FC2ブログ

プロフィール

梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


最新記事


最新コメント


月別アーカイブ


カテゴリ


メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


訪問していただいた方々


よろしくお願いします。


DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
佳奈は、家で着替えを済ませ、木乃美の家に向かっていた。
そして、途中、約束していたケーキ屋に立ち寄ったが、二人と別れてから、すでに1時間近く経っていた。
「きゃー、結局、すごく遅くなっちゃった。
 でも、まあ、はるがいるから大丈夫ね。
 木乃美は、ケーキ、好きだもんね。
 美味しいもの食べて、気分転換、気分転換。
 あと、春彦はケーキだったらチョコレートかダークチェリーだったわね。
 あとで、鯛焼きで倍返ししてもらおうっと。」
佳奈は、木乃美の一大事にギリギリで間に合ったことで、ほっとしていた。
「でも、あいつら、絶対に許せない。」
そう呟くと、ケーキ屋の店員が、恐る恐る声をかけてきた。
佳奈の顔は怒りで険しくなっていた。
普段は、おっとりして柔和な顔の佳奈だが、木乃美や春彦に何かあると、特に木乃美に何かあると昔から豹変した様に顔に出ていた。
「お客さま……、おつりです。」
その声に、佳奈ははっと我に返った。
「あっ、ごめんなさい。」
そういうと、いつもの柔和な顔に戻ったのか、声をかけた店員もほっとした様に笑顔になった。
佳奈は、自分の顔が怖かったんだろうと、何度も店員にお辞儀をして、店から飛び出した。
「ああ、恥かしい。
 でも、私の大事な木乃美がされたことを思いだすと、むかむかするわ。
 まあ、はるがしっかり天誅を下してくれたから、良しとするしかないわね。
 早くケーキを持って行って、元気づけなきゃ。」
そう思いながら佳奈は木乃美の家に急いだ。
木乃美の家に着くと、佳奈はインターフォンを押した。
「あっ、ちょっと待ってね。
 すぐに開けるから。」
木乃美の家のインターフォンは、来客の顔がインターフォン越しで確認できるタイプだったので、佳奈が名乗る前に、木乃美が返事をしていた。
少し待つと、木乃美がドアを開けて、佳奈を向かい入れた。
「佳奈、入って、入って。」
いつものように明るい木乃美の態度を見て佳奈は、ほっとした。
「ごめん、遅くなっちゃって。」
「いいのよ。
 きっとこの位かかるだろうと思っていたから。
 それに、今日は暇つぶしも居るから。」
「ふふふ。
 ほら、お土産買ってきたわよ。」
「わーい、ケーキね。
 嬉しい。」
佳奈は、ケーキの箱を木乃美の前に差し出した。
木乃美は、嬉しそうに受け取り、家の中に招き入れた。
木乃美は、スエットの上下を着ていて、髪からはシャンプーのいい香りがしていた。
(そうよね、早くシャワーを浴びて着替えたかったわよね。)
佳奈は、木乃美の気持ちを察した。
「ごめんね、今日は部屋が散らかってひどい状態なので、居間の方でね。
 それに、春彦がいるからね。」
木乃美は、そう言って佳奈をリビングに通した。
いつもは、多少散らかっていても木乃美の部屋に通されるのだが、春彦がいるということで、佳奈は何となく納得した。
リビングのソファには、春彦が座っていた。
「春彦、佳奈がケーキ買ってきてくれたよ。
あんたの分、あるかわからないけど。」
木乃美はふざけた口調で言った。
「大丈夫よ、ちゃんと買ってきたから。
 その代り、倍返しね。」
「はいはい…。」
春彦は、苦笑いしながら言った。
「佳奈、お腹空いてない?
 今、ピザの出前、頼んだの。
 佳奈、トマトやカレー好きだったでしょ。
 欲張りパックで、4種類の味が選べるのよ。」
「あ、それ知っている。
 ドミンゴピザでしょ。
 あそこのトマトピザ、好きなんだ。」
「だと思って、それも入れてあるわよ。」
「さすが、木乃美!」
佳奈と木乃美は、いつものように楽しそうにキャッキャッとはしゃいでいた。
春彦は、そんな二人を見て、何とか守ることが出来たと胸を撫でおろしていた。
「ねえ、はる。」
「うん?」
佳奈は、コートを脱ぎながら春彦の元に近づいてきた。
コートを脱ぐと、ほわんと甘い香りがしてきて、見ると佳奈は淡い明るい色のワンピースを着ていた。
佳奈は、少しでも明るい色で木乃美から嫌な思いを忘れさせようと考えていた。
「私が来るまで、木乃美と何してたの?」
春彦は、一瞬、狼狽えそうになったが、そんな態度は一切見せず切り出した。
「もっぱら、番犬替わりかな。
 ほら、木乃美がシャワーを浴びるっていうから、ここで、見張りをしていたんだよ。」
「えー、はるの方が、危ないんじゃない?」
「大丈夫よ。
 春彦は、私に何て興味ないって。
 それに、もし、近づいてきたら、パンチを食らわせるから。」
木乃美が、コーヒーをカップに入れ持ってきた。
「あっ、ありがとう。
 手伝うね。」
佳奈は、そういうと、木乃美が盛ってきたお盆の上のコーヒーカップをひとつずつテーブルに置いた。
「そうよね、はるは大丈夫。」
「そう、人畜無害で、とっても信用できるし、私達のこと、ちゃんと守ってくれるんだから。
 ね!」
そういう木乃美を見て佳奈は今日のことで、春彦が駆け付け、窮地から救い出したことを木乃美は言っているんだろうと思った。
「あとは、佳奈が来るまで、新作のテレビゲームしてたのよ。」
木乃美がそう言って指をさす方に、大きなテレビの前に置かれているゲーム機が見えた。
「ほら、今流行ってるボールの色を揃えて落としてくやつ。
 単純なんだけど、結構、はまるのよ。
 ね、春彦。」
木乃美は、床に転がっているゲームのコントローラを取ろうとして、春彦にお尻を向けて四つん這いになった。
木乃美は、スェットの上下だったので、丸みを帯びた可愛いお尻の線がしっかり出ていた。
「こら!」
佳奈は、見惚れそうになった春彦の頭を小突き、笑った。
「せっかく、褒めたんだからね。」
「え?
 なに?」
木乃美は、何のことかわからずに、コントローラを手に持って振り返った。
「ううん、何でもないわよ。」
佳奈は、笑いながら答えた。
木乃美は何のことかわからなかったが、そのコントローラを佳奈に渡した。
「佳奈、佳奈もやろうよ。」
「オーケー!」
佳奈は、腕まくりしながらコントローラーを受け取った。
それから、3人はゲームに熱中し、途中、配達されたピザを食べながら、ひとしきり遊んでいた。
そんなことをしながら、夜の9時ごろ、木乃美の両親が帰ってきた。
「木乃美ちゃん、ただいま。」
「あ、ママ、パパ、お帰りなさい。」
「大変なことがあったんだって。
 学校から電話貰って、急いで帰ってきたのよ。」
木乃美の母親の涼子は心配そうに木乃美を見た。
「あとで、詳しく話すけど、二人に助けてもらったの。
 それにママたちが帰って来るまで、心細いだろうからって、一緒に居てくれたのよ。」
「まあ、そうなの。
 佳奈ちゃん、立花君、ありがとうね。」
「そうなんだ。
 本当にありがとう。
 連絡受けて、一瞬、心臓が張り裂けそうになっていたんだよ。」
木乃美の父親の宗太郎も横から口を挟んだ。
木乃美の両親の様子を見て佳奈と春彦は頷きあった。
「じゃあ、俺達は引き上げよう。」
春彦はそう言って、佳奈を促した。
「そうね。
 じゃあ、今日はこれで帰ります。」
「二人とも、今日は本当にありがとうね。」
木乃美の両親は、早く木乃美から状況を聞き出したく、春彦や佳奈を引き留めることはしなかった。
また、佳奈や春彦もわかっていたので、そそくさと玄関に移動していった。
「ねえ、春彦。
 佳奈をちゃんと送って行ってね。
 お願いよ。」
「わかってるって。」
「なによ、私一人でも大丈夫だから。」
佳奈がそういうと、木乃美は真顔になって「絶対にダメ!」ときつい口調で言った。
「わかったって。
 ちゃんと、はるに送ってもらうから、大丈夫よ。」
佳奈の木乃美の気持ちが痛いほどわかった。
木乃美の両親も、時間が遅いので、あえて引き留めずに、くれぐれも気を付けて帰る様にと二人に感謝しながら言った。
「木乃美、何かあればいつでも言ってね。」
「うん。」
「じゃあね。」
「うん、春彦、佳奈、今日はありがとう。」
そう言って、木乃美は手を振って二人を見送った。
しかし、いつもは二人の名前を呼ぶときは必ず、佳奈が先だったのだが、その時は春彦の名前を先に呼んでいたことに、佳奈は気が付かなかった。

