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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第8章 灯火
翌朝、悠美の目覚ましが5時を告げ、悠美は、眠い目をこすりながら布団から這い出した。
「うぅ、寒い…。」
自分の家と違ってひろい木造家屋なので部屋の中も冷え冷えし、寒さもひとしおだった。
横の布団で寝ている春彦を見ると、春彦は気持ちよさそうに布団にくるまって寝息を立てていた。
「まあ、気持ちよさそうに寝ていること。」
悠美は小さな声でそう言うと、そーっと布団を足元にたたみ、鴨居につっておいた制服に着替え始めた。
電気は春彦が眩しいといけないので常夜灯だけだったが、暗さに目が慣れたせいか苦にならなかった。
「じゃあ、春ちゃん、行ってきますね。」
悠美は寝ている春彦に小声で話しかけ、通学用のバッグを持って、静かに客間を出ていった。そして途中にある洗面所で身支度を整えると明かりのついている居間に入った。
居間のテーブルの上には、すでに朝食が用意が出来ていた。
「悠美さん、起きた?」
悠美の気配に気が付いたのか、台所からキクが入って来た。
「はい、キクさん、おはようございます。
 朝食の準備をしていただいて、すみません。」
「何言っているの。
 遠慮しないの。
 手と顔は洗ってきた?」
「はい。」
「あら、素敵な制服ね。
悠美さんの学校はセーラー服なのね。」
悠美の学校の制服は、濃紺のセーラー服でブルーのリボンが胸元に巻いてあった。
スカートの下は黒いタイツ、髪の毛はえんじ色のリボンのついた髪留めで、後ろで留めてあった。
「ちょっと、立ち上がって見せて。」
キクは、眩しそうに悠美を見た。
セーラー服姿の悠美は、その細い身体が一層あか抜けて見えて、どこか気品のあるお嬢様のようだった。
「本当、素敵ね。」
うっとりと眺めているキクに悠美は恥ずかしそうな顔をしていた。
「そんなことないですよ。」
悠美が小声で言うとキクは我に返ったような顔をした。
「あら、ごめんなさい。
 つい見惚れちゃったわ。
 でも、制服を汚しちゃうといけないわね。
 いま、エプロンを持ってきてあげる。
 座って待ってて。」
そう言うとキクは居間から出て行った。
入れ替わるように、春吉が居間に入って来た。
「悠美さん、おはよう。
 朝早くてたいへんだね…!?」
そう言って悠美の方を見ると電気が走ったようなショックを受けた。
眼の前の悠美は、セーラー服姿でおしとやかに正座し、また背筋がピンと伸びていて、なにか近寄りがたい雰囲気だった。
「あ、春吉さん。
 おはようございます。」
悠美は、にこやかな笑顔を見せて春吉に挨拶をした。
「あ、ああ…。」
春吉は、答えにならない声を出し、呆然と立ち尽くしてしまっていた。
「おじいさん、ぼーっとしていないで。
 横を通してくださいな。」
キクがエプロンを持って、入り口のところで立ち尽くしている春吉を押しのけるように居間に入って来た。
「あ、す、すまん、すまん。」
春吉は我に返ったように、頭を掻きながら、居間を出て行った。
「まあ、おじいさんには刺激が強すぎること。
 でも、本当に悠美さんのセーラー服姿、素敵よね…。」
キクもまた、惚れ惚れする様に眺めながらエプロンを手渡した。
「だって、うちには女の子供がいないから、若い女の子なんて見たことないのよ。
 しかも、制服姿!
 舞さんがこの家に出入りするようになって、あの人も随分と若い女性に免疫が出来たと思うけど、それが無かったら今頃心臓発作起こしているわ。」
キクは真面目な顔をして言った、
「まあ。」
悠美は照れ笑いをした。
「あら、いけない、いけない。
早くご飯とお味噌汁を持ってこないと、学校に遅れちゃうわね。
そうそう、何も聞かなかったけど、朝食はご飯でよかったかしら。
若い子だからパンの方がよかったかしら?」
「いいえ、私、ごはんもパンも両方好きです。」
「まあ、よかった。」
そう言って台所からご飯の盛ってあるお茶碗とお味噌汁の入ったお椀を持って聞くて悠美の前に並べた。
ご飯とお味噌汁からは暖かな湯気が立ち、美味しそうだった。
「さ、召し上がれ。」
「はい、いただきます。」
悠美はそう言うとお味噌汁を一口すすった。
「わぁ、このお味噌汁、美味しいです。」
キクは美味しそうに食べている悠美を見て、微笑んだ。
「そういえば、春彦ちゃんはまだ寝てるの?」
「はい、まだぐっすり寝ています。」
そういうと、悠美はご飯茶碗と箸をおいて、キクに向き合った。
「すみませんが、春ちゃんのこと、よろしくおねがいします。」
そういうと悠美は深々と頭を下げた。
「まあ、そんなこと。
 大丈夫よ。
 それより、ご飯食べちゃわないと時間が無くなるわよ。」
「え?
 きゃあ、たいへん。」
悠美は大急ぎで朝食を食べ終え、再度、身支度を整え、鞄を持って玄関に向かって行った。
玄関に行くと悠美の靴が真ん中にきちんと置かれていた。
「まあ、ありがとうございます。」
「それは、私じゃなくて、おじいさんね。」
キクは笑って言った。
「じゃあ、春ちゃんをよろしくおねがいします。
 行ってきます。」
「はい、いってらっしゃい。」
そう言って、悠美はあわただしく飛び出していき、キクはその後ろ姿が見えなくなるまで見送っていた。
「しかし、なんだな、ここら辺では見かけないしっかりした娘さんだな。」
キクの後ろから春吉の声がした。
「まあ、あなたも開いた口が塞がらないんだから。
 それに“この辺では見かけない”じゃなくて、“最近では見かけない”じゃないの?
 あんまり、じろじろ見ちゃダメですよ。」
キクは冷やかすように言った。
「え?
 ああ、その、なんだ。」
春吉はしどろもどろになりながら逃げるように家の中に入って行き、キクはその姿を見てお腹に手を当てて笑っていた。

