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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第8章 灯火
その窓からは立花家の玄関の方を向いており、反対側の山並みとの間の平地が遠くまで見渡せた。
「わー、ここは山に囲まれていたんだ」
悠美は今更ながらに立花家の立地がわかった。
立花家は、左右両側に山があり、その山裾を縫うように平地が遠くまで広がっていた。
窓を開けていると、遠くの方から鳥の鳴く声が聞こえた。
「春ちゃん、鳥の鳴き声が聞こえるよ。」
「うん。
 おじいちゃんが言ってたけど、この近くに池があって、渡り鳥が冬になるとやって来るんだって。
 その鳥の鳴き声じゃない?」
確かに、鳴き声はよくテレビとかで耳にする白鳥や鴨の声のようだった。
すると遠くの方で二羽の鴨の様な鳥が飛んでいくのが見えた。
(あの二羽は番(つがい)かしら…)
そんなことを考えながらぼーっと外を眺めていると、遠くから1台の車が近づいてくるのが見えた。

立花家の玄関の前の道は車1台が通れるくらいの細い道で、近所の人が買い物で通ったり、農作業の危機が通るくらいで車通りの少ない道だった。
車は立花家の玄関のところにある窪地に入り停車し、中から見覚えのある光一が降りてきた。
「春ちゃん、光ちゃんが来たわよ。」
悠美は振り向いて春彦に声をかけた。
「本当?」
春彦は、光一の車に乗るのを楽しみにしていたので、眼を輝かせて顔を上げた。
「春彦ちゃん、悠美さん、光一さんが見えましたよ。」
すぐに階段の下からキクが二人に声をかけた。
「本当だ!」
そう言いながら、春彦は椅子から飛び降りると急いで階段を降りて行った。
「こら、春ちゃん、そんなに急いだら危ないから。」
悠美が走っていく春彦に注意した。
「平気、平気!!」
春彦はそんな悠美の心配を吹きとばすように、トントントンと階段を駆け下りて行った。
「ちょっと、引き出しも開けっ放しで…。」
悠美は「まったくもう」と呆れた顔で、開けっ放しにされた引き出しを絞め、階段の方に一歩踏み出した。
その時だった。

“悠美…。”

背後から悠美を呼ぶ春繁の声が聞えた気がして悠美は机の方を振り返った。
今しがたまで春彦が座っていた椅子に、悠美が知っている笑顔の春繁が座っていた。
正確に言うと、座っている気がした。

“悠美、いつもありがとう。”
“悪いけど…。”
“もう少し、頼むな。”

悠美はそう言う春繁の言葉が確かに聞こえた気がした。
「繁おじちゃん…。」
悠美は春繁の方に一歩踏み出したが、胸が一気に熱くなり、涙で前がぼやけてしまった。
そして涙を拭うと、椅子はもぬけの殻だった。
「繁おじちゃん…。」
悠美は、そう呟き、そっと椅子に近付いて行った。

「悠美ちゃん、何しているんだろう?
 もう、光ちゃんが来ているって言うのに。」
「ん?
 悠美はどこにいるの?」
光一が春彦に尋ねた。
「うん、さっきまで二人でお父さんの部屋にいたんだ。
 光一兄ちゃんが来たので、僕だけ先に下りてきたんだけど…。」
春彦はそう言いながら二階の方を見上げた。
「ぼく、見て来るね。」
「ちょっと、春彦ちゃん。」
二階に上がろうとする春彦をキクは後ろから肩に手を置いて押しとどめた。
「え?」
なんで?という顔でキクの方に振り向いた春彦に、キクは優しく首を横に振った。
「悠美さんが降りてくるまで、待ってあげましょう。」
春彦は何となくわかったような、わからないような顔をしたが、頷いてキクの傍に立っていた、
二人の会話を聞きながら、光一は二人の荷物を車に運び込んでいた。
「春彦、荷物を運ぶの手伝ってくれ」
光一が、そう言うと春彦は「はーい」と返事をして光一の方に走って行った。
キクは、春彦を見送ると、また、心配そうな顔で2階を見上げていた。
「どうしたんだ?」
いつの間にか、春吉がキクの傍に来て、話しかけた。

「わかったわ。
 大丈夫、任せてね。」
悠美はそっと人差し指で机を撫でた。
「私もいつか次元の狭間に落ちていく。
そうしたら、誰が見つけてくれるかな?
春ちゃん?
佳奈ちゃん?」
そう独り言を言うと悠美は部屋をもう一度見まわし、部屋を出て階段を降りて行った。

階段の下では、キクに加え春吉も心配そうに悠美が降りて来るのを待っていた。
トントントン
悠美が階段を降りて来る音が聞えた。
「あ、降りてきたわ。
 悠美さん…。」
そう言いかけてキクは悠美を見て言葉を失った。

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