その夜、木乃美は学校であったことを全て両親に説明した。
気丈に語る木乃美の姿と、未遂で終わったことから宗太郎は安堵した。
木乃美は、疲れたからと部屋に戻って横になると言って、リビングを後にした。
「ああ、でも、手遅れにならなくてよかったな。」
宗太郎は、木乃美を見送った後、ほっとしたような声を出した。
「何言ってるの。
 未遂だろうが、木乃美の心は深く傷ついているわよ。
 男って、すぐ短絡的に考えるんだから。」
涼子は怒った声で言った。
「あんなに気丈に振る舞っているのは、その裏返しなんだからね。」
「そうか……。」
「ちょっと、木乃美の部屋に行ってきます。」
「ああ。」
そういうと涼子は宗太郎を睨みつけて木乃美を追いかけ、部屋に向かって行った。
リビングに残った宗太郎は、自分の浅はかさにがっくりとううなだれていた。

トントン。
涼子は木乃美の部家のドアをノックした。
「なあに?」
中から木乃美の声がした。
「お母さんよ。
 入っていい?」
「うん。」
木乃美の返事を聞いて、涼子はドアを開けた。
木乃美は、ベッドの上で枕を抱きしめて、上半身を起こしていた。
涼子は、ベッドの横に行き「横に座ってもいい?」と木乃美に問いかけた。
木乃美が黙って頷くと、涼子はそっとベッドに腰掛け、木乃美の首に手を回し、自分の方に抱き寄せた。
木乃美は、抵抗なく涼子の胸に顔を埋めた。
そして、しばらくすると涼子の胸の中で木乃美が嗚咽し始めた。
涼子は、そんな木乃美の髪を撫で、頭にキスをした。
「怖かったよね。
 嫌だったよね。」
木乃美は、黙って頷いた。
「力でねじ伏せられ、どんな思いをしたか……。」
涼子も涙声になっていた。
「私…。
 力いっぱい、抵抗したの…。
 でもね、かなわなかった。
 怖かった。
 もうだめかと思った。」
「木乃美……。」
「助けられて、すごく悲しかった。
 なんで、私は女なんだろうって。」
「木乃美。
 そう、だけどあなたは女の子なのに変わりはないわ。
 大丈夫。
 お父さん、お母さんがしっかり守ってあげる。
 明日、学校に行って、二度とこんなことがきっちり話をしてきてあげる。」
しばらく、涼子が慰め、やっと、木乃美の気持ちが落ち着いて来た。
「でも、どうして私が襲われたんだろう。
 襲ってきた男子、顔の知らなかったのよ。」
「そうなんだ、それもしっかり調べてもらうように言っておくわ。
 学校の対応がしっかりするまでは休みなさいね。」
「ええ?
 授業が遅れちゃうよ。」
「何言ってるの、あなたはもう進んでいるでしょ?」
「え?
 ばれてた?」
「当たり前です。
 それに推薦も決まったようなもんだし、出席日数だけだから、ゆっくりしちゃいなさい。」
「はーい。」
そして、少し間が開いてから木乃美は吹っ切ったような声で言った。
「悔しいけど、男の子にはかなわない。
 けど、強い男の子に守ってもらえるのもいいかな。」
「え?
 もしかして、立花君?」
「ん?
 ああ、残念だけど、春彦には佳奈がいるから……。」
「そうなの。
 ま、そのうちもっといい王子様が現れるわよ。」
「ママ、ディズニーワールド!」
「うふふ。
 じゃあ、ゆっくリお休みなさい。
 何かあったら、すぐに声をかけるのよ。
 それとも、お母さん、今晩一緒に寝てあげようか?」
真顔で言う涼子に、木乃美は首を横に振った。
「ううん、大丈夫。
 それに、ママがここで寝たら、パパが寂しがるでしょ。」
「パパ?
 いいのよ、あの人は。」
少し怒った声で言った涼子を、木乃美は怪訝そうな顔で見た。
(あんな、女性の気持ちもわからないデリカシーのない人なんか)
涼子は、先程のリビングでの宗太郎との会話を思い出し、腹を立てていた。
「じゃあ、本当に大丈夫?」
「うん。」
「夜中でも、いつでも、ママが必要になったら呼びなさいね。」
涼子は優しく木乃美の頭を撫でながら、立ち上がった。
「あら?」
「え?
 ママ、どうしたの?」
立ち上がり何かを気にしている素振りの涼子を見て、木乃美は心配そうな顔をした。
「いえ、何かいつもと違った匂いがするみたい。」
「え?
 気のせいよ、気のせい。」
「そう……。
 まあ、悪い匂いじゃないからい、いいわ。
 また、木乃美の新作?」
木乃美は、黙って頷いた。
涼子は、まだ何か言いたそうだったが、止めて、ドアノブに手を掛けた。
「じゃあね。」
「おやすみなさい。」
そう言って涼子は部屋から出てドアを閉めて行った。
「そう、悪い匂いなんかじゃないわ。
 春彦の匂い……。」
そう呟き、木乃美は少し前に春彦と一緒に添い寝し春彦の匂いがしみ込んだタオルケットを抱きしめていあ。
スポンサーサイト
DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
「ねえ、春彦。
 気持ちが悪いからシャワーを浴びて来るね。」
「ああ。」

学校では、両親が帰って来るまで一人でも大丈夫と言っていた木乃美だったが、結局、学校を出た頃、辺りは夜の闇にどっぷりとつかっていて、急に心細くなっていた。
「あの……。」
「なあに、木乃美?」
「うん……。
 やっぱり、両親が帰って来るまで、一緒にいて……。」
「もちろん、いいわよ。」
「春彦も……。」
「ん?
 ああ、いいよ。」
「ごめんね。」
木乃美はうつむきながら小声で言った。
佳奈は、木乃美を抱きしめた。
「ごめんなんて、言わないで。
 大丈夫よ。」
「うん。」
木乃美は笑顔でうなずいた。
「そうだ、木乃美。
 この前、家で食べたケーキ、美味しかったでしょ。」
「うん、佳奈の家で食べた、あのケーキね。
 すごく美味しかった。」
木乃美が笑顔を見せた。
佳奈は、木乃美を元気づけたくていろいろ考えていて、ケーキのことを思いついたのだった。
「うちの近所のケーキ屋さんで、美味しいんだよね。
 私も大好き。
 じゃあ、ケーキ買って来てあげる。」
「え?
 いいの?」
「うん。
 その代り、一度、家に寄って、着替えて来るね。
 お母さんに言っておかないと心配するから。
 その間、はるが居れば、寂しくないでしょ。」
「ほんと?」
木乃美は嬉しそうな顔をした。
「こら、はる!
 私が来るまで、ちゃんと木乃美の番をしているのよ。」
「はいはい。」
3人は笑顔になっていた。
それから、途中で佳奈と別れ、春彦と木乃美は既に暗くなった道を二人、木乃美の家に向かって歩いていた。
「ねえ、春彦……。」
木乃美は、男子学生から救ってくれた時の春彦がいつもの春彦ではなく、何か禍々しい生き物のような気がして、それを確かめよう、春彦に声をかけた。
「ん?
どうした?」
暗がりの中、春彦はいつもの優しい笑顔を見せていた。
「ううん、なんでもない。」
木乃美は、春彦のいつも通りの顔を見て、きっとああいう状況だったので、自分は幻覚を見たのだろうと結論付けた。
(そう、春彦は、いつもの春彦。
そして、約束をちゃんと守ってくれる…。)
木乃美は、胸の奥が締め付けられる気がした。

