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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第8章 灯火
台所に近づくと、キクがお湯を沸かし、お茶を入れている音が聞えた。
「おはようございます。」
悠美がそう言って台所に入って行くと、キクが驚いた顔をして悠美の方を見た。
「あら、起こしちゃった?
 ごめんなさいね。」
キクは家の中の生活音で悠美を起こしてしまったと思っていた。
「いえ、ぜんぜん気にならなかったですよ。」
悠美はにこやかに否定した。
「そう?
 うちは、朝早いのよ。
 朝ごはんなんて、6時ごろに食べるんだから。」
「まあ、早いですね。」
「そうなのよ。
 もうあの人ったら夜明けとともに起きて庭掃除が日課で。
 それに、8時ごろには、もう仕事場に出ちゃうんだから。」
「え?
 8時にですか?」
「でも、悠美さんも、学校行くから、早いんじゃないの?」
「そうですね。
 いつも6時半ごろ起きて、7時半には家を出ます。」
「学生さんもたいへんよね。
 じゃあ、お母さんも早く起きて皆のご飯と、お弁当?」
キクは、そう聞くと、悠美はこっくりと頷いた。
「じゃあ、お弁当も作って、たいへんよね。」
「あ、でも、たいていはおばあちゃんが作ってくれるんです。
 母も働いているので。」
「まあ、サキさんが?」
「はい。
 だからいつも私も手伝って。」
「あら、いいわね。
 悠美さんが手伝ってくれるなんて、サキさん、喜んでいるんじゃないの?」
「ええ、まあ。」
悠美は照れ笑いをした。
「だから、キクさん。
 手伝います。」
そう言うと悠美は持っていた黒い髪ゴムで長い黒髪を後ろで束ねた。
「まあ、いいわよ。
 昨日は、疲れたでしょ。
 もっとゆっくりしていれば?」
「いえ、大丈夫です。
 何しましょう?」
「そう?
 じゃあ、お味噌汁のお出しを取るから、お鍋に水を張って、煮干しを入れてもらおうかしら。
 そうそう、ちょっと待ってて。
 エプロンがないと、洋服が汚れるといけないから。
 私のエプロンでいいかしら?
 舞さんのエプロンもあるんだけど、すぐに出てこないと思うから。」
「はい。」
そして、キクの持ってきたエプロンをすると、悠美は手際よく味噌汁用の両手鍋に水を入れ、火にかけ、キクから渡された缶から煮干しを取り出し、頭とはらわたを器用にとって、鍋の中に入れていった。
「煮干しは、5,6匹でいいですか?」
「そうね、今日は大勢で水の量も多いからそれでいいわ。
 あら、頭とワタを取ってくれているの?」
「はい、おばあちゃんに頭とワタのところは取らないと苦くなるって言われて。」
「まあ、本当にサキさんの仕込みがいいのね。」
キクは感心していた。
「じゃあ、お味噌汁は大根にするから、お任せしていい?」
「はーい。」
「朝は、目玉焼きとアジの開きを焼いて、悠美さんや春彦君にはウィンナーも炒めましょう。
 あと、トマトとお漬物。
 それと…」
「キクさーん、もうそれだけで十分ですよ。」
悠美は笑いながら答える。
いつしかにぎやかになった台所に春吉が顔を出した。
「なんかにぎやかな声がしていると思ったら、悠美さん、もう起きていたんだ。」
「あ、おはようございます。」
悠美も笑顔で返した。
「よく寝られたかな?」
「はい、ふかふかのお布団がとっても気持ち良くて、朝までぐっすりです。」
「そうかそうか。
 それは良かった。
 おい、お茶をくれ。」
春吉は笑顔で答え、キクの方に向かってお茶の催促をした。
「はいはい。
 じゃあ、居間で待っていてくださいね。」
「うん、頼む。
 そう言えば、春彦はまだ寝ているのかな?」
「はい、爆睡中です。
春ちゃんは、昨日はいろいろ頑張ったので、疲れていると思いますよ。」
「そうだな。
 君は、大丈夫なのか?」
「はい、このとおり。」
悠美は細い腕を曲げて、力こぶを作る振りをして見せた。
春吉は、そんな悠美を見て、ニコニコしながら台所を出て居間に向かった。
「まあ、あの人ったら、悠美さんにメロメロね。」
「え?」
「ほら、うちは春繁だけで女の子いないから。
 だから、悠美さんみたいな素敵な女の子が家の中にいると、家の中がぱっと明るくなったみたい。」
「まあ。」
悠美ははにかんだ。
「でも、舞ちゃんもよく来るんじゃないですか?」
「そうね。
 その時も家中、華やかというか賑やかになって、うちの人ったら一升瓶を抱えて右往左往するのよ。」
キクがおかしそうに話すと、悠美もつられて笑い出した。
「その姿が目に浮かびます。
 あははは。」
「そうそうお茶を入れなくちゃ。」
「あっ、私、持っていきますね。」
「そう?
