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プロフィール

梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
春彦の傷も癒え、学校は春休みに入っていた。
その春休みのある日、春彦は立花の実家に居た。
以前、舞から教えてもらった父、春繁のオーディオ・プレーヤーを見に来ていたのだった。

「ほら、春彦。
 お彼岸なんだから、立花の方にお線香上げに入って来て。」
「母さんは?」
「ばか、誰が行くかい!
 私は、ここでしんみり飲んでいるわよ。」
「じゃあ、行くって連絡しなきゃ。」
「あ、それは大丈夫。
 お義母さんに春彦が行くって、手紙出しておいたから。」
舞は、涼しい顔をしていった。
「行ったら、この前話したあの人のオーディオ見ておいで。」
「手紙って……。
 電話すればいいじゃん。」
春彦はわかっていながら言った。
「なに言ってるのよ、あのくそ爺が電話に出たら電話機叩き壊しちゃうでしょ。」
「くそ爺って。」
春彦は苦笑いしながら、舞の文句を聞いていた。
そしていつものように、祖父母の好きなお菓子を手にいっぱい持たされていた。

「まったく、母さんも素直じゃないよな。
 でも、いろいろ誤解があったとしても、まだ、納得できないんだろうな。」
そんなことを考えながら、春彦は電車に乗って立花の実家に向かっていた。
立花の実家は、春彦たちが住んでいる街から、電車で1時間の奥まった田舎にあった。
周りは、まだ、田園風景が広がっているところで、電車を降り、バスで30分くらい行った住宅地にあった。
住宅地といっても、隣近所とは田んぼ1つ2つも離れていた。

家の門をくぐり、玄関に入ると、直ぐに祖母のキクが出てきた。
「あ、おばあちゃん、こんにちは。」
「うんうん、春彦ちゃんいらっしゃい。」
キクは小柄で、笑うと目が無くなるんじゃないかと思うほど愛嬌のある笑顔で春彦はキクのそんな笑顔が大好きだった。
「おお、春彦か、よく来たな。
 さ、早く上がれ、上がれ。」
恰幅が良く坊主頭の祖父、春吉もいそいそと、居間の方から出てきた。
春吉は、この付近の伝統工芸の桐細工、下駄やタンス、また、昔ながらの蛇の目傘などを作っていて、この辺りでは名前が知れた職人だった。
今では、年齢のため、ゆとりを持った製作の傍らで、若手に伝統の技を教えていた。

「おじいさんたら、春彦ちゃんがいつ来るかって。
 ずっと、そわそわして門の方ばかり、見ていたのよ。」
「ばか、くだらないこと言わんで、早く春彦を家の中に上げんか。」
「そうね、さ、春彦ちゃん、上がって頂戴。」
「はい。
 あ、これ、母さんからお土産にって。」
そう言って、春彦はお菓子の包みの大きな袋をキクに渡した。
「あら、まあ。
 あなたの好きな松屋の和菓子じゃない。」
そう言いながら、キクは菓子包みを春吉に見せた。
「ふん。」
春吉はそういうと、居間に戻っていった。

「まったく、がんこなんだから。
 舞さんに嫌な思いさせちゃったのに、私たちのこと気にかけてくれて……。
 舞さんは、元気?
 手紙は、たまにもらうんだけど、あれからずっと会っていないし。」
キクは、しんみりと春彦に話しかけた。
「まあまあ、おばあちゃん。
 母さんは、元気ですよ。
 元気すぎて困るくらい。」
 そのうち、何とかなるでしょ。」
「ならいいけど。
 せめて私が生きている時に、前みたいにね……。
 もう、あんなこと言わないから……。」
「おばあちゃん。」
春彦は、そう言ってうつむくキクの背中をそっと撫でていた。
「ほら、そんなところで話してないで、早くこっちに。」
「はいはい、じゃあ、春彦ちゃん、洗面所で手を洗ってらっしゃい。
 飲み物は、サイダーでいい?」
キクは、割烹着の端で目頭を拭ってから、笑顔で春彦に言った。
「はい。」

春彦は、言われたとおり洗面所で手を洗い、春吉の待つ居間に入っていった。
居間は、日本間で八畳ほどの広さで、庭とは廊下で隔たれている純日本様式の家だった。
春彦は小さい時に春繁と舞とで盆暮れ正月とことあるごとに遊びに来ていて、よく廊下で春繁とキャッチボールをしたり、おもちゃのボーリングゲームをした思い出の場所だった。
居間には仏壇もあり、先祖代々の他に春繁の写真が飾ってあった。
写真の中の春繫は優しそうな顔をして笑っていて、今にも何か春彦に話しかけてくるようだった。
春彦は、仏壇のところに行って、お線香を上げ、手を合わせる。
そして、ふと、仏壇に持ってきたお菓子が供えられているのを見た。
振り返るとキクがニコニコしながら、春吉の方を指さしていた。
あとでキクから聞かされたのだが、春吉はお菓子を受け取ると大事そうにお菓子に向かってお辞儀をして、その後、仏壇に供えていたとのことだった。