木乃美の家に着くと、春彦は木乃美の部屋に連れていかれた。
「私、シャワーを浴びてくるから、何分経っても、1時間かかっても、そこにいてね。
 絶対よ。」
そういうと、木乃美は自分のベッドを指さして言った。
「わかったよ。」
春彦は、今日は仕方がないと思い、優しく返事をした。
「あと、勝手に机の中とか、絶対に見ないでね。」
「はいはい。」
「あとね……」
春彦は、まだ話を続けようとしている木乃美を制した。
「わかったから、はよシャワーを浴びてこんかい。
 それに、そんなに心配だったら部屋じゃなく、居間で待ってるよ。」
春彦は、ワザと怒ったふりをし、最期に笑って舌を出した。
「わかったわよ。
 でも、ここにいて!
その雑誌や漫画だったら見ててもいいからね。」
木乃美は焦ったようにそう言うと部屋を出ていった。
「やっぱり、今日のこと、怖かったんだろうな。
 しかし、木乃美の部屋なんて小学校の時以来かな…」
幼稚園や小学校低学年の時、3人は外で遊んだり、よくお互いの家を行き来していた。
両親の勤めの関係もあって、木乃美の家にはほとんど行くことがなく、もっぱら、佳奈の家か春彦の家だった。
なので、春彦の中に木乃美の部屋の記憶がなく、今いる空間が新鮮だった。
「女の子の部屋は、佳奈の部屋位だもんな。
 やっぱり、女の子の部屋って、小綺麗で、可愛いものが置いてあるんだな。」
木乃美の部屋の棚には、可愛らしい人形や動物のぬいぐるみが所狭しと並んでいた。
また、木乃美は、アロマの勉強をしていたので、部屋に入ると、どこからとなく良い香りが漂っていた。
佳奈の部屋にも、木乃美が作ったアロマが置いてあり、それを春彦は女の子の部屋の匂いと思っていた。
「さて、暇つぶしに雑誌でもって、少女漫画か。」
木乃美に言われたように置いてある雑誌に手を伸ばしてみた。
それは、少女漫画の月刊誌で、結構な厚みがあった。
「どれどれ。」
春彦は、ぱらぱらとめくり、読み始めた。
どの位ったのだろうかと、春彦は部屋の時計に目をやった。
木乃美が部屋を出て、かれこれ30分位たったのだろうか。
まあ、仕方がないかと、次の雑誌に手を伸ばそうとした時、部屋のドアが開いた。
「春彦……。」
木乃美の声に振り向いた春彦の目に飛び込んできた木乃美は、あきらかに湯上がりで、バスタオル1枚をまとった姿だった。
春彦は、ビックリし、腰かけていたベッドから立ち上がろうとした。
「待っ…」
木乃美は、何かを言いかけ、春彦に抱きついてきた。
春彦は、立ち上がろうとした中途半端な姿勢で、木乃美に抱きつかれ、二人は、木乃美のベッドの上に倒れこんだ。
「春彦……、今日だけ……。」
「えっ?」
木乃美は春彦の上に覆いかぶさるように、そして顔を上げて囁いた。
「今日だけ。
 お願い。
 佳奈にも内緒で。」
「?」
春彦は、木乃美の態度に理解が出来ず、声もなく下から木乃美を見あげていた。
ただ、木乃美からはシャンプーの匂いと石鹸の匂いか、甘い女の子の匂いがした。
木乃美は、呆然としている春彦にお構いなしに、春彦の右手首をつかみ、掌を自分の胸に当てた。
「アコ、どうした?」
木乃美のマシュマロのような柔らかな胸の感触を覚えながら、春彦は声を出した。
「春彦になら、ううん、春彦にだけしか触らせないと思っていたのに……。」
木乃美は、眼をうるませながらつぶやいた。
春彦は、それがなにを意味するのか、朧気ながら感じ取り、木乃美の柔らかな胸をそっと包みこむように触れた。
「あっ、…。」
しばらく木乃美はじっと春彦に胸を触らせていたが、その手を取って、今度は、春彦の手を胸から下腹部の下の秘部にあてがった。
「ここも……。」
そこは、柔らかく、湿っていた。
「春彦……。」
木乃美は、春彦の耳元で囁いた。
「ん?」
「寒いの。
 布団の中で、温めて。」
「俺、外の格好だよ。」
「じゃあ、脱いで。」
「ええ?」
「お願い、今日だけ。
 でないと、私、どうにかなっちゃうの。」
木乃美は、春彦から身体を離し、春彦が学生服を脱いでいる時、上手に自分の布団の中にもぐりこんだ。
春彦は、下着姿になっていた。
「これで、いいのか?」
「うん、一緒に入って。」
木乃美は、鍛えられた春彦の上半身を見つめながら、そっと、掛け布団を持ち上げ、春彦を誘った。
春彦は、そこから木乃美の待つ布団に入った。
布団に入ると、裸になっている木乃美が抱きついてきた。
布団と抱きついて来た木乃美の甘い香りを春彦は強く感じ、自分の中の何かが目を覚ましたような気がした。
そして、もう一度、春彦の手を自分の胸に当てた。
「嫌だったの。
 触られるにも嫌だけど、それが、初めてが春彦じゃなくて。
 ぎゅっと掴まれ、口をつけられ、気持ち悪かったの。」
木乃美は、涙声で言った。
そして、春彦の手を今度は下腹部の大事なところに当てた。
「それから、下着が脱がされ、ここを触ってきたの。
 痛いし、気持ち悪いし。
 あいつの顔が近づいて、生臭い息が顔にかかって。
 それで、脚を開かせ、割って入ってきたのよ。」
木乃美は、泣きながら春彦に思いをぶつけた。
「あと少し、遅かったら、私、私……。」
春彦は、右手を持ち上げ、木乃美の頭を抱えるように、抱きしめた。
「ごめんな。
 もっと早く行けたら、こんなに嫌なことされなかったのに。」
木乃美は、首を左右に振った。
「ううん、絶対に来てくれると思っていた。
 そして、私を守ってくれた。
 ただ、……。
 え?
 春彦?」
「ご、ごめん。」
春彦は、木乃美に、しっかりと感じていた。
ただ、今日の昼間のことがあり、何とかそれを悟らせないように、上手く下半身をずらしていたのだが、木乃美がぎゅうっと抱きついてきたため、その部分が木乃美に当たってしまった。
「ううん。
 でも、春彦ならいいの。」
「木乃美…。」
木乃美は、構わずに抱きく力を強め、完全に、春彦の身体と密着していた。
「春彦って、すごく暖かい。
 それに、なんだか力強い、いい匂いがする。」
木乃美は涙声で春彦の胸に顔を埋めて言った。
「アコ。」
春彦は、もう一度、木乃美の名前を呼んだ。
「…。」
木乃美は、顔を上げて春彦を見つめた。
その目は、涙で潤んでいた。
「え?
 あ……。」
春彦は、そっと木乃美の首筋にキスをした。
そして、自分から木乃美の胸を優しく触った。
「春彦……。」
「木乃美は、今もきれいだよ。」
「春彦……。」
木乃美は、うっとりした顔で目を閉じていた。
そして、春彦はそっと手を木乃美の胸から離し、腹部をなぞるように下ろしていき、下半身の局部をそっと触れた。
木乃美は、一瞬、びくっと身体を強張らせたが、直ぐに力を抜いた。
「春彦…。」
木乃美の息遣いは乱れてきていた。
春彦の手は、柔らかく、暖かいものが広がってきているのを感じていた。
そして、手でその局部をやさしく触れながら、木乃美の胸に唇を近づけていった。
「はるひこ……。」
木乃美は夢心地のような声を出し、春彦の名前を呼んでいた。
DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
(私、どうなっちゃうのかな)
木乃美は、無駄だとわかっていても抵抗しながらも、心の片隅でそう思った。
木乃美の抵抗も、男子学生の前では無意味だった。
だが、その時、ドーンと間近に雷が落ちたような音とともに、新鮮な空気が用具室のかび臭い空気を拭き流していった。
木乃美は急に自分に覆いかぶさっていた重さと生臭い息が無くなったのを感じた。
はっと、目を開けると、自分に覆いかぶさっていた男子学生が数メートルくらい右の壁に下半身むき出しの姿で身体をくの字に曲げたまま激突していた。
その男子は、いきり立っていた陰嚢を誰かにつかまれ、木乃美から引き離すように、下半身ごと持ち上げられ、不完全な逆立ちの状態になり無防備の脇腹付近を横から蹴り飛ばされ、その勢いで壁に激突していたのだった。
そして、身体の上に一陣の風を感じると、今度は、押さえつけられていた脚が自由になった。
その途端、「ぎゃん。」と、悲鳴に似た声とともに、逆の方の壁に木乃美の脚を押さえていた学生が頭から突っ込んでいった。
そして、壁に顔を打ち付け、崩れ落ち、無防備の尻を見せている学生の臀部の間に、誰かのつま先が吸い込まれていくのが見えた。
「はる…ひこ…。」
木乃美は、その学生を踏みつぶしている後ろ姿で、春彦が助けに来てくれたことを確信した。
見ると、用具室のドアは外から物凄い力が加わったよう、まるで、何かが爆発したのではと思えるくらいで、外れかけていた。
ドアの外では、見張り役の学生が鼻や口から血を流し、悶絶していた。
その学生は、中の様子が気になり春彦から一瞬目線そらし、すぐまた、春彦に目線を戻したが、瞬間、悪寒とともに目の前が真っ暗になり、鼻の辺りを中心に激痛が走り、そして、声も出せずにしゃがみ込んだその顔に、さらに膝がめり込んでくるのが見えたのが最後だった。

