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梅星

Author:梅星
社会人になっても、いつもいろいろな空想の世界を思い描いていました。
その中で、ずっと書きたかったお話(小説)をブログという世界を使って紹介させていただきます。
無理なく肩の力を抜いて続けていきたいと思いますので、楽しんでいただけたらと思います(毎週更新予定です)。
初めて読まれる方は、『あらすじ』も並行して読んでいただければ、読みやすいかと思います。
お楽しみください。

尚、文中の登場人物、会社等すべてフィクションです。


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DATE: CATEGORY:はるかな通信
はるかなブログに訪問していただき、ありがとうございます。

はるかな物語りは、なんとか毎週休まず3年目に突入しています。
春彦と佳奈の今、生まれた頃、小学生のころ、中高校生のころ、そして、今連載している大学生のころ。
各世代の春彦と佳奈の物語を年代順ではなく思いついたまま書いて来ています。
各章と年代については、あらすじに書いていますので、興味があればご覧ください。
現在、執筆中のクロスロードは、別々の場所で大学生活を送っている春彦と佳奈。
お互いのことを思いながらも平行線をたどる二人。
そんな二人に起こる様々な出来事を書いています。

ショートショート
現在、会社勤めをしている私。
通勤電車の情景をコミカルタッチで物語にしました。
はるかな物語とは、違った内容です。

<20181216>
ショートショートは目標の50話まで完走いたしました。
読んでいただいた方、ありがとうございました。
ショートショートは以下のURLへ移行しました。
今までのバックナンバーや、不定期ですが追加などはあちらの方でお楽しみください。
題名:車中の住人(ショートショート)です。

https://ncode.syosetu.com/n0375fb/

では、お楽しみください。
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DATE: CATEGORY:第10章 パラレルロード
金曜日に春彦は端田と待合わせをして、合コンの会場となっている居酒屋に入って行った。
「へえ、本当にきれいなんだ。
 どうも、お前たちと行く居酒屋って“べたべた”する床にタバコのヤニで黄色くなった壁、薄暗い雰囲気っていう印象が強いからな。」
春彦は、綾子と飲みに行く時は薄暗いが雰囲気のあるパブが主流で、端田や戸張と行く時は安い居酒屋、まさに、春彦の言う印象のお店が多かった。

この日は、女子大生が幹事だったせいか、居酒屋といっても綺麗で明るい雰囲気の店だった。
そこの一角を貸し切り、30~40人ほどがすでに集まっていた。
見た限りでは、女性の比率が高く、確かに端田が豪語するように美人と言える女子大生も多かった。
「なあ、立花。
 今日は1年生もいるんだって。
あ、あそこ空いてるから、あそこにしようぜ。」
端田の指す方を見ると確かに席が2つ空いていて、その前には3人の女子大生座っていた。

その中の一人は端田の好みと思われる女子大生だった。
「はい、はい、ちょっとごめんなさいね。」
端田はスキップをするような歩き方でその空いてる席の方に人をよけながら進んでいった。
「まったく…?」
端田の姿に呆れて独り言をこぼした時、春彦は少し離れた席に、この前春彦に視線を送っていた女子大生が座っているのを見つけた。

その娘は左右を女友達に囲まれていたが、明らかに春彦と同じように無理やり誘われたようだった。
「麗奈もいい男がいたらゲットしちゃいなさいよ。」
「そうよ、麗奈ったら大学生になっても奥手で誰とも付き合わないんだから。
 あなた、結構いい線いってるんだから、その気になれば絶対大丈夫よ。」
「ほら、あそこの男なんてどう?」
そう言って麗奈と呼ばれている女子大生の右隣りの女子大生が春彦の方を顎でしゃくって見せた。

「え?」
麗奈は、顔を上げ友人が指し示す方を見ると春彦と目と目が合った。
(きゃあ)
麗奈は驚き、すぐにうつむいて顔を上げようとしなかった。
「ちょっと、麗奈。」
「ほんと、あんたって初心なんだから。」
左右の友人はうつむいてしまっている麗奈を見て呆れるように言った。