「春彦、どうだ、学校は?
 ちゃんと、勉強しているか?」
「うん、ちゃんとやってるよ。」
「おじいさん、そんな説教じみたこと言ってると、春彦ちゃん、来なくなっちゃいますよ。」
「そんなことないよな、春彦。」
春吉は純朴な性格で、キクに言われて心配そうに春彦に聞き直した。
「大丈夫だって。」
春彦がにこやかに答えると、春吉はほっとした顔をした。

しばらく、他愛のない話をした後、春吉は小声で、ぼそっと春彦に尋ねた。
「春彦。
 その……。
 舞さんは元気か?」
春吉のばつの悪そうな顔を見て、春彦は思わずキクと吹き出しそうになった。
「ええ、母さん、元気でやってますよ。
 もう、元気すぎて、いつもちょっかい出してくるんですよ。」
「そうか、そうか。
 元気なのか。
 それで、その……。」
「おじいさん!」
春吉が何かを言いかけた時、キクがピシっと制した。
春彦は春吉がなにを言いたいのか薄々感じていた。

「母さん、いつも父さんのこと話してくれて。
 今日も、父さんのオーディオ、すごいからみておいでって。」
春彦がそういうと、春吉は「そうか、そうか」と、嬉しそうな顔をした。
キクは、そんな春吉の顔を何とも言えない顔で見ていた。
「さ、じゃあ、ちょっとそのオーディオを見に、父さんの部屋に行ってきますね。」
「はいはい、どうぞどうぞ。
 春彦ちゃん、今日はゆっくりしていけるんでしょ?」
「え?
 はい。」
「じゃあ、夕飯、食べて行ってね。
 おばあちゃん、腕によりをかけてご馳走作ってるから。」
「わあ、楽しみだ。」
そう言って、春彦は2階にあがり、春繁の部屋に入っていった。

春繁の部屋は、キクが掃除したのか綺麗に整っていて、窓が開いており、心地よい風が吹き抜けていた。
春繁の部家は、籐の椅子やベッド、そして、開放感のある広い窓がある、やはり八畳くらいの広さの部屋で、床は板張りで、真ん中あたりに円形のござがひいてあった。
机は、窓のところにあり、その横に布が掛かった棚があった。
「これかな?」
春彦は小さい時の記憶で、確かこの当たりに春繁が良く音楽を鳴らしていたのを覚えていた。
布を外すとレコードプレーヤー、チューナー、アンプ、カセットデッキに大きなスピーカーがそのアンプたちを挟むように左右に一つずつ置かれていた。
「すげぇ。」
小さなときの記憶だったので、今、まじまじみると、立派なオーディオセットだった。
そして、その横の棚にはレコードがLP、EP盤含めひしめくようにたくさんあった。
「動くのかな……。」
主いなくなって、かれこれ10年近くも動かしていなかったオーディオのアンプのスイッチを春彦は、恐る恐る入れてみた。
しかし、POWERランプは点灯しなかった。
「やっぱり、だめかな…。」
そう言いながら、春彦はオーディオの棚の後ろのコンセントを覗き込んでいた。
「あっ、コンセントが外れている。
 当たり前か。」
オーディオのコンセントは、春吉が漏電を気にして抜いたのか、外れていた。
「差していいかな?」
そう思いながら、春彦はオーディオのプラグをコンセントに差し、アンプのスイッチをオンにしてみた。
今度は、アンプのPOWERランプが赤く点滅した。

「まあ、それ、未だ動くのかしら。」
いつの間にかキクが2階に上がってきていた。
「おばあちゃん、そこにあるレコード聞いていい?」
「いいわよ。
 でも、使い方わかるの?」
「うーん、たぶん。」
春彦は、目を輝かせて言った。
そんな春彦をにこやかな顔で見ながら、キクは1階に降りていった。

「さてと。」
春彦はそう言うと、レコードの棚から聞きたいレコードを物色した。
「あっ、パープルのマシンヘッドじゃないか。
 父さん、好きだったんだ。」
春彦は友人の影響で、昔のロックバンドの曲を良く聞いていた。
そんな中で、特に好きだったのがパープルとツェッペリンだった。
「じゃあ、これかけてみよう。」
見よう見まねで、袋からレコードを取り出し、プレーヤーに乗せたまでは良かったが、その先がどうにもわからなかった。
「うーん、困った……。
 おじいちゃんに聞いてみようかな。」
そう思い立って、1階に降りていき、春吉にレコードの掛け方を聞いてみた。
春吉は、使い方をよく覚えていて、丁寧に説明してくれた。
「レコード針が、もうすり減ってんじゃないかな。
 新しいといっても、何年も前のだが、どこかにあったはずだから、今度捜し出しておいてやるからな。」
「へー、おじいちゃん、詳しいんだ。」
「こら、当たり前だろう。
 レコードは儂の時に全盛だったんだから。
 もっと、こんなりっぱじゃなく、小さな蓄音機だったんだがね。」
春彦に感心され、春吉はまんざらでもないと言った顔をして、部屋を出ていった。