「ひっ」
息を呑むような、悲鳴のような声が聞えた。
声の主は、木乃美の両手を押さえている学生からで、春彦はゆっくりとその学生の方に振り向いた。
学生は、木乃美の両手から押さえつけていた手を離し、自分の顔を守るかのように手で壁を作ろうとしていた。
木乃美の顔の上を再び風が駆け抜けていった。
春彦は、振り向きざま、木乃美の両手を押さえつけていた学生の顎のあたりを腕ごと下から思いっきり蹴り上げたのだった。
蹴られた学生は、まるで首から上が無くなったかのような姿で、えびぞって後方に倒れ、壊れたゼンマイ人形のように身体をばたつかせていた。
「ひぃ!」
ビデオを回していた学生は、悲鳴に似つかない声を上げ、ビデオを春彦に投げつけた。
春彦は、それを紙一重で避け、木乃美からはビデオを避けた春彦がよろけて、その投げつけた学生と絡まる様に倒れたように見えた。
ゴキゴキと嫌な音とともに「ギャー!」という悲鳴が聞こえた。
その悲鳴の主は、春彦の下敷きになっている学生からだった。
春彦が立ち上がると、その学生の右の肘から下が、人間では絶対に曲がらな方向に90度以上曲がっていて、白いものが皮膚を突き破っていた。
春彦は、立ち上がったが、よろけたように、股間を押さえて苦悶の表情浮かべている最初に木乃美に覆いかぶさっていた学生の、その胸のあたりに、右足を置いた。
ボキボキと何かが折れる音がして、学生の口から赤い泡が吹き出し、声にならない声で悲鳴を上げた。
木乃美には、あっという間のことで何が起きたのか理解が出来ず、春彦の顔を見あげた。
そこに立っている春彦は木乃美の見たことのない春彦だった。
眼は真っ赤に充血し、まるで血の涙を流しているようで、瞳には光がなく、更に木乃美を総毛だたせたのは春彦の口が歪んでいて、まるで笑っているようだった。
「――!」
そして、春彦の方から冷たい日本刀の刃先のような狂気に満ちた突風がその場にいた全員の身体を貫通し、苦しがっている学生たちの動きが一瞬止まった。
木乃美は、今まで感じたことのなかった悪寒と恐怖心が電気の様に全身を走り、意識が遠のいていくのを感じていた。

