FC2ブログ

プロフィール

梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


最新記事


最新コメント


月別アーカイブ


カテゴリ


メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


訪問していただいた方々


よろしくお願いします。


リンク


DATE: CATEGORY:第8章 灯火
荷造りが一段落すると悠美は、母親の敏子に尋ねた。
「そうだ、今日は光ちゃんいる?」
“光ちゃん”とは、南雲光一、悠美の6歳上の兄のことで、悠美は小さな時から「光ちゃん」と呼んでいた。
「光一なら、部屋で昼寝してるわよ。」
「ラッキー!
 荷物を持つの手伝ってもらおう。」
すると部屋のドアの外から声が聞えた。
「何、がたがたやっているかと思ったら、なんだ、その荷物?
 家出でもするのか?」
声の主は光一だった。
光一は、身長が170㎝位の細身で、七三分けの髪型に黒縁のメガネをしていた。
光一は昼寝をしていたが、荷造りする音と敏子と悠美の会話で寝てられず、起き出して来たので、起き抜けの寝ぐせのついた髪の毛と眠そうな顔をしていた。
「そうじゃないのよ。」
そう言って、敏子は事の顛末を光一に言って聞かせた。
「ふーん、それで、この荷物なのか。」
「そうなのよ。
 で、光ちゃん、お願いがあるんだけど。」
悠美は猫なで声を出した。
「まさか、この荷物を立花の家に運ぶのを手伝えっていうのか?」
「そのとおり♪」
悠美は、にこやかな顔をして言った。
「やれやれ。」
光一は可愛がっている妹の悠美の頼み事を断ることが出来なかった。
それに運転免許を取って、運転するのが楽しく、清志の車を良く運転していた。
「ここから、立花の実家までだと、道が空いていれば車で2時間もかからないか。」
「ちょっとした気分転換のドライブになるでしょ?」
「ちょっと?
そんな距離じゃないだろう…。
まぁ、しょうがないな。」
「やったぁ、光ちゃん大好き。
 今度、ジュースおごるね。」
「俺、ビールの方が良い。」
「何言っているの、私はまだ未成年なんだから。」
「はいはい。
 じゃあ、この荷物、もう車に運んでいいかな?
 あ、母さん、今日車あるよね?」
「ええ、あるわよ。
 お父さん、町会の集まりで皆さんと宴会中だから。」
「そりゃー、車には絶対に乗れないな。」
そう言って光一は悠美の荷物を車に運んだ。
「くれぐれも、立花さんには迷惑を掛けないようにしなさい。」
「はい、おばあちゃん。
 行ってきます。」
そう言って悠美は常吉とサキ、それに敏子の見送りの中、光一の運転する車で家を後にした。
 
「2週間か?」
運転しながら光一が話しかける。
「うん、体調の回復を見てだって。」
「舞さんもたいへんだったな。」
光一も小さな時からちょくちょく、春繁と舞に遊んでもらっていたので二人のことを慕っていた。
「そうなのよ。
 顔色も悪いし、げっそりやつれていたし。」
悠美は眉間に皺を寄せた。
「そうなんだ。
 今日、お前のこと送って行ったら、帰りに様子を見に寄ってみるかな。」
「そうして。
 母さんもあとで行くって言ってたけど、舞ちゃん、光ちゃんの顔見ればきっと喜ぶから。」
「ああ、わかった。
 お前も春彦のこと、ちゃんと面倒見てな。」
「わかっているわよ。」
「それと、悠美がいないと皆が寂しがるから、たまには帰って来いよ。」
「えー、何かお嫁に行くみたいなこと言わないで。」
「たしかに。」
それには、ふたりとも車の中で吹き出してしまった。
立花の実家の近くに来ると、車窓から見える風景が随分変わってきた。
それまでは、住宅地が多かったのが、風景が農村地帯に変わってきたようだった。
隣接する家までの距離も離れ、遠くに山並みも見えてきた。
「ここいら辺は、のどかな田舎だよな。」
「そうね。
 でも、静かでいいところ。」
「俺には、無理だな。
 やっぱり都会の喧騒の中がいいや。」
「何、都会っ子ぶってるのよ。」
そんな話をしながら、光一の運転する車は立花の実家の前に着いた。
荷物を降ろし、春吉とキクが休憩していけという勧めを、舞の病院に寄りたいからと丁重に断ると、車に乗り込んだ。
「春彦、元気出せよ。」
光一は運転席の窓を下ろし、春彦の頭を撫でた。
「うん、光ちゃんも気を付けてね。」
「おう、じゃあ。」
春彦と短い会話を交わし、光一は車を走らせた。