その女子大生の騒ぐ声は、春彦に十分、聞こえていた。
(ふーん、麗奈って言うのか)
春彦はそう思いながら、端田の後を追って空いている席に向かった。
(立花君、来てたんだ…。)
麗奈は、嬉しい反面、想うところがあって複雑な心境だった。

宴がはじまると、端田は絶頂で前に座っている女子大生にさえないギャグを飛ばし、呆れられながらも、名前と電話番号を聞き出そうと必死だった。
しかし、前の席の女子大生3人は端田よりも春彦の方に興味があり、なんだかんだと春彦に話しかけて来きたが、すぐに端田に遮られムッとした顔になっていた。
宴も後半に入り、皆、だんだんと酔いがまわり、席を立って気に入った人同士であちらこちらに塊が出来ていた。
春彦は、宴会途中からお店に入って来て、客を装いその宴会を気づかれないように監視しているようなサラリーマン風の男二人を目ざとく見つけていた。

二人の男は、目つきが鋭く、どうみても普通のサラリーマンには見えなかった。
そして、テーブルの上には焼き鳥とビールが並んでいたが、二人ともビールには口を付けていないようだった。
そして、何かを話しながらたまに笑顔を見せていたが、どうみても、目立たないように飲み友達を装っている演技が見え見えで、二人の目は笑っていなかった。
(なんだ、あの二人組は。
 合コンの中の誰かを狙っているのか)
春彦は二人に気づかれないように監視していた。
DATE: CATEGORY:第10章 パラレルロード
「ん?」
夏休みが終わり、10月に入りまだまだ暑い陽気の中で、やっと涼風を感じるようになった頃、春彦はたまに視線を感じるようになった。
その日も誰かに見られている気がして、気がする方向に前振りもなく顔を向けてみた。
すると一人の女子大生と目が合った。
目が合った女子大生は、慌てて顔を背けると、春彦に背を向けて小走りで去っていった。
春彦は一瞬、その女子大生を追いかけ、問い詰めてみようかと思ったが、目が合った時、相手がわずかに怯えたような顔をした気がしたので、深追いはしなかった。

その女子大生は、チェック柄の薄いブルーのブラウスに裾がくるぶしまである長い濃紺のスカートを履いていた。
それよりも春彦の印象に残ったのは、ソバージュっぽい長髪の黒髪と、笑うときっと可愛いだろうと感じるような少しふっくらした顔、しかし、どこか陰のある顔だった。
「あの娘、どこかで会ったことがあるかな…。」
春彦は、その女子大生とどこかで会った気がしてならなかったが、思い出せなかった。
「勘違いかな…。」
そう思い、春彦はその女子大生が立ち去った方向と逆の方向にある大学に向かって歩いて行った。

「立花―!」
大学の構内に入り、休講などの情報が張り出してある掲示板の近くに行くと、大きな声で春彦を呼ぶ声が聞えた。
「!」
声の方向には、端田好大と戸張弘一が手を振りながら春彦に近づいて来た。
そして端田は興奮気味に春彦に話しかけた。
「なあ、立花、今度の金曜日なんだけど、夜、空いてるか?」
「え?
 金曜日の夜?」
春彦は一瞬考えたが、綾子は今度の金曜日は都合が悪いと言っていたのを思い出し、他に予定もなかったので空いていると端田に伝えると、端田は眼を輝かした。

「合コン!
 大学に入って、初めての、いや、生まれて初めての合コン!!
 なんかさ、知り合いのサークルが手広く声をかけて、この大学だけじゃなくて、他大学の学生も来るんだって。
 なんでも、美人の女子大生がわんさか来るんだってさ。
 戸張のとっつぁんは用事があるからダメなんだって。
 だからさ、立花、付き合えよ。」
「合コン?
 この前2,3人連れて行ったのも合コンなんじゃないの?
 それに、俺、そういうの興味ないな。」
春彦が、面白くなさそうに言うと、端田は口を尖らせた。