春彦は、教わった通りに回り始めたレコード盤に張りを落とし、スピーカの正面にある籐の椅子に腰かけた。
籐の椅子は大きく座り心地がよかった。
針を落としてから、曲が掛かり始めるまでしばらくの間、プツップツッという音が聞えていた。
曲が鳴り始めると、春彦は思わず身を乗り出した。
「すごいいい音。
 なんか、同じ曲なのに、家のCDで聞くより数段、いい音に聞こえる。」
春彦は最初、音に感動していたが、その内、直ぐに曲に引き込まれていった。
そのまま、椅子に深く腰掛け、眼を閉じていた。
「父さんも、こうやっていつも聞いていたのかな。」
何となく、隣に父の春繁が笑いながら、こちらをみている気がしていた。
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DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
それから2日間ほど春彦は学校を休み、週末の土日と祭日を合わせ1週間近く自宅で治療に専念していた。
その甲斐があってか、また、若さという回復力で、医者も驚くほど傷も順調に癒え、多少、歩くのにぎこちなさはあるが、頭の傷は目立たなく、腕の傷も包帯を外し、大きな絆創膏に代わり、ブラウスを着れば隠れて目立たなくなっていた。
また、休んでいる日は毎日のように佳奈が学校のノートやお菓子を持って見舞いに来ていた。
佳奈が見舞に来ると舞は喜んでお茶にお菓子を出し、3人で仲良く、もっとも佳奈と舞が中心にいろいろな話に花を咲かせていた。

「まったく、母さんは俺の見舞だっていうことを忘れて、佳奈のこと茶飲み友達と間違えているんじゃないか?
 佳奈も相手してると疲れるだろう?」
春彦は春彦の部屋で佳奈と二人きりの時に、呆れたように言った。
「そんなことないよ。
 舞さんとのお喋り、とっても面白いわよ。
 たまに、はるの小さな頃の話もしてくれるし。
 そうそう、ザリガニに指挟まれて、大泣きしたんだって?」
佳奈は、舞から聞いたことを思いだし、楽しそうに言った。
「大泣きは、大げさだよ。
 でも、ザリガニの奴、本気で挟みやがって、指がちぎれるかと思うみたいに痛かったのは確かだよ。
 だって、小学2年生の時だっけな。
 親父も焦って、引きはがしてくれたっけ。」
春彦は昔を思い出すように言った。
佳奈は、昔を思い出し懐かしがっている春彦の顔を眺めていた。
「そうだ。
 はるのお父さん、春繁さん、まだ、海外から帰ってこないの?」
「え?」
春彦は意気なり父の話になり、一瞬、たじろいだ。

春彦の父は、転校してからしばらくして、突然、他界してしまった。
春彦は、そのことを友達には、父親は海外に転勤になって日本にいないと言っていた。
舞は、春彦に何でそんな嘘をつくのかとある時、尋ねてみた。
春彦は、同じように父を亡くした同級生がいて、クラスの友達から同情され会話ひとつでも遠慮している態度を見ていた。
で、自分もそう周りから遠慮や同情されるのは嫌なので、仕事で日本にいないということにしていると舞に説明した。
舞は、しばらくどうしたものかと考えていたが、精神的に安定し、本人から本当のことを言いだすまで、春彦の話に付き合うことし、学校にも、進んで父親がいないことを説明しないで欲しい、また、春彦が何か言っても聞き流してくれるように頼んでいた。
それは、高校生になってもそのままだった。
当然、佳奈は、春彦の父親は海外に住んでいて、年に2,3回くらいしかあっていないという話をまともに受けていた。

「そうだね。
 なんか向うで偉くなっちゃって、まだしばらく帰って来れないみたいだよ。」
「そうなんだ…。
 でも、寂しくない?
 舞さんも寂しいんじゃないかしら。」
「まあね。
 でも、自由な人だから、母さんも諦めてるんじゃないかな。」
「そうなの……。」
佳奈は腑に落ちない顔をしていた。

