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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第8章 灯火
そして、夕飯で全員のお腹が膨らんで来た頃に、春吉が悠美と春彦に向かって口を開いた。
「二人とも、明日に予定はどうなっているのかな?
何時ごろに出発するのかな?」
それを聞いて悠美は、真っ青になった。
「きゃあ、大事なことを言うのを忘れていました。
 ごめんなさい。」
すまなそうに言う悠美に春吉は笑いながら手を振った。
「いいから、いいから。
 明日の予定を教えておくれ。」
「はい。
 明日、朝の9時ごろに兄が車でここに来ます。
 で、私と春ちゃんは荷物を積んで、兄の車でそのまま繁おじちゃん…、舞ちゃんのアパートに向かいます。
 たぶん、サキちゃん、いえ、祖母も乗ってくると思いますので、荷物を置いたら、私以外は兄の車で舞ちゃんを迎えに行きます。」
「あら?
 悠美さんは、どうするの?」
「はい、私は、アパートに残って、換気と掃除をして舞ちゃんを待つつもりです。」
「まあ、えらいわね。
 でも、朝、あんまりゆっくり寝てられないわね。
 7時ごろでいいのかしら。」
「はい、今日中に支度しておきますから大丈夫です。」
「そう。」
キクは悠美の話に思わず舌を巻いた。
(本当にこの娘ったら、何から何まで気が利いて…)

「おい。」
その横から春吉がキクに声をかけた。
「お前も一緒に乗って行って、悠美さんの手伝いをしたらどうだ?」
「あ、そうね、そうしましょう。
 光一さんの車、私も乗れるわよね?」
「え?
 いえ、そんなことしてもらったら、キクさんが疲れちゃいますから。」
「あら、手分けしたほうが早いし、食べるものとか、足りないものの買い出しだってあるでしょ?」
「それは、午後にゆっくり…。」
「いいじゃない、私も舞さんの顔も見たいから。」
悠美は舞の顔をみたいと言われると、それ以上キクの申し出を断る理由はなかった。
「いいんですか?
 春吉さん、キクさんが居なくて大丈夫ですか?」
悠美の思わぬ言葉に春吉は飲みかけていたお茶を噴き出しそうになった。
「ああ、大丈夫だよ。
 心配しなさんな。」
「ええ、この人は意外と一人でもちゃんとできるから、大丈夫よ。」
「意外とはなんじゃ!」
キクの言葉に、春吉はムッとしたがすぐに笑顔になった。
「じゃあ、キクさん、すみませんが一緒に来ていただけますか?」
「はい、もちろん。」
笑顔で尋ねる悠美に、キクも、笑顔で返した。

「ねえ、悠美ちゃん。」
春彦が悠美の腕を引っ張った。
「なに?春ちゃん。」
「あれは、いいの?」
「あれ?
 あっ!!
 あー!!!」
春彦の言葉に悠美は何かを思い立ったように立ち上がった。
「すみません、ちょっと、部屋に戻りますが、すぐ、戻ってきますので、春吉さんとキクさんはここに居てくださいね。」
そう言うと速足で居間を出て行った。
「え?
 ああ。」
「はいはい。」
春吉とキクは呆然と悠美を見送った。
「悠美さん、一体全体どうしたのかしら…。」
「春彦?」
「ん?
 悠美ちゃん、すぐに戻って来るって。」
少しして、大きな紙袋を下げて悠美は居間に戻って来た。
そして少し息を切らせながら、座布団の上に座ると、紙袋の中から何かを取り出した。
「あの、これ、私と春ちゃんから、お世話になったお礼です。
良かったら使ってください。」
そう言うと、悠美は春吉に水色のリボンが付いている包装されているものを差し出した。
「え?
 なに?
そんなことしなくても…。」
春吉は、そう言ったが、悠美と春彦の期待一杯の眼、春吉がきっと受け取って喜ぶだろうという期待の眼を見て、喜んで受け取ることにした。
「じゃあ、遠慮なくいただくよ。」
「はい!」
二人は声を揃えて返事をした。
そして悠美は、また紙袋から今度はピンクのリボンのついた包装紙に包まれているものを取り出し、キクに差し出した。
「これ、キクさんに!」
「まあ!」
キクは目を真ん円に見開いて、受け取った。
「何かしら。」
「何だろう。
 開けていいかな?」
悠美と春彦が頷くと、春吉とキクは各々受け取ったものの包装紙を丁寧にはがし、中身を出してみた。
「おお、これは暖かそうだ。」
「本当。」
中から出てきたものは、春吉に焦げ茶色のニットの帽子とマフラー、キクにもオレンジ色のニットの帽子とショールだった。
「春ちゃんと何が良いだろうって相談したんですよ。
 そうしたら、春ちゃんが二人とも帽子やマフラーが無くて寒そうって言ったので。
 もしかしたら、帽子やマフラーをお持ちだろうと思ったのですが、これから、寒さが厳しくなるので、もしよかったら使ってくださいね。」
悠美がにっこりと笑っていうと、春吉とキクは目を潤まして頷いていた。
「ちょうど、帽子もマフラーも古くなって、買い替えようと思っていたところなんだよ。
 ありがたく使わせてもらう。
 悠美さん、春彦、ありがとう。」
「わたし、こういう帽子持っていなかったの。
 それにこのショール、とっても暖かそう。
 うれしいわ、ありがとう。」
二人は、受け取ったものを大事そうに胸元に抱き、悠美と春彦に礼を言った。
「やったー!」
「やったね、春ちゃん。」
春彦と悠美は、春吉とキクの喜ぶ顔を見て、嬉しそうにハイタッチした。
「でも、こんなに良い物を、高かったんじゃないか?」
「そうですよ、こんなに暖かそうなもの、さぞ、値段も張ったんじゃないの?」
春吉とキクが心配そうな顔をした。
「いえ、大丈夫です。
 ちょうど、学校に近くのお店でバーゲンやっていたので。
 それに、少し、祖母に手伝ってもらったので…。」
悠美は、照れ臭そうな顔をして、チョロっと舌を出した。
「まあ、そうなの。」
「これで、今年の冬は温かく過ごせそうだ。」
「本当ですね。」
春吉とキクは嬉しさで万遍の笑顔を悠美と春彦に見せていた。