「立花さ、この前のディスコの娘と付き合ってんだろう?
 あの時は、抜け駆けしたんだから、今度は、きっちりとその時の貸しを返してな。」
ディスコの娘とは、綾子のことだった。
端田たちの引き立て役にとディスコに付きあわされた春彦だったが、その店で一番の人気の綾子と春彦は仲良くなり、かつ自分達で誘った女の子たちにも振られたので、それ以来、端田はそのことを根に持っていたのだった。
「お前、あの娘がいるんだからさ、今度こそ、俺の引き立て役な。」
「ええー、じゃあ、遠慮しておくよ。」
春彦が断ると、端田は掴みかからんと言わんばかりの剣幕で言った。

「何を言ってんだよ。
 知っている奴も少ないんだから、来ないとお前とは金輪際、縁を切るからな。」
(本当は、立花を連れて来るという約束で、女の子紹介してもらうことになっているんだ。
 みすみす、こんなチャンスを逃すわけにはいかないだろう)
端田が思っている通り、知り合いのサークルの女性は春彦のことを気に入っていて、端田に可愛い女子大生を紹介すると裏取引が成立していた。

「立花、空いてるんだろ?
 行ってやれよ。」
横から戸張が端田の援護射撃をするように口を挟んできた。
「へいへい、仕方ないな。」
(まあ、お前とは縁を切っても何とも痛くもかゆくもないんだけど)
そんなことを想いながらも、春彦はしぶしぶと了承した。
「よっしゃ、それでこそ立花だ。」
端田は有頂天で言った。

「金曜日、17時から。
 場所は、ちょっと離れているけど新丹後の居酒屋だ。」
「へえ、美人の女子大生を居酒屋に集めるの?」
春彦は意外だった。
普通なら、女の子が好きそうなパブ形式の店かと思っていたからだった。
「お前、遅れているな。
 今時は、居酒屋だよ。
 今の居酒屋、すごくきれいで明るくて、品数も豊富だから学生、特に女の子に人気なんだよ。」
戸張が、春彦を小馬鹿にするように言った。
「ふーん。
 そうなんだ。」
(まあ、確かにそうか。)
春彦は綾子とよく行く店は、チャイカか綺麗でお洒落なメニューのある居酒屋だったので、何となく納得していた。
DATE: CATEGORY:第10章 パラレルロード
夏美と楽しい一日を過ごした佳奈は、その夜、木乃美に夏美とのことを話していた。
パソコンに映っている木乃美は、佳奈の嬉しそうな顔を見て、やさしく微笑んでいた。
「よかったね、佳奈。
 やっぱり私が言った通り、誤解だったわけじゃない。」
「うん、そうなの。
 今度、お人形作り直して渡すって約束したのよ。」
「おー、じゃあ、また寝不足の日が続くのかな。」

佳奈は、木乃美に例の痴漢除けのペンダントを使ったこと、その訳を翌日のうちに話していた。
春彦以外の男性に気を許そうとしたこと、危なく一線を越えそうだったこと、木乃美の強力な痴漢除けのペンダントを使って自分も大変だったこと。
佳奈は、最初木乃美に何を言われるか、気にして話していたが、木乃美はうんうんと頷き、結局、春彦が戻ってくるのを待つと言った佳奈の言葉に、ニッコリ笑って
「それが一番よ。」
と言っただけで他のことは言わなかった。
佳奈は、逆に木乃美が自分のことを良く判っているということを再認識した。

痴漢除けのペンダントを使った後のこと、特に茂子の眼が吊り上がったことの話をしたら、木乃美は笑い転げて、本当に椅子から転げ落ちていた。
「イタタタタ…。」
木乃美はお尻を摩りながら椅子に座り直した。
「しかし、あれを直接嗅いだ“痴漢”野郎は、これに懲りて、佳奈には手を出さないだろうね。」
木乃美のその一言を聞いて、佳奈は佐々岡にいろいろな意味で済まないことをしたなと思った。