「さてと、春ちゃん、荷物運び込むの手伝って。」
「うん。」
悠美は当てがられた客間に荷物を運びこみ、制服など皺になるものをえもんかけにとおし、鴨居にかかっている鴨居かけに掛けたり、一通りの用事を終わらせ、春彦と居間に向かった。
居間には、春吉とキクが笑顔で二人を待っていた。
「荷物の紐解きは終わったのかな?」
「はい。」
そう言って悠美は畳の上に正座し丁寧にお辞儀をした。
「しばらく、お世話になりますが、どうぞ、よろしくお願いします。」
悠美の口上を聞いて春彦もあわてて悠美の横にちょこんと座って、同じようにお辞儀をし、「よろしくお願いします。」と春吉たちに向かって言った。
「そんな、かしこまらなくていいから。」
「そうよ。
 二人とも、ここを自分の家だと思って使ってちょうだいね。」
「ありがとうございます。」
今度は悠美と春彦は声を合わせて返事をした。
「さて、もう5時を回っているか。
 春彦と悠美さん、お風呂が沸いているから入りなさい。
 悠美さんは昨日、今日と忙しかったから疲れているだろう。」
「いえ、大丈夫です。
 夕飯の支度、手伝わせてください。」
そう言って悠美はキクの方を見る。
「今日はね、お寿司にしたの。
 お寿司と言っても買ってきたのを並べるだけなのよ。
 それにお吸い物も買ってきたから、支度は大丈夫。
 だから、お風呂に入って頂戴。」
キクは、笑顔で悠美に言った。
「そうですか…。
 じゃあ、春ちゃん、お風呂に入ろう!」
「え?
 悠美ちゃんと?」
今度は春彦が飛び上がった。
「何言ってんのよ。
 パジャマ出しておいてあげるから、先に入りなさい。」
「はーい。」
春彦は思い違いに照れ臭さを感じた。
春彦がお風呂に入っている時、悠美は台所のキクのところに顔を出した。
「悠美さん、家に来てからお茶も何も出していなかったわね。
 ごめんなさいね。
 お茶でも、どう?
 口に合うかわからないけど、お饅頭もあるわよ。」
「ありがとうございます。
 でも、夕飯が近いので、また後でいただきます。
 それより、お寿司並べたりするの手伝いしますね。」
「まあ、いいわよ。
 今日はゆっくりしていて。
 それはそうと、明日は何時に家をでるの?」
「はい、ここを6時に出ようかと思っています。
 早くて済みません。」
「いいえ、この前話したように、うちは朝早いのよ。
5時には起きているから。
この時期5時に起きても外は真っ暗なのにね。
でも、6時も真っ暗よ。
たいへんじゃない?」
「いえ、大丈夫です。」
「じゃあ、朝ごはんは5時半ごろでいいかしら?」
「いえ、朝ごはん何て、とんでもない。
 学校の近くのパン屋さんで買いますから。」
「そんなこと言わないの。
 家に居る時は、私の子供と一緒、ね。」
「キクさん。」
悠美はキクの優しさに感激していた。
結局、悠美がお寿司を並べていると春彦がお風呂から上がってきた。
「悠美ちゃん、お風呂空いたよ。」
「はーい。」
「悠美さん、本当にもういいから、お風呂に入って頂戴ね。
 春彦くんは、お風呂上り麦茶でいいかな?」
キクも、だんだんと春彦たちの扱い方に慣れてきていた。
「じゃあ、遠慮なく、お風呂いただきますね。」
「はい、そうしてね。」
その会話を聞いて春彦は不思議に思った。
「ねえ、なんでお風呂いただきますっていうの?」
「え?」
悠美は一瞬言葉に詰まった。
それを見て、キクは横から口を挟んだ。
「春彦ちゃん、それはね、昔は今と違ってお風呂がある家とない家が普通にあったの。
それで、お風呂のない家にお人がお風呂のあるうちの人のお風呂を借りて入っていたの。
だから、“いただきます”て言う言葉が残ったの。
その方が丁寧に聞こえるでしょ?」
「へえ、そうなんだ。
 じゃあ、その昔は銭湯なんてなかったんだね。」
「え?」
キクと悠美は、思いもしなかった春彦の反応に返す言葉が見つからなかった。

「まいったなぁ、あんな切り返しをしてくるなんて。」
悠美は湯舟にゆったりと浸かりながら、春彦の言った言葉を思い出していた。
「でも、面白いな、春ちゃんて。
 繁おじさんの影響かしら、それとも、舞ちゃんの影響かしら。
 そう言えば、舞ちゃん、どうしたかな。
 あのおまじない、効いてくれるといいんだけれど。」
風呂場の窓から夜空に浮かぶ月の灯りが湯舟を照らし、悠美の身体もぼんやりと光輝いているようだった。
お風呂から出ると悠美は、さすがにパジャマでは気が引け、グレーの上下のスェットに着替えた。
そして、持ってきたドライヤーで髪を乾かし、後ろで束ね、最近学校でブームになっているオイルを顔に塗った。
「これって、おばあちゃんも気持ちいいって言ってたな。
 あとで、キクさんにも貸してあげよう。」
悠美が居間に入って行くと、すでに全員集まってテレビを見ていた。
スポンサーサイト
コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する


copyright © 2018 混線次元(はるかな物語) all rights reserved.Powered by FC2ブログ