「それより、もうすぐ学年末のテストか。
 今年は、年明け早々、たいへんな年だな。」
「そうね、いきなり怪我して。
 もう、馬鹿はしないようにしてね。」
「はいはい。
 では、テストに出る範囲を教えてください。
 これで赤点なんか取った日には、母さんに殺されてしまいまするー。」
春彦は、佳奈に向かって手を合わせ、拝みながら言った。
「もう。」
佳奈は、そんな春彦の態度を見て笑い転げていた。
「ん?」
不意に佳奈は春彦の視線を感じた。
「いや、今日は何か感じが違うなと思って。」
春彦は、佳奈の髪を見ながら言った。
佳奈は、いつも髪を後ろに束ねるポニーテールにしているのだが、今日は束ねていなかった。
「え?
 ああ、髪型でしょ。
 たまには普通に下ろしてもいいかなって。
 変?」
佳奈は頭を左右振って見せた。
佳奈の髪はしなやかに風に舞、ほのかにシャンプーの香りが春彦の鼻をくすぐった。
「でも、触らせないからね。」
春彦が言う前に佳奈がそう言って制した。
むかしから春彦はよく佳奈の髪を触りたがり、佳奈に笑って拒否されていた。
「いや、もうそんな子供のときじゃないんだし……。」
春彦はそう言いながらも本心は、佳奈のしなやかな黒髪に触れてみたかった。

五商との件は、不思議なくらい話にもならなかった。
本来なら、怪我したほうが何かしら学校にアクションをしてくるのだが、五商の方からは一切何もなかった。
春彦の方は、春彦が怪我の理由を言わなく、また、ナイフで刺されたなど口のも出さなかったし、佳奈たちも一切口をつぐんでいたので、学校には事件のことは知られていなかった。
ただ、あの日を境に、あんなにうるさく西高の周りにいた五商の不良グループの姿が一切見えなくなった。
西高の教師は首を傾げ、どこか人気のないところに潜ったのかと噂をしていたが、結局、そういうこともなく、その内、いつもの平和な風景に戻っていた。

五商の方は、佳奈が五商にいる友人の田中に状況を聞いていた。
田中は、細かくはわからないようだが、やはりあの日を境に不良グループは解散し、皆、何か怖いものを見たのか、おとなしくなったそうだった。
リーダー格の陣は、肩の脱臼、肘の骨折、腕の靭帯破損など右腕に全治数カ月の大怪我を追い、腕をギプスで固定し、登校し始めたそうだった。
そして、他のメンバーと同じように、心を入れ替えたように服装、髪型も普通になり、まじめな学生になったとのことだった。
最初は、陣の両親があまりの怪我で、学校に乗り込もうとしたが、陣の方が相手を金属バットで殴ったとか、ナイフで刺したと正直に告白したため、どう考えても自分たちに分が悪いので、だんまりを決め込んだようだった。
田中は、春彦のことを心配していたが、佳奈が笑いながら、「春彦は丈夫だから大丈夫」といった言葉を聞いて、胸をなでおろしていた。

DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
翌日から春彦は学校を休み、家で退屈をどう紛らわせようかと、家の中をうろうろしていた。
「あんた、まるで動物園の熊みたいよ。
 まったく、そんなに行ったり来たり、うろうろされると、落ち着いて仕事が出来ないわ。」
「そう?
 まあ、気にしない、気にしない。」
「気にしないってねぇ。
 図体のでかいのがうろうろしたら、気にしないわけにいかないじゃないの。」
「はいはい。」

舞は、家で海外本の翻訳の仕事をしていた。
その仕事の邪魔になるので、春彦は仕方なく自分の部屋に戻ろうとした。
その時、廊下の押し入れの戸が空いていたので、思わず覗き込んでみた。
そこに、重そうな段ボールが置いてあり、マジックインキで何か書かれていた。
「ねえ、母さん。
 押し入れにある何か重そうな段ボール、なに?」
「え?
 何かあった?」
「うん、何かマジックで書いてあるんだけど。」
「どれどれ……。」
そう言いながら、舞は春彦の傍に来て、春彦が指をさす方を覗き込んだ。

「あら、懐かしい。
 こんなところにあったなんて。
 何で、今まで気が付かなかったんだろう。」
「え?
 何?」
春彦は興味津々と舞に尋ねた。
「これね、あのひとのレコードが入ってるの。」
「え?
 父さんの?」
舞は、懐かしそうな顔をして頷いて見せた。
「ねえ、中見ていい?」
春彦は、小さな子供がせっつくような顔をして舞にせがんだ。
「いいわよ。
 でも、重たいから、傷に触らないように気を付けるのよ。」
「うん。」

春彦はそう言いながら、段ボール箱を押し入れから廊下に引っ張り出し、中を開けてみた。
そこには、ジャケット幅が30cmのLPレコードが整然と収められていた。
「今のCDに比べると、大きいでしょう。
 それに、両面で、片面に約20~30分位しか入っていないのよ。」
「へえ。
 でもさ、今、DJか何かでは、レコード盤を手で逆回転させたり、速さを変えたりしているじゃない。」
「当たり前でしょ。
 CDで、どうやってやるのよ。
 相手は針じゃなくて、レーザーよ。」
「ま、そうだね……。」
「それより、取り出してみたら。」
「うん。」
舞も、興奮気味に春彦にせっついた。