夕食の片付けが終わり、食器を食器棚に戻し終わると、悠美はキクに近づいて声をかけた。
「キークさん。」
「え?なあに?」
悠美の甘えたような声に、キクはすっかり実の娘と話すかのように返事をした。
「キクさん、ちょっとここに座ってくださいな。」
悠美は台所の真ん中辺にある小さな机と2脚の椅子の一つを指さしていた。
「あら、何かしら?」
「いいから、いいから、座って、座って。」
「ええ?
 はいはい。」
そう言いながらキクが椅子に座ると、悠美はキクの背後にまわってキクの肩を揉み始めた。
「ゆ、悠美さん、そんなこと…。」
キクはあまりのことでびっくりしたが、あまりの気持ちよさに言葉が途切れてしまった。
「キクさん、痛くないですか?」
キクの肩を揉みながら悠美がキクに話しかけた。
「いい…、すごく気持ちいいわ…。」
「よかった、サキちゃんもいつも気持ちいいって。
 あ、祖母がですが。」
慌てて言いなおす悠美を、キクは面白そうに笑った。
「でも、嬉しいわ。
 肩なんか揉んでもらったのは、春繁が幼稚園の時の母の日以来かしら。」
「ええー、そんな前なんですか?
 だからカチコチじゃないですか。」
談笑しながら悠美はしばらくの間キクの肩を揉んでいた。
「悠美さん、ありがとう。
 明日の支度も残っているんでしょ?
 もう大丈夫よ。
 本当に、ありがとうございます。」
キクは、悠美の手に自分の手を乗せ、優しく揉む手を止めさせた。
「はい、じゃあ。」
「うん、ありがとう。」
「そうそう…。」
そう言いながら悠美はポケットから何かを取り出し、キクの前に置いた。
「これは?」
キクが聞くと、悠美はキクを後ろから抱きしめるように腕を回した。
「これは、美味しいお弁当のお礼で、匂い袋です。
 気に入ってくれればうれしいんですが。」
「ええー、そんなことまで。
 もう…。」
「どうですか?
 ちょっと嗅いでみて。」
「はいはい。」
そう言って袋から匂い袋を取り出し顔に近づけると、甘く優しい、そしてどこか懐かしい香りが袋から漂ってきた。
「あら、いい香り。」
キクはうっとりする様に言うと、悠美は嬉しそうな顔をした。
「よかった、キクさんに合う香りはどれがいいかなって、一生懸命探したんです。」
「まあ、ありがとう。」
(きっと、私にも娘が居たら、いつもこんな感じで楽しいかしら)
キクは悠美が自分の娘だったらと、つい思ってしまった。

悠美が客間にもどると、春彦が荷造りせずに布団の上で春吉に買ってもらった本を読んでいた。
「きゃあ、春ちゃん!!
 荷物の整理はどうしたの?」
「え?
 うん、悠美ちゃんと一緒にやろうと思って。」
春彦は涼しい顔で答えた。
「何言ってるの、もう、遅いでしょ。
それに明日朝早いのよ。
早く片付けて、早く寝ないと。」
「ええ?
 だって起きるのいつもと一緒だよ。」
「何言ってるの、ともかく早く片付けないと。」
「はーい。」
春彦は悠美に指図され荷物の整理をしたが、大半は悠美が荷繕いをし、30分も掛からずに終わることが出来た。
「ふう、やっと終わった。
 やっぱり、日頃から整理整頓しておくと早いわ。
 さあ、手と顔を洗って、早く寝ましょう。」
「はーい。」
春彦は、ランドセルから落ちた紙を見つけると、無雑作にランドセルに戻した。
「?
 どうしたの?
「ううん、なんでもない。」
心なしか元気がなくなった春彦を見て悠美は気になって尋ねたが、春彦は首を横に振って洗面所に行った。
「ちょっと、春ちゃん、一緒に行こうよー!」
悠美は慌てて、春彦の後を追うように洗面所に向かった。
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