「佳奈、あんたまさか、その痴漢野郎に同情した訳じゃないでしょうね。」
「え?
 う、うん。
 ちょっと悪かったかなって。
 それに、痴漢野郎じゃないわよ。
 私、酔っぱらって“うん”と言っちゃったみたいだし。」
「あちゃー!」
そう言うと木乃美は片手で目の辺りを覆って見せた。

「佳奈、あんたね、そんな奴の言うこと,鵜呑みにしないでよ。」
「え?」
「どうせ、佳奈を見た時から佳奈のことを狙っていて、飲み会をセッティングしたんでしょ。
 幹事は?」
「佐々岡さん」
「ほら、痴漢野郎じゃない。
 そして、甘いお酒をたくさん勧めて酔わしたんじゃない。
 甘いカクテルって、結構、酔うのよ。」
「そ、そうなの?
 だって、ジュースに少しだけアルコールが入っているだけだって。」

「アホかい!!
 もしかしたら、睡眠薬とか混ぜられていたかもしれないわよ。
 甘いカクテル系は、そういう薬の味を消しちゃうんだからね。」
「そ、そうなの?」
「それと、酔っぱらった女の子をホテルに連れ込む真面目な奴がいるかい!
 女の子同士だったら話は分かるけど、男だったらタクシーに乗せ、家まで送って行くだろうに!!
 ホテルにお持ち帰りする奴は、痴漢するに決まっているでしょ。
 そんな泥酔状態で“はい、いいですよ”なんて言うのか、佳奈は!!」
木乃美は呆れを通り越して怒ったように捲し立てた。

「そ、そうなんだ。
 じゃあ、最初からそれが目的?」
「当たり前でしょ。
 それで散々遊んだら、“ポイ”よ、“ポイ”。」
「“ポイ”?」
「そうよ、捨てられるってこと。
 相手からすると、おもちゃを捨てるようなものよ。」
「…。」
「ねえ、佳奈。」
木乃美は口調をがらりと変えた。

「あなたには世間勉強は無理ね。
 変なのにくっつかれる前に、早く、春彦とくっついちゃいなさい。
 そうしないと、安心できないわ。」
「春と“くっつく”?!」
木乃美の突拍子のない言葉を聞いて、佳奈は声が上ずった。
「そう、とっとと、春彦に処女をあげちゃいなさいよ。
 あいつなら、佳奈を捨てることはないわよ。」
「し、処女?!」
佳奈は処女と言う言葉の響きで、顔を真っ赤にした。
木乃美との通信が終わった後、佳奈はベットに突っ伏した。
「なんか木乃美ったら、私のことを何でも知っている先生みたい…。
 私だって、春に会いたい。
 春に抱かれたいよ~。」
そう言いながら佳奈は枕を涙で濡らしていた。

その日から3日ほどバイトを休んでから出ると、バイト仲間たちは、心配して佳奈に寄って来た。
「ねえ、大丈夫だった?」
「え?」
「あの佐々岡って、酷い奴で“すけこまし”なんだって。」
「すけこまし?」
「そうよ、気に入った女の子にお酒を飲まして、酔わせて介抱する振りをしてエッチなことするんだって。」
「…。」
佳奈は、自分のしたことを思い出し、恥ずかしくなった。

「大丈夫だった?
 変なことされなかった?」
「うん、大丈夫。」
「みんな心配していたんだからね。」
「ありがとう。」
それから、店で佐々岡に会った、佐々岡はあからさまに嫌な顔をして佳奈に近づこうとしなかった。
佐々岡の中では、佳奈は強烈に臭いという印象しか残っておらず、二度と近づきたくなかった。
佳奈は、それからのしばらく同じバイトを続けたが、佐々岡の佳奈を避ける態度で気まずく思いバイトを辞め、二度と外でお酒を飲み過ぎないという教訓を心に刻み込んでいた。
DATE: CATEGORY:第10章 パラレルロード
佳奈はうつむいたまま頭を左右に振る。
「ううん、違うの。
 嬉しいの。」
そう言って佳奈は夏美に抱きついた。
「わわ?
 佳奈ちゃん?」
夏美はどうして佳奈に抱きつかれたのかわからなかった。