春彦が、LPを1枚取り出すと、窓の多い建物が描かれているジャケットのレコードだった。
「わぁー、懐かしい!
 ツエッペリンじゃない。
 フィジカルグラフティよ、これ。」
「え、母さん、知ってるんだ。」
「そりゃー、そうさ。
 あの人の影響を一番受けてたんだから。」
春彦は、また、違うレコードを引っ張り出してみた。
「これ、パープルよ。
 ハイウェイスターが入ってるの。
 その後ろはスコーピオンズ。
 クリムゾンに、イエス、バッドカンパニー、クリームでしょ。
 キッスも!
 春は、キッスなんて知っているでしょ。」
「ああ、最近、宣伝で出ている隈取りみたいな化粧して、悪魔のしもべにしてやるとか言ってるグループでしょ?」
「なに、馬鹿言ってるのよ。
 それは、ジャパニーズロックバンド。
 あっ、ピンクもあるじゃない。」

舞は興奮しまくって、まるで学生時代のようにきゃっきゃっとはしゃぎながらレコードを1枚1枚眺めては、懐かしそうな声を出していた。
「エアロにTレックス、懐かしいわ。
 えー、黒船まであるじゃない。」
「ねえ、母さん。
 これ、どうやったら音が出るの?」
「へっ?
 そうか、レコードプレーヤーなんて見たことないわよね。
 一枚、中のレコードを取り出してご覧。」
「えっ?
 うっ、うん。」
春彦は、うなずいてジャケットから黒い色の円盤型のレコードを取り出した。
「あっ、その溝があるところ、傷つけちゃダメよ。
 爪で、キーってやっても傷がつくから、真ん中に溝のない部分があるでしょ。
 曲名とか、アルバム名が書いてある。
 そこを持つのよ。」
そう言われ、春彦は慌てて慎重にレコードを持ち直した。
「レコードって、盤に溝があるでしょ。
 そこにレコード針を落として回転させることで音が出るのよ。
 だから、その溝が命なの。
 そう言う風に、レコード針を接触させて、振動?かな?
 それで音を増幅させて聞かせてくれるのがレコードプレイヤーっていうのよ。」
舞は、いつもより詳しく雄弁になっていた。

「そうそう、我家にはプレーヤーおいていないけど、あの人の実家にあるわよ。」
「え?
 立花のおじいちゃん、おばあちゃんのところ?」
「そう。
 前の家、アパートで狭かったでしょ。
 今と違って、まだ、CDなんてなかったし。
 それで、レコードプレーヤーを実家に持って行って、聞きたいものをカセットテープに録音して持ち込んだのよ。」
「へえ、そうなんだ。」
「あんた、覚えてる?
 あの人が一番好きだった曲が入っているカセットテープで遊んで、テープを全部引っ張り出しちゃったこと。」
「え?
 そんなことしたっけ?」
「まあ、まだ小さかったから覚えていないわよね。
 あの人ったら、お前だから怒るに怒れず、半泣きしてたのよ。」
そういうと、舞は爆笑していた。
「あの時のあの人の顔、思い出しただけでも、涙が出てくるわ。」
「なんか、微妙だな…。」
春彦は、舞の大爆笑の原因が自分で、父の大事にしていたテープを壊したことで、笑うに笑えなかった。
「大丈夫よ。
 次の週の週末に、早速、新しいテープに録音して帰ってきたんだから。」
春彦は心なしか、ほっとした。

「でも、父さん、ハードロック好きだったんだね。」
「そうよ。
 でも、どちらかというと、ノリノリの曲が良かったみたいよ。
 確か、ディスコの曲もあったわよ。
 スリーディグリーズやアラベスク、アースにワンダーとかもね。」
「すげえ、そんなに持っていたの。」
「そうよ、まだ、実家に積んであるんじゃないかしら。」
「へえ。」
「今度行って見てごらん。」
「ああ、そうする。」

舞は、春繁が亡くなってから、立花の祖父の春吉と大喧嘩し、それがもとで今の家に移り、それ以来、絶対に一緒に行こうとはしなかった。
ただ、立花の老夫婦にとって、孫といえるのは春彦だけだったので、何かと用事を作り、春彦だけ立花の実家に行かせていた。
春彦も、舞と春吉の喧嘩の原因、というか、実際にその場にいたのでよくわかっているのだが、当初は、絶対に行こうとはしなかった。
ある時、しぶしぶ尋ねた時に、祖母のキクから春吉の真意を聞いたのと、舞も実はわかっているのだが、双方、引っ込みがつかなくなっているんだと理解し、それ以降は、舞に言われると、立花の実家に通うようになっていた。