 じゃあ、お願いね。」
悠美が居間にお茶を運ぶと、春吉は嬉しそうに顔を崩した。
「すまんな。」
「いえいえ。」
そう言って、お茶を春吉の前に置くと、後ろで人の気配がした。
悠美が振り向くと、パジャマ姿の息を切らした春彦が立っていた。
「悠美ちゃん、帰っちゃったかと思った。」
春彦は目を覚まし、悠美の姿が無かったので、半分寝ぼけながら探しに居間に来たのだった。
「何言っているのよ。
 荷物、あったでしょ?」
「あ…。」
春彦は頭がハッキリしたようだった。
「もう、男の子が…。」
悠美は笑いながら言うと、春彦はほっとした顔をした。
「もう、起きるよね?
着替え、出しておいたでしょ?」
「うん。」
「じゃあ、寒くなるから早く着替えなさい。
 それとも、まさか、私に着替えさせてもらおうと?」
「そんなことないよ、自分で着替えられるって。」
春彦は、今度は恥ずかしそうな顔をして言った。
「じゃあ、ちゃんと着替えてね。
 私は、キクさんと朝ごはんの支度しているから。」
「うん。」
悠美がウィンクして言うと、春彦は嬉しそうにうなずいた。
そんな二人のやり取りを春吉は微笑んでみていた。

「あら、春彦君も起きたの?」
台所に戻るとキクが尋ねた。
「ええ、今、着替え中です。」
「春彦君も早いわね。
 疲れていないのかしら。」
「子供ですから、疲れなんてです。」
しれっていう悠美の顔を見て、キクは吹き出した。
「本当にあなた達は、面白いわ。」
「ええ?
 そうですか?」
「そうよ、とっても素敵よ。」

にぎやかな朝食が終わり、片付けも一段落し、悠美は居間に電車の時刻表があるのを見つけた。
「春吉さん、時刻表、お借りしていいですか?」
「時刻表?
 ああ、いいよ。」
悠美は、時刻表を見ながら、なにやらブツブツと独り言を呟いていた。
「ここから駅まで、10分位。
 駅から、学校のある駅まで1時間40分かぁ。
 それで、学校のある駅から学校まで、10分位だから、6時に出て急げば6時15分の電車があるわね…。
 よしっ、決めた!」
春彦は、悠美の横で不思議そうに悠美を眺めていた。
「ん?
 なに、春ちゃん。
 私の顔に何かついている?」
「ううん。
 ただ、何しているのかなって。」
「何でもないわ。
 そうそう、春ちゃん、宿題全部終わった?」
「まだだけど、もうすこしで終わるよ。」
「じゃあ、お部屋に戻って片づけちゃいましょう。
 私、おじいちゃんとおばあちゃんにお話しがあるので、終わったら部屋に行くから。
 宿題が片付いたら、お母さんの病院に行きましょう。」
「お話し?」
「そうよ。
 後で、教えてあげるね。」
「はーい。」
春彦はどんな話か興味があったが、悠美は絶対的な存在だったので、しぶしぶ従い部屋に戻っていった。
春彦が部屋に戻っていったのを確認してから、悠美は居間でくつろいでいる春吉とキクのほうを振り返り、姿勢を正して話し始めた。
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