「アコ!」
佳奈が大声で木乃美の名前を叫びながら用具室に飛び込んできた。
その声で、気を失いそうだった木乃美は、意識を繋ぎ止めることができた。
「か…な…。」
佳奈は、息も絶え絶えに自分の名前を呼ぶ木乃美の傍に走り寄った。
そして、木乃美のブラウスがはだけ、下着が右足首に引っかかっている姿を見て、目を吊り上げ、思いっきり木乃美を抱きしめた。
「アコ、大丈夫?
 大丈夫じゃないわよね。
 どうしよう……。
 はるひこ、どうして!」
佳奈は、春彦が間に合わず、木乃美が凌辱された思い、怒りの矛先を春彦に向けた。
「佳奈、大丈夫……。」
「え?」
「ギリギリで、春彦が助けてくれたの。
 だから、犯られていないから。」
木乃美は気丈にも佳奈にそう打ち明けた。
「よかった。
 木乃美、よかったー。」
大丈夫ということを聞いて佳奈は今度は木乃美を抱きしめながら泣きじゃくった。
佳奈の声で、その場の凍り付いた時間、空間が一気に弛んだようだった。
「うううう…。」
倒れている男子学生のあちらこちらから、苦痛に満ちたうめき声が聞えた。
春彦は、男子学生を踏みつけていた脚をそっと床に降ろし、佳奈たちに背を向けていた。