「その人のレコードプレーヤーって、ものすごいのよ。
 学生時代、高校生の時からバイトして、全部、そのステレオにつぎ込んだのよ。」
「え?
 レコードプレーヤーって、よく、犬が聞いている絵のようなのじゃないの?」
「何馬鹿なこと言ってるの。」
舞は、真面目な顔をしている春彦を面白そうに見ていった。
「アンプでしょ、プレーヤーでしょ、チューナーにカセットデッキ、あとおっきなスピーカーがあるのよ。
 それを組み立ててならべると、畳一畳分でもあるんじゃないかしら。」
「そんなにでっかいんだ。」
「その代り、音は滅茶苦茶いいのよ。」
「へえ、そうなんだ。
 でも、そんなに大きいと持ってこれないかな。」
「え?
 持ってきて家で聞くつもりだったの?」
「うん。
 CDとどっちが音がいいかなって。
 俺もいろいろとCD借りてきて聞いてるんだけど、さすがに、こういうのは…。」
「まあ、探せばあるだろうけどね。
 そうだ、じゃあ、今度、光ちゃんと一緒に行ったらどう?
 光ちゃん、悠美のために免許とって車買ったから、持ってこれそうだったら車に積んでもらったらどう?」
「え?
 でも、光ちゃんに悪いよ。
 まずは、俺だけ行って、どんな大きさか見て来るよ。」

「まあいいわ。
 いつ行くか決めたら教えなさい。」
「ん?
 母さん、連絡してくれるの?」
「だれがよ。
 お前が電話するんだよ。
 誰が、あんなくそ爺いと話をするもんかい。」
「まったく…。」
春彦は、拗ねた顔をしている舞を見て苦笑いをした。
いつも、実家に行くときは必ず、春彦に電話をさせ、自分は一切電話で話そうとはしなかった。
ただ、実際に行く時になると、あれを持っていけだの、これを持っていけだのいろいろ老夫婦の好きなものを土産に持たせ、帰って来ると、元気だったかと心配して根掘り葉掘り春彦から様子を聞き出していた。
そんな舞を春彦は、半分、素直じゃないと思いながら、舞の心の傷を思うと何も言えなかった。
DATE: CATEGORY:第6章 春彦の光と闇(光編)
舞に連れていかれた病院は、悠美の入院していた病院で、舞は医師や看護婦と親しく、こういう時は無理の言える間柄だった。
「おや、珍しいね。
 傷だらけの春彦君なんて。
 春彦君でも、喧嘩することがあるのか。」
診察室に通された春彦は、すっかり顔なじみとなっていた外科の医師と向き合っていた。
「おや?
 これは、刃物の傷だね。
 どうしたのかな。」
医師は、春彦の腕と脚の怪我を見て、怪訝な顔で尋ねた。
「先生、聞いてくださいよ。」
たまらず、舞は口を挟んできた。
そして、春彦から聞いた怪我の顛末を聞いて、医師は納得した。
「まあ、舞さんが頼み込んでくるから何事かと思ったが、そういうことですか。」
医師は、舞の方を向いた。
舞は、申し訳なさそうに小さくなっていた。
何と言っても医師を指定し、無理やり診てほしいと強引に頼み込んだ手前、小さくなるしかなかった。
「じゃあ、春彦君の怪我は、女の子を庇った名誉の負傷ということだね。
 さて、CTの準備も出来たから、処置室で頭を輪切りにしてあげよう。」
「輪切りって…。」
春彦が絶句すると、医師はおどけたように片目を閉じた。
「お母さん、傷の方は血管や神経とか何かにかかわるような傷ではないので、安心してください。
頭の方は念のため、CTスキャンを取ります。
その後、傷の手当てをしますから、まずは、待合室で待っていてください。
 結果が出たら、声を掛けますから。」
「じゃあ、先生
 よろしくお願いします。」
舞はそういうと、診察室から出ていった。

舞が出ていったことを確認すると、医師は春彦に洋服を脱いで、診察着に着替えるようにいった。
春彦は、大なしく言うことに従って着替えをした。
「あれ?
 春彦君、怪我は頭と腕、脚じゃなかったかな。」
「はい?」
春彦は、はっと気が付いた。
(まずい、道場での打ち身や痣が残っていたんだ)
医師は、だまってCTスキャンの検査室に春彦を連れて行って、検査を行った。
その後、診察室で腕と脚傷を縫って手当てをした。
「頭の傷は大したことないから、縫わなくて大丈夫。
 腕の傷はそこそこ深いけど、神経や腱は大丈夫だから縫っておけばすぐに良くなるよ。
 問題は脚の傷だね。
やはり、骨まで届いているか。
血管や神経に触らなかったから運が良かったな。
 傷がしっかり塞がるまでは、運動は禁止と。
 松葉杖を出しておくから、使い方を看護婦さんに教えてもらいなさい。」
一通りの処置が終わった後、医師は、少し険しい顔で春彦に尋ねた。
「傷の治療は終わったけど、全身にある痣は何かな?
 診ると打撲の跡に見えるけど。
 今日の喧嘩じゃないね。」
春彦は、覚悟を決めて話し始めた。
「ええ、昔から通っている道場での稽古の跡です。
 その道場は、フルコンタクトで、防具なしなんです。
 今度、その道場の後輩の昇段試験があるので、稽古につき合った跡です。」
「そうなんだ、でも、痣の位置も人間の急所のあたりだし、一歩間違えれば危なそうだな。」
医師は、少し、考えながら話した。
「そうですね。
 本当は、とっくに辞めていたのですが、面倒を見ていた後輩の頼みで今回だけです。
 先生、母には内緒でお願いできますか?
 母に余計な心配を掛けさせたくないのと、今回だけなので。」
「うーん、仕方ないな。
今回だけなら、内緒にしておこう。
 ただし、また痣があったら、お母さんに話すからね。」
「はい、すみません。」
春彦は、深々と頭を下げた。