春彦はそれから少し経った7時ごろ、悠美の目覚ましで目を覚ました。
悠美は自分が起きた後、目覚ましの時刻を春彦の起きる時間に合わせセットし、枕元に置いておいたのだった。
悠美から良く言い聞かされていた様に、自分で枕元に置いてある洋服に着替え、洗面所で手と顔を洗って居間に行くと、春吉とキクがニコニコしながら春彦を迎え入れた。
「春彦、おはよう。」
「春彦ちゃん、おはよう。
 良く寝られた?」
「うん。
 おはようございます。」
「よく一人で起きられたな。
 起こしに行こうか、おばあさんと相談していたんだ。」
「うん。
 悠美ちゃんが目覚ましをかけていってくれたから、それで起きれたんだ。」
「そうか、そうか。」
春吉は眼を細めて頷いた。
「春彦ちゃん、朝はご飯でいいの?
 それともパンにする?」
「ご飯でいいです。」
「じゃあ、今よそってくるから、牛乳でも飲んでいて。」
「はーい。」
春彦がご飯を食べていると春吉が話しかけた。
「春彦。
今朝は、儂が学校のある駅まで送って行くが、帰りは駅でおばあちゃんが待っているから、一緒に帰って来なさい。
時間は4時ごろかな?」
「うん。
 今日は6時限だから、片づけをして帰るとそのくらい。」
「じゃあ、ちゃんとおばあちゃんの言うことを聞いてな。」
「はーい。」
「おお、いい返事だ。
 お前は良い子だ。」
春吉はニコニコ笑って春彦の頭を撫でた。
「ほら、おじいちゃん、食べている時にそんなことして。
 春彦ちゃん、ご飯食べられないじゃない。」
キクが笑って春吉を止めさせた。
朝ごはんが終わり、身支度を整えた春彦と春吉は一緒に家を出た。
「じゃあ、行ってきまーす。」
「はーい、行ってらっしゃい。
 帰りは駅で待ってるからね。」
「うん、わかってる。」
春吉は、春彦を小学校のある駅まで送って行き、そのまま職場に出勤するつもりだった。
二人が乗った電車は年季の入っている車両で、全て4人掛けのボックス席で、通勤通学の時間帯だったが、席も空いていて、二人並んで座ることが出来た。
対面には通学途中の女子高生の二人組が楽しそうにおしゃべりしている。
(やはり、悠美さんは別格かな)
悠美と比べると眼の前の女子高生は幼く見え、いけないと面ながら、ついつい比較してしまう春吉だった。
その横では窓際に座った春彦が、車窓の風景を飽きることなく眺めていた。

「ねえ、お父さん。
 あれ、海?」
電車の窓の外で、木々や建物の切れ目からキラキラ輝く海をみて春繁が声をかける。
「そうだよ、海だ。
 もう少し走ると、もっと風景が開け、海が良く見えるよ。」
「ほんとー?」
そう言うと春繁は、また、車窓の外の風景に目をやる。
春吉は、息子の春繁が春彦くらいの年の時、電車が好きな春繁を当てもなく電車に乗せていたころを懐かしく思い出していた。

春彦の小学校のある駅に着き、改札口を出たところで、春吉は春彦に今一度尋ねた。
「春彦、ちゃんと学校までの道はわかるのか?」
「うん、少し遠回りだけど、家の方に向かって行って、途中から小学校に行く道に曲がるから大丈夫。」
「そうか…。
 じゃあ気を付けてな。」
「うん、おじいちゃん、行ってきまーす。」
「ああ、行ってらっしゃい。」
そう言って別れたのだが春吉は気になって、結局、春彦に見つからないように跡をついて春彦が小学校の門に入るまで見届け、来た道を戻り始めた。
「さて、駅はどこだったかな。」
春吉は、春彦に気を取られていて、帰り道を覚えていなかったのだった。
「はて、困った…。」
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