「うわ、何だこりゃ。
 こいつ、白目向いてるぞ。
 確か3年の……。」
「相沢、大丈夫か。」
佳奈が職員室に駆け込み連れてきた教師が数名、用具室の外で倒れている学生を見て、中に入ってきた。
外に倒れている男子学生は、鼻血と、前歯のほとんどが折れ口が開いてられず、息苦しそうに悶えていた。
「あっ、熊野先生、こっち見ないで。」
佳奈は、男性教師に木乃美の姿を見られないように木乃美を抱きしめ、庇いながら制した。
「熊野先生、私に任せて。」
そういうと、女性教師の朝比奈が熊野を制して、中に入ってきた。
そして、木乃美の近くにしゃがみ込んで、木乃美と佳奈と言葉を交わした。
「ともかく、まずは、こんなところじゃなくて保健室に行きましょう。」
「はい。」
そういうと、佳奈は自分の着ていたブレザーを木乃美に羽織らせ、はだけた素肌を見せないよう庇いながら立ち上がった。
「あとは、熊野先生、ともかく救急車を。
 この5名、見ただけでも重症よ。」
「わかった。」
「あ、熊野先生。
 僕が教頭に伝えて、救急車を呼んできます。」
そう言うともう一人の教師が飛び出していった。
「さあ、行きましょう。」
朝比奈はそう言って、佳奈と木乃美を促した。
二人の通り道のところには、口から赤い泡を吹きながら、下半身むき出しでどす黒く腫れ上がった陰嚢を見せ、涙と苦痛で顔を歪めながら、憐れみを請うような顔をしている男子学生がいた。
佳奈と木乃美は目を吊り上げ、その男子学生を睨みつけた。
「菅井さん!」
朝比奈が声を掛けなければ、佳奈は、その男子学生の下半身を踏みつけているところだった。
朝比奈に先導されて佳奈と木乃美が用具室を出た後、熊野ともう一人男性教師と春彦が用具室に残った。
教師たちは悶絶している学生一人ひとりの怪我を見ていた。
「これはひどいな。
 たぶん、顎が割れているし、舌も噛んで切ってる。
 やばいな、出血もひどいし、窒息しそうだな。」
「こっちは、ズボンの尻の辺りから血が滲み出ているし、鼻血もひどいな。
 鼻骨が折れているんだろう。」
「こっちは、腕が折れて骨が皮ふを突き破ってるし。」
そして、一番怪我の状態がひどい学生を見た。
「これは、男の一物が折れてるし、それに肋骨が折れて、肺に刺さっているな。
 うわ、眼球も飛び出しかかってるじゃないか。
 立花、お前、金属バットか何かでやったのか?」
そう言いながら熊野は春彦の腕を見た。
春彦は、首を横に振った。
「じゃあ、これだけ、素手でやったっていうのか……。
 しかも、全員、失神してない…。」
失神したほうが苦痛を感じずに済むのにと、男子学生の苦痛のうめき声の中、熊野は、信じられないという顔をした。
「なにがどうなったか、説明しなさい。」
そう言われ、春彦は佳奈と二人で帰り支度をしている時、木乃美が襲われそうになるのを見て、手分けをし、佳奈が職員室に教師を呼びに行き、自分は一足早く、木乃美を助けに向かったこと。
用具室のドアのところで見張っていた学生ともみあいになってからは、無我夢中で何をしたか記憶にないことを説明した。
その後、学校に救急車がきたりして、一時、残っている生徒を含め騒然としたが、救急車が病院に向かい、生徒も下校し、落ち着きを取り戻していた。
木乃美は、保健室で校医に診てもらい、身支度を整え、担任が木乃美の両親に連絡を取っている間、しばらくベッドで休んでいた。
身体の方は擦り傷くらいだったが、やはり精神的に疲れ切っていたようで、傍に寄りそっている佳奈の手を離そうとはしなかった。
佳奈も、そんな木乃美の傍にずっと寄り添い、何かと話しかけていた。
木乃美の両親は、あいにく、用事で外泊し明日までの帰ってこない予定だったが、連絡を受けて予定を切り上げ、今夜遅くに帰宅することになった。
「ねえ、木乃美。
 お父さんとお母さんが帰って来るまで、そばに居てあげようか。」
佳奈は心配そうに言った。
木乃美は、少し、考えてから言った。
「大丈夫。
 家で、じぃっとテレビでも見ているから。
 それに、遅くなったら佳奈が心配になるから。」
「そう……。」
「それより、先生、春彦、いや、立花君はどうしました?」
木乃美は保健室に入ってきた朝比奈に尋ねた。
「ああ、立花君?
 先生方に事情を説明していたわ。
 怪我もないし、今日のところはひとまず帰宅ね。」
「よかった。」
木乃美は、安どのため息をついた。
佳奈は、そんな木乃美を見て微笑んだ。
「でも、相手の怪我が怪我だから、あとが大変になるかしらね。」
「え?
 だって、悪いのは、あいつらの方ですよ。
 なんで、はるが?」
今度は佳奈が朝比奈に食って掛る様に尋ねた。
「もしかしたら、の話よ。」
朝比奈は、ごまかすように返事した。
「じゃあ、佳奈。
 春彦見つけて一緒に帰ろう。
 家の近くまで、3人なら心強いし。」