その後、舞と一緒にCTスキャンの結果を聞き、二人は家に帰った。
家に帰ると、舞は、テーブルの椅子に座り、ほっとしたようにため息をついた。
「まあ、頭も何もなくてよかったわ。
 これで、パーになったら、もう、家から叩き出すところだったんだからね。」
「えー、ひどくない?
 家から叩き出すなんて。」
「当たり前でしょ。
 勝手に喧嘩して、くるくるパーになったから、一生面倒を見てくれなんて、嫌なこった。」
舞は、春彦にあっかんベーをして見せた。
「取りあえず、2,3日は学校休みなさい。
 そんな、ミイラ男ちゃんで、学校に行ったら何言われるかわからないから。
 あら?
 留守電が入ってる。」
舞は、そういうと受話器を取って留守番電話を再生した。
再生した音声を聞きながら、春彦の方に向かってニヤニヤ笑いかけた。
「?」
春彦は、音声が聞えないので、舞がなにを笑っているのかがわからなかった。
再生が終わると、舞は、受話器を置いた。
「さて、お前が守ったお姫さまから電話があったわよ。
 何時になってもいいから、具合を教えてって。
 佳奈ちゃん、神妙な声だったわよ。
 意外と、涙ぐんでたりして。」
春彦は、容易に心配で泣き顔になっている佳奈の顔を目に受かべることが出来た。
「げっ、それは苦手だな。
 それに、疲れたから横になりたいし。」
それは、春彦の本音だった。
さすがに、放課後喧嘩をして、怪我し、病院で検査や処置を受け、へろへろ状態だった。
そんな状態で、もし、佳奈が泣き出したりしたら、慰める元気も残っていなかった。
まあ、泣き出すことはなくても、いろいろ話すのもおっくうになっていた。
舞は、春彦の疲労困憊の顔を見て、肩をすくめた。
「仕方ないわね。
 着替えて、部屋で休んでいなさい。
 夕飯が出来たら呼ぶから。
 すこしは、食べるでしょ?」
「うん。」
春彦は力なく頷いた。
「それと、後で茂子に電話するから、その時、佳奈ちゃんに、今日は疲れて電話に出られないから明日ねって言っておいてあげるから。」
舞の提案は、今の春彦にとっては天の助けのようだった。
「さんきゅー。」
春彦は、両手を合わせ、舞に拝みながら言って、部屋に戻っていった。

「やれやれ」
舞は、独り言のように口走りながら、部屋着に着替えていた。
その後、佳奈の母親である幼馴染の茂子に電話をかけ、お互いの子供の情報交換をした。
「で、春君、大丈夫なの?」
「うん、怪我は、そんなに大したことなく、まあ、丈夫が取り柄だからね。
 包帯が大げさなんで、2,3日は、学校休ませるわ。
 あっ、だから、佳奈ちゃんにも、心配しないでって、ね、お願い。」
「うん、それはいいけど。
 でも、あの子たちったら、最初は佳奈が巻き込まれたなんて言ってなかったのよ。」
「そうなんだ。
 茂子、春の返り血浴びた佳奈ちゃんを見て、大騒ぎしなかった?」
「あっ…、少し、したかな、いや、たぶんした。」
「だからよ。
 みんな、茂子の剣幕に恐れをなしたんじゃない。」
「そうかも。
 でも、もし何かあったらどうするのかしらね。
 今回は、春君がいるからよかったけど。」
「まあ、佳奈ちゃんも、うちのと居る時以外は無茶しないんじゃない。」
「まあ、そうね。」
佳奈はみんなが帰った後を見計らって、茂子に本当のことを話していた。
茂子は、最初は驚いたが、春彦が身を挺して佳奈を守ったことを聞いて、春彦の怪我の具合に気を揉んでいた。
その時に舞から電話があり、春彦の怪我の具合、そんなにひどいケガでないことがわかったので、安堵していた。

次の日の放課後、佳奈は学校帰りに春彦の見舞いに寄った。
茂子から、そんなにひどいケガではないことを聞いていたが、自分の目で確かめるまでは気が気ではなかった。
「舞さん、こんにちは。」
「あら、佳奈ちゃん、いらっしゃい。
 春は、起きて部屋でごろごろしているからね。」
佳奈の顔を見て、舞は余計なことを言わず佳奈を招き入れた。
「ありがとうございます。」
佳奈は、舞と一言二言会話を交わすと、そそくさと、春彦の部屋に向かって行った。
「おお、おお、血相変えて。
 余程、気になっていたのかしらね。」
舞は、佳奈の後姿を見送りながら、小声で独り言を言い、ニヤニヤしていた。

