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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第8章 灯火
光一の車が春彦のアパート前に着くと、まず悠美とキクが車から降りた。
そして、光一が降りて春彦の荷物をアパートに運び込んだ。
「悠美の荷物は降ろしていいんだよな?
 今日、ここに泊るんだろう?」
「ううん。
 今日の分は、分けておいたの。」
そういって手提げバッグを見せた。
「車の中のスーツケースは、そのまま持って帰ってね。
 それで、スーツケースの中に制服が入っているんだ。
 くしゃくしゃになっちゃうから、家に帰ったらスーツケース出して部屋につっておいてね。」
「ああ、母さんに言っておくよ。」
「わかった。
 じゃあ気を付けてね。」
「任しておけって。」
そう言って、光一は春彦を乗せ、病院に向かって車を走らせた。

悠美は、アパートに入ると、カーテンを開き、換気のために窓を開けた。
窓から冷たいが新鮮な空気が部屋中に流れ込み、よどんだ空気を吹き飛ばしていった。
「うーん、良い空気だわ。」
悠美は窓際で深呼吸した。
部屋の中は、舞を救急車で病院に運んだあと、入院や立花家に泊る準備で、アパートに戻った時に片づけをしておいたので、綺麗なままだった。
「うーん、舞ちゃんと春ちゃんのお蒲団干したいなぁ。
 シーツも洗っちゃいたいけど、今、10時でしょ。
 乾かないかな。」
「悠美さん、乾燥機があるじゃない。
 それを使えば?
 乾燥機用の柔軟剤もあるから、大丈夫じゃない?
 それに布団乾燥機もあるし。」
キクが辺りを見渡していった。
「そうですよね。
 この際、お日様にこだわらなくても、洗っておいた方が気持ちいいですよね。
 うん、そうしよう、そうしよう。」
やることを決めると悠美の行動は早かった。
押し入れの中にしまってある舞と春彦の布団を取り出し、シーツや掛布団カバー、ピロケースをはがし、洗濯機の中に突っ込み洗濯をはじめると、敷布団や掛布団をベランダに並べた。
「さて、次は、部屋の掃除、掃除。」
あまりの手際よさに、キクは呆然としていた。
「いけない、いけない。
 つい、ぼーっとしていたわ。
 悠美さん、私も何か。」
キクは、悠美に話しかけた。
「キクさんは、冷蔵庫のチェックをお願いします。
 賞味期限の切れたものがあったら、捨てなくちゃならないし、そうそう、お米は大丈夫かしら。」
「わかったわ。
 こっちは私が引き受けるから、悠美さんはお掃除、お願いね。」
「はーい。」
悠美は笑顔で返事をした。

キクも悠美も前回来た時に冷蔵庫の中とか確認していなかった。
キクが冷蔵庫を開けると、中を見てショックを受けた。
冷蔵庫の中には、春彦用と思われるプリンとヨーグルトが少しだけ入っているだけで、他の食材はほとんどなく、がらーんとしていた。
野菜室もしおれた葉物と痛みかけたトマトが入っているだけだった。
「……。」
冷蔵庫を見て押し黙っているキクを見て悠美が不審に思い、キクの肩越しに冷蔵庫の中を覗き込んだ。
「え?」
悠美は、殺風景な冷蔵庫の中を見て、思わず声を上げ、次に米櫃の入っている台所の下を覗き込んだ。
そこには、申し訳なさそうな量のお米、日本酒の一升瓶の空瓶が数本転がっていた。
食器棚の下の棚にいつもはお菓子や煎餅が入っていたのだが、それも空だった。
「……。」
舞は、忙しさと寂しさから、春彦の分の食事は作ったが、自分は食欲がわかず、少しの惣菜、つまみの類とお酒で済ましていたのだった。
悠美やキクには、やつれながらも、春彦にご飯を食べさせ、春彦の笑顔だけを楽しみに、お酒を飲んで悲しみ、寂しさを紛らわせている舞の姿が想像できた。
「よほど、精神的に参っていたのね…。」
キクが、ぼそっと言った。
「私がもっとちゃんと様子を見に来ていれば良かった…。
 ちょうど推薦の面接やテストで最近来ていなかった…。」
悠美は自分が様子を見ていれば、もしかしてお腹の子もちゃんと生まれていたかもと自分を責めた。
「悠美さん…。」
今にも肩を落として悔し泣きをし始めそうな悠美の肩に、キクはそっと手を回した。
「私もそうよ。
 たまに来ても、冷蔵庫の中とか、ちゃんと食事をしているのか確認していなかったの。
 仕方なかったのよ、全て…。」
「キクさん…。」
キクの言葉を聞いて悠美は顔を上げた。
「そうですね。
 今更、くよくよしても仕方ないですね。」
悠美は泣き笑いのような顔を見せ、キクに言った。
「悠美さん…。」
「ねえ、キクさん。
 私、少しお小遣い持ってきているので、掃除が済んだら、一緒に冷蔵庫がパンパンになる位、食べ物を買いに行きませんか?」
悠美のその言葉を聞いて、キクは大きく頷いた。
「ええ、そうしましょう。
 悠美さんは大丈夫よ。
 今日は、うちの人から軍資金をたくさんもらってきたから、うんとたくさん買っちゃいましょう。
 そして、冷蔵庫をいっぱいにして舞さんを驚かせましょう。
 ついでにお菓子とかもね。」
「はい、そうしましょう。」
悪戯っぽく笑うキクを見て悠美も元気になっていた。
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