木乃美にしては、弱気なセリフだった。
しかし、無理はないと佳奈は思った。
「じゃあ、はるを捜してくるね。
 朝比奈先生は、それまで。」
「わかっているわよ。
 相沢さんと、お手玉でもして待っているわ。」
「え?
 お手玉?」
佳奈と木乃美は、ほぼ同時に声を上げた。
朝比奈はそんな二人の反応にびくっとした。
「なっ、なに?
 お手玉って、なんか変?」
「いえ、昔のことを思いだしたので。」
「そうなんです。
 昔、よく遊んだなって。」
「へえ、今どきのあなたたちが、お手玉でねぇ。」
朝比奈は感心していた。
「じゃあ、はるを呼んできますので。」
そういうと、佳奈は保健室から出ていった。
DATE: CATEGORY:第7章 春彦の光と影(喪心編)
そのころ、木乃美と取り囲んでいる男子学生の一団は用具室の扉の外に一人、見張りを置いて全員中に入っていた。
外はまだ、太陽に光があたっていたが、用具室の中は、分厚いカーテンで窓が覆われ、蛍光灯の灯りだけだった。
木乃美も急かせれる様に中に入ると、体育で使うマットが広げられていた。
それを目にした瞬間、自分がこれから何をされるのか悟った。
「きっ……。」
木乃美は声を上げようとしたが、後ろから突き飛ばされ、言葉を飲み込みながら、そのマットの上に転がった。
マットからは、カビ臭い匂いが立ち昇った。
「なっ、何するの!
 変なことしたら、承知しないからね。」
そして、突き倒された勢いで、メガネがどこかへ飛び、スカートがまくれ上がっていた
木乃美はマットの上で半身を起こし、めくれたスカートを手で元に戻し、気丈にも男子学生を睨みつけて言った。
「おやおや、お前、自分の置かれている状況がわかっていないのか?
 ああん?」
右手にナイフをちらつかせながら、嫌らしい笑いをした学生が木乃美に近づいて行った。
「来ないで!」
木乃美は身を丸く固めるように言った。
「まあまあ、そんなに緊張しないでさ。
 ちょっと、俺達と楽しいことしようって言ってんだよ。
 おい、ビデオ、回しとけよ。」
「おう、ばっちりだぜ。」
ビデオ係と思しき学生が返事をした。
「おい、こいつ、メガネでわかんなかったけど、すげぇ、マブだぜ!」
「ええ、ほんとかよ?」
「ほんとだ、こんなのこの学校にいたんだ!」
「うへぇ、今日は、ついてるじゃん!」
用具室の中の4人の男子学生は、あきらかに興奮状態になっていた。
特に、木乃美はメガネをかけていないと誰もが振り向くほど可愛らしい顔をしており、体つきも女性らしく丸みを帯びていた。また、アロマのせいかほのかにいい香りがし、それが一層、男子学生の性欲を異常なまでに掻き立てていた。
「じゃ、じゃあ。」
いつの間にか木乃美の後ろのまわった生徒が木乃美の両腕をつかみ、マットの上に仰向けに木乃美を引き倒し、そのまま、身動きできないように両手首を抑えつけた。
「やっ、止めて!」
木乃美が精一杯抵抗すると、ナイフを持っていた男子が木乃美の上に馬乗りになり、木乃美の頬を張った。
「静かにしてくれないかな。
 でっ、でないと、ナイフで怪我するよ。」
その男子はナイフを木乃美の頬に当て、興奮した顔で脅した。
そして、なおも声を出そうとする木乃美にタオルのようなもので猿ぐつわを咬ませた。
「うー、うー…。」
木乃美は苦しそうな声を上げ、精一杯、抵抗したが、3人がかり、一人は両手、一人は両脚、もう一人は馬乗りになっていて、とても力でかなうものではなかった。
「さあ、早くやっちまおうぜ。
 今回は、すげえ、上玉じゃん。
 おれも、早くやりてえから。」
木乃美の両手を抑えている学生が卑猥な言葉を発した。
「げへへへ。」
木乃美に馬乗りのなっている男子は、興奮のあまり、声になっていなかった。
そして、木乃美の背中に腕を回し、抱きしめるように身体を押し付け、上下に動かした。
「た、たまんねー。
 こいつ、最高だ、はっ、はっ」
「おっ、おい、早くしろよって。」
木乃美を押さえつけている男子たちは、木乃美の匂いにいきり立っていた。
馬乗りになっていた男子学生は、上半身を起こし、木乃美のブレザーのボタンを外し、次に、ブラウスのボタンを上からひとつづつ、興奮で震えている指で外し始めた。
「ゔ―。」
木乃美は身をよじって抵抗しようとしたが、馬のりの男子学生の体重で身体が動かせなかった。
そして、ブラウスの下からブラジャーが現れると、男子学生は、そのブラジャーの上から、木乃美の柔らかな胸を鷲掴みにして、揉みながら顔を近づけた。
そして、ブラジャーの下から強引に乳房を露出させ、むしゃぶりついた。
「#%■!」
木乃美は、猿ぐつわを咬まされていたので、悲鳴を上げたが声にならない押しつぶされたような声をあげた。
「うひひ、最高じゃん。」
男は木乃美の乳房から口を離して、興奮しながらいった。
木乃美の乳房は、男子学生の涎で濡れていた。