「はる、入るわよ。」
春彦の返事をお構いなしに佳奈は部屋に入っていた。
「はる?
 大丈夫?」
佳奈は、部屋に入り、春彦が起きて雑誌を読んでいる姿を見て、気が抜けるほど安心した。
「ああ、この通り。
 傷は、まだ痛むけど、血は止まっているから大丈夫。
 一週間ほどで、抜糸だってさ。」
「よかった。
 で、頭の方は?」
佳奈は、春彦が座っているベッドに近づいて行った。
春彦は、身体を少し壁際に寄せて、佳奈の座るスペースを空けた。
佳奈は、春彦の空けたスペースに腰掛け、春彦の頭に手をやった。
「ああ、頭も昨日CTスキャンで検査し、たんこぶが出来ている位だってさ。
 キズもたいしたことなく、縫うほどでもないって。
 て、おい、触ると痛いって。」
佳奈は、春彦の傷が気になって、頭を触っていた。
「あっ、ごめん。」
佳奈は、いそいで、手をひっこめた。
「でも、良かったわ。
 もし、寝ていないといけないような怪我だったら、どうしようかと思って。」
「おいおい、そこで、泣くな。
 おれは、この通り元気なんだから。」
佳奈が、泣き出しそうな顔になったのを見て、春彦は大慌てで、元気を強調した。
「(ぐすっ)そうね、本当に良かった。
 バットで、頭を殴られたのを見て、死んじゃうかと思ったし、ナイフが脚に刺さっていたし…。」
佳奈は、そう言いながら手で顔を覆い、泣きべそをかき始めた。
春彦は、そっと怪我していないほうの手で、佳奈の頭を撫でて「大丈夫」と慰めた。
「もう、あんなことしちゃ嫌よ。
 本当に、春が大変なことになったら、私…。」
佳奈は、こみ上げて来る感情がなかなか治まらないでいた。
「大丈夫だよ。
 もう、あんな無茶しないから。」
春彦はどう言いつくろったら佳奈が落ち着くか、考えあぐねていた。
「あらあら。
 早速、佳奈ちゃんを泣かせているの?」
そこにお茶とお菓子を持って、舞が入ってきた。
「また、なんか佳奈ちゃんを泣かせるようなことしたの?
 そんなに、また、折檻されたいのかな?」
舞は、お茶の道具を春彦の机の上に置くと、指をぽきぽきと鳴らして春彦に近寄っていった。
「してない、してないって。
 佳奈も何か言ってくれよ。」
春彦は、大慌てで佳奈に助けを求めた。
佳奈は、呆気に取られて呆然としていた。
「昨日、怪我して帰ってきたら、この母さん、俺に何したと思う?
 怒りながら、怪我している頭にヘッドロックで絞り上げたり、殴ったりしたんだぜ。」
「ええ?」
「おいおい、人聞きの悪い。
 殴ってなんかないじゃない。
 心配して撫でてやったんじゃない。」
「普通、撫でる時に、ボコって音がするのか?!」
佳奈は、ビックリした顔になったが、舞と春彦の掛け合い漫才のような会話を聞いて、すぐに、笑い出した。
「おーい、笑い事じゃないって。」
「だって、その時の春に顔を思い浮かべると面白くて。」
佳奈は、ケラケラ笑い出していた。
舞は、そんな佳奈を見て微笑みながら部屋から出ていった。
DATE: CATEGORY:第5章 悠美の楽しみ
昨年から書き始めた小説ですが、今回から、タイトルを変更しました。
(旧)『混線次元(はるかな物語)』→(新)『はるとかなの夢』
ということで、今までのまとめを少し。
幼なじみの春彦と佳奈は二人に大きく影響をもたらした女性(悠美)のもと、成長していきます。
初めは、幼馴染ということで、強く意識をしていなかった二人ですが、佳奈がある事件に巻き込まれてから意識が変わっていきます。
その事件から物語はスタートして、意識し始めたところで一時中断し、二人の成長過程、また、二人に影響を与えた周りの人物との触れ合いについて時代を前後させながら描いています。
前回までは、春彦と佳奈の中学、高校前半までの話と二人に影響を与えた悠美とのふれあいについてでした。
次回からは、高校生活の後半、二人にとって光から陰、特に春彦にとってはどん底とも言える状況に落ちていきます。
誰でも思春期の中、覗いたことがあるニヒリズムの世界。
春彦と佳奈はどうやって、二人の夢を描きかなえて行けるか、それを考え、タイトルを変更しました。

これからも、仕事の合間、頑張って書いていきますので、読んでいただけたらと思います。
よろしくお願いします。

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