は、少し驚いた。
小さいころは、良くこうやって悠美に抱きしめられることがあったが、最近では、大きくなったせいか、なかったことだった。
その頃が思い出せるように、ふわっとした風に乗って悠美の何とも言えない優しい香りに包まれ、佳奈はじっとしていた。
「佳奈ちゃん、いい匂い。
女子力上がったんじゃない?」
固まっている佳奈を抱きしめたまま優しく悠美は話しかけた。
佳奈は、ほのかに香る女性らしい悠美のいい匂いが好きだった。
「私なんて…。
 悠美姉の方がいい匂いよ。
 大好き。」
「えー、病院の中だから、消毒薬の匂いしかしないでしょ。」
悠美がけらけらと笑った。
「そんなことない、悠美姉の優しいにおいがする。」
佳奈はむきになってそれを否定した。
「ありがとうね、佳奈ちゃん。
 ねえ、佳奈ちゃん。
 これから、佳奈ちゃんは素敵な女の子、ううん、女性になっていくわよ。
 私が、太鼓判押ちゃう。
 もっともっと、佳奈ちゃんのそばにいたかったなぁ……」
「えっ?
 悠美姉、なに言ってるの?」
佳奈はびっくりして、飛び上がりそうになった。
「えー?
 だって、そのうち、佳奈ちゃんにも、素敵な彼氏ができて、私のことなんて二番手、三番手で会いになんて来てくれなくなるでしょ?」
すこし、意地悪そうに悠美は言った。
「何言ってるの、悠美姉。
 そんなことないよ。
 悠美姉が一番好き。
 私のお姉ちゃんだもん。」
「そうだね、私たち、仲良し姉妹だもんね。」
一呼吸おいて、悠美は話し続けた。
「でも、ひとつだけ。
 佳奈ちゃん。
 何かあったら、春ちゃんを頼りなさい。
 あの子は、佳奈ちゃんを、ちゃんと守ってくれるからね。」
「えっ?」
悠美は抱きしめていた腕をほどいた。
佳奈は急いで体を悠美の方に向け顔を覗き込んだ。
そこには、初めて見た悠美の悲しげな笑顔があった。
佳奈は、何だか急に不安で心がいっぱいになった。
「悠美姉、いやよ、そんな顔しちゃ。
 どうしたの、今日の悠美姉、なにか変よ……。」
不安からか胸がぎゅーと締まるような寂しい感じがして、いつしか佳奈は涙声になり、泣きじゃくり始めた。
何かが違う、何か重大なことがある、佳奈は不安で押しつぶされそうになっていた。
ふわっと、佳奈の髪を撫でる悠美の手を感じ、佳奈は、顔を上げた。
悠美は、そんな佳奈の髪を撫でながら
「ごめん、そんなつもりじゃなかったのよ。
 そうだね、入院が長引いて、少し、心細くなったのかな。
 早く良くなって、退院したら散歩に付き合ってね」
「うん、絶対だよ。
 約束だからね。」
佳奈は念を押した。
「うん。
 佳奈ちゃんの髪って、触り心地いいね。
 大好き。」
悠美は話をそらすように言った。
「悠美姉。
 絶対だからね。
 元気になって、また、二人で買い物とか遊びに行くんだからね。」
佳奈は真剣に言った。
悠美は、笑いながら何度もうなずいた。
「大丈夫だからね。」
悠美は優しく佳奈に言った。
「絶対?」
「私が佳奈ちゃんとの約束を破ったことある?」
「ううん。」
佳奈は、小さく頭を左右に振った。
そして、悠美の言うことを絶対に信じるんだと自分に言いきかせた。
「さて、佳奈ちゃんの顔を見たら嬉しくて、興奮しちゃった。
 疲れたので、少し休むね。」
「じゃあ、私もこれで帰ります。
 でも、さっきの、絶対約束だからね。
 早く良くなってね。」
「はいはい、大好きな妹にそこまで言われたから、頑張って早く治すわね。
 今日は、来てくれてありがとう。
 気を付けて、帰ってね。」
佳奈が、帰ろうとしたとき、悠美の兄の光一が病室に入ってきた。
「おや、佳奈ちゃんじゃない。
 悠美の見舞いに来てくれたのか。
 ありがとね。」
「はい、でも、ちょうど今帰るところなんです。」
「じゃあ、病院の玄関まで、送っていこう。」
「お兄ちゃん、可愛くなったからって、佳奈ちゃんに手を出さないでよ。」
悪戯っぽく悠美は言った。
「いやだ、悠美姉ってば。」
「そうだね、手なんかだしたら、悠美に半殺しにされるな。」
「全殺しだよ。」
悠美は、楽しそうに言った。
「そうだ、佳奈ちゃんを送っていったら、何か買ってこようか?
 何がいい?」
「それは、当然、カップアイス!
 佳奈ちゃんが、いつアイスを食べに来てくれてもいいようにね。」
それを聞いて、佳奈は思わず笑い出した。
「じゃあ。」
佳奈と悠美はお互いに手を振って別れの挨拶をした。
光一と歩きながら、佳奈は恐る恐るたずねた。
「あのー、悠美姉の具合は、どうなんですか?」
「えっ?なんで?」
「なんか、悠美姉、いつもと感じが違ったような気がして。」
「そうかなぁ、入院が続いて、少し精神的に参っているのかな。」
「そうなんだ、可哀想。」
佳奈は、光一の話に何の疑いも持たなかった。
「まあ、退院すれば、元に戻るよ。」
「ですよね。」
退院という言葉を聞いて、佳奈の声は急に元気になった。
「悠美姉、言ってたのですが、後1~2か月で退院ですって?」
光一は、黙ってうなずいた。
そういう話をしながら、二人は病院の玄関のところまで来ていた。
「じゃあ、佳奈ちゃん、今日はありがとうね。
 悠美は、とっても喜んでいたから。」
「はい、また、お見舞いにきます。
 悠美姉に伝えておいてください。
じゃあ、失礼します。」
佳奈は、ぺこっと光一にお辞儀し、可愛らしい麦わら帽子をかぶって病院を後にした。
光一は、しばらく、佳奈の後ろ姿を見送っていた。
そして、独り言をつぶやいた。
「あと、1~2か月か。」
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