「おっ、おい。」
馬乗りになっている学生は後ろを振り向き、木乃美の両脚を抑えている男子学生に合図すると、その男子学生は、木乃美のスカートの中に両腕を差し込み、木乃美の下着を一気に引きずりおろした。
それは一瞬のことで、木乃美にはどうすることも出来なかった。
そして、両脚を左右に開かせるように力を入れた。
「ゔっ、っく」
木乃美は、左右に首を振り、両脚に力を入れ抵抗したが、徐々に脚が開かされていった。
馬乗りになっていた男は、木乃美の秘部に手を突っ込んだ。
「ゔ―!!」
木乃美は、精一杯抗ったが、なすすべはなかった。
「ちっ、固てぇな。
 まあ、いつものようにローション付ければ、突っ込めるか。」
そういうと、馬乗りになった男は自分のズボンと下着をおろした。
「おい、ちゃんと、つけとけよ。
 後が面倒だからよ。」
ビデオを回している学生は、そういうと、コンドームを馬乗りになっている学生に投げた渡した。
「ちぃ、こいつとだったら、生でやりてえな。」
「あほ。」
「だって、こんないい女、いままで見たことないぜ。
 おっぱいも柔らかいし、いい匂いだし、下もきっと……。
 くぅー、たまんねんなー!」
「早くしろよ。
 俺もたまんなくなって来てんだぜ。」
「うう、チクショウ。
 俺が最初にやりてえぜ。」
「まあ、まってろよ。
 いま、すぐに…。」
そういいながら、馬乗りになっている学生は息を切らせながらもぞもぞと渡されたものを付け木乃美の両脚の間に割って入ってきた。
木乃美は、精一杯、両脚に力を入れて抵抗したが、次第に力が入らなくなっていった。


昔、まだ、春彦も佳奈も木乃美も幼稚園児だったころ、悠美が3人に向かって言ったこと。
「ねえ、はるちゃん。
 はるちゃんは、男の子なんだから、佳奈や木乃美ちゃんが危ない目に会ったら、ちゃんと助けなきゃだめよ。
 佳奈も、木乃美ちゃんも、何かあったらはるちゃんに助けてもらうのよ。」
「うん。」
佳奈は、悠美の言葉に素直に頷いた。
「えー、春彦、私より弱っちいのに?」
木乃美はそう言うと、春彦の頭を小突いた。
しかし、幼い心の中でも春彦の方が自分より強く、頼りになることはわかっていた。
「大丈夫だよ、二人とも、僕が守るから。」
春彦は、悠美に向かって頷いて見せた。
「本当に守ってくれるの?」
木乃美は、恥かしそうな小さな声で、春彦に話しかけた。
「うん。」
春彦は、白い歯を見せニッコリと笑って見せた。

木乃美は、その時の春彦の顔が今の春彦の顔になって脳裏に浮かんだ。
(春彦、佳奈、助けてー!!」
猿ぐつわを咬まさせ、手足を押さえつけられ、絶体絶命の中、声にならない声で、木乃美は二人の名前を叫んだ。


その頃、佳奈は血相を変えて、職員室に駆け込んでいた。
「先生!」
そして職員室を見渡すと、佳奈を呼ぶ声が聞えた。
「なんだ、菅井じゃないか。
どうしたんだ?
 血相変えて、大声で飛び込んできて。」
声の主は、体格のいい熊野という教師だった。
「熊野先生、たいへんなんです。
 木乃美が、ナイフで脅かされて、むこうの校舎の用具室に連れ込まれて!!
 早く来てください!!」
佳奈は、声を振り絞る様に叫んだ。
その佳奈の切羽詰まった形相と、普段の佳奈からは想像できない金切り声で、職員室の中は騒然となった。
「わかった、ともかく行こう!
 君田先生、安藤先生も、いっしょに。」
「はっ、はいー!」
熊野に名前を呼ばれた若い教師も飛び上がって返事をした。
「どうしたの?」
そこに、保健職員の朝比奈が顔を出した。
「ともかく急いで!!」
佳奈が急かす中、熊野は朝比奈に手短に説明した。
「いや、何か女子生徒が、男子生徒に用具室に連れ込まれたって。」
「え?」
「ともかく…。」
熊野はそう言って、佳奈の方を見ると、佳奈は既に職員室から用具室に向かって走り出していた。
「ともかく、急いで、彼女について行きましょう!!」
そういって、熊野達は佳奈の後を追って、職員室を出た。

一方、用具室の前では、春彦が見張りの男子学生と対峙していた。
「おいおい、この中は入れないぜ。」
どうしても、入りたいんだったら、相手してやるよ。」
そう言って、その男子学生は凄んで見せた。
その見張り役の学生は、空手を習っていて、有段者並みの腕だったので、余裕で春彦に対峙していた。
「というか、なんで、てめえがここに居るんだ?
 ひょっとして見られたか?
 おい、もしかして他の奴も見たのか?
 やべえな、すぐに場所を換えさせないと。」
春彦が来たということは、連れ込んだところを見られたかもしれないと、その男子学生は、春彦を早く片付けて、中にいる仲間に場所を変えるように言おうとし、一瞬、扉の方に注意が行ったが、すぐに、春彦の方に目線をやった。

用具室の中では、男子学生が、木乃美の左脚を抱えあげるようにして、木乃美に押し入ろうとしていた。
(助けて、助けて。
 お願い、春彦、佳奈、助けて。)
木乃美は、涙を流しながら言葉にならない声で叫んだ。
(はるひこー!!)
木乃美は、もう一度、眼をつぶって、精一杯、春彦の名前を呼んだ。

copyright © 2018 混線次元(はるかな物語) all rights reserved.Powered by FC2ブログ