「あのね、夏美さんにあげた人形、校庭のゴミ箱の近くで拾ったの。
 私、てっきり、人形なんて幼稚だと夏美さんに思われたと思ったの。
 それに、その後、避けられちゃって。
 私、夏美さんと仲良くなりたかったの。」
「ええー、私があのお人形を捨てたと思ったの?
 そんなことするわけないでしょ。
 あんなに私に似ている人形よ!
 絶対に、そんなことしないよ!」
夏美は顔を真っ赤にして、捲し立てた。
「うん、今の夏美さんの話しで、全部誤解だったってわかったわ。
 よかったぁー。」
嬉しそうに話す佳奈を見て、夏美も嬉しくなっていた。

「やっと、夏美は想いを伝えられたのかな。」
そう言いながら詩音が二人に近づいて来た。
「菅井さん、夏美ったらね、人形をもらった時、ものすごく喜んだんだよ。
 もう、周り中、それこそバンドメンバー片っ端から自慢して見せて歩いていたんだよ。」
「ちょっと、詩音。」
夏美が恥ずかしそうに言うのを横目で、詩音は話を続けた。

「それで、2,3日後、すごく暗い顔していたから、“どうしたの?”って聞いたら、人形を落としたって泣き出してさ。」
「詩音!!」
詩音は食って掛かってくる夏美を片手で制した。
「だって、本当のことじゃん。」
「恥ずかしいでしょ!!」
「それで、菅井さんにどう謝ろうかって、すごく悩んで、結局嫌われないように逃げまくっていたんだよな。」
「詩音!!」
「それでも、菅井さんのこと気になっていてさ、しょっちゅう、“菅井さん、どうしている?”って。
 その内、“佳奈ちゃん”って呼ぶようになって。」
「詩音!!!」
バシっと音を立てて、夏美は詩音の頭を力いっぱい叩いた。

「いてててて。
 そんな乱暴にしなくても。」
詩音は力いっぱい叩かれた頭を摩りながら、夏美を見た。
「詩音、それはいい過ぎ。
 佳奈ちゃん、いや、菅井さん、気を悪くしちゃうから。」
「ううん、夏美さん、佳奈でいいですよ。」
佳奈は、夏美と詩音のやり取りを聞いていて笑い転げていた。
「ほんと?
 “佳奈ちゃん”て呼んでいいの?」
「はい。
 私も夏美ちゃんって呼ぶから。」
「やったー。
 じゃあ、佳奈ちゃん、五月蠅い詩音は放っておいて、二人でケーキでも食べに行こう?
 もう、授業は終わったんでしょ?
 私も、もうおしまいだから。」
「本当?!
 行こう、行こう。
 この前のお詫びもあるから、ご馳走させて。
 私ね、駅の近くで美味しいお店を知っているの。」
「え?
 私も。」
「ひょっとして?」
「ひょっとしたら。」
二人は同じ店の名前を同時に言って笑い転げた。

「じゃあね、詩音。」
「ああ、また明日。」
詩音がにっこり笑って手を振ると、佳奈は何かを思い立ったように口を開いた。
「詩音さん、この前はありがとうございました。
今度、クッキー焼いてきますね。
それと、詩音さんも佳奈って呼んでくださいね。」
「おー。
 じゃあ、佳奈ちゃんもまた明日。」
「はい。」
そう言ってきゃあきゃあはしゃぎながら歩いて行く佳奈と夏美の後姿を見送った詩音は、ほっと溜息をついて違う方向に歩き始めた。
(まったく、ずっと気にしていたのになかなか話しかけなくて。
 でも、良かったな、夏美。
 さて、俺はこれからどうしよう。)
詩音はそう思いながら両手を上げて、